【CEDEC2006】2日目の基調講演で浜村弘一氏がゲーム産業の将来を展望
【CEDEC 2006】
●豊富な資料を提示してゲーム業界の明日を予測
CESAデベロッパーズカンファレンス(CEDEC)2006、2日目にあたる2006年8月31日、エンターブレイン代表取締役社長、浜村弘一氏が基調講演を行った。題名は"未来に向けて広がるゲームビジネスの可能性 〜プロデューサー時代到来〜"。浜村氏は、豊富なデータに基づいて国内のゲーム市場を分析し、次世代ゲーム機の今後5年間の売上を予測。また、オンラインが次世代ゲーム機に匹敵するインフラであることを指摘したうえで、プロデュース能力しだいで、あらゆるプラットフォームで成功する可能性があることを述べた。
▲朝一番の公演だったのにもかかわらず関わらず、会場のホールはご覧のとおり満員。 |
浜村氏は「今日はいっぱい資料を持ってきました」と切り出して公演を開始。その言葉どおり、2001年以降のソフト、ハードの販売データ、国内ゲーム市場規模、販売本数上位タイトルなどのデータを取りそろえて、国内市場の動向を分析した。
「国内ゲーム市場は長期低迷と言う人もいますが、2005年は2004年に比べてハードが123.2パーセントと大きく伸びました。ヒット作の本数で見ても、2004年はミリオンヒットが4本ありましたが続編が多く、2005年は9本。ニンテンドーDSを中心に新作が多いですね。市場規模も2004年の109パーセントと拡大しています。2006年は、上期が不作になる言われていたのにもかかわらず前半だけですでに3本のミリオンヒットが出ており、過去10年間で最高の数字を記録することは間違いありません」(浜村氏)
浜村氏は、この好調はニンテンドーDSの躍進がもたらしたものだという。ニンテンドーDSはすでに、国内だけで1000万台の販売台数を達成しており、また2006年2月の調査では回帰ユーザー(いったんゲームを休止していたユーザー)が既存ユーザー(ゲームをプレイし続けていたユーザー)を上回ったという結果が出ているとのことだ。
ただし、浜村氏はニンテンドーDSに「一抹の不安」もあるという。
「発売されているニンテンドーDS用のうち約80パーセントはサードパーティー(任天堂以外のソフトメーカー)のタイトルですが、ソフトの販売本数は約80パーセントが任天堂で占められているのです。これは、ゲームボーイアドバンスのときも、ゲームキューブのときも同じでした」(浜村氏)
その点で浜村氏は、2006年8月24日に発売された『ファイナルファンタジーIII』に注目していたのだそうだ。スクウェア・エニックスというサードパーティーの発売によるこのソフトが売れれば、浜村氏の「一抹の不安」は解消されるというわけだ。結果は、初週だけの販売本数で50万本を突破。消化率(出荷本数に対する販売本数の割合)も90パーセントを超え、非常に好調だとのこと。さらに浜村氏は、この『ファイナルファンタジーIII』を購入した人が、それまで遊んでいたタイトルを調査した結果を公表。2割以上が『東北大学未来科学技術共同研究センター川島隆太教授監修 脳を鍛える大人のDSトレーニング』だったという。浜村氏はこれを、カジュアルゲームからニンテンドーDSに入った人が、ゲームらしいゲームに手を伸ばした好例と捉える。以上のような分析から浜村氏は、ニンテンドーDSの今後の販売台数について「2000万台はおろか、3000万台に到達するかもしれない」と予測した。
続いて浜村氏は、Wii、プレイステーション3、Xbox 360に関して、それぞれ分析し、それに基づく予測を述べた。
まずWiiについて、浜村氏は「年末の大本命」と位置づけ、以下のような特徴を挙げた。
・DSの血を受け継いでライト層を取りにいく |
なぜ浜村氏はWiiを大本命に推しているのか? もちろん、価格設定もあるだろうが、「ファンがファンを呼ぶ構図」ができつつあることが大きいという。浜村氏はゲームをやっている人を強調するWiiのプロモーションに注目しており、ここに人が楽しそうにやっているのを見て、自分もやってみたくなる構図が現れているというのだ。
「Wiiの課題は、いかに"ならでは"のゲームを提示できるか。Wiiのソフトを試してみましたが、おもしろいけど、これまでのゲームに慣れた私には少し違和感があるタイトルもあった。しかし、岩田さん(任天堂社長)はそんなことご承知なんでしょう。慣れた私には違和感があっても、初めてやる人はきっとおもしろいはずです。メーカーにとっては、Wiiの登場は大チャンス。『脳トレ』のようなソフトが作れるかもしれません。そして普及してしまったらいままでのようなゲームらしいゲームを作ればいいのです」(浜村氏)
▲浜村氏はWiiの販売曲線を予測。価格を25000円前後と設定した場合、ゲームボーイアドバンスと似た曲線をたどるという。5年後には1000万台を突破するとのこと。 |
続いてプレイステーション3について、浜村氏は「圧倒的なグラフィック能力と圧倒的な高価格」と特徴を述べ、魅力的なネットワークインフラがあるものの、ブルーレイがDVDほどの吸引力がないことから、「ゲーム機としての真価が発揮されるのは2007年末になる」(浜村氏)と予測した。課題は"プレイステーション3の機能を活かした作品が作れるか?"ということと、"スロースタートを挽回できるか?"という2点。浜村氏はWiiに先行され、スロースタートになると見ている。
▲上の水色の線がプレイステーション2の販売実績。下の線がプレイステーション3の予想だ。 |
今後の販売台数の予測に関しては、PSP(プレイステーション・ポータブル)と同じような軌跡をたどるとのこと。5年で900万台〜1000万台に到達するという。これは発売当初に高価格が響くことを予想した見解だ。しかし、その高い性能が幸いして寿命の長いハードになり、10年で1500万台くらいに到達するという。
Xbox 360に関して浜村氏は、マイクロソフトはすでに普及台数以外のことを考えているという見解を示した。浜村氏によると、マイクロソフトは書斎にPCを持っている人を取りにきたという。これは、Xbox 360とウインドウズVistaでゲーマータグ(ID)を共有できるから。リビングのゲーム機と書斎のPCで同じゲームが遊べるというプレイ環境の便利さで勝負しようという戦略が見られるとのこと。また、浜村氏によると、マイクロソフトが目指しているのはiPodのようなビジネスで、「ソフトのロイヤリティーで稼ぐビジネスから、自分たちのサイトを通じてソフトをオンライン販売するディストリビューションビジネスへ転換を図っている」という。
浜村氏は以上のように、次世代ゲーム機の展望を述べたうえで、もうひとつの注目すべきプラットフォームを俎上に乗せた。"オンライン"についてだ。
浜村氏は近年、携帯電話コンテンツやPC用オンラインゲーム市場が伸びてきていることに注目。「オンラインに接続されていることが前提のマシンは強い」と述べ、オンラインを「次世代ゲーム機に匹敵するインフラ」と位置づけた。代表的な例として、ウインドウズ用ソフト『World of Warcraft』が2006年2月の時点で600万人の会員数を集め、パッケージでの販売本数も180万本(2005年末の集計)に到達、中国市場も席巻しつつあること挙げた。また、ソフトバンクグループのオンラインエンターテインメントサービス"Gプラネット構想"にも注目していることを表明。浜村氏によると、Gプラネットにはキャメロットの高橋兄弟のほか、コンシューマーで名をはせたクリエイターが参加しているという。
最後に浜村氏は会場に詰めかけたクリエーターに以下のようなメッセージを贈り公演を締めくくった。
「ハードのプラットフォーマーにビジネススキームを縛られる時代は終わりました。個人であろうが、どんな会社に所属していようが関係ありません。成功のカギは、自分が何を持っているかを見極め、自らの持つリソース(資質)に合わせ、どんな作品を作るかです。決め手はプロデュース能力にあります!」(浜村氏)
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