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エンターブレイン、浜村弘一社長が"ゲーム産業の現状と展望"を語る!

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●2007年ゲーム市場はさらなる飛躍の年に!

 2007年4月13日にエンターブレイン本社で、同社の浜村弘一社長による"ゲーム産業の現状と展望"と題された講演が行われた。これは今年で6年目になる毎年恒例の講演で、アナリストや業界関係者に向けて実施されるもの。エンターブレインのマーケティング部のデータをもとに、ゲーム市場のトレンドや今後の展望などが語られた。最初に浜村社長は「今回は、ゲームという世界がまったく新しい状況に突入している、ゲームの歴史がまったく違う方向にシフトしているということが強く感じられるデータになっています。そこで今回は"シフトするゲーム業界・7つの変化"というタイトルで、ゲーム業界の状況を"変化"をテーマに見ていきたいと思います」と語り、講演をスタートさせた。
 

▲2006年度のゲーム業界のデータをもとに、エンターブレインの浜村社長が現状分析や今後の展望を語った。


 まず最初の変化として語られたのが、2006年に出そろったプレイステーション3やWii、Xbox 360といった次世代ゲーム機について。浜村社長は、昨年エンターブレインが発表した次世代ゲーム機の販売台数予測とその実績をもとにつぎのように語った。

 「WiiはニンテンドーDSで培ってきたライトユーザーの支持を受け2006年末の主役として躍り出てきました。ニンテンドーDSも一部では失速するんじゃないかと言う声もありましたが、予測どおり販売台数を伸ばしました。ただ、ひとつだけ予測とずれたマシンが、プレイステーション3です。何しろ出荷台数が少なすぎた。ソニー・コンピュータエンタテインメントが発表した出荷台数よりも少なかったため、予測を大きく外してしまったことをまずお詫びしたいと思います。まず、プレイステーション3に何が起こったのかを検証します」(浜村)

 浜村社長は、同時期に発売されたWiiとプレイステーション3の販売データを比較。Wiiはハードの出荷が順調に行われ、ソフトも『Wiiスポーツ』や『はじめてのWii』がミリオンセラーになるなど、『ゼルダの伝説 トワイライトプリンセス』のようなゲームファンに向けたタイトルだけでなく、新規ユーザーにも受け入れられるソフトを供給したことで成功を収めたと分析した。一方、プレイステーション3の発売初週の出荷台数がWiiの4分の1、そのあとも2分の1程度だったこと、ソフトラインアップが少なかったことを苦戦した大きな要因として挙げた。

 今後のWiiとプレイステーション3の展望については、「Wiiは任天堂の人気タイトルが年内にたくさん発売されることが期待されます。プレイステーション3はWiiよりもゲームファンから人気の高い続編のタイトルが多いと思います。過去10年間のゲームのメインプラットフォームはプレイステーションファミリーだったからです。ただ、プレイステーション3のソフトは発売日未定が多い。これは非常に気になります」とした。

 続いて北米市場について言及。同市場は2006年末にXbox 360とWiiが大きくシェアを獲得している状況で、プレイステーション3が厳しい状況であると説明。ほかの次世代ゲーム機よりも1年早く発売し、『ギアーズ オブ ウォー』を中心に北米のゲーム市場を牽引したと解説した。ただ、苦戦しているように見えるプレイステーション3だが、発売日からの販売台数を見るとXbox 360の約100万台に対してプレイステーション3は約110万台と、プレイステーション3のほうが売れているという。しかし、北米のゲーム市場では「Xbox 360が勝っていて、プレイステーション3が売れていないイメージがある」とし、「Xbox 360の勝ちムードによってソフトメーカーさんたちが「プレイステーション3だけでソフトを出したらダメなんじゃないか」と思い、プレイステーション3の開発ラインを狭めたり、マルチプラットフォーム化したり、ということにつながるという可能性がちょっとあります」と語った。

、 ここまではプレイステーション3に向けて厳しい分析が続いたが、浜村社長は「プレイステーション3は本当にダメなのか? まったくそんなことはないと思います。ソフトラインアップを見てもいいタイトルが多い。時間がかかっても本当にいま予定されているラインアップがきちんと発売されれば、大丈夫だと思います。日本でも『ファイナルファンタジーXIII』や『メタルギア ソリッド 4』などが出てくれば、いまの状況を挽回できると思います」と強調。それに加えて、海外においてはプレイステーション2がまだ大きな市場を形成していて、プレイステーション3でもプレイステーション2のソフトが遊べるという"ブランドの継承"がゲームファンを強く惹きつける要素のひとつになると解説した。

 では、今後の次世代ゲーム機市場はどうなるのか? 浜村社長はつぎのようにまとめた。

▲日本市場だけでなく、北米と欧州の市場についても分析。世界的にゲーム市場が拡大していることをデータを使って解説した。
 

 「Wiiは今後も世界的に売れ続けるでしょう。あえて課題を挙げるとすれば、ハードの人気が先行している状況だと思います。ただ、以前任天堂の発表会で発表された健康管理を楽しんでできる『ヘルスパック』というソフトが発表されれば、ニンテンドーDSで頭を、Wiiで体を鍛えるという新たな波が来る予感がします。そしてプレイステーション3は、潜在的なニーズは非常に高いと思います。2007年末になるとCellを安く作ることができる新技術が開発されて工場にその技術が入ってきそうだと聞きます。これによってハードの価格が下げられる。値下げは世界的に期待されていることですが、SCEがどう決断するのか。ただ、このあたりで起爆剤がないとなかなか厳しい状況かなと思います。Xbox 360はアメリカとイギリスで成功を収めていますが、この状況はまだ続くと思います。Windows Vistaと連動させることによって、マイクロソフトが持つPCという武器をXbox 360の支援に使うことがはっきりとしてきたわけです。PCとの融合によってまだまだ大きくなりそうな予感がします。また日本ではXbox 360の勝ちムードが進んで、万が一『FFXIII』や『メタルギア ソリッド 4』など、キラータイトルがマルチプラットフォーム化してきたら、Xbox 360は"ハイデフにつながる廉価版マシン"になる。そうすれば、日本でも大きく数字を伸ばす可能性はまだ十分残っていると思います」(浜村)

●大きく成長した日本ゲーム産業

 続いて国内市場の変化について。まず、2006年度の国内ゲーム市場は前年比137.9パーセントの成長になったことを報告。この大躍進の主役だったのはニンテンドーDS。いままで日本でもっとも売れたプレイステーション2が6年間で販売台数が約2000万台だったのに対し、ニンテンドーDSは2年間で販売台数約1600万台と、驚異的なスピードで普及してる現状を説明した。

 一方ソフト面では2006年度に100万本を突破したタイトルが13本。その内訳は、9本がニンテンドーDSで、2本がWiiと任天堂が圧倒的な支持を得ていることが改めてわかる結果に。また、メーカー別のソフト販売本数でも任天堂がゲーム販売本数全体の33.6パーセントを占めていて、株式会社ポケモンの販売本数も含めると、じつに41パーセントものシェアにのぼる状況にあることが明らかに。

 「日本のゲーム市場の2005年度から2006年度にかけて増えたソフト販売本数は1463万本。そのうち任天堂とポケモンの増加分が1300万本を超えています。つまり大きく成長した国内ゲーム市場の9割以上が任天堂の成長によるものと言えます。これはファミコン誕生以上の、圧倒的な任天堂の人気と言えると思います」(浜村)

 浜村社長はこの成長が任天堂だけに影響があるだけでなく、日本のゲームメーカーにも大きな変化をもたらすだろうと分析する。その変化とはゲームメーカーの増加。ニンテンドーDS用ソフトの開発費は安く、中小規模のゲームメーカー、いままでゲームを作ってこなかった会社でもゲームを作ることができるようになり、結果ゲームソフトのバリエーションも増えてゲーム市場全体が盛り上がることが期待できるという。浜村社長は、それらの影響や次世代ゲーム機の充実もあり、2007年の国内ゲーム市場規模は2006年以上に伸びるだろうと予測。2008年、2009年は若干数字が落ち着くものの、2010年につぎの新世代のハードが出てくるだろうとし、さらに市場が活気づくとまとめた。

●まだまだ伸びるニンテンドーDS

 2006年度のゲーム市場がもっとも伸びた要因のひとつである携帯ゲーム機。浜村社長は「携帯ゲーム機が伸びた理由はふたつ。時代のニーズに合ったということとライフスタイルのスピードアップが挙げられます」と語り、ニンテンドーDSを中心とした携帯ゲーム機市場を分析した。

 ニンテンドーDSは前述のとおり、これまでのゲームの歴史を覆すスピードで普及し、販売本数が100万本以上のソフトを昨年度だけで15本輩出。とくに脳トレシリーズのようなエデュケーションソフトの人気が非常に高く、浜村社長は「これまでのエデュケーションソフトとは異なり、楽しみながら学べるまさにゲーム感覚のタイトルが受けている」と成功の理由を分析した。また、任天堂のソフト以外が売れないのでは? という状況も2006年から変化し、2007年は『ドラゴンクエストIX』を筆頭にサードパーティーのタイトルが伸びるのではないかと予測した。

 「ニンテンドーDSに合ったタイトルをサードパーティーが作れるようになってきて、任天堂以外のメーカーの作品が飛躍しそうです。それにともないハードの台数もまだまだ伸び、3000万台を超える可能性もあると思います」(浜村)

 一方、PSPについてはカプコンの『モンスターハンターポータブル 2nd』が販売本数100万本を突破したことを例に挙げ、「PSPならではのソフトが発売されれば、成功することが証明された。ほかのソフトメーカーも『モンスターハンターポータブル 2nd』で広がったユーザー層を獲得しようと考えていると思います」(浜村)と分析した。

●多様化するビジネススキームと世界市場

 次世代ゲーム機、国内ゲーム市場、携帯ゲーム機など、多角的な分析と予測に加え、今回はゲーム業界に定着しつつある新たなビジネススキームの話題も。浜村社長はセカンドライフやマイクロソフトのXNAなどを例に出し、ネットワークを使ったユーザーどうしによるビジネスやゲーム内広告についても語った。

 「Xbox LIVEで使われているマイクロソフトポイントの市場は現在約70億円にもなっています。パッケージを売るというこれまでの形態からダウンロード販売という新たな形態が定着しつつあります。ゲーム内広告も『セカンドライフ』を見てもわかるように非常に活発な動きを見せています。いまはまさに業態変換の時期に来ていると言えるでしょう」(浜村)

 一部のゲームではゲーム内広告で5億円とも言われる収入を得ているものもあるという。浜村社長は「日本は海外に比べると業態変換が遅れていると言えるでしょう。ただ今後は加速的に進んでいくと思います」とコメントした。

 そのほかにも韓国や中国、インド、ロシアのゲーム市場についても言及し、これまでゲーム後進国だった市場も活性化していることを説明。「ここ10年はゲーム市場が世界的に伸びて伸びてしょうがないという状況にあると思っています。皆さんは今回のデータなどを見てどのようにお考えでしょうか?」と講演を締めくくった。
 

 

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