プロフィール
中村彰憲

立命館大学映像学部 教授 ・学術博士。名古屋大学国際開発研究科後期課程修了 早稲田大学アジア太平洋研究センター、立命館大学政策科学部を経て現職。 日本デジタルゲーム学会(DiGRAJapan)会長、太秦戦国祭り実行委員長 東京ゲームショウ2010アジアビジネスフォーラムアドバイザー。 主な著作に『中国ゲームビジネス徹底研究』『グローバルゲームビジネス徹底研究』『テンセントVS. Facebook世界SNS市場最新レポート』。エンターブレインの ゲームマーケティング総合サイトf-ismにも海外ゲーム情報を中心に連載中。

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KINECTの新展開、PS Vita、そしてWii Uから伺える11年度のゲームシーン

 連日の熱狂ぶりが数々の実況中継で如実に伝わってくるE3。6月6日より始まったプラットフォームホルダー各社によるプレスカンファレンスを、筆者は自宅から確認することが出来ました。そこから感じた率直な意見を述べたいと思います。

You’re a controllerの発想をリビングルーム・エンターテインメントへと拡大させたマイクロソフト社


 3大プラットフォームの中で唯一、ハードに関する情報がなかったマイクロソフト社(以下、MS)。とは言いながらも自身に満ち溢れた発表内容はソフトウェアサービスこそが、同社の真骨頂であると示そうとするかのようでした。

 

 カンファレンスにおいて前面に押し出されていたのが、KINECTに対応したビックタイトル群とリビングルームエンタテインメント。You’re a controller(あなたがコントローラ)という概念を少なくとも欧米市場に対しては浸透させたという自負とともに、「よりクリアな音声認識」やボディ・スキャン、フィンガー・トラッキングといったKINECT関連の最新技術の紹介並びに、Xbox Bingによる高度な検索機能をダッシュボードに統合することを示したうえでこれらのテクノロジーがより広域の娯楽用途で使用可能であることをアピールしました。更に米国、欧州、豪州の大手テレビ局との連携も発表。

 

 Xbox Live TVは、KINECTの音声認識で、リモコンを使用せずとも様々な番組まで視聴出来るようになるのです。現在開発中であるWindows8では、タッチ機能をインターフェイスにおいて汎用的に活用することを明らかにしていますが、「くつろぎ」が必要であるリビングルームにおいては、人間行動においてより自然な「身振り手振り」と「声」のインターフェイス化を提案する姿勢にMSの次世代コンピューティングライフに対するただならぬ想いを感じることが出来ました。

 「ゲーム機」であることを明確に伝えゲームファンの心をつかんだ PS Vita  

 一方、ソニーコンピュータエンターテインメント(以下、SCE)は、『アンチャーテッド 砂漠に眠るアトランティス』や『レジスタンス3』のデモを皮切りに、SCE独占タイトルやサードパーティによるトップタイトルを数多く紹介し、プレイステーション3(以下、PS3)の安定感を示すと同時に、新携帯型ハード、プレイステーション VITA(ヴィータ、以下、PS Vita)を猛プッシュ。

 

 Wi-Fi対応機が24800円である発表されたとき、会場から大きな拍手と喝さいが沸き起こりましたがこれはPS Vitaが高機能・多機能でありながら価格がリーズナブルだと多くの人たちが感じた証でしょう。また、『リトルビックプラネット』シリーズや、『アンチャーテッド』シリーズなどSCE大型独占タイトルやサードパーティのビックタイトルが軒並みPS Vitaに「集結」するという強烈なメッセージを発しました。

 

 コミュニティエンターテインメントデバイスとしての機能を兼ね備えながらもプレイステーションポータブル(以下、PSP)の正当な後継機種という位置付けを敢えて強調した発表は、スマートフォン・タブレットデバイスの隆盛とともに溢れかえるカジュアル・ソーシャルゲーム群の波に若干食傷気味となっているゲーマーのニーズに見事に応えたと言えます。

液晶付きコントローラは「Wii U」がもたらす高機能ハードならではの「ゲームある日常」をテレビモニターから解放する


 今年のプレスカンファレンスで最も注目されたのは任天堂であったと言っても過言ではないでしょう。『ゼルダの伝説』シリーズ25周年をアピールすることからはじまったカンファレンスはここ数年のカンファレンスと変わらないアットホーム出だしでした。ですが、岩田聡社長が提示した「より深いゲーム体験」に関する説明あたりから、矢継ぎ早に新情報が明かされていきました。

 

 そして、任天堂「Wii U」用液晶パネル付きコントローラが発表された時、観衆の拍手と声援も最高潮に。「より幅広く、深く」といったコンセプトが表しているように実に多くの新作品が任天堂、サードパーティ双方から提示されました。また、『Wii Fit』といった作品での使用例は、テレビモニターから解放された「ゲームある日常」の革新性を改めて示しました。これは、MSがKINECTの「機能」のみを、テレビ中心のリビングルーム・エンターテインメントに応用していたのとは対照的です。液晶を中央に挟んでのインターフェイスは恐らく既に多くの人が携帯ゲーム機のコントローラインターフェイスに馴染みがあることを前提にデザインされたのでしょう。また、「Wii U」対応のWiiの間が如何に刷新されるのかも気になります。

 

 ですがやはり気になるのは値段。コスト面から考えるとハードに同梱されるのは、おそらく液晶モニター付きコントローラ1体のみでしょう。任天堂ゲームの強みともいえるパーティゲームをするときには、改めてコントローラを購入しなければならないのでしょうか?それともWiiリモコンさえあれば充分補完出来るのでしょうか?スマートフォンの需要増加による液晶パネル部材のコストダウンを鑑みても安価な提案が困難であると想定されることが懸案事項として残ります。

 各社各様の戦略に見え隠れする第四勢力に対する強烈な対抗意識


 以上のように今回のプレスカンファレンスは各社各様の強みを明確に示した発表内容となっていました。これは恐らくそれぞれの企業が第四勢力の台頭を明確に意識したうえでそれぞれが自社の持つ競争力を改めて精査した結果と言えます。その第四勢力とはAppleやAndroid連合によるスマートフォン、タブレットデバイスメーカー群です。AppleがiPhone4を最も早く売れた携帯ゲーム機としてギネスブック登録していることから、これらの勢力もゲーム市場を強く意識しているのが伺えます。

 

 現段階においても、これらのデバイスはゲームのカジュアルユーザー層の心を確実に捉えはじめています。そしてゲーム性そのものが訴求力と感じられない人たちにとっては、これらのデバイスが提供するゲームさえプレイできれば、「ゲームに対する需要」も充分満たしてしまうのです。スマートフォンやタブレットデバイスは、生活支援機能そのものが訴求力になっているため窓口が広い分、ゲーム機メーカーにとって対抗しにくい相手とも言えます。だからと言ってゲーム機に生活支援機能を追加すると焦点がブレてしまう。結果的に今回、それぞれの立場から明確に意識したのが「ゲーム性」を確実に商品力と見なしてくれる層です。

 

 MSはKINECTのゲーム性を如何に発展させているかを、SCEは、PSP Vitaを、そして任天堂は、Wii Uにおいてコントローラの付属液晶モニターを「ゲーム性の一部とする」ことを新たに提示することでゲームファン層に対して訴求しました。

 

 ただしこれらの層もゲーム+αを求めており、その+αの部分の提案も各社各様になっていたのは本稿でも紹介した通りです。ですがハードの爆発的ヒットのためにはカジュアル層の巻き込みが必要なのも事実。そのための次なる展開の優劣が、これからのゲーム市場においてトップシェアを獲得するうえでの鍵となってくるでしょう。ただ第四勢力ありきの現在は「まずゲーマー層のシェアを確実に抑えること」が最優先課題となりそうです。

2011年6月10日 15:12