【星野光弘氏】3.卒業してもゲームを作れない
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今回のゲスト:星野光弘氏
ランカース代表取締役。制作に関わったタイトルは『BUBBLE BOBBLE DOUBLE』(iPhone)、『ワイズマンズワールド』、『ジュエルペット』シリーズなど多数。
酒缶 御社って、『世界樹』(※1)にも関わっているじゃないですか?
(※1) 『世界樹』 正式名称は『世界樹の迷宮』。2007年にアトラスがニンテンドーDS向けに発売したダンジョンRPG。シリーズは3まで発売されていて、ランカースは2までの開発に関わっている。
星野 『世界樹』に関わって一番ありがたかったのが、アトラスさんと開発ができて、アトラスさんの技術力、ノウハウを少しでも見ることができたこと。僕はそれまでRPGを作ったことがなかったので。
酒缶 御社はアクションゲームのイメージが強いですよね。
星野 はい。まあ、アクションの方は自分でも大好きで色々とわかるんですけど、逆にRPGをやるようになってから、不思議なことに他の方からはRPGの会社に思われるようになっているんですね。
酒缶 あと、御社が関わっているタイトルにはMTOさん(※2)のタイトルも多いじゃないですか?
(※2) MTOさん エム・ティー・オー株式会社のこと。公式サイト http://www.mto-power.com/
星野 はい。
酒缶 サンエックスのタイトルはDSでは3本出ているんですけど、御社が開発したタイトルは2本。
星野 『キャラさがしランド』(※3)と『サンエックスチャンネル』(※4)を作ってました。
(※3) 『キャラさがしランド』 正式名称は『サンエックス キャラさがしランド』。2007年にエム・ティー・オーがニンテンドーDS向けに発売したまちがいさがし&コレクションゲーム。公式サイト http://www.mto-power.com/character/charasagashi/
(※4) 『サンエックスチャンネル』 2008年にエム・ティー・オーがニンテンドーDS向けに発売したテーブル&コレクションゲーム。公式サイト http://www.mto-power.com/character/sanxchannel/
酒缶 あと、最近だと『ジュエルペット』シリーズ(※5)がありますけど、音ゲーですよね。
(※5) 『ジュエルペット』シリーズ 2009年にエム・ティー・オーがニンテンドーDS向けに発売した魔法リズムアクションゲームとそのシリーズのこと。3作目は「ふれあいコミュニケーション」。
星野 『ジュエルペット』が元々音ゲーと関係する舞台なのかというと、そうではないんですよ。うちでちょっと音ゲーをやってみたかったので、混ぜてみたんです。
酒缶 わりと女の子タイトルの中で音ゲーというスタンスは多いですよね。コナミさんの『きらりん☆レボリューション』(※6)とか。でも、MTOさんのタイトルって、御社の他のタイトルとイメージが違いますよね。同じ方が作っているんですよね?
(※6) 『きらりん☆レボリューション』 「ちゃお」に連載されていた漫画が原作で、テレビ東京系列でアニメが放送された『きらりん☆レボリューション』のこと。KONAMIからニンテンドーDS向けに6本のソフトが発売されている。
星野 同じ人が作ってます。例えば『影之伝説』のディレクターが『ジュエルペット』もディレクションをやってますし、『影之伝説』でボスキャラのプログラマーが、『ジュエルペット』で普通にプログラムをしていますね。
酒缶 『仔犬でくるりん』(※7)はアドバンスの頃からありますよね。『お茶犬』とかで(※8)。
(※7) 『仔犬でくるりん』 2008年にエム・ティー・オーがニンテンドーDS向けに発売したアクションパズルゲーム。公式サイト http://www.mto-power.com/petseries/koinudekururin/
(※8) 『お茶犬』とかで 2004年にエム・ティー・オーがゲームボーイアドバンス向けに発売したアクションパズルゲームの『お茶犬くるりん』のこと。公式サイト http://www.mto-power.com/ochakenseries/ochakulu/
星野 さすがですね。
酒缶 知ってますよ。そうそう、『KURURIN FUSION』(※9)もやってますよね。植松さん(※10)が関わっている。
(※9) 『KURURIN FUSION』 2009年にエム・ティー・オーがプレイステーション・ポータブル向けに発売したアクションパズルゲーム。ダウンロード専用タイトル。公式サイト http://www.mto-power.com/variety/KURULIN-FUSION/
(※10) 植松さん 植松伸夫氏のこと。株式会社ドッグイヤー・レコーズ代表取締役。『ファイナルファンタジー』シリーズ他、沢山のゲーム音楽の作曲を手掛ける。
星野 はい、植松さんに協力を頂きました。『KURURIN FUSION』はアーケードゲームっぽいイメージで作っています。
酒缶 『ルミネス』(※11)のようなイメージなんですけど。
(※11) 『ルミネス』 2004年にバンダイ(現バンダイナムコゲームス)がプレイステーション・ポータブル向けに発売したアクションパズルゲーム。公式サイト http://www.bandaigames.channel.or.jp/list/lumines/
星野 少し雰囲気が似ていますね(笑)。
酒缶 で、御社のプロジェクトを遡っていくと、最初の方はケータイのタイトルが目立つじゃないですか。最初はケータイから始まったんですか?
星野 実は一番最初はDSのタイトルの開発に着手していて、コンシューマの開発ありきだったんですけど、それだけでは会社が回らないので、当時お付き合いのあった会社さんからケータイアプリの仕事を受けてました。でも、心の中でコンシューマをやりたいわけですよ。なので、適度なところで見切りをつけて、ずっとコンシューマをやっています。ケータイアプリの開発は、いい経験にはなりましたね。
酒缶 2004年に会社を設立されていて、その時って、大体26歳くらいですか?
星野 そうですね。26くらいの時ですね。
酒缶 学生時代から会社設立までの話をお聞きしたいのですが?
星野 はい。専門学校に行ったのですが、あまり就職とかしたくなくて、一切就職活動をしなかったんです。それで何にもしないでぶらぶらとしていたんです。
酒缶 20歳くらいですか?
星野 そうですね。21くらいかな? 僕は大学を1年行って中退しているので、普通より1年上なんです。
酒缶 その辞めた時は特にゲームを作りたいとかなかったんですか?
星野 ちっともないですね。全然ないです。自分には作りたくても作れないと思っていたんですよ。
酒缶 なにがあったんですか?
星野 (笑)なにがあったんでしょうね。で、まぁ、作れないんですよね。専門学校に行っていたので、プログラムはある程度わかるんですけど。
酒缶 通っていた専門学校は、ゲームの専門学校だったんですか?
星野 それっぽいところに入ったんですけど、実際にはゲーム開発のことをあんまり教えてくれるところではなくて……。
酒缶 プログラムとか技術系の学校ですか?
星野 そうですね。
酒缶 でも、専門学校は卒業したんですよね?
星野 そこは何とか卒業しました。でも、そこを卒業しても正直ゲームを作ることができる技術力は身につかなかったんですね。で、就職もできず、なぜか「音楽でご飯食べれたらいいな、音楽をやっているとかっこいいな」と思っちゃったんです。
酒缶 音楽は何かやっていたんですか?
星野 いや、特に何かできるってレベルじゃないんですよ。それで結局何も進展しないまま、いい加減何もしないのはまずいとなって。
酒缶 何ヵ月くらいですか?
星野 何ヵ月だったかな? 4ヵ月とか5ヵ月とか。どんどん時間が経っていくので、「せめてバイトしよう、フリーターにならなきゃいけない」と思って、秋葉原のゲームショップでアルバイトを始めたんです。
酒缶 はい。
星野 そこは夢のようなところで、いつも慣れ親しんでいるゲームが沢山あるので、楽しいですよね。ゲームが好きな仲間が集まるし、何よりも秋葉原だし。そこでずっと染まっちゃうんですよね。そこから抜け出せない状態が数年間続きます。
酒缶 その時は、ゲームには携わっているけど、あくまでも販売。
星野 販売ですね。
酒缶 で、何年か続くと、普通だったら正社員になるとか……。
星野 そこで正社員という選択肢はないんですけど。
酒缶 ないんですね。
星野 その選択肢がないようなお店だったので、ま、とにかくゲームが増えていくんですね。毎月……。
酒缶 増えていくというのは? どんどん買っちゃう?
星野 そう。働いて貯めたお金が全部そのゲームショップに還元されるんです。だから毎月40本、50本のペースでゲームが増えていくんですよ。「これはちょっと押さえておこう」とか「珍しいものがあると2個買っておこう」とか、ジャガー(※12)のコントローラーのような掘り出し物が出てくると、「とりあえず押さえておくか」とか「サターンも壊れたときのために取っておこう」とかやっているうちに増えていくんです。
(※12) ジャガー 正式名称は「アタリ ジャガー」。1993年にアタリが発売した家庭用ゲーム機。日本では輸入ゲームを取り扱っている店でしか販売されてなかったため、秋葉原以外ではなかなか見かけなかった。
酒缶 今のところ、全く、開発の方に一歩も足を踏み入れてないですよね。
星野 全くないですね…。
次回の更新は、10月7日(金)の予定です。
2011年10月4日 17:44