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iPhone界のカリスマ、ニール・ヤング氏が語る「フリーゲームの登場で、ゲーム業界は史上もっとも大きな変化に直面している」
【GDC 2010リポート】

2010/3/15

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●有料ダウンロードからフリーゲームへの移行がもたらすもの

 2010年3月9日〜13日(現地時間)の5日間、アメリカ・サンフランシスコのモスコーニセンターにて、ゲームクリエーターによる国際会議、GDC(ゲーム・デベロッパーズ・カンファレンス)2010が開催。世界中のクリエーターによる講演が多数予定されている。ファミ通.comではその模様を総力リポートする。

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 日々変化しているゲーム業界にあって、iPhoneという時代の波に乗り、ここ数年で驚異的な業績を伸ばしているゲームメーカーがある。ニール・ヤング氏が率いるngmocoだ。ヤング氏は、GDC 2010の開催4日にあたる2010年3月12日に行われたセッション“Things to Unlearn Moving From Traditional Development to the New Digital World”において、2008年6月にngmocoを設立してから、いかにiPhoneでの新しいビジネスを展開していくに至ったかを講義した。

 「今日のセッションでは、従来型の伝統的な開発手法から、いかに新しいデジタルワールドへ移行すべきか、私たちの経験を踏まえながら話したいと思っています。作家のマーク・トウェインも“猫の尻尾を掴んで運ぶというのは、ほかの方法では学べない”と言っているとおり、これはiPhoneのビジネスでなければ学べなかったことです」とユーモア交じりに切り出したヤング氏は、まずは自身がエレクトロニック・アーツ在籍時はまったくモバイルゲームを作ることに興味がなかったこと。それがサンタモニカのアップルストアでiPhoneと運命的な出会いを果たしてから、「その使い勝手のよさに惚れ込み、新しい事業のスタートになると確信した」(ヤング)と、iPhoneの事業を立ち上げるまでの経緯を説明した。

 2008年6月に会社を設立し、ヤング氏はiPhoneへの戦略として、すばやく作れるコンパクトなプロジェクトと、ニンテンドーDSやPSP(プレイステーション・ポータブル)に匹敵するような大きなプロジェクトの2本柱で展開することを決定した。早くも、2008年10月には参入第一弾タイトルとして『Mazefinger』を無料で、『Topple』を99セントという格安価格で販売。両タイトルともそれぞれのカテゴリーでトップセールスを記録する。これに自信を得たngmocoは、翌月『Rolando』を10ドルという価格でリリース。同作はその年のホリデーシーズンにおけるiPhone用ソフトのセールスで第2位に入るという爆発的なヒットを記録する。そこからヤング氏は、「これからはボリュームのあるソフトを高額で発売して大きなビジネスにできると考えた」のだという。

 ところがそこから市場は急激に変化。2009年上半期にリリースした『Star Defense』も『Rolando 2』も期待したほどのセールスは見せなかったのだ。よくよく市場を見ると、驚くべきことに2009年上半期のトップ5タイトルの価格が平均1.68ドルに下落していたのだという。会社を運営させるための1200万ドルの収益を上げるためには、世界のトップ5に毎日少なくとも1タイトルがランクインしていないとやっていけない計算になる。それをうまくやっていけるのか? 袋小路につきあたったヤング氏は最初の一歩に立ち戻ってデータを検証した。「調査によると、これまでは1日平均2.2タイトル、各10分ずつプレイされていました。つまり、これはユーザーの1日のうちの22分間をもらっているということになります。そこで私たちはこれをお金に変えようと考え、大胆な決断をしたんです」とヤング氏は言う。具体的にはデイリー・アクティブ・ユニーク・ユーザー(DAU)という考えかたを導入。いかにDAUを増やして、ユーザーのゲームプレイをお金に変えるかにシフトしたのだという。つまり、無料でアプリを提供して広く利用してもらい、一部のユーザーによる課金で収益を上げるというビジネスモデルだ。「統計では10万DAUにつき1日5000ドルの収益がありました。バーチャルコンテンツに実際にお金を払う人は全体の2パーセントなので、10万人のうち2パーセントが5000ドルを使ったとすると、2.5ドルのアプリが2000回ダウンロードされたのと同じことになります。ここで重要なのは2000ダウンロードというのは、有料アプリのトップ25〜50位に相当するということなんです」(ヤング)。

 そこでngmocoは2009年7月より有料アプリを販売する会社であることを断念。開発中のアプリの配信日を遅らせてまでフリーゲームに対応。『Eliminate』と『Touch Pets』を開発し直してフリーで提供し、“Plus”という同社のネットワークサービスの登録者数を伸ばすことに注力したという。これにより目標は数字になった。ngmocoとしては、いかにDAUを伸ばし、DAUあたりの金額を上げることに専念すればいいのだ。そのため、ngmocoではDAUの収益率の高いFreeverse社を買収するなどフリーゲームに対して積極的に投資。2010年は『We Rure』と『GodFinger』という近日配信予定の2本を筆頭に、20本のフリーゲームを用意、iPadロンチ時にも6本のフリーゲームを予定しているという。


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 以上のプロセスの中でたくさんのことを学んだというヤング氏。では、従来のいわゆる伝統的なゲーム開発との違いは何なのか? ヤング氏はそれを(1)開発プロセス、(2)ビジネスモデル、(3)ヒットゲームの3つにあるとした。「つまりすべてですね(笑)」とヤング氏は言い放つ。

(1)開発プロセス
家庭用ゲーム機向けゲーム:開発期間は12ヵ月〜36ヵ月。開発がスタートしてから完成までに時間がかかるため、最初のビジョン+完成させる才能が重要になる。関わるスタッフも25〜200人と大所帯。ゲームが完成するとダウンロードコンテンツ以外は全部終わる。

ngmocoの初期の作品:3〜9ヵ月をかけて制作。5〜7人のスタッフで開発に取り組み、リリースしたあともフィードバックをもらいゲームを改善、アップデートも実施した。

ngmocoのフリーゲーム:開発期間は3〜6ヵ月。こちらも5〜7人のスタッフで制作。MVP(ミニマム・バイアブル・プロダクト)というテスト向けの商品を作り、全世界の5パーセントのユーザーを持つカナダでテストリリースしてからその反応をフィードバックし、全世界に配信する。その際、ゲームを“サービス”として扱い、開発チーム以外がプロジェクトを担当。データを反映しつつ多くの変更を加えていく。

 ヤング氏は言う。「開発プロセスは人がやるものなので、スタッフも賢く恐れずに柔軟性を持って変化についていかなくてはならない。専門知識を持った人を雇うには市場が早く動きすぎているので、スタッフがクリアーなビジョンを持てるようにきちんと説明をする必要がありますね」。


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(2)ビジネスモデル
 フリーゲームはなぜうまくいくのか? まずヤング氏は日本でも話題になった、クリス・アンダーソンの著作『フリー〜〈無料〉からお金を生みだす新戦略〜』を参考に、フリーからお金を生みだす3つの方法を紹介する。
a.ひとつ買うとひとつはフリーになる(両方とも50パーセント引きで買っているのと同じ)
b.広告主などのサポート
c.熱心なユーザーが多額のお金を使い、ほかをサポートする。周囲にアドバンテージを築くために、自分にとってゲームが優位に進むようにお金を使う。

 「このソーシャルスーパーチャージとも言えるものが非常に重要で、競争、協力、自己表現などが人を動かし、ユーザーにさらにお金を使わせるのです」と説明したヤング氏は、いまやゲームデザインはビジネスの成功に明確に結びついているとしたうえで、「ゲームデザイナーやプロデューサーなら、これはゲームビジネスが始まって以来、もっとも重要な機会の移行を意味している」と断言。「ライトなゲームシステムでコンテンツに依存するゲームを作るデザイナーにはこの市場は向かない」としたうえで、『Touch Pet』でのゲームデザインの失敗例を踏まえてこう続けた。「ユーザーがやっていることを見て、彼らがやりたことをさらに増やさなければならないんです。ユーザーの取り込みと維持はフリーゲームのもっとも重要な部分ですね」との見解を示した。細かな収益の積み重ねがフリーゲームのキモなのだということだ。
 

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(3)ヒットゲーム
 iPhoneの市場においては、チャートの順位は理由ではなく結果だ。チャートにランクインすることで新しいユーザーが加わる。従来のユーザーは残ってくれるので、好循環ができあがり収益があがっていく。従来の有料アプリのように売り切ったら終りというわけではなくて、右肩上がりの状況ができあがる。ヒットゲームというものの概念が変わるのだ。


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 最後にヤング氏は力強くこうまとめる。「エレクトロニック・アーツではよく、“変化は以前よりも強くやってくる、友だちだ”と言っていたが、今回の変化は非常に大きいです。開発、ビジネスモデル、ユーザーとの関係、デバイス、あなたたち、あなたたちのゲームと、すべてに大きく影響する。あなたがゲームデザイナーもしくはプロデューサーなら、ビジネスが始まって以来のもっとも重要な大きなシフトチェンジであり、機会であると言えるでしょう」。そこにはニール・ヤング氏の「あなたたちも早く変わりなさい!」というメッセージが込められているようにも思われた。iPhoneという革新的なデバイスが、ゲーム業界にもたらした大きな衝撃。変化の波はどこにまで及んでいくのか……。あるいはここ数年でゲーム業界は劇的な変化を遂げるのかもしれない……。iPhoneのビジネスで成功させている自負と自信が見えたニール・ヤング氏の講演からは、そんなことをうかがわせた。

※[関連記事]【動画】iPhoneアプリの雄による最新作を直撃! ngmocoはソーシャルゲームを目指す
 

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