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さまざまなチャレンジに満ちた意欲作 『ファイナルファンタジー・クリスタルクロニクル クリスタルベアラー』
【プレイ・インプレッション】

2009/11/12

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●これまでの『FF』とも『FFCC』とも違う、新たな『FF』

 

 『ファイナルファンタジー・クリスタルクロニクル』シリーズの最新作としてWiiでリリースされた『ファイナルファンタジー・クリスタルクロニクル クリスタルベアラー』。シリーズおなじみの壮大な物語の中に、システム面、演出面において、さまざまなチャレンジを施し、新たな『ファイナルファンタジー・クリスタルクロニクル』を形作った作品である。そんな同作を、『ファイナルファンタジー』シリーズ大好きライター、世界三大三代川がプレイ。新たな様相を見せる『ファイナルファンタジー・クリスタルクロニクル』シリーズ最新作について、その印象を語ってもらった。


 

●『FFCC』のお約束を踏襲しない『FFCC』

 

 “河津さんらしい作品”。ゲームをプレイしている最中にそう思った。だが、そう書くとなんだか誤解を招きそうな気もする。“河津さん”とは、『魔界塔士サ・ガ』や『ロマンシング サ・ガ』などの『サガ』シリーズを生み出した河津秋敏氏のこと。河津さんと言えば、非常に歯応えのあるゲームを作ることで有名で、何度も辛酸を舐めさせられたプレイヤーが、途中でゲームを投げ出してしまうこともしばしば。だが、その容赦なくプレイヤーを追い詰めるバランスこそ、やりがいのあるゲームだと信じる人々にとっては、“河津神”というあだ名がつくほど、人気の高いクリエイターである。だが、今回の“河津さんらしさ”とはその難度ではない。むしろ、本作で難しいと感じる場面は少なく、その点においては河津さんらしくない(失礼)ゲームである。

 では、何が河津さんらしいのか。それは、このゲームが、いままでの『ファイナルファンタジー』(以下、『FF』)とはまったく異なる、独特のゆるさを持つ点である。 『ファイナルファンタジー・クリスタルクロニクル クリスタルベアラー』は、2003年にゲームキューブで発売された、新たな『FF』シリーズ『ファイナルファンタジー・クリスタルクロニクル』(以下、『FFCC』)シリーズの最新作。『FFCC』シリーズとは、クラヴァット、リルティ、セルキー、ユークの4つの種族が住む世界を描いた作品で、非常にかわいらしいグラフィック(ストーリーは意外とシリアスだが)と、複数人で遊べるマルチプレイが特徴のシリーズである。だが、『FFCC クリスタルベアラー』はそのどれにも該当しない。プレイ人数はひとり(ふたり目のプレイヤーがゲームに関与することはできる)で、世界設定はユーク族が消滅した時代、しかもかわいらしさよりもカッコよさを感じる、ハリウッド映画のような物語である。

 

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 主人公は、金髪青年のレイル。彼はつねに前向きで、クヨクヨと悩んだりせず、困難にみずから立ち向かっていくアクション映画の主人公のような性格。物語の目的は、レイルがひょんなことから巻き込まれた事件をきっかけに、滅んだはずのユーク族を追っていくというものだが、これがテンポよく物語が進むため、ついついさきの展開が気になってしまう。そんなレイルは、人と異なる特別な力を持つ。それは引力を自在に操る力。そして、そういった特別な力を持つ者を、この世界では“クリスタルベアラー”と呼ぶ。
 

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●アドベンチャーらしい新バトル

 

 クリスタルベアラーのレイルは、敵と戦う方法も非常に特徴的。引力で敵を引っ張って床に転ばせたり、敵を持ち上げて別の敵にぶつけたり。引力を操る力で敵にダメージを与えていく。Wiiリモコンで敵をポインティングして捕まえ、Wiiリモコンを振ったほうに敵が吹っ飛んだり、持ち上げられたりするのだが、これがまた気持ちいい。意味なくモンスターを持ち上げたくなるほどだ。だが、それはあくまで基本中の基本。本作では、モンスターがAIで制御されており、レイルの取った行動に応じてさまざまな反応を見せるのだ。

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 たとえば、1体のモンスターを強引に持ち上げると、そのモンスターを助けようとワラワラ寄ってくる者もいれば、逆に一斉に逃げだすようなモンスターもいる。もっと詳しい行動を一例で出すと、スケルトンを転ばせると、頭蓋骨が飛んで行き、周囲にいる犬型のモンスターがその頭蓋骨を追いかけ回す。そしてスケルトンがそれを追うという、まるで4コママンガのような光景が描かれるのだ。だからこそ、本作のバトルはただ敵を引っ張り、持ち上げ、敵を倒すことを目的にするよりは、「この行動を取ったらどうなるだろう?」という反応を楽しみ、その敵と敵とのあいだに起こるストーリーを自分の中で補足するような、アドベンチャーゲームらしいものに感じられる。事実、敵を攻撃したり、街に入ったりすると、それぞれの解説が画面下部に流れ出すのだが、それはただプレイしているだけではわからない裏設定が書かれた内容になっている。それを読んだうえでモンスターと対峙すれば、「こいつもいろいろあるんだなあ」と感慨深くならずにはいられないのである。

 

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 なお、この引力を扱う能力はバトルだけで使うものではない。街中で住人に使ったり、あたりに置いてある物体を投げたりということもできるのだ。それによっていいことをすれば住人から好かれるが、悪いことをすれば衛兵からボコボコに蹴っ飛ばされるような嫌われ者にもなる。これらの反応には勲章が設定されているものが多く、それを観ることで勲章が獲得できるので、コレクション要素が好きな人には非常に長く楽しめる要素になっている。個人的には、住人を吹っ飛ばしてお金を落とさせるというセコいお金稼ぎに使うことがメインになっていたが。
 

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●河津氏が魅せる新たな『FF』のカタチ

 

 そして、本作のもうひとつの大きな特徴が、イベント中に突如挿入される、プレイヤーが関与するシーン。RPGのイベントシーンと言えば、ストーリーを楽しむために“観る”シーンが多いが、本作では突然、Wiiリモコンを使った操作が要求される。非常に使い古された言葉だが、わかりやすく言えば“触れる映画”である。これを“プレイアブルイベント”と呼ぶのだが、この手のイベントに介入できるゲームでは、操作を失敗した場合、もう一度イベントをやり直しになることが多い。しかし、本作ではいくらミスをしてもやり直しになることはほとんどなく、そのままゲームが進んでいく。これまでの河津さんへのインタビューによれば、これは誰でもクリアーできるようにしたかったという意思の現れなのだが、これが、いい意味でとてもゆるいゲームになっている。そしてこのゆるさこそ、冒頭に感じた河津さんらしい部分につながっているのだ。


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 これまで、『FF』シリーズは当然のこと、『FFCC』シリーズにも、バトルは敵との戦いを楽しむもので、敵の反応を見るのが楽しいというものではない(『小さな王様と約束の国 FFCC』と、『光と闇の姫君と世界征服の塔 FFCC』のバトルは意味合いが異なるので割愛)。ましてや、重要なイベントシーンに挿入される、プレイヤーが操作する場面でミスしてもいいなんていうことは、そうそうなかったはずだ。この、これまでの流れを断ち切るような革新を感じたとき、「ああ、『サガ』と同じだなあ」ということを感じたのだ。

 ご存知のとおり『サガ』は『FF』以上に作品ごとにシステムを変える作品。あまりの尖った変化にユーザーが戸惑いを覚えることすらあるほどだ。そんな作品を生み出してきた河津さんは、みずから関わった『FF』を『FFCC』に変え、『FFCC』すら新たなものにしようとしているのだろう。みんなで楽しむマルチプレイだった『FFCC』から、みんなで反応を見て楽しむ作品になった『FFCC クリスタルベアラー』。アクション映画の主人公のようなレイル、つぎつぎとさきの展開が気になるように作られたストーリー、そしてプレイヤーが介入できるイベント。そこに、モンスターや住人の反応を見るようなシステムが組み合わさったとき、まったく新しい『FF』が見えてくる。この新たな『FF』が、このさきどうなっていくのかはわからない。だが、本作をプレイすれば、きっと河津さんのチャレンジ精神が味わえるとともに、もし同じタイプの続編を作ることがあっても、河津さんがまた大きく変えるんだろうなあという、脈々と受け継がれる変革の心を感じるはずだ。

 

 追伸。ちなみに、本作の音楽はハードロックあり、カントリーあり、サーフロックありと、非常に『FF』らしくないどころか、ゲームミュージックらしくないものに仕上がっている(もちろん『FF』らしい壮大な曲もある)。どれもメロディー、テンポともにいいため、敵の反応を探りながら堪能するのに、非常によかったことをつけ加えておく。サントラ欲しいな。なーんて思っていたら、2009年12月9日にサントラが発売されるそうで。音楽が好きな方は、一度チェックしてみるといいかと。

 

text by 世界三大三代川


 

著者紹介
世界三大三代川

週刊ファミ通編集部出身のフリーライター。『FFCC』シリーズはすべてプレイしており、キャラクターメイキングがある場合は、必ずユーク族を選択。それだけにユーク族が滅んだ設定を知ったときには、大層なショックを受けた。


 

ファイナルファンタジー・クリスタルクロニクル クリスタルベアラー
機種:Wii
メーカー:スクウェア・エニックス
発売日:発売中(2009年11月12日)
価格:7340円[税込]
テイスト/ジャンル:ファンタジー/アクション、アドベンチャー
備考:プロデューサー/シナリオ:河津秋敏、ディレクター/キャラクターデザイン:板鼻利幸、ミュージック/アレンジメント:岩崎英則


※『ファイナルファンタジー・クリスタルクロニクル クリスタルベアラー』公式サイトはこちら
 

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