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ゲームにはどんなよい面があるのか? ゲームの効能を明らかにした"ゲームの処方箋シンポジウム"開催!

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●ゲームプレイにより気分が変化するなど、"処方箋"の可能性が明らかに!

 "ゲームの処方箋プロジェクト"というのをご存じだろうか? ナムコの創業50周年を記念してスタートしたこのプロジェクトは、これまで社会的に否定的なニュアンスで取り上げられることの多いゲームの状況をナムコが憂慮。ゲームの効能に着目して、科学的なアプローチにより個々のゲームの持つ特性や影響の違いを明らかにし、ゲームの最適な活用方法を明らかにすることも目的に始められたプロジェクトだ。

 

 ナムコは、2005年6月1日に、財団法人ニューテクノロジー振興財団および早稲田大学 こどもメディア研究所に調査・研究を依頼。早稲田大学 国際情報通信研究センターの河合隆史氏をチームリーダーに、プロジェクトはスタートしたのだ。そして、2006年7月14日、このプロジェクトの一連の活動成果を発表する"ゲームの処方箋シンポジウム"が開催。テレビゲームの効能について、極めて意義深い報告が行われた。ゲームの処方箋プロジェクトは、4つの研究テーマにわかれて調査・研究されたのだが、ここではそのひとつひとつの成果を見ていくことにしよう。

▲ナムコの創業50周年を記念しての"ゲームの処方箋プロジェクト"。科学的かつ中立的なアプローチによって、ゲームの影響や特性を評価。最適な活用方法に関する知見を取得・活用する試みだ。


(テーマ1)心理的効果を中心としたゲームソフトの効能の調査

▲ゲームソフトはプレイヤーに心理的な影響を与えうるのか? 河合隆史氏の報告からその結果が明らかに。

 この結果を報告したのは、ゲームの処方箋プロジェクトのチームリーダーでもある、河合隆史氏。テーマとなる"心理的効果を中心としたゲームソフトの効能の調査"とは、ある特定のゲームソフトをプレイしたときに、どのような生理的・心理的効果がもたらされるか、実験をとおして検証したもの。自身ゲーム好きであるという河合氏が、「私自身ゲームが大好きなのですが、忙しくてあまりプレイする時間がとれない。たまに時間ができたときに、"何をプレイしたらいいんだろう?"ということで、そのときどきの気分や体調によって、最適なゲームを推奨してくれるシステムがあったら」という着想を得て、この研究を行うことにしたという。

 具体的な研究方法としては、被験者にゲームソフトをプレイしてもらい、その人のストレスがわかる唾液中のα-アミラーゼを測定したり、アンケートによる印象調査などを実施。被験者の生理や心理を測定した。実験には、短時間のアクション系ゲームのほうが因果関係を測定しやすということで、プレイステーション・ポータブル(PSP)用『リッジレーサーズ』や『太鼓の達人』など5本が選ばれた。

 実験の結果はというと、たとえば、『リッジレーサーズ』を遊んだ被験者は、ゲームに習熟してからプレイしたほうがストレスが減ったり、プレイ中は活気が増すなどの生理・心理的効果が明らかになったそうだ。この結果について河合氏は、「テレビゲームのプレイが、生理・心理に変化をおよぼすことは確かです。変化の方向性はゲームソフトやプレイヤーの嗜好、プレイ内容に影響されます。また、特定のゲームに習熟したり、ゲームに集中しているプレイヤーは、気分の変化がより積極的になるという傾向も見られますね」(河合氏)とのことだ。

▲『リッジレーサーズ』をプレイすると、"活気"が大幅に上昇することが検証された。

▲近い将来、「こんな気分のときはこんなゲームがオススメですよ!」といった、ゲームの処方箋の可能性が示された。



(テーマ2)ビデオゲームのインタラクションの評価手法の研究

▲ある意味、ゲームのおもしろさの分析にもつながる渡邊氏の研究。「いまのゲームはちゃんと作り込みをしているのでしょうか?」といった問題提起も。

 ゲーム開発の肝となるのはなんといってもバランス調整。たとえ同じゲームでも、バランス調整ひとつによっておもしろいゲームにもなればつまらないゲームにもなる、というのはゲームファンなら周知のとおり。ところが、その肝心のバランス調整は開発者の感性や技能に任されてきたまま。はたして、バランス調整というのは数値化し得るのか、というテーマをリポートしたのが、おつぎに登壇した東京大学先端科学技術センターの渡邊克巳助教授だ。この研究は、ナムコの全面的な協力を得て実施。『パックマン』のゲームスピードを、製品版を100パーセントとして、85〜115パーセントまで7段階にカスタマイズ。プレイヤーと観察者にわけて、それぞれのゲームに対する心理反応を検証した。

 「プレイヤーは観察者に比べて、正確なスピード認識を行っていました。さらに、スピードが遅くなることで"つまらない"と感じ、速くなることで"おもしろい"という判断がそれぞれ増加しました。一方で、プレイヤーはゲームのスピードが早くなるほど"つまらない"と感じる人も増えています」(渡邊氏)。興味深いことに、『パックマン』では、デフォルトのゲームスピード時に(つまり100パーセント)、必ずしも"おもしろい"と感じる人がもっとも多かったわけではなかった。だが、"つまらない"という判断をする人は、プレイヤー、観察者ともにもっとも少なかったという。「"おもしろい"と"つまらなくない"は違うということですね。『パックマン』のクリエーターは、その辺をしっかりと分析してゲームバランスを調整したことは間違いないです」(渡邊)とのこと。いままでクリエーターの感性によっていたゲームバランスの妙味が、ある程度実験によって数値化されたようだ。

▲『パックマン』では、製品版でのスピードのときが、"つまらない"という評価がもっとも低かった。開発当時、開発スタッフは綿密な実証により、最適なスピードを突き止めていた。


 さらに渡邊氏は、視覚的注意機能の向上についても調査報告。これはゲームプレイ時に、プレイヤーは画面のどこまで一度に見ているかを検証したもの。人間は日常生活において、視線の中心から5度くらいの角度までしか情報を得られないと言われているが、ゲームにおいてはどうなのだろう? 実験の結果は、高スキルのプレイヤーほど実効視野が広くなり、ゲームの種類によっても、快適にプレイするための実効視野が異なることが明らかになった。たとえば、『アルペンレーサー』の快適な実効視野が20度だが、『太鼓の達人』は30度になるという。「『アルペンレーサー』はスキーで滑っていくので、そんなに広い実効有効視野は必要ない。一方で、『太鼓の達人』の30度というのは意外です。30度というと相当な広さで、ほとんどモニターの全部をカバーしてしまいますから。この結果を見ると、『太鼓の達人』では、プレイヤーはいろんな要素を見ながらゲームをプレイしているんですね。そんな実効視野を考慮することもゲーム制作には必要かもしれません」(渡邊氏)。バランス調整や作り込みもある程度数値化し得ることを明らかにしてくれた渡邊氏だった。

▲実効視野に比較して、見られる範囲が狭くなるほど、ゲームはプレイしづらくなる。

▲ゲームにより実効視野は異なる。『アルペンレーサー』は20度。『太鼓の達人』は30度。『もじぴったん』は10パーセント。このへんの視野の違いもゲーム作りの参考になる?


(テーマ3)発達障害児を対象として臨床現場での処方の仕方の検討

▲医学の立場からゲームを検証する宮尾氏。軽度発達障害児にも、ゲームは有効であることが明確になった。

 おつぎのテーマは、軽度発達障害児のテレビゲームの遊びかたにおける特性を調査したもの。軽度発達障害児とは、知的な遅れがなく、特定の能力に障害のある子どもたちのこと。テレビゲームをとおして、軽度発達障害児の得意な部分を引き出すことで、社会的なスキルアップなどにつなげられるのでは……という意図のもとに行われたのが、この実験なのだ。報告したのは、国立成育医療センターの宮尾益知医学博士だ。

 軽度発達障害児にはいくつかのタイプにわけられる。そのうち、コミュニケーションに障害のある、高機能広汎性発達障害児(HFPDD)はアクションやレースを好み、比較的操作方法が容易であり、全体が把握できるようなゲームをプレイ。一方、注意散漫などの特徴がある注意欠陥・多動性障害児(ADHD)はアクション、スポーツ、シューティングなど、運動系や興奮をするもので展開が予測できないようなスリルを楽しむゲームを好む。さらには、学習能力に障害のあるディスレキシアはアクション系を好んで遊び、比較的操作が難しいものでも短時間で習得し、集中してプレイしたことが確認された。

 さらに、知的発達障害児は軒並みテレビゲームに好意的で、「家庭でテレビゲームのプレイ後に気分は変化しますか?」との質問に対し、なんと82パーセントが「変化する」と回答。「楽しい、元気が出る」や「爽快感、落ち着く」といった返事が見られた。この結果に対し、宮尾氏は「知的発達障害児において、テレビゲームを用いた遊びは、気分転換を図るための手段のひとつであり、感情をコントロールするために活用し得ると思います。また、日常生活におけるルールを理解するための手助けとなる可能性もあります」(宮尾氏)とのこと。知的発達障害児に対して、テレビゲームは学習効果があることの可能性が示された。

▲知的発達障害児のゲームの好みを分析。37本のゲームソフトを自由にプレイしてもらい、アンケートおよびインタビューをするという手順が取られた。ゲームの影響では、「楽しい」や「爽快感」など肯定的な意見が多かった。


(テーマ4)遊びの要素に着目した立体ディスプレイを用いた学習障害支援用ソフトの制作

 最後の報告は、国立成育医療センターの宮尾益知医学博士。知的発達障害児のうち、知的能力や基本的な知覚能力に問題がないにも関わらず、読み書きに困難を示すディスレキシアに対し、奥行き表現を活用した立体ディスプレイの学習効果を検証したのだ。その結果、被験者や保護者ともに、全体的に高い評価が得られた。「実験の結果から、ディスレキシアを持つ子どもたちが、効果的に文字を認識できるようになるための支援システムの開発が可能だということが明らかになりました。ビデオゲームを活用した、言語学習への応用が期待できそうです」(宮尾氏)。

▲こちらが実験に用いられたマルチレイヤーディスプレイ。写真ではわかりづらいかもしれないが、左が平面文字なのに対し、右は文字を画数順に立体的に表示し、構造を学習できるようにしている。


 以上、4つのテーマについて、それぞれ注目すべきリポートがなされた。検証にはそれぞれ実験の絶対数が足りないなどの問題点も見られるものの、総じてゲームのよい面(=効能)と、その活用方法(処方)への扉が開かれた報告だと言えるだろう。そして、ゲームの処方箋プロジェクトでは、今回の研究成果を踏まえ、第二期研究テーマとして、以下の項目に取り組む予定だという。ゲームの処方箋プロジェクトのさらなる展開に期待したい。

(1)効能の再現性の高いゲームソフトを選定し、その処方箋を作成する。たとえば、「このゲームの効能は、抑うつ感の軽減に効果的」など、"ゲームのソムリエ"的な効能評価の確立を目指す。
(2)早稲田大学こどもメディア研究所とバンダイナムコゲームスのコラボレーションにより、特定の心理効果と化学的な根拠を持ったゲームソフトの共同開発に取り組む。
(3) 早稲田大学こどもメディア研究所とナムコのコラボレーションにより、子ども向け"遊戯施設"に関して共同研究を行う。

▲シンポジウムのあとには、識者によるパネルディスカッションも行われ、盛んに意見交換が行われた。ちなみに、一般の方も参加可能だったこのシンポジウムは満員という盛況ぶりだった。

 
※ナムコの公式サイトはこちら 

 

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