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「自分が好きだと思えるものだけやればいい」――名越氏が未来のクリエーターにエール

2010/1/30

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●「年をくったら、やれなくなる。そういう時代は来る」

 

 2010年1月29日、都内にあるIT関連およびデジタルコンテンツの人材育成スクール、デジタルハリウッド東京本校にて“曽利文彦×名越稔洋 トップクリエイター対談”と題した講演が開催された。これは、同校の1年制・選抜制“本科”コースの特別授業として実施されたもので、講演名にあるふたりによる特別講義および対談が行われた。

 

 曽利氏は、歴史的ヒットを記録した映画『タイタニック』にCGアニメータとして参加。3DCGを効果的に使用した実写映画『ピンポン』で監督デビューも果たし、その後『アップルシード』、『ベルシク-2007 日本鎖国-』で、“3Dライブアニメ”と呼ばれるCGとアニメ的表現をハイブリッドさせた映像を確立し、世界的に高い評価を得ている。2009年12月には、その表現をさらに進化させた最新作『TO 楕円軌道』、『TO 共生惑星』をリリース。日本を代表する3DCGクリエーターとして、業界の第一線を走り続けている。同氏は特別講義で、自身の経験をとおして、学生たちに3DCGを制作するうえでの心意気とも言えるものを伝授。3Dライブアニメという表現を続ける理由について、ハリウッドなどの世界を相手にするうえでは「日本のよいところで世界に突っ込み、自分たちにしかできない手法」でやる必要があると説明した。一方で、3Dライブアニメにこだわっているわけではなく、あくまで「ひとつのスタイル」とも語る曽利氏。「世界で成功するにはモノマネをしないこと。マネじゃないものができて初めて、世界と同じフィールドに立つことができる」と、クリエーティブに対する姿勢を学生たちに説いた。


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 続いて特別講義を行った名越氏は、ファミ通.com読者には説明の必要もないと思うが、セガの『龍が如く』シリーズで総合監督を務める、日本屈指のゲームクリエーター。同氏の講義も曽利氏同様、技術面ではなく精神面のアプローチからクリエーティブという行為への持論を展開する内容となった。
 

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 名越氏は、国内ゲーム市場が過渡期に入り、より大きな市場を求めて世界を目指す作品が数多く見られるようになってきたが「アメリカ人のふりして作ってもアメリカ人には負ける」と断言。加えて、より多くの人に受け入れてもらいたいという考えかたでクリエーティブすることは「ボンヤリした作品」につながるとも語る。同氏は自身の代表作である『龍が如く』シリーズが、「海外は捨て、女、子供はいらない」という考えであったにも関わらずヒットしたことを例に挙げ「ヒットの条件は認知度が高いが、誰もやっていないこと」に挑戦することであると説明。ご存知のとおり、『龍が如く』シリーズは極道の世界を舞台にしたアダルトな雰囲気が魅力のアドベンチャーゲーム。こういったジャンルの作品は映画で数多く見られるが、ゲームにおいては同シリーズが出てくるまでほぼ皆無に等しかった。名越氏の語る、ヒットの条件が完全に当てはまるというわけだ。とは言え、やはり新たな試みにはリスクがつきもの。第1作目を作るときは「もしハズれたらクビになってもかまわない」という覚悟を持って開発に臨んだという。

 

 『龍が如く』シリーズは、物語の内容はもちろん、ゲーム全体のボリュームもかなりのスケールだ。にも関わらず、1年に1作という、この規模のタイトルとしては驚異的とも言えるスピードでリリースを続けている。発売スパンの短さにも、名越氏のこだわりがあるという。第1に作品の存在を忘れられないため、そしてもうひとつは前作のヒットが「たまたまのものだと思われてはいけない」という考えによるもの。続編タイトルには必ず「前作を超えるもの」という期待が集まる。それに応えることで掴んだマーケットは、一過性のものではなく本物である、と名越氏は思っているそうだ。
 

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▲シリーズ最新作、プレイステーション3用ソフト『龍が如く4 伝説を継ぐもの』も、前作から約1年となる2010年3月18日発売予定。

 

 講義の中では、3DCG表現への言及も行われた。3DCG表現では「キレイ、なめらか、カッコよく」という部分が重視されがちだが、それは違うと名越氏は話す。技術の進歩により、プロもアマチュアもほぼ同じ機材を使うようになったいま、目指すべきは「観る人を揺さぶるような」表現であるという。つまり、“質”よりも“見せかた”というわけだ。名越氏は、3Dで何かを表現するためには「ものごとの裏を知らなければいけない」と続け、3D表現をする人たちには「好奇心と行動力がある」であると分析。探究心をストレートに追求して物に対する見かたを増やす、それが技術につながっていく、と学生たちに呼びかけた。

 

 最後に名越氏はクリエーターを目指す若者へのメッセージとして、いま何をやるべきかという問いに「好きなことをしなさい」とコメント。「年をくったら、やれなくなる。そういう時代は来る。10個やろうと思うことがあって、そのうち3つしかできなかったとしても、“7つできなかった”と考えるのではなく、ほかの人よりも3つ伸ばすことができたと思うべき。いまは、自分が好きだと思えるものだけやればいい、最高の時間だと思います」(名越)。
 

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▲曽利氏、名越氏の対談では、技術の進化でプロもアマも関係ない時代が来ているという点で意見が一致。「言いわけができないので、人間力で勝負する時代。我々はそこで、プロと言われる所以を見せなければいけない」(名越)と語った。

 

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