ポスト「コンプガチャ」のソーシャルゲーム業界はどこにいく?
ポスト「コンプガチャ」のソーシャルゲーム業界はどこにいく?
読売新聞による5月5日付けの記事「コンプガチャは違法懸賞、消費者庁が中止要請へ」は、国内株式市場に「激震」と表現してもいい程の大きな影響を与えました。他の大手メディアもこの報道を追随し、結果、読売新聞5月10日の報道によると、9日の終値において、GREEとDeNAの株の時価総額があわせて2300億円も下がったとのことです。
この他ソーシャルゲームで躍進してきた企業も軒並み株安に転じたことから、これらを総じて「コンプガチャ」ショックと各種媒体は報じました。ただ、ここからの各大手ゲームプロバイダーによる迅速な対応に、皆、驚かされたのも事実です。前述のゲームシステムが社会問題に発展するかに見えた矢先の9日、ソーシャルゲームプラットフォームプロバイダや、ソーシャルゲーム開発スタジオ大手6社が「コンプガチャ」中止を発表。他社もこれに追随し、コンプガチャシステムは日本のソーシャルゲームシーンから一掃されそうな勢いです。
早速、これらに合わせいくつかのゲームではゲームサービス上に新たな規約やシステムが設けられました。例えば『探検ドリランド』の場合、「ハンターガチャ」の最後尾には、囲みのような注意書きが追加されていました
注意事項
・出現確率は、ハンター毎に異なります
・ガチャで出現するハンターに更新がある場合をのぞき、
出現率が変更することはありません。
・ガチャで出現するハンターに更新がある場合は、告知を行います。
・ガチャで出現するハンターは、重複する場合があります
・ガチャの特性上、すべてのハンターを揃えられない場合があります
更に、各ガチャごとに、どのクラスのハンターが何種類出現する可能性があるのかも確認出来るようになっています。
どのキャラクターが登場するのかわかりやすくなった。
この対応で全てが解決したとは言えませんが、大手メディアにより問題として扱われてから1週間でゲームサービスそのものに、これだけ迅速に改変を加える事が出来るという点がソーシャルゲームの本質を表しています。
つまり、ネットワークゲームは、家庭用ゲーム機とは根本的に違うビジネスであること、更にどちらかと言えば「商品を取り扱っている」というよりは「サービス」であるということ。ソーシャルゲームもオンラインゲームである点では同様なので「製品」ではなく「サービス」であるという認識のもとに運営をしてきた企業が圧倒的であろうということです。GREEの田中良和社長は以前よりソーシャルゲームのプラットフォームをテーマパークに例えていたことからそれは明らかです。
更に言えば、会社の規約においてもそれを明示しています。サイト内に存在するコンテンツは、全て「利用権」を得て、アクセスしているのであって、「所有権」を得ている訳ではないのです。特にGREEの規約はその点を更に分かりやすいのでここで引用しましょう。
ユーザーに対して提供されるサービスのうち、「ゲットする」「買う」「購入する」等の表示がなされている場合でも、ユーザーはサービス内で定められた範囲の利用権を有するのみであって、所有権、知的財産権等の権利を取得するものではありません。
ユーザが得ているのはサービスを利用する権利。
つまり「ガチャ」で「ゲット」したアイテムや、キャラクターは、数千円、数万円をつぎ込んだ場合も「サービス内で定められた範囲の利用権」を得たという解釈になります。 とはいいながらも、スマートフォンもこれまで以上に低年齢層にまで浸透することでしょう。ソーシャルゲーム業界も『探検ドリランド』のアニメ化を皮切りにソーシャルゲームのキャラクターや世界観をシードとしたマルチコンテンツの展開は更に進みそうです。同時に、少年誌やアニメなどで人気のキャラクターもソーシャルゲームとなりました。そしてその流れは加速することでしょう。
これらは、従来の20代?30代などの大人たちだけでなく、若年層や低年齢層に対しても訴求力を発揮するのは必至です。つまり、従来以上に、低年齢のひとたちがソーシャルゲームにアクセスする可能性が高くなるということです。そのような中、コンプガチャ排除以外に、如何なる対応をすることで、前述のような低年齢層も快適に楽しんでもらえるサービスとなるのか?今後はそれらが真剣に議論される時期が来たのかもしれません。
2012年5月17日 15:41