プロフィール
中村彰憲

立命館大学映像学部 教授 ・学術博士。名古屋大学国際開発研究科後期課程修了 早稲田大学アジア太平洋研究センター、立命館大学政策科学部を経て現職。 日本デジタルゲーム学会(DiGRAJapan)会長、太秦戦国祭り実行委員長 東京ゲームショウ2010アジアビジネスフォーラムアドバイザー。 主な著作に『中国ゲームビジネス徹底研究』『グローバルゲームビジネス徹底研究』『テンセントVS. Facebook世界SNS市場最新レポート』。エンターブレインの ゲームマーケティング総合サイトf-ismにも海外ゲーム情報を中心に連載中。

最新エントリー

話題にしたゲーム

タグ

月別アーカイブ

最近のコメント

2014年のゲーム業界、トレンドは「ゲーム」というものの領域の拡大

2014年のゲーム業界、トレンドは「ゲーム」というものの領域の拡大

 

 

今年の年末年始は全てを返上して、ゲーム、映像関連のリサーチ。

結果につながればいいのですが…。

 

 

 2013年、海外では新世代機が年末に脚光を浴び、コアユーザー層の厚みをあらためて示す形となった。一方、日本においては、スマートフォン、タブレット向けゲームの躍進とインディーズゲームの台頭が進みながらも、「ポケットモンスター」シリーズや「モンスターハンター」シリーズの最新作がそれぞれ300万本を突破し、そのブランド力を改めて見せつけた。また、家庭用ゲーム機向けソフトのトップは、「グランド・セフト・オートV」の60万本で、いわゆる「洋ゲー」の大作ソフトがトップを飾ることとなった。現在、国内映画業界は邦画の興行収益が高く、洋画が低いという傾向を邦高洋低と表現しているが、まったく逆の現象が家庭用据え置き機の市場で起こりつつあるようだ。

 ただ、携帯ゲーム機向けゲームの成功があまりにも大きく、その影になって見えにくいという実情もある。年初の寄稿である本稿は、これらを意識しながら、今年の国内ゲーム業界のトレンドを以下のとおり占ってみた。

 

 

 新世代機でさらに拡大する洋高邦低現象
 
 今年はいよいよ、プレイステーション4(以下、PS4)の発売を2月に控えている。海外での評価も上々で、昨年末までに全世界で、400万台のハード、940万本のソフトを販売したとのリリースが流れた。年内の販売が約束されているXbox Oneも、昨年全世界で300万台を達成し、まずまずの滑り出しというところだろう。ただし課題は残る。人気ソフトに、Activisionの「Call of Duty Ghost」や、Ubisoftの「Assassin's Creed IV Black Flag」といった欧米大手ゲームパブリッシャーのAAAタイトルが軒並み並んでいたということだ。確かに、カプコンの「Dead Rising 3」が100万本突破するなど健闘しているのに加え、日本におけるPS4ローンチタイトルにおいても、「龍が如く維新」をはじめ期待作がいくつか見られるものの、主力は欧米パブリッシャータイトルという印象が強い。何よりユーザー層、とりわけコアユーザーの動向が明らかに変わりつつある。PS2ローンチ時、「洋ゲー」は明らかに劣勢の状況にあった。ファースト・パーソン・シューティングゲームなども「3D酔い」に耐えられないなどと言われていたのだ。

 

 だが、欧米ユーザー層による圧倒的な支持のもと、これらの作品はどんどん改善されていった。そしてついにPS3ローンチ時には既に国内ゲーマーが感じていた課題は解消され、あとはいつその面白さがユーザーに伝わるかの問題となっていた。ここで重要な役割を果たしたがソーシャルメディアの台頭だ。特にゲーム実況は「グランド・セフト・オート」シリーズや、「コール・オブ・デューティ」シリーズなど、欧米大手のAAAタイトルの面白さをまざまざと見せつけた。それが数字の形となって見えてきたのが昨年における「グランド・セフト・オート V」の大ヒットと言えるだろう。PS4はそういったユーザー層の意識の変化が顕在化したタイミングでローンチを迎えることとなる。


 2014年、Xbox One発売時の戦略商品は、恐らくエレクトロニックアーツの「Titan Fall」になるだろう。PS4の場合はコナミによる「メタルギア ソリッド V グラウンド・ゼロズ」がその役割を果たすだろうが、ローンチ時は、「KILLZONE SHADOW FALL」や、前述の欧米タイトルも主要な役割を果たすに違いない。結果的に欧米タイトルの強さこれまで以上に実感できる1年になる可能性がある。

 

 

 

「クラッシュ・オブ・クラン」は世界を席巻し、

ソフトバンクグループによるスーパーセル買収は世界中で話題となった

 

 

スター・インディーズ・ゲーム・デザイナーの台頭

 昨年は例年以上に、インディーズ系のゲームデザイナーが脚光を浴びた。また、既にゲームクリエイターと名を馳せていた稲船敬二氏や、飯田和敏氏が「インディーズ」として、クラウド・ファンディングを通じ、ファンから資金調達するなど、これまでのトップクリエイターもこの時代の流れに合わせた展開を進めてきた。今年は、それが更に発展し、スマートフォン、タブレッドで人気コンテンツを開発したインディーズのデザイナーがスターとして扱われる時期を迎えていると考えられる。欧米では既にこのような形で個人や小規模の開発チームが注目されてきたが、今年は前述のようなトップクリエイターに続く形で新鋭クリエイターが注目されるのではないか。実況プレイヤーの役割もインディーズとともに拡大する可能性が高く、そのような相互依存関係が確立されるかもしれない。


ゲームそのものの領域の拡大

 昨年、「Oculus Rift」がゲーム業界関係者にあたえた衝撃は、一般のひとたちにも充分伝わったのではないだろうか? ソニーはウェアブルHDTVをうたったHMZ-T3Qを発表している。また「Half Life」シリーズや「Portal」シリーズ、さらには、ネットワークゲームポータルサービス、「Steam」で知られるValveもVRデバイスを開発中とのこと。こういった、動向は、従来「軽薄短小」を得意分野としていた国内家電メーカーは充分注目していることだろう。特にこれまで、VR/MRシステムで先行していたキヤノンの動向が気になる。いずれにしても、この分野がここ数年の新たな戦場になるのは間違いない。

 

 これに加え、KINECTが標準搭載されているXbox Oneが昨年リリースされ、映画「ゼロ・グラビティ」でのゲーム的没入感の映像表現での応用は、海外の批評家の中でも話題となっている。とりわけ、4Dシネマではその効果が顕著のようだ。つまり、ゲーム、またはゲーム的要素を正面から捉えうる新たな領域の拡大は今年も着実に歩みを速めると考えられるのだ。
 

「パズル&ドラゴンズ」、次のステップへ

 

 

「パズル&ドラゴンズ」フランチャイズのグローバル戦略が最も注目される

 


 筆者が昨年、最も注目したのは「パズル&ドラゴンズ」(以下、「パズドラ」)だったが、2014年も引き続き、話題に事欠かない作品となりそうだ。なにより、年末において、「パズドラZ」が販売本数100万本を達成したことが大きい。モンスターコレクション系RPGゲームにおいては、「ポケットモンスター」(以下、「ポケモン」)シリーズを除くと「ドラゴンクエストモンスターズ テリーのワンダーランド3D」が190万本強を達成しているが、今後は、それに肩を並べられるか否かが注目される。何より驚かされるのは、「パズドラ」がシリーズとして既に親子のコミュニケーションツールとしての役割を果たしている点だ。ここまで早々に二世代が楽しめるコンテンツへと成長した作品はこれまでほとんどなかったのではないか? これに加え、14年は、スクウェア・エニックスとのコラボレーションによるアーケード版がリリース予定。こちらも、ゲーム的要素のコアはそのままに、明確なコンセプトをもってアーケードゲームのユーザーへの最適化を意識した差別化を試みているように見受けられる。

 課題は、グローバル展開だろう。既にグループ会社となっている、スーパーセルが実現したような、「クラッシュ・オブ・クラン」級のグローバル・プレゼンスを、同作品がどこまで実現するかが注目される。その鍵は、マルチメディア展開だろう。これまで、日本製パズルゲームというのはいくつか世界で展開されてきたが、アクションゲームや、RPG程の成功を収めてきたものは少ない。(「数独」はその例外とも言えるが、これは日本企業によるものではない)つまり、パズルをパズルとしてではなく、物語世界における「バトル」の一環として自然に示すことが出来るかがブランドの浮沈のカギを握る。そのような意味でも「アニメ化」は最重要課題となる。そこで示される世界観において、如何にパズル的要素が「物語の一部」として溶け込んでいるのか。

 

 どこに子供たちがアニメを視聴した後、その世界でのバトルを模倣するつもりで、ゲームのパズルに触れるのか、といった点が、ゲームをその手にとるか否かの決め手となる。こういった、マルチメディア展開は、既に「パズドラ」的ゲームシステムを忠実に踏襲した別ゲームが席巻しているアジアにおいても有効に働くだろう。ゲームシステムは模倣出来ても、「オリジナルの世界観」までをコピーすることは不可能だからだ。いずれにしてもグローバル的成功と言う視点では、「パズドラ」ブランドにとって今年が勝負の年と言えるだろう。

2014年1月23日 15:53