桜井政博
1970年8月3日生まれ。有限会社ソラ代表。独立したゲームディレクター。代表作は『星のカービィ』シリーズ、『大乱闘スマッシュブラザーズ』シリーズ。最新作はニンテンドー3DSの『新・光神話パルテナの鏡』。さまざまなジャンルのゲームを日々研究しつつ、ユーザーに新たな楽しさをもたらすゲーム開発に注力している。

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01 うれしさが10万倍

週刊ファミ通2003年4月25日発売号掲載
VOL.04

収録巻はこちら!

桜井政博のゲームについて思うこと


 

01 うれしさが10万倍

 

 このコラムがファミ通に載るころには、ゴールデンウィークが到来していますね。せっかくの連休ですが、たぶんわたしは仕事をしています。この時期、ほかの会社の方も、E3(アメリカで行う世界最大のゲームショウ)の準備のために忙しい方が多いのではないかなぁと思います。このコラムも徹夜中の深夜の会社で読まれていたりして。こんばんは。いえいえ。
 ここしばらく、わたしは休日も含めて深夜まで働き、家には短めの睡眠を取るために帰るだけという生活をくり返しています。同じ仕事に携わる多くのスタッフもそうです。ゲームを作っている会社としては日常茶飯事なのでしょう。ゲームであれ何であれ、"作品"を作るには想像以上の手間と時間がかかるのがふつうですから、過剰に努力してやっと形になるということが多いのです。いろいろな意味でしんどい仕事なのかも。
 わたしが学生のころ、人生って何のためにあるのだろう?と思っていたことがあります。会社勤めの人々が朝早く起き、仕事して夜遅く帰る。プライベートの時間などちょっとしかない。そこまでしなければ生きられないものなのかな? と疑問を持っていました。確保できる"自由になる時間"こそが、人生の尺度や価値であるとさえ考えていたのかもしれません。
 しかし、振り返ってみればその理屈の青いこと青いこと……根本的に間違えてますね! ゲームという、たくさんの人に触れるものを作る仕事に就き、さらにそれを思い知りました。
 作り手がギリギリまでがんばることで、ゲームがほんの少しでも良くなれば、ユーザーがほんのちょっぴりうれしくなる。たとえば、作ったソフトが10万本売れ、10万人以上の人が遊んだとしたら、ソフトを遊んだユーザーが感じるうれしさの
"総量"はひとりを喜ばせたときのじつに10万倍です! もう見当もつきません。ならば、作り手が少しのムリをとおして完成度を高めることにためらいを持つべきではないですよね。たとえ他人の喜びだとしても、たくさんの人のうれしさのまえに、少人数の苦労などないも同然!!
 これらが動機づけとして間違っているかどうかは、あまり重要ではないと思います。少なくともわたしはそんな風に考えています。
 ゲーム業界のみならず、仕事をしている人はさまざまな理由で職を選び、仕事をし、社会に貢献しているのだろうと思います。道を歩いたり、電気を使ったり、食事をしたり、服を着たり、医療を受けたり、危険な時に警察に電話できたりすることは、言うまでもなくほかに働いている人がいるからでしょう。それらのサービスを利用するなら、何らかの形で働き、直接的にも間接的にも対価を払わなければならないですよね。個人の単位だけではなく、視点を引いてみれば、何らかの事情で働けない人のぶんも肩替わりする必要もあると思います。
 社内の人間関係がどうとか、しかたなく仕事してるとか、税金が高すぎるとか考えがちですが、そんなことは捨て置いて、働くみなさん、がんばりましょう! いい仕事ができれば、多くのお客さんがちょっとずつうれしい。それでいいではありませんか!
 ……でも、わたしに子供ができたりしたら、またちょっと違う観点を持ったりするんでしょうねぇ。

 

※転載にあたり、コラム本文に付随していた写真や解説、スーパーヘルプ、ふり返って思うことは割愛しております。あらかじめご了承ください。

 

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桜井政博のゲームを作って思うこと
4月2日発売 1155円[税込]

日本のゲーム業界を牽引する気鋭のゲームデザイナーのゲーム論

●カラーページに『新・光神話 パルテナの鏡』開発中のゲーム画像を掲載!! 
●スペシャル特典として、ニンテンドー3DS用ソフト『新・光神話 パルテナの鏡』で遊べる"ARおドールカード"2枚を綴じ込み! 

2012年3月26日 11:52