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【和田俊輔氏】2.「TVチャンピオン」のゲーム王

 

 今回のゲスト:和田俊輔氏 

アスミック・エース エンタテインメント 新機能開発本部GM。「裏ワザ」を通して過去の名作ゲームを紹介するDVD『ザ・裏ワザ』シリーズのプロデューサー。


 

酒缶 和田さんってずっと開発ってわけじゃないですよね。

 

和田 違いますよ。 開発担当は最後の最後だけで。

 

酒缶 『転生學園』と……『VM JAPAN』(※1)

 

(※1) 『VM JAPAN』 2002年に日本ファルコムがパソコン用として発売したシミュレーションRPG。プレイステーション2版はアスミック・エース エンタテインメントから発売されている。

 

和田 『VM JAPAN』は補佐ですね。『サイドワインダー』シリーズなど開発をメインでやってきた上司がいて、営業をしながらその人の補佐をしていました。でも大体、営業中って開発が終わってないことが多いいんですよ。開発の一番重要なところが営業期間でもあるので、途中から開発現場を離れてしまうことが多かったです。

 

酒缶 営業から開発に変わったきっかけってどうだったんですか?

 

和田 ある時、今後のタイトルを決める会議の席上で、営業からの意見として「学園伝奇モノは人気があるけどタイトルが少ないので作った方がいいと思います」的なことを発言したら、当時手が空いている開発担当がおらず、「じゃあお前やってみろ!」みたいな話になったんです。

 

 

酒缶 それってラッキーなパターンですよね。

 

和田 そうですね(笑)。あと、開発プロデューサーの前に宣伝プロデューサーというのをやったことがあるんですけど、これが大変でした。これは宣伝だけに特化して、広告はココにこれくらい、販促グッズはどういうのを作ろうかといった、どこにお金を割り振るかを決めるほか、お店さんと店舗オリジナル特典はどんなものを作りましょうかと交渉する仕事なんですが、それをPSで発売した『東京魔人學園外法帖』(※2)というタイトルの時に営業と兼務で任命されたんですよ。

 

(※2) 『東京魔人學園外法帖』 2002年1月にアスミック・エース エンタテインメントがプレイステーション向けに発売した『東京魔人學園』シリーズの2作目。2004年8月にマーベラスインタラクティブ(現マーベラスエンターテイメント)からプレイステーション2向けに『東京魔人學園外法帖血風録』としてリメイクされている。

 

酒缶 なんかいやな予感がします。

 

和田 これは前作から熱狂的なファンの方々がいるタイトルでして、宣伝時にはすでにPS2が出ていたのですが、勝手に「PS1最後の大作!」とハッタリかましたりして(笑)張り切ってやってました。雑誌では毎回のようにガッチリ特集してくれるし、秋葉原のお店さんなんかもめちゃくちゃ期待してくれて、それはそれは綿密に宣伝やタイアップについて計画していたわけですよ。ただ、お店で予約を取るにあたり発売日の決定が必要なのですが、ずるずると開発期間が延びていたためなかなか決まらない。予約って発売延期の際にお店によってはお客さんに連絡をしなきゃいけなかったりして発売が遅れるのは致命的なんですよね。またそれだけお店さんがタイトルに期待してくれているということは大事な予算を割いてくれている訳ですから経営的にも大ダメージな訳です。

 

酒缶 他のタイトルを注文できなくなっちゃいますもんね。

 

和田 当初、この作品は2001年の年末発売予定だったのですが、何度も開発にスケジュールの確認をし、「大丈夫」と言われたのでお店さんに予約のGOサインを出したんですよ。それで開始したらすぐに予約数が伸びて。この時は「よしっ!」と思いましたね。そうしたらその後ギリギリになって開発から「納期間に合わず、やっぱり発売延びます」と……。その時は関係各所に連絡するのが本当に嫌で会社を飛び出したい心境でしたね。お店さんも「分かりました(怒)」みたいな対応になるし、人によっては会ってくれなかったり……。

 

酒缶 恐いですよね。

 

和田 だから電撃さん(※3)では「遂に発売が決定!」という特集号だったはずなんですけど、それが「遂に発売延期が決定!」という号になったんですよ(笑)。今となっては笑い話ですけど、宣伝プロデューサーという立場からして、すごく苦い思い出です。その時は「ゲームの開発って大変だな、開発はやだな(笑)」と思いました。でも、おかげさまで延期して翌月発売されたソフトはいい感じで売れてくれたので、安心しましたけど。

 

(※3) 電撃さん プレイステーション専門のあの雑誌のこと。

 

酒缶 それだけマニア向けだと、買おうとしている人たちは延びても買ってくれますからね。

 

和田 それにしても悪いことしました。特に社会人のゲーマーの方って、発売日に合わせて休暇を取られるんですよね。誤ってお休みとられた方には申し訳なかったですね。

 

酒缶 発売日死守は大事ですね。ボクが初めて和田さんを知ったのは、「TVチャンピオン」(※4)のゲーム王選手権で優勝したときなんですけど、その頃は営業でしたよね?

 

(※4) 「TVチャンピオン」 1992年から2006年前までテレビ東京系列で放送されたテレビ番組。特定のカテゴリーの達人たちが様々な競技で競い合ってチャンピオンを目指した。「大食い選手権」が有名。

 

和田 はい、営業でしたね。「TVチャンピオン」の出場者紹介のとき、営業でメッセサンオーさん(※5)にお伺いして、当時のゲームをプレイしたり、商談しているところを撮りました。今見ると相当わざとらしくみえますけど(笑)。

 

(※5) メッセサンオーさん 秋葉原にあるゲーム専門店。輸入ゲームがメインのカオス館は、国内で発売されていないゲームや雑誌が多数揃っていて眺めているだけでも面白い。 

 

酒缶 和田さんが「TVチャンピオン」でゲーム王になったのは2001年ですから、もう10周年ですよ。でも、最近の方がゲーム王という肩書をよく使ってますよね。

 

和田 活用……してますね。有効なのかどうかわかりませんけど。『ザ・裏ワザ』DVD絡みで周りが「使え使え」っていうのもあって。

 

酒缶 じゃあ、特にゲームの営業でも開発でもいいんですけど、「ゲーム会社にいること」と「ゲームが詳しいこと」は、必ずしもイコールだったというわけじゃないってことですよね。

 

和田 どうですかね。元々私は学生時代からアホかというくらいゲームはやってましたけど、周りはそんなに詳しい感じではなかったですね。

 

 

酒缶 その時からゲームを作りたいって思っていたんですか?

 

和田 少なくとも「営業したい」と思ってアスミックには入りませんでしたね(笑)。「作れればいいなー」と思って入社したんですけど、その頃は開発担当の方も沢山いたので、まずは営業からということで、結局10年近く営業をしていました。

 

酒缶 その期間、営業をしながら開発の雑務を手伝ったり、ゲーム王になったりして、修行を重ねたってことですね。

 

和田 ゲーム王になったというのは変な流れですけど(笑)。

 

酒缶 「TVチャンピオン」は会社の業務で出られたんですか?

 

和田 一応、別にしました。収録日が平日だった時に「平日なんですけど出ていいですか」と上司に相談したら、「業務として出るんだったらもし優勝した時の賞金は会社のものだからな」と言われたので、「じゃ、有休取ります」と即答してプライベートで出ました(笑)。まあ冗談だったんでしょうけど。笑い話として「TVチャンピオン」で優勝した回が放送された後、周りの人たちから「営業先ですごい歓待を受けるぞー」と言われるわけですよ。それで内心ドキドキしながら地方の法人の方に営業のアポイントを取るんですが電話でも当日行っても全然「TVチャンピオン」に触れてこない。「おっ、あえて知らないフリ?」なんていぶかしんでいる間に商談も終わり、「タクシー呼びますか?」とあくまでノータッチ。しょうがなく、恐る恐る自分から「えーと、TV…チャンピオンって…知って…ます…よね?」なんて切り出す始末ですよ。自分から切り出してやっと「へー、それはすごいですねぇ」的な返しをいただくという。結局、この業界のバイヤーの方たちはお忙しくて平日の夜7時半からやっている番組はチェックできないんですよね。どこに行っても皆さんご存知なく、ドキドキしてた自分が恥ずかしかったですね。

 

酒缶 取引先の人には事前に放送日を教えておかないと。

 

和田 先に言っておかないといけないんですよね。さすがに恥ずかしくて……。でも、他社の営業マンの中には番組ご覧になった方もいらっしゃって、「チャンピオン、これやってみてよ」とサンプルソフトをいただいたりしましたね。よかったのはそのくらいかなぁ……(笑)。あ、いまだに会うとチャンピオンって呼んでくれるお店の方もいますね。

 

酒缶 でも、最近はチャンピオン、というか名人じゃないですか。話は変わりますけど、御社の『LSD』(※6)ってプレミアが付いてますよね。

 

(※6) 『LSD』 1998年に発売された、夢の世界をさまようドリーム・エミュレーター。2010年8月よりゲームアーカイブスで配信されている。 

 

和田 『LSD』はPS1の時代によく見られた、アーティスティック(?)志向の匂いのするゲームですね。あまりに前衛的すぎて地方に営業に行ってお見せすると、完成しているのに「開発何パーセント?」と言われてしまうという……。夢の中を歩き回るソフトなんですけど、「こんなのゲームじゃない」がキャッチコピーという、今考えるとすごい打ち出し方ですよね。案の定、トンがりすぎていて発売時は売れませんでした。そのため、「すごいゲームだったらしい」と噂になり、ちょっと前までは中古がメチャクチャ高騰してましたね。ついこないだPSストア(※7)に出したことによって、中古価格はかなり下落していると思うんですけど。

 

(※7) PSストア プレイステーションストア。プレイステーションネットワーク内にある、プレイステーション3やプレイステーションポータブル向けのダウンロードコンテンツを購入できるサービス。 

 

酒缶 ただ、コレクターってモノが欲しいからパッケージが欲しい(※8)んですよね。

 

 

(※8) コレクターってモノが欲しいからパッケージが欲しい モノがあるから優越感に浸れる、パッケージや取扱説明書があるから印刷された絵や文章を楽しめる、など、遊ぶ以外にも欲しい理由がいろいろある。

 

和田 当時、とある地方の営業先でバイヤーさんがこのソフトを無言で一通りプレイして、コントローラをコトリと置き、言った一言が忘れられません。「和田君、ゲームの文化の中には、こういうソフトはあってもいい。いやもっと言うと、必要かもしれない。……ただ、御社がやる必要はないんじゃないかな?」と。何も言えませんでしたね、営業なのに(笑)。こういうチャレンジングなのは大手に任せておけということだったんでしょうね。当時のアスミックは奇抜なタイトルが多く、出すたびにチャレンジ、チャレンジ、チャレンジみたいな状態だったので「大丈夫かい?」という親切心からだと信じてますけど。

 

酒缶 『情熱熱血アスリーツ』(※9)とかもチャレンジですよね。でも、美少年とかだったら今頃モバイルとかに出ていたかもしれないのに。

 

(※9) 『情熱熱血アスリーツ』正式名称は『情熱☆熱血アスリーツ ?泣き虫コーチの日記(ダイアリー)?』。プレイヤー演ずるコーチも育てる選手もみんな男という、ある意味硬派な育成シミュレーションゲーム。

 

和田 『情熱熱血アスリーツ for モバイル』とか……厳しいですね(笑)。

 

次回の更新は、6月7日(火)の予定です。

 

2011年6月3日 12:29