HOME> ゲーム> 『スーパーストリートファイターIV』最後の新キャラ、トルコ相撲の使い手“ハカン”が発表
2010年3月9日〜13日(現地時間)の5日間、アメリカ・サンフランシスコのモスコーニセンターにて、ゲームクリエーターによる国際会議、GDC(ゲーム・デベロッパーズ・カンファレンス)2010が開催。世界中のクリエーターによる講演が多数予定されている。ファミ通.comではその模様を総力リポートする。
GDC 2010開幕初日終了後の夜、カプコンが市内にあるクラブでイベントを開催。会場内には日本で2010年4月28日に発売が予定されているプレイステーション3、Xbox 360用ソフト『スーパーストリートファイターIV』や、配信を開始したばかりのiPhone版『ストリートファイターIV』などが出展され、自由にプレイすることができた。と、ここまでならただの最新タイトル体験会だが、『スーパーストリートファイターIV』のキャラ選択画面およびプレイ画面をよーく確認すると、初めて見る35人目のキャラが……。その正体は、プロデューサーを務める小野義徳氏の口より明らかにされた。
「最後のニューキャラクターをここで世界初公開いたします」という小野氏の言葉とともに発表されたのは“ハカン”という名前の新キャラクター。以下の画像にもあるとおり、けっこうな迫力のある外見だが、一方で体が妙にテカテカしておりユーモラスな印象も見て取られる。この謎に満ちた新キャラの正体について、小野氏に直撃インタビューを敢行した。
――新キャラクター“ハカン”が発表されましたが、かなりインパクトのあるキャラクターですね。いったいあのキャラは何者なのか? という点を小野さんの言葉で説明してもらえますでしょうか?
小野 『ストリートファイターIV』シリーズでは、これまでにもいくつか新規キャラクターを追加してきたわけですが、今回のハカンはその中でもいちばん『ストリートファイター』らしい泥臭いキャラクターですね。
――『ストリートファイター』らしさ、とは具体的にどういうことでしょうか?
小野 ひとことで言うと“ありえないバカらしさ”。冷静に考えてみると、この作品ってリュウの波動拳でさえありえないものじゃないですか(笑)。そういうありえないところを追求していった結果が、ハカンなわけです。ここに到達できたことで、我々のチームもかなり成長できたと思いますし、内容に関しても「これが『ストリートファイター』の新しいキャラだ!」と皆さんに胸を張って見せられるものになったと思っています。なので、一見するとかなり突飛なキャラですが、本質的な部分では原点回帰していると考えていただければ。
――体にオイルを塗っているようですが、あれは一体……?
小野 ハカンはトルコ相撲の使い手なんですよ。新キャラを作るにあたって最初にやったことは、どれだけぶっ飛んだキャラクターにできるか? というテーマで集合して、1ヵ月間にわたるおもしろ映像集め(笑)。テレビでもいいし、レンタルビデオでもYouTubeでもなんでもいいからとにかく集めて……最後に残ったのがオジサンたちが体にオイルをかけながら抱き合って悶えているというものでした。これがトルコ相撲という存在を知るきっかけになって、そこからトルコ相撲を『ストリートファイター』チックにしようと考え、ゲームキャラクターとしてのバランスをチューニングしていった結果がハカンなんですよ。最後に発表したというのは、すごくカッコよく言えば“最後まで残しておいた”なのですが、実際にはギリギリまで仕上がらなかっただけだったりも(笑)。チームおよびカプコン全体のチェックで、「これは『ストリートファイター』のキャラだ」というお墨付きをもらうまでがとにかく大変で、ここまでの道のりはかなり長かったですね。
――おもしろ映像から生まれたとのことですが、ハカンが戦う理由とは?
小野 オイルはトルコ相撲においてけっこう重要な存在らしいので、じゃあ世界中をまわっていちばんいいオイルを捜すというのはどうだ、と(笑)。彼はオイル会社の社長なんですけど、そういう理由から最高のオイルレシピを求めて旅立っていくんです。もう、それ格闘ちゃうがな! って感じなんですけどね(笑)。
――見た目もストーリーもぶっ飛んでるんですね(笑)
小野 そのとおりです!
――実際にハカンを操作させてもらったのですが、性能的な面でもいままでにないタイプのキャラクターに感じられました。タイプとしては、打撃技、投げ技どちらが得意なのでしょうか?
小野 波動拳コマンドの技もあれば、投げ技系のコマンドもあったりするんですけど、今回僕らが目指したのは“ハカンを極めれば新しい軸に辿り着く”というもの。一方で、入口はなるべく多く設けるという点にも、ディレクターを始め、開発スタッフ全員がこだわりました。なので、コマンドに関しては打撃、投げ両タイプのコマンドが取り入れてあるわけです。新キャラクターを触るきっかけ、これは敷居とも言いますが、そこを限定してしまうとけっきょく使われなくなってしまうことが多いんですね。もしくは、トップクラスのプレイヤーしか使わなくなってしまう。そうすると初心者、中級者の方たちが新キャラ対策できないという悪循環も生まれてしまうわけです。だから最低でも、技や動きといった情報を1回でも自分で触って知ってもらうために入口を多くしました。
――つまり、ハカンという新たなタイプの誕生ということでしょうか?
小野 そうですね。そうなってくれることを願っていますし、使いこなしたさきには新機軸の動きがあると僕は信じています。
――では、初心者向け、中級者向け、上級者向けという点ではどこに分類されるのでしょうか?
小野 使いこなすとなると、中、上級者向けになりますかね。前作『ストリートファイターIV』では、『II』から戻ってきた人でも楽しめるという点を意識したのですが、『スーパーストリートファイターIV』はその戻ってきた人たちを、もう1ランク上へ引っ張るためのルート作りだと考えています。『III』のキャラクターを入れた理由もそのひとつですが、正直あれらのキャラクターはかなり上級者の人たち向け。ハカンは『III』のキャラよりもちょっと手が届きやすいところにいて、『III』のキャラを使いたいけど手が届かない、と感じている人たちの足場になってもらいたいんです。ただ、もうひとりの新規キャラクター“ジュリ”に関してはかなり初心者向けでしょう。思ったとおりに操作できると思いますし、使いこなせばかなりいいところまで行けるはずです。
――今回の完全新規キャラクターをジュリ、ハカンという順番で遊べば、最短距離で腕前が上達するかも、というでしょうか?
小野 そうやって遊んでもらえれば一気にステップアップできると思いますよ。でも、ジュリは非常に魅力的なコンボを持っていたり、見た目も華やかなので、誰もハカンに移ってくれないんじゃないかなって、個人的に心配しています(笑)。いま思えば、ジュリの外見をハカンにして、ハカンの外見をジュリにしておいたほうがよかったかもしれませんね!(笑)。
――ちなみに開発スタッフのあいでは、ジュリとハカンどちらが人気なのでしょうか?
小野 ハカンはまだでき上がったばかりなので、社内トーナメントとかをやってもなかなか出てきません。ただ、もうほぼ調整は終わったので、これからさきどれくらいのスタッフがハカンを選ぶのか、僕自身も楽しみにしているところです。
――ハカンの技で、体にオイルをかけるというものがありましたが、あれはどういった効果があるのでしょうか?
小野 あれをやることでキャラ性能が一定時間アップします。戦いに波を作ってみようと考えまして。じつは、あの技をEX技で発動すると飛び道具をすり抜けるんです(笑)。そこら辺もテクニックのひとつとして使ってもらえれば、非常に楽しいキャラクターになると思いますよ。
――キャラクターの色として、ダンに近いものを感じたのですが……。
小野 それはみんな言ってますね。ただ、ダンには申し訳ないのですが、キャラクターの強さとしてはダンと同じ位置にいません(笑)。闘劇などの大会に出てもおかしくない強さのキャラに仕上げました。だから、プロモーション映像などでは完全にお笑いキャラですが、敬遠しないでくださいね。お笑いキャラで頂点を目指せると考えていただければ、かなり魅力的なキャラクターに感じられるのではないでしょうか。
――笑いも勝ち星も取れるキャラクターというわけですね。
小野 まさにそのとおりです! 前作でもルーファスという、見た目はお笑いだけどトータル的にはかなり強い新キャラというのがいたのですが、個人的にはそれと同じか、もしくは越える位置を狙えると思っています。基本的なキャラクター性能もそうですし、キャラクター研究のやりがいという点においても。
――今回は海外先行でプレイアブルとなりましたが、日本のユーザーが触れられるタイミングはいつになりそうでしょうか?
小野 2010年4月4日に秋葉原でアーケード版『ストリートファイターIV』の全国大会が行われるので、その会場にキャラクターフル解放のバージョンを出展します。
――今回のハカン発表で、新キャラは10人追加となったわけですが、これだけのボリュームにも関わらず前作から価格が下がっているのは驚きです。
小野 本作を発表した当初、多くの人が『ストリートファイターIV』の“ダッシュ”という感じで、新キャラが2〜3人追加されただけとか、色違いのキャラが増えただけとか捉えているのだろうなと思ったので、それを逆の形で裏切りたいと考えました。あとは、いまってダウンロードコンテンツでバージョンアップできるわけですが、今回の追加内容に関してはそれに入りきらないほどのボリュームになってしまったので、できる限りダウンロードコンテンツの価格に近づけるよう努力した結果でもあります。ここでまたフルプライスで出すよりも、少し無理してでも低価格で提供したほうがより長く遊んでもらえるタイトルになるんじゃないかな、とも思いました。ちなにに、内容的にはほとんど『V』に近いので、個人的にはコードネームで“4.9”と呼んでいます(笑)。
――今回の発表で総キャラクター数は35キャラになりましたが、これは多いほうだと思いますか?
小野 僕は個人的に使えるキャラは多ければ多いほうがいい、という考えではないので、この35キャラという数字は対戦ツールとして限界の数字だと感じています。以前から言っていますが、『ストリートファイターIV』シリーズはR35の作品ですから。それくらいの年齢の人が覚えられる限界は25キャラくらい。だから、今回10キャラ増えたのは彼らに対する「がんばって!」というメッセージでもあります(笑)
――最後にハカンの見どころなども含めて、ファンへのメッセージをお願いします。
小野 新キャラ発表もこれでついに打ち止めです。ただ、ここで終わるつもりなどはまだまだなくて、4月、5月にも新情報を発表していく予定ですので、ぜひ楽しみにしていてください!
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