プロフィール
中村彰憲

立命館大学映像学部 教授 ・学術博士。名古屋大学国際開発研究科後期課程修了 早稲田大学アジア太平洋研究センター、立命館大学政策科学部を経て現職。 日本デジタルゲーム学会(DiGRAJapan)会長、太秦戦国祭り実行委員長 東京ゲームショウ2010アジアビジネスフォーラムアドバイザー。 主な著作に『中国ゲームビジネス徹底研究』『グローバルゲームビジネス徹底研究』『テンセントVS. Facebook世界SNS市場最新レポート』。エンターブレインの ゲームマーケティング総合サイトf-ismにも海外ゲーム情報を中心に連載中。

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中国浙江省杭州で開催されるコンテンツの祭典に参加しました!

中国浙江省杭州で開催されるコンテンツの祭典に参加しました!

 


 前回の北京に続き、今回は杭州市です。同地で第8回国際動漫節が開催されているからです。今年は、国際動漫展示会などを含めた本会場を新たに建設された白馬湖動漫館へと移行させると同時に、各種討論会など開催する7つの会場で50以上のイベントが行われました。61カ国からコンテンツ関連業界の人たちが招待されるとともに一般客も含め総勢208万人を動員したコンテンツ産業関連においては世界でも最大規模のイベントであると言えるでしょう。

 

 中国でこういった数値を発表する際、若干数字を誇張する傾向にありますが、それでもアジア最大規模であることは、様々な展示会に参加した筆者が本会場に足を運んだだけでも実感することが出来ました。本会場では、二つのビル、全フロア使用し、「企業・産業集積拠点・大学」といった様々な団体がそれぞれの視点からブース出展をしていました。ターゲット層はおそらく小中学生。確かにハイティーン層以上から、30代程度までをターゲットに想定しているコスプレショーも開催されましたが、会場内で行われているほとんどのイベントは小学生から中学生初頭が対象のものばかり。

 

 このような中、特に高年齢層まで評価されていたように見受けられるコンテンツがいくつかありましたので紹介していきましょう。

『秦時明月』 ユーザを常に巻き込み中国国内において最大規模のファン層を獲得
 


 『秦時明月』シリーズは、秦の始皇帝の時代から漢朝成立までの混沌とした時代のファンタジー小説を原作としたアニメ。史実にある程度寄り添いつつも大胆に独自の解釈を加え、武侠、ロボットなど様々なSF、ファンタジー要素を加えたのが特徴。07年に第一部が製作、リリースされ国内外で数々の評価を受ける中、杭州国際動漫節における積極的なプロモーション展開で認知度を高め、中国各地で数多くのファンクラブが創出。その全てが非公式だったものの、ファンの熱意に感銘を受けた制作スタジオStarQのRobin氏はこれら全てをサポートしていくこと表明し、同社の広報素材などの活用を容認しました。

 

 また、特にすぐれたファンアートや、ファンによるコスプレを公式ブックとして販売するなど、相互依存関係が生まれています。既にコミカライズ、SDマンガ化、玩具化、その他数々のグッズを展開する中、最新作である第四部からはウェブ配信を他のメディアに先行して進めていく事を決定。その独占配信権をめぐって複数のウェブ動画共有、配信サイトで熾烈な争いが繰り広げられた結果、1500 万元で、土豆(中国動画サイト)が権利を獲得したのです。  


 今回ブースでは最新作である『秦時明月』のトレイラーが公開され、多くの人が初めて公開された新作に見入っていました。ただ圧倒的に人気があったのが作品をモチーフとしたコスプレショー。アニメの1シーンを演技するのですが多くの人がその様子を写真で収めていました。現在中国では青少年向けのアニメがほとんど存在しないということもあり同作が今後もしばらくの間その人気を維持するのは間違いないでしょう。



『ワンピース』や『機動戦士ガンダム』も大人気。規制の中でも日本コンテンツの人気は健在

 

 

 ここ数年は100万人の集客を維持しているということもあり、日本のアニメも数多く出店していました。もっとも版元がそのまま出店するというよりは代理店が出しているのがほとんどのケース。海賊版渦巻く中、このような場所では正規版が購入出来るのも来場者にとっては意義があるようです。国際動漫節の中で特に人気だったのが、『ワンピース』と、『機動戦士ガンダム』シリーズの公式販売店。それぞれ同作品の動画上映とともに様々な公式グッズが販売され、そこは多くの人たちでごった返していました。中国もずいぶん豊かになり、海賊版では満足しきれないひとたちが増えているように感じられます。これからは、正規版を購入し、それをみんなに自慢するような時代になっているかもしれません。

2012年5月8日 09:33