第1回 序章 死闘は『プロローグ』から始まっていた(前編)

 

 

 こんにちは、毛利名人です。今日からブログ連載の開始ですぞ!!

 最初に取り上げるのは『グランツーリスモ 5』(以下『GT5』)なんですが、このシリーズには格別に思い入れがありまして、「2011年6月3日現在から」ではなく、『GT5』の発売前に発売されていた『グランツーリスモ 5 プロローグ』の時点から始めたいと思います。少々時間が戻りますが、お付き合いください。

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 「ここでオレとのブレーキング競争で負けたら、順位を落とすことになるぜ!」

 

 鈴鹿のヘアピンコーナーの手前を、ほぼ同じスピードで並走する2台の日産GT-R。

 オレはコースの左側に、もう一方のプレイヤーは右側にいる。

 オンラインIDの横にフィンランドの国旗が表示されていることから、右側にいるのは、フィンランドのプレイヤーなのだろう。

 このヘアピンは左コーナーなので、減速したあとにターンインすれば、イン側を曲がれるオレが前に出られる可能性が高い。アウト側にいるクルマよりも短い距離で曲がりきれるからだ。


 アウト側にいるフィンランドの坊やはどうするのか? 

 オレよりもブレーキングを遅らせ、強引にインを強襲してみるか? 

 でも、そんなことをしたら、オーバースピードでターンインすることになり、インを突けずにアウト側へ大きく膨らむ。コーナーを抜けたときには、オレとの差は挽回不能な距離まで大きくなるぞ。

 

 ならば、玉砕覚悟でオレに体当たりするか? 

 クルマのフロント部分からオレのクルマに激しく体当たりしたとゲームプログラムが判断すれば、一定時間速度が落ちるペナルティーが発動するぞ。緩く追突すればペナルティーは発動しないが、追突したあとに乱れたクルマの挙動をヘアピンコーナーの手前までに立て直せるかな……。

 

 ヘアピンコーナーが迫り、ブレーキボタンに指を添える……。

 東京から遠く離れたフィンランドのどこかに住んでいる坊やも、同じような状況だろう。
 あとは、どのタイミングでボタンを押し、シフトダウンしてスピードを上手に殺せるかが、勝負の分かれ目となる……。

 タイミングが早すぎれば、右側を走るクルマにひと足早くインを突かれてしまう。
 遅すぎれば、曲がりきれずにコースアウトして、ヘアピンコーナーの外側にあるサンドトラップに突っ込む。

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「ブレーキングポイントに来たーっ!!」

 
 コース右側にある街灯に差し掛かった瞬間、ブレーキを踏む。
 オレより一瞬だけ遅れて、フィンランドの坊やもブレーキを踏む。
 
 コーナーの外側にいるフィンランドの坊やが、数十センチだけ先にヘアピンコーナーへ進入した。

 
 「オレのほうが減速するタイミングが早かったのか!?」

 ほんの一瞬だけ、オレがミスしたことを後悔する。
 だが、この2台のバトルは、このタイミングで終わったわけではない!

 フィンランドの坊やがハンドルを切るタイミングが早すぎたせいなのか、ターンイン中に、オレのクルマに軽くヒットする。その反動で、ヘアピンコーナーのイン側にクルマが向いた。

 必要以上にスピードを殺すことなくインを突き、コーナーを立ち上がるオレが前に出る!
 

 結局、アウト側のラインでコーナリングせざるを得なかったフィンランドの坊やが操るGT-Rは、すでにバックミラーのなかに映っていた……。

 オレに軽くヒットしたのは、体当たりするかどうか迷ったせいなのかな? ラフプレーはしないが、ペナルティーを喰らわない程度に抵抗したかったのかもしれない。

 乱暴な振る舞いをしなかったフィンランドの坊やに多少なりとも感謝しつつ、アクセルを全開にして、次の難所となるスプーンカーブを目指す。

 
 だが、オレがこのレースに勝つためには、前方でバトルしている2台のクルマを追い抜く必要がある。 

 

「残り半周、今回は3位で終わるのか……」


2011年6月3日 18:03