プロフィール
中村彰憲

立命館大学映像学部 教授 ・学術博士。名古屋大学国際開発研究科後期課程修了 早稲田大学アジア太平洋研究センター、立命館大学政策科学部を経て現職。 日本デジタルゲーム学会(DiGRAJapan)会長、太秦戦国祭り実行委員長 東京ゲームショウ2010アジアビジネスフォーラムアドバイザー。 主な著作に『中国ゲームビジネス徹底研究』『グローバルゲームビジネス徹底研究』『テンセントVS. Facebook世界SNS市場最新レポート』。エンターブレインの ゲームマーケティング総合サイトf-ismにも海外ゲーム情報を中心に連載中。

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第3弾 竹安ディレクターが語るイーノックとルシフェルの誕生秘話

いよいよテレビCMも解禁。あの「大丈夫だ、問題ない」というフレーズをお茶の間で聴けることになったのは本当に感慨深いですね。その、発売直前の『エルシャダイ』でもっとも魅力ある二人のキャラクター、イーノックとルシフェル誕生秘話について、竹安ディレクターに直接伺いました。

 

 

 ▲現場にいる竹安ディレクター。

 

中村:主人公役のイーノックは、プロモーションビデオを見る限り若干天然というイメージもあるのですが、このキャラクターはどのように作り上げていったのでしょうか?

竹安:もともと、イーノックが神から召喚された理由が「実直で真面目」だったからとエノク書に書かれています。だからその性格をそのまま表現しました。エンターテインメントを作る立場としては、派手なヒーローのほうが良いとも思ったのですが、そういう所でウソをつくと下敷きとしている本編に対してズレが生じてしまうので、なんとか実直で真面目で面白いキャラができないかと考えました。

その結果、最終的に行きついたのが、「真面目で喋らないキャラ」で、これはほかの王道RPGとかもそうなのです。英雄は喋らないという。
イーノックはもともと農民なので、非常に素朴な人生を歩んでいるんですね。だから、イラストを見ても基本は素立ちになっていて、初期は決め場面のイラストが少なかったのです。モーションデザイナーにもこのキャラクター性ではやりにくいって言われることもありましたね。

 

                       

                 

 

        ▲ルシフェルとイーノックは原画でも強烈な個性を

 

中村:イーノックに多くの名前があるというのは?

竹安:もともと、たくさんの名前があるというのがエノク書に書かれてあったので、それをそのままゲームの設定にしました。昔は記録を文章でしか残せないので、壮大感を示すときに100をそのまま100と書くのではなく1万にしてみたりとか、1フィートを1万フィートにする形で誇張するしかなかったのです。
つまり、イーノックはこれだけの名前があって、それを使いこなせるほど聡明だったと言いたかったと思うので、それをそのままゲームの中に取り入れました。

中村:では、ルシフェルの場合はどうなのでしょうか?例えば時間を操り自由に行き来する能力とか?

竹安:最初から絶対これ(時間を操る能力)は欲しいと考えていました。スタッフは大反対だったのですが。時間を行き来できるキャラクターが出てくるとタイムパラドックスとかいろいろなことで悩まなくてはいけなくなりますから。でも僕が言ってきたのは、干渉できないキャラにすれば良いというのと、性格的にそんなことに興味が無いという設定にすればいいということです。神の右腕のような存在なので、この力を使って何かを支配してみたり、何かを得たりといった考えを持つような次元には存在していません。

親が自らの幼子と真剣に戦えば勝つことができますが、そんなことはしませんよね。ルシフェル位の存在になると、時間介入で世界をめちゃくちゃにすればそれを自分で片付けなくちゃいけなくなると知っているわけです。このルシフェルの時間を自由に操る能力で、「セーブ」と「ロード」に物語的な意味 ?「ロマン」ですね? を持たせたかったのです。

セーブとロードはゲームでは重要な機能ですよね。でもその行為は、プレイヤーをゲームの世界観から逸脱させてしまう。僕らはその機能にもプレイする人にロマンを感じて欲しかったのです。セーブするとき、プレイヤーはルシフェルにお願いして時間を止めてもらっていると思って欲しかったのです。

中村:プロモーションビデオでは最後の場面でルシフェルが携帯を使って「やっぱり今回も駄目だったよ…次はコレを見ているヤツにもつきあってもらうよ…」と言っていますがあの意味はなんですか?

竹安:「コレを見ているヤツ」とは視聴者の皆さんを指しています。これを見ている人に参加してもらいたいということです。イーノックはまさにユーザー自身であるという概念で、そしてやられそうになるとルシフェルが時間を止めて再チャレンジさせてくれるのです。ゲーム内でもルシフェルが現れる場面では、だいたい携帯で神に連絡を入れているのです。「イーノックがここを通った」とか言いながら….

ちょっとリアルな仕事場に似せてもいますね。僕らも外資なので、外国の上司がチェックしにくるじゃないですか!それと似たような感じですね。マラソンの中継地点みたいに。

中村:ルシフェルの時間に対するあいまいさが凄いといいますか...

竹安:あれはもうルシフェル自体が時間軸を移動している人なので、ちょっとパニくっているのです。日常でも仕事がめちゃくちゃ忙しい時とか、どのタスクがどれってわからなくなってくる時ってあると思いますが、まさにそういう状態です。僕らがもし、一昨日に連れてかれて、現実に戻ってきたらわけがわからなくなると思うんですよ。ルシフェルはそんな感じで時間をさ迷うのが仕事なのです。同じ様に時間旅行をできる人がいれば、会話が成り立つのかもしれませんね。そういった彼の心情を意識しながら書いたセリフがあれだったのです。

ネタも大事なのですが、それには「落ち」が必要なわけで、そのためには設定が重要になるのです。バレたときに「何コレ?」ではダメで、「なるほど、そういうわけならそのセリフも筋が通っている」とならなければいけないのです。

中村:ルシフェルが2010年?12年の時代を一番好きな理由はなんですか?

竹安:恐竜時代から人類が宇宙人に遭遇する時代まで見ている中で、人間が一番人間らしい時代だったからです。これ以上の未来になると発達しすぎてしまって人工チューブなどを体内に入れているかもしれませんし、すこし前だと文明が未発達過ぎて違うと言いますか..2010年位のバランスが良かったということですね。

中村:ルシフェルがビニール傘を好きな理由はなんですか?

竹安:ビニール傘や携帯電話は、僕らの時代にあるものを、ルシフェルが洒落心でどんどん取り入れているのです。これらはユーザーとの接点にもなりうるのではと思いました。

中村:ルシフェル役と言えば、声優の竹内良太氏の声がバッチリ役にハマッてますよね!どうやって決めたのですか?

竹安:もともとこの点については、とてもこだわりました。僕自身有名な声優さんとかを知らないので、声のサンプルだけ集めて、顔写真も経歴も見ないで配役を決めていったのです。しかもアニメ声ではなくて素の声だけを集めて聴いていったのです。結局、蓋を開けてみたたら、有名な方もけっこうおられるんですよ。やっぱり声優さんは実力があってはじめて有名になっているんだなと改めて思いました。

中村:では最後に読者にひとことお願いします!

竹安:ゲームは体験してこそわかるものなので、どれだけ僕らが情報を露出してもコントローラを触ってもらわないと僕たちのメッセージは伝わらないと思っています。今、皆さんが得ている情報は、僕らが表現したい内容のほんの序の口です。いろいろとネットで盛り上がっていただいているのは本当に嬉しいですが、まだまだ、今見ていただいているモノどころじゃない内容が盛りだくさんです!ですので、是非手にとってプレイしてみてください。

ありがとうございました。

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そんなこんなでこの特集は、今回が最後。キリスト教にとって、24日がイエスの復活を祝う復活祭だったことを考えると、28日という発売日すら何か意味がありそうですね。偶然であれば、見事なシンクロです。いずれにしてもこのゴールデンウィークは、『エルシャダイ』で「神の時代」と「人間の時代」の狭間に思いを馳せるのも「アリ」かもしれません。


2011年4月26日 21:01