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萌え要素とミステリーの融合による独特の世界を創り上げた『メモリーズオフ ゆびきりの記憶』インプレッション
【プレイ・インプレッション】

2010/7/29

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●ふたりのヒロインと主人公との関係が、修羅場ともいえる状況を産み出す

 『メモリーズオフ ゆびきりの記憶』はシリーズの7作目にあたり、10周年記念プロジェクトと銘打たれて作られた作品である。シリーズものの恋愛アドベンチャーではあるが、それまでのシリーズをプレイしていなくても、独立した作品として楽しめるものとなっている。純粋に恋愛をテーマにしていた前作と比べて、本作は序盤から秘密を抱えた少女が主人公の家に押しかけてくるという緊迫した展開。ありがちな萌え路線とは一線を画す本作を、ファミ通Xbox 360を中心にレビューや攻略記事を担当してきた古株ライター、石井ぜんじがインプレッションする。

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▲恋愛を机上のものとするのではなく、現実に即したリアルな人間関係を描いていくところがこのシリーズの特徴と言える。


●シナリオのおもしろさで読ませる“恋愛アドベンチャー”

 本作はいわゆる恋愛アドベンチャーである。だが、恋愛アドベンチャーといっても、作品によってかなり性質が異なる。本作の登場人物はおもに高校生だが、学校での恋愛模様だけが続くわけではない。冒頭からちょっとした謎が提示され、主人公とメインヒロインふたりとの関係はその周囲で展開していく。恋愛アドベンチャー特有の萌え要素と、ミステリー要素が巧みに融合しており、ストーリー展開で読ませる恋愛アドベンチャーになっていると言えるだろう。

●魅力的なキャラクターがそれぞれのスト−リーを紡ぐ

 本作の魅力を語るときに欠かせないのが、登場人物のキャラクター造形である。主人公やヒロインの個性がぶつかり合うとき、そこにドラマが生まれてくる。そこで登場人物たちの紹介をしながら、それぞれのキャラクターの見どころ、注目点を紹介していこう。

■芹澤直樹
 本作の主人公で、市立藤林高等学校に通う高校2年生である。誰とでもゆびきりをする“ゆびきり魔”。本作は選択肢を選ぶ分岐システムだけでなく、“ゆびきり”をするか、しないかという選択が存在する。ゆびきりは重要な場面で発生し、ヒロインと誓いの意味を込めて約束するかどうかを試される。通常の選択肢よりも、より真剣な決断を迫られる、という意味でこのシステムが存在している。
 主人公は、複雑な家庭の事情でひとり暮らしを始めることになる。その事情とは、どのようなものなのだろうか? 序盤ではあまりくわしく語られることはないが、その裏事情と違和感がプレイヤーの興味を惹きつけていくことになる。

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▲恋愛アドベンチャーには、個性のない主人公も多い。しかし本作では主人公の抱える秘密が、ストーリー展開上重要な役割を果たす(画面写真は“ゆびきり分岐システム”)。


■天川ちなつ

 主人公のいとこで幼なじみ。主人公の嫁を自称しており、最初から主人公に好意を抱いている。世話好きでつねに主人公を助けようとしてくるちょっとおせっかいなタイプ。外見はかわいく、ボケキャラの一面も持っている。
 ちなつをかわいいと思うか、うっとうしいと思うかはプレイヤーによって好みが分かれるところだろう。主人公にべったりではあるが、押し付けがましくならないように注意するくらいの分別は持っている。だが、主人公に別の女性が近づいていったときにはどうなるだろうか? 何らかの形で衝突は避けられないだろう。そのとき、ちなつがどんな態度に出るのかは、プレイヤーの選択にかかっている。

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▲主人公はそれほど感じていないようだが、甲斐甲斐しく尽くしてくれる献身ぶりはかなりのもの。彼女の幸せを望むプレイヤーも多いはずだ。

 
■南雲霞
 突然主人公の家に転がり込んできて、同居することになった家出少女。クールで頭が切れ、主人公を翻弄するような言動を取る。

気が強いかと思えば、涙もろいところも見せる彼女。主人公には自分のことをあまり話すことはなく、いろいろと謎が多い。どんな理由で主人公の家にやってきたのか、主人公とはどんな関係があるのか。それは物語の核心に迫る秘密であり、もっともプレイヤーの興味を引くところとなるはずだ。


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▲同年齢ながら、ミステリアスな雰囲気を漂わせる彼女。その硬い殻の中には、どんな感情が秘められているのだろうか。


■リサ・ケイシー・フォスター

 日本文化に興味を持ち、留学をしているアメリカ人。主人公のバイト先となる“風流庵”でアルバイトをしている。風流庵にはシリーズの別作品に登場する稲穂信、佐賀亨らも店のスタッフとして登場。ストーリーを進めていく上で重要な場所となる。
 リサはスタイルがよく、一途な想いを持っている女の子。主人公とはどんな“ゆびきりの約束”を交わすのだろうか。


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▲日本文化をこよなく愛する金髪の少女。その笑顔を見れば、なんでも許してしまいそうな風流庵の看板娘だ。

 
●星月織姫
 臨時でクラスの担任を任された新米教師。生徒からは“姫ちゃん先生”と呼ばれて親しまれている。成人女性にもかかわらず、身長がかなり低いのでときと場合によっては主人公より年下にしか見えないことも。
学生が中心になる主人公の交友関係の中で、教師というポジションは立場が違う。ふたりのあいだに芽生えるのは、禁断の恋愛感情なのだろうか? 幼い外見に似合わず、それなりの人生経験を積んできた姫ちゃん先生。そのギャップに、存分に萌えてほしい。

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▲数学の教師にもかかわらず、上手に三角形が描けない姫ちゃん先生。姫ちゃん先生のハートを射止めるには、彼女のすべてを受け止める覚悟が必要だ。


■鼓堂詩名
 主人公と中学生のころから親しい後輩。主人公、ちなつの両方ともに旧知の中である。カメラを持ち歩き、写真を撮ることを趣味としている。
 彼女の特徴は、明るさとユニークな才能を持っているところだ。喜怒哀楽が豊かで、機転が利く頭の回転の速さを持っている。そんな彼女も、自分の恋愛には器用ではない。主人公ならずとも、応援してあげたいという気持ちになるはずだ。


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▲明るくおもしろく、相手を思いやる気持ちも持つ彼女。等身大の女子高生としては、メインヒロインよりも魅力的なキャラクターだ。


●各キャラクターの持つ秘密が、プレイヤーをストーリーに引き込んでいく

 個性的な面々が集う本作だが、その最大の魅力は登場人物が抱える秘密にあるといってよい。登場人物たちは多かれ少なかれ秘密を抱えており、それは主人公も例外ではない。ちょっとした言動にその秘密は関係していて、プレイヤーはいろいろなことに違和感を覚えるだろう。登場人物よりも先にそれに気づき、やきもきしながら読み進めていくことがあるかもしれない。
 恋愛アドベンチャーでは必須な日常のやりとりは、本作においても展開される。しかしそのシーンで飽きてしまわないのは、これらの謎がスパイスとして効いているからにほかならない。本作は恋愛ものとしても十分な魅力があり、キャラクターの感情はていねいに描写されている。しかし秘密が多いという点では、ミステリーと呼んでも差し支えないであろう。単なる萌え系の恋愛アドベンチャーに飽きていて、ちょっとひねったストーリーを読みたい、と思う人にはオススメと言える。

 とはいえ、ミステリー好きの読者ならば、仕掛けられた謎について早めにわかってしまうかもしれない。アドベンチャーには共通ルートがあり、くり返すたびに同じことを体験することになる。その結果伏線に気づきやすく、思考が整理しやすい。これは本作にも当てはまる問題点である。
 ただし本作のすぐれた点は、恋愛模様とミステリー要素がバランスよく組み合わさっているところにある。謎解きだけに終始するのではなく、キャラクターの表情を楽しみながら、ストーリーに身を任せていくのがいいのではないかと思う。ストーリーをすべて体験したあと、思うところは人それぞれであろう。しかし本作の“読ませる力”は、かなりのレベルに達しているのではないだろうか。

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▲それぞれの恋愛の結末がどのようになるのか、気になってついついプレイしてしまう。できるだけ多くのエンディングを見てみよう。

 

筆者紹介 石井ぜんじ

ファミ通Xbox 360誌でクロスレビュー、攻略を担当する古株ライター。ゲームの文章を書き始めてから20数年、飽きずに続けております。過去に『NINJA GAIDEN(ニンジャガイデン)』シリーズ攻略本、『シュタインズ・ゲート公式資料集』に参加。最近ではアーケードゲーム『ボーダーブレイク』の攻略本などにも関わりました。これからも好きなゲームを応援したいですね。


 『メモリーズオフ ゆびきりの記憶』

■機種:Xbox 360

■発売元:5pb.

■発売日:2010年7月29日発売

■価格:7140円[税込]

■テイスト:恋愛

■ジャンル:アドベンチャー

■プレイ人数:1人

■CERO:12歳以上対象

■備考:初回限定版同時発売(価格は9765円[税込])


[石井ぜんじの過去のレビュー記事]
※光源を巧みに活かした独特の演出が秀逸、『アラン ウェイク』インプレッション
※これまでにない斬新な戦闘システムが爽快さへと誘う『エンド オブ エタニティ』
※ゲーム性のクオリティーアップが世界への没入感をより高める『アサシン クリードII』インプレッション
※時間という禁断のテーマに挑んだ本格派ノベルゲーム『シュタインズ・ゲート』インプレッション
※じっくりと余韻を楽しみたい大人のギャルゲー『ドリームクラブ』インプレッション
※プレイヤーの腕がしっかり反映される『バイオニック コマンドー』インプレッション
※戦略性がほどよくアクションに融け込んだ絶妙のバランス『真・三國無双5 Empires』インプレッション
 

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