プロフィール
中村彰憲

立命館大学映像学部 教授 ・学術博士。名古屋大学国際開発研究科後期課程修了 早稲田大学アジア太平洋研究センター、立命館大学政策科学部を経て現職。 日本デジタルゲーム学会(DiGRAJapan)会長、太秦戦国祭り実行委員長 東京ゲームショウ2010アジアビジネスフォーラムアドバイザー。 主な著作に『中国ゲームビジネス徹底研究』『グローバルゲームビジネス徹底研究』『テンセントVS. Facebook世界SNS市場最新レポート』。エンターブレインの ゲームマーケティング総合サイトf-ismにも海外ゲーム情報を中心に連載中。

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2012年のゲームシーンで注目するべきポイントとは


▲年末、日本のポップカルチャーに関する講義で訪問した台南で撮影したカジュマルの木。

 2012年になりました。辰年である今年のゲームシーンはどのような形勢を見せるのでしょうか? 2011年最初のエントリーで、筆者は、ソーシャルゲームの台頭を最も注視すべきとしていたのですが、2011年を改めて振り返ると、「東京ゲームショー2011」におけるグリーとコナミによる『ドラゴンコレクション』など、ソーシャルゲームサービス関連の出展は、既存の参加者層とは違った多くの人たちを動員する要因となりました。

 

 結果的に過去最高の動員数を実現する上での起爆剤になったと言えます。では、2012年は一体どうなるのでしょうか? 2012年で押さえるべき動きは何なのか筆者なりに言及していきたいと思います。

ソーシャルゲームプラットフォームの更なる発展と顕在化する課題


 前述のように、2011年はこれまでゲーム専用機を中心に活躍してきた大手ゲームパブリッシャーも、ソーシャルゲームプラットフォームで顕著な成功を収めてきました。2012年は昨年度のパフォーマンスをふまえ、更に多くのソーシャルゲームプラットフォーム向けタイトルがリリースされ、多くの人を魅了することになるでしょう。ただ同時に留意すべきなのがこれまで以上に多くの人がアイテム課金という課金システムをはじめて経験することになるだろうということです。

 

 韓国や中国ではゲーム産業の飛躍的発展と同時に同課金システムを巡るトラブルなどもいつくか報告されています。ソーシャルゲームとアイテム課金とともに更なる広がりを見せる前にゲームパブリッシャーは改めてアイテム課金に潜む脆弱性を確認し、ユーザー側に誤解を生じてしまう可能性をあらかじめ排除しておくことが望ましいでしょう。

 

ゲーム開発者人口の拡大と進化

 

 スマートフォンから家庭用ゲーム機まで幅広いプラットフォームに対応するUnity Technologiesは多くの人たちをゲーム開発へと誘う事となりました。Kinectはリリースと同時に世界中の研究者によって興奮とともに迎えられましたが、昨年マイクロソフトがWindows用SDKをリリースしたことでその動きに更に拍車がかかりました。これをきっかけに、従来ゲーム開発に従事してこなかった多くの人たちがこれまでにない作品を数々リリースする可能性があります。

 

 ゲームプラットフォームへの参入も限りなく低くなった昨今、これをきっかけに名を馳せるゲームクリエイターも出てくるかもしれません。いずれにしてもこれらのコミュニティが日本において如何なる展開を今年進めていくのか注目です。

 ゲーム業界勢力図、更なる再編が継続?


 2011年は2010年に引き続き更なる再編がゲーム業界内で進みました。ガストがコーエーテクモHDの傘下に、アクワイアがガンホー・オンライン・エンターテイメントの傘下となりました。稲船敬二氏率いるcomcept及びinterceptの、本格的な始動を象徴する作品となったのが、ソーシャルゲームであったことも今の業界模様を象徴しています。筆者が個人的に気になっているのがIT業界のカルチャーが色濃いソーシャルゲームサービスプロバイダーの時価総額が軒並み高騰していることです。一般的に市場で頭角を現しているIT企業の多くは、サービスに対する付加価値を高める人たちと、市場での自社のバリューを最大限に生かしてグループを最大化するファイナンスのプロとのチームワークで成り立っています。

 

 これらの企業が、ゲーム業界も自身の事業領域の一部であるとみなし、ユーザーからのフィードバックを受けながらゲームデザインの優位性を商品開発において取り入れようとすればする程、ゲーム業界で各企業が培ってきたノウハウや、知的財産が如何に現在市場においてアンダーバリューとなっているかも実感していることでしょう。従って、優れた人材の抱え込みなのか、プロパティの買い上げなのか、企業そのものの買収なのかは分かりませんが、これら企業の戦略における次の一手によって更なる再編が起きても何ら不思議ではありません

 新世代機がもたらす新たな遊び


 PlayStation Vita(以下、PS Vita)は、12月における発売総数が40万台圏と、PSPローンチ時を上回る結果を残す事が出来ました。ローンチ時にリリースされた26タイトルも、従来の遊びがPS Vitaにおいても十分楽しめるという事を示しています。ですが、「東京ゲームショウ 2011」などでも示された「新たな遊びの提案」を伴った作品の提案はまだされていません。更なる普及を意識するSCEの立場からすれば今年の「E3 2012」がPS Vitaの真価を示すときと言えるでしょう。

 

 真価という視点では、同時期に更なる詳細の発表が期待されるWii U も楽しみでなりません。特に「遊びの発展」という視点では既にある程度の提案がなされている中で筆者が期待しているのは、従来のゲームという枠組みを超えた提案です。専用コントローラはゲームを楽しませる以上の何かがあるのではと予感させるからです。昨年は近年最高の盛り上がりを見せたE3ですが、今年は更なる盛り上がりが期待出来るかもしれません。

コミュニティ重視の延長線にあるワンソース?マルチユース

 

 東京ゲームショウの基調講演において、CESAの理事長でスクウェアエニックスの代表取締役社長 和田洋一氏が、今後ゲーム業界において重要になるもののひとつとして「コミュニケーション」をあげていました。この「コミュニケーション」の核になるのが「コミュニティ」であると筆者は考えています。京都で、太秦戦国祭りというイベントの企画をここ数年担当していますが、そこで改めて感じるのは「ユーザーはリアルに時間を共有できる場を求めている」ということです。ソーシャルネットワークサービスが浸透し、仮想空間で常に交流が出来ても普段、仮想空間でのみしか常に交流できないからこそ?多くの人たちはリアルで集まれる場所を求めているのです。

 

 特定ジャンルに特化したイベント等はまさにリアルに集まれるきっかけをユーザーに提示していると言えるでしょう。更に一つのコンテンツを複数の商品群で活用するというワンソースマルチユースは「コミュニティ」を自然に醸成する絶好のチャンスを生み出します。確かに、消費者の目も肥えているため、ゲーム、アニメ、漫画、ライトノベルを問わず、マルチユースで展開された作品群が、一過性の収益を求めてリリースされたものなのか、各メディアの特徴を捉えその強みを活かしつつ世界観を広げたいという強い志の元、作品を生み出しているかはすぐに見破ってしまいます。

 

 ですが、確かなクオリティのもとに行われる、マルチメディア展開によりコンテンツの多様な楽しみ方が増えれば増える程、リアルな場所に集まってそれらを共有することで生まれる付加価値も高まります。これからもより多くの作品が多様な「楽しみ方」を生み出すために、業界内外での交流が深まり、既存の枠を超えた作品群が生まれて来ると素晴らしいですね。

2012年1月5日 18:32