CESA主催の記者懇談会でメーカートップがざっくばらんに語った
2006/7/6
●スクウェア・エニックス和田洋一氏らそうそうたる顔ぶれが集結
2006年7月6日、CESA(社団法人コンピュータエンターテインメント協会)が、 第1回記者懇談会を開催した。これは、2006年6月14日に開催されたCESAの通常総会で、会長の和田洋一氏(スクウェア・エニックス代表取締役社長)を始めとする新役員体制が選出されたのを機に、初めて行われた催し。和田洋一会長のほか、副会長の石塚通弘氏(KONAMI執行役員コーポレートオフィサー)、常任理事の伊藤裕二氏(D3パブリッシャー代表取締役社長)、辻本春弘氏(カプコン取締役副社長執行役員COO)、理事の鵜之澤伸氏(バンダイナムコゲームス代表取締役副社長兼コンテンツ制作本部長)というそうそうたるメンバーが出席。訪れた記者を相手にざっくばらんな意見交換を行った。

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▲今回、もっとも多くの記者がまわりに集まったのは、やはり会長の和田洋一氏。"立て板に水"といった感じで質問に答えていたのが印象的だった。 |
懇談会は和田洋一氏が以下のように挨拶してスタートした。
「いままでこういう場はなかったんですが、みなさんと忌憚のない意見交換をしたいと思い機会を設けました。私や役員のみなさんも、個別の取材ですとどうしても会社を背負っての意見になり、客観的な意見がなかなか言えません。こうした場を設けることで、少し違った角度からのコミュニケーションが図れるのでは、と思っています」(和田氏)
会場はCESAの事務所。通常の発表会やパーティーなどと違い飾らない雰囲気だったが、それが逆に主要ゲームメーカートップとの距離感を縮めてくれた。記者は和田洋一氏と鵜之澤伸氏に話を伺った。和田洋一氏の挨拶のとおり、ざっくばらな懇談会だったため、"ここだけの話"も多く、そのすべてをお伝えすることはできない。概要だけお伝えしよう。
和田洋一氏は、今後のゲーム業界についてオンラインが重要になると語った。これは、MMO(多人数参加型)RPGのようなヘビィなオンラインゲームだけでなく、あらゆるタイトルに当てはまるという。それにともない、従来のパッケージ販売とともに、さまざまなオンラインでの課金が模索されているという。和田氏はそのいち例として"従量課金"を挙げた。たとえば、章仕立てのゲームの1章だけを無料で配信して、続きを楽しみたいプレイヤーだけにお金を払ってもらうという仕組みだ。
また、オンラインへの常時接続によって、ソフトのアップデートが可能になることを取り上げ、「ゲームメーカーはこれまで、ソフトの開発時に膨大なコストをかけてデバッグ(バグを発見し、取り除く作業)をやってきたが、このコストが軽減されるのではないか」(和田氏)とも語っていた。発売まえに、通常ではあり得ないような状況を想定してバグを見つける必要性は薄れるからだ。
また、「ゲーム内の広告も入れやすくなる」(和田氏)ともコメント。これも、いつでもソフトを更新できるオンラインの恩恵だ。

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▲気さくに懇談に応じてくれた鵜之澤氏。 |
鵜之澤氏はWiiとプレイステーション3の勢力争いに関する質問に答えるかたちで、以下のようにコメントした。
「勢力争いにはならないと思う。Wiiは家族や友だちみんなで楽しむ人が多くなる。ニンテンドーDSとの連動もおもしろいですよね。Wiiのタッチスクリーンコントローラーになるっていうし。アーケードにWiiを置いて、みんなでニンテンドーDSを持ち寄って楽しむなんてのもいいですよね。ただし、いまのメインユーザーである中高生への訴求力はどうかな、と思う部分もある。あとは、サードパーティーが任天堂に匹敵するソフトを作れるかが問題。任天堂さんのハードの場合、最大のライバルは任天堂さんですから(笑)。それとは別に、個人で楽しむゲーム機の需要がある。携帯ゲーム機やプレイステーション3がそれですね。プレイステーション3も、間違いなく売れるでしょう」(鵜之澤氏)
鵜之澤氏は、そのプレイステーション3に関して、「現状ではソフトメーカーはセルやグラフィックの性能を引き出すので精一杯な面がある。プレイステーション3の真価はそれだけじゃないですよね。たとえば、物理演算のすごさはアヒルのデモンストレーションだけでは伝わり切っていないでしょうね」とも語っていた。
また、オンライン面でのインフラが整ってきたことに関して、和田氏と同じようにビジネスモデルが変化する可能性を指摘。「ハンゲームの会員数は日本だけで1600万人を越えているそうです。GyaOの会員が最近1000万人を越えましたが、それよりも多い。今後は無料でゲームを提供して、アイテムで課金するようなケースも増えるでしょうね」(鵜之澤氏)とコメントしていた。

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▲カプコンの辻本氏。「カプコンは暴力表現の多いゲームという印象を持たれることもあるようですが、『逆転裁判』のようなゲームも出しています。司法に興味を持ってもらうことで、少しでも教育的見地でお役に立てたのではないでしょうか。こういったゲームはほかにも企画しています」と語っていた。ちなみに、そのタイトルは来年我々の前に姿を現わしてくれるとのことだ。 |
日本を代表するゲームメーカーのトップに立つ人々と、直接談話をするという、記者にとってはまたとない機会となった。早くも和田氏と筆頭とする新役員体制の効果が出たようだ。
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