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参加者たちの熱意とアイデアが徐々に形になりはじめた(その2)
【特別企画】ドキュメント・サンデーゲームスタジオの挑戦

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●ゲーム作りは着実に軌道に乗ってきた

 日曜日だけ集合してゲームを作る、シグナルトーク・コーポレーション主催によるサンデーゲームスタジオ。2006年8月25日にスタートしたこのプロジェクトも、9月10日で3週目に入り、さすがにメンバーどうしによる意思の疎通もしっかりと図れてきているよう。それぞれのチームがディスカッションしているさまを見ると、"勝手知ったる戦友"といった趣だ。両作品はプログラマーの手によりα版に近いものができあがってきており、ゲーム作りは着実に軌道に乗ってきているようだ。

 もちろん、順調とは言ってもその陰にはメンバーたちの並々ならぬ努力がある。社会人でも参加できるように、開催を日曜日に限定しているサンデーゲームスタジオではあるけれど、1週間に4時間だけの実施では、ゲーム制作に十分な時間が取れるわけもなく、平日は各自が持ち帰った課題を自宅で作業し、日曜日にその成果を見せ合ってディスカッションする……という流れになってきているようなのだ。参加者に話を聞いてみると、多くの人が「平日は、仕事以外の時間はほとんどゲーム作りに充てていますね」というように、いわばゲーム漬けの毎日を送っているようだが、好きなことに取り組んでいるだけあってか、どの顔も充実しているように見えた。「いいゲームを作りたい」と思って集まってきた人々だけに、まさにいまが至福のときなのかもしれない。

 さて、ゲーム関係者を招いてイレギュラーに特別講演を行っているサンデーゲームスタジオではあるが、その日はちょうど、猿楽庁の代表取締役である橋本徹氏がゲスト出演。猿楽庁とは、ゲームのデバックやバランス調整など、ゲームのチューニングを行っている会社。最近は企画書の段階からゲーム開発に加わることも多いという。そんな、猿楽庁を統括する橋本氏が、参加者に向けて「ゲーム作りにおける大切なこと」をレクチャーした。

 「それは、"誰に向けて作っているか、はっきりさせること"ですね。ゲームを制作するにあたっては、どのターゲット層に向けて作っているのか、しっかりと把握していないといけません。映画や小説などは一方通行の媒体なので、ある意味その辺は気にしないで済みますが、ゲームはインタラクティブなメディアなので、押し付けがましいのはいけない。遊ぶ人によって遊びかたが違ってくるわけで、ターゲット層を間違えると、ゲームがブレてしまいます。皆さんには、遊ぶ人の顔がきちんと見えているような、独りよがりにならないゲーム作りを期待したいですね」(橋本氏)。

 また、ゲーム作りの姿勢についても「最後まで楽しく作ることが大切です。いやなことでも楽しいことに転換するなどの努力をすると、いいものができますよ」(橋本氏)とアドバイス。ゲームの品質管理に心を砕く橋本氏だけに、その言葉は極めて実践的。業界関係者による、現場のナマの声を聞くことは、参加者にとっても大いに刺激になっているのではないだろうか。

▲今回講義した猿楽庁の橋本徹氏。


 そして講演のあとは、いよいよゲーム制作へ。その日も各自が持ち寄った"宿題”に対して意見をぶつけ合うところから、ゲーム作りはスタートした。実質3時間30分という、けっして長くない時間ではあったけれど、それぞれのメンバーはディスカッションをしては作り上げ……という形で、密度の濃い時間を過ごしたようだ。

▲着々と作業は進む。Aチームでは背景を制作中。

▲熱心にディスカッション。こちらはBチームのおふたり。

▲午後2時にはじまった講義も、終わるころにはすでに外は真っ暗……。


 最後に、サンデーゲームスタジオに対する意気込みのほどを、Aチーム、Bチームのそれぞれのプランナーであるヤス氏とエイルさんに聞いてみた。

Aチーム プランナー ヤス氏

▲現在はパソコンのインストラクターを務めているというヤス氏。好きなゲームは『ロックマン』や『電脳戦機バーチャロン』だとか。


――サンデーゲームスタジオに応募したきっかけは?
ヤス
 いまはパソコンのインストラクターをしているのですが、ずっとゲームを作りたいと考えていました。それで、アイデアとかをいろいろとノートに書き溜めていたんですが、たまたま週刊ファミ通の記事でサンデーゲームスタジオのことを知りまして、ぜひ応募してみようと思いました。

――いいチャンスかなと?
ヤス
 そうですね。受かれば受かったでちゃんと勉強できるし、落ちたら落ちたで企画書を書けるので勉強になるかな……と思いまして。

――前向きですね(笑)。
ヤス
 いままで自信がなくてためらっていたのですが、サンデーゲームスタジオが後押ししてくれたんですね。ただ、企画書を10本提出しなければならなかったので、本当にたいへんでした。応募期間中の3ヵ月はずっと企画を考えていたのですが、締め切りの1日まえにやっと清書できたくらい。それも、その日たまたま仕事が休みだったから、何とかなったという……。

――『イルミナ』(仮題)のアイデアはどんなところから?
ヤス
 もともと風をテーマにしたゲームを作りたいなあと考えていたんです。で、アイデアを求めて図書館に行ったんですね。そこであるエッセイに、「蜘蛛は糸を引きながら空を飛んでいく」と書いてあるのを見つけまして、クリックひとつで陣地から陣地へと飛び移って、魔方陣を作っていく、といったアクションができたらおもしろいのではないかと思ったんです。

――今回の応募は、既存のゲームに対する"提案"みたいな意味合いもあった?
ヤス 
うーん、どうでしょう(笑)。たしかに、そんな一面もあるかもしれません。いまのゲームを見ていると、もちろんよくできているんだけど、どうしても「売れ筋を狙っていますよ」みたいな雰囲気がある。いちゲームファンから言わせてもらうと、美麗なグラフィックの大作もいいのですが、もっと荒削りでアイデアを重視した、これまでにないおもしろさを実現したゲームを出してほしいとは思っていました。たしかに『イルミナ』(仮題)は、そんなことを念頭においてはいました。

――実際にサンデーゲームスタジオに参加してみてどうですか?
ヤス
 最初は受かってすごくうれしかったのですが、すぐにそんな気持ちもどこかに飛んでいってしまいました(笑)。まわりは皆さんプロの方で、私だけアマチュアだったので、「これは、足を引っ張れないな」と。実際経験がないので、仕様書ひとつ書くにも悪戦苦闘しているようなありさまなんですよ。

――そんなプロジェクトの進捗状況は?
ヤス
 いま積塚さんにプログラムを組んでもらっているところです。全部のシステムが実装されているわけではないので、まだまだこれから……といった段階ですね。糸を張って魔方陣を描いて……そのあとが苦戦している感じかな。早く完成に漕ぎつけられたらいいなあと(笑)。

――チームワークもばっちり?
ヤス
 いいですよ。最初の3日間はさすがに疲れましたが(笑)。そこでいろいろと話し合ったので、おかげさまでいい方向性に持っていけたと思います。もちろん、このあともいろいろとあるとは思いますが、がんばっていいものを作り上げたいですね。
 

▲Aチームの『イルミナ』(仮題)は足場を移動して魔方陣を作っていくアクション。うまくコンボを決めて花を咲かせていくのがポイント。

 

Bチーム プランナー エイルさん

▲コンピューター系の会社に勤めるエイルさん。最近では『バイオハザード4』がお気に入りだという。


――サンデーゲームスタジオに応募したきっかけは?
エイル
 私も週刊ファミ通の記事を見て、「応募しよう!」と思いました。ところが、ホームページを見て、応募条件が企画書を10個提出することなのを知って、「ああ、これはダメだ」といったん諦めちゃったんです(笑)。

――軟弱な(笑)!
エイル
 それが締め切り1週間くらいまえになって、急にむらむらとやる気が沸いてきまして、一気に応募まで持ち込みました。

――1週間で10の企画を?
エイル
 もともとゲームを作りたいと思っていたので、企画はいくつか溜めていたんです。それが7〜8個あったので、あとはアイデアレベルの2〜3個を、形にしたという感じでした。

――なぜ1週間まえになって急に?
エイル
 「これが最後のチャンスかな」と思ったら急に。受かったときはうれしかったというよりも、驚きました。

――『55(フィフティーファイブ)』のアイデアはどのようなきっかけで?
エイル
 ヤスさんは図書館でアイデアを思いついたようですが、私の場合は、歩いているあいだにアイデアを思いつくことが多いんですね。で、『55(フィフティーファイブ)』も、通勤途中に思いつきました(笑)。そもそものアイデアは、「みんなが知っている数字を使ったゲームなんてどうだろう?」というのが、きっかけになっています。数字だったらある程度より上の年齢であれば、知らない人はいないでしょうし。とにかく、いままでにないものを作りたかった。

――それはやはり、現状のゲーム業界に対する不満から?
エイル
 たしかに。私はけっこうRPGが好きで、人気作品もたくさんプレイするのですが、若干物足りなさを感じる部分もあります。言いかたは悪いかもしれないですが、いまのゲームにはグラフィック押しに近い部分があって、もちろんそれはそれで好きなのですが、それが主流になってくるとおかしなことになってくる。ここはゲームの原点に戻りまくって(笑)、簡単なアイデア勝負のゲームから始めたいとは思いました。まあ、既存のアイデアでいいのであれば、既存のメーカーから出せばいいわけですしね。

――なるほど。では、ただいまの進捗状況は?
エイル
 プロトタイプができている段階ですね。企画の段階でメンバーのみんなとけっこう意見のやり取りをしたので、そこからは順調ですね。けっこうサクサクとできています。あとは、ハマれる要素がちょっと足りない、という意見が出ていますので、その辺が課題になっています。

――ちなみに、Aチームはライバル視している?
エイ
ル ぜんぜん(笑)。Yahoo!ゲームでは私たちのゲームの人気投票を行っていたのですが、『イルミナ』(仮題)に一票入れたいくらい。

――本当かしら(笑)。
エイ
ル だって、キャラがかわいいじゃないですか!
 

▲流れていく数字をクリックして、5の倍数を作っていく『55(フィフティーファイブ)』はアルファ版ができていた。言葉で説明するとわかりづらいかもしれないが、これがけっこうおもしろい。


※サンデーゲームスタジオの公式サイトはこちら
※Yahoo!ゲーム「サンデーゲームスタジオ」特設ページ

 

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