HOME> ゲーム> クリエーターズトークショウで名越氏が完全新作についてポロリ
●日野晃博氏と名越稔洋氏がゲーム制作へのこだわりを語った
東京ゲームショウの最終日となった2009年9月27日、メインステージで“クリエーターズトークショウ”が行われた。エンターブレイン代表取締役、浜村弘一氏がナビゲーターを務め、レベルファイブ代表取締役の日野晃博氏と、セガCS研究開発部統括部長の名越稔洋氏、よゐこの有野普哉が参加。トークショウの最後には、聴講者からの質問に答える形で、名越氏が『龍が如く』シリーズとは別の完全新作を制作していることを明らかにした。
トークショウ全体のテーマは、“ゲームのいまと未来のゲーム”。その大きなテーマを、“ゲームユーザーの広がりと未来のゲーム”、“これからのゲームについて”、“つぎの世代に望むこと”という3つの小テーマに分けて語られた。
“ゲームユーザーの広がりと未来のゲーム”では、日野氏、名越氏のふたりが、それぞれ『レイトン教授』シリーズ、『龍が如く』シリーズで、いかにしてゲームユーザーを広げたかについて語られた。日野氏は『レイトン教授』シリーズを立ち上げる際におじいちゃん、おばあちゃん、お母さんでも楽しめるゲームを目指したそうで、ライトユーザーをどれだけ獲得できるかを勝負所と見ていたそうだ。それが功を奏し、女性ユーザーが男性ユーザーを上回るという目論みどおりの結果を生みだした。いっぽう、名越氏はターゲットを絞り込むことで逆にユーザーを広げることに成功している。発売時の“ゲームに飽きた人たちへ”というキャッチコピーを記憶している人も多いと思うが、『龍が如く』は従来はゲームを卒業することの多かった30代以降の大人のユーザーにターゲットを絞ったタイトルで、実際に購入者の7割が30代以上、2割近くが50代以上となった。浜村氏が指摘したように、「お互い真逆のチャレンジをしながらも、ユーザーを広げていかなければという意識があった」という点で共通しているわけだ。
浜村氏は、『レイトン教授』シリーズと『龍が如く』シリーズの成功には、両者に何かこだわる部分があったからと見ており、ふたつ目のテーマ“これからのゲームについて”で、それを俎上に上げた。2007年2月15日に発売された『レイトン教授』シリーズ第1弾『レイトン教授と不思議な町』は、それまで開発会社としてソフトを開発してきたレベルファイブがパブリッシャーとして始めて発売したタイトル。開発費や広告費は控えめにするのがふつうだが、日野氏はコストを惜しむことはなかった。『レイトン教授』シリーズはニンテンドーDS用ソフトで、電車の車内などで音声を出さずにプレイする人が多いことを承知のうえで、声優として、旬の俳優である大泉洋や堀北真希を起用。また、ニンテンドーDSの小さな画面に映画並みのアニメーションを随所に盛り込むなどコストをかけた。あるユーザーが『レイトン教授』を“超大作カジュアルゲーム”と評したそうだが、その言葉は日野氏のこだわりにピタリと当てはまる言葉だという。一見すると、無駄とも思われる日野氏の試みはどのような考えに基づいているのだろうか?
「ふつうのデビューをしても相手にしてもらえないだろうと考え、とにかく目立つことを心がけました」と、当時の思いを語った日野氏のキーワードは“仕掛け”で、そのこだわりは、その後のタイトルにも活かされている。『イナズマイレブン』では、福岡のサッカースタジアムのネーミングライツ(命名権)を買い取ってレベルファイブスタジアムとし、その続編である『イナズマイレブン2 脅威の侵略者 ファイア/ブリザード』では、子どもたちに驚いてもらうために、宇宙人とサッカーで戦うというストーリーを作り上げた。また、2010年発売予定のニンテンドーDS用ソフト『二ノ国』では、ゲーム業界では不可能という伝説があったスタジオジブリとのコラボレーションを成立させている。2010年発売予定のPSP(プレイステーション・ポータブル)用ソフト『段ボール戦記』では、バンダイからプラモデルが発売されることが決定しているが、これは日野氏の子どもは手に入れたものに対して強い感情移入をするのではないかと考えたからだという。プラモデルを購入した子どもはゲームもしたくなるという算段だ。
名越氏も「コラボレーションは『龍が如く』の命」と語るように、同シリーズでコラボレーションによる話題作りを積極的に活用している。渡哲也を始めとする俳優の起用や、音楽に矢沢永吉を使うなど、大物とのコラボレーションが目立つが、そのほかにも実際の店舗をゲームに登場させるなど、さまざまなことを行っている。名越氏は多くの切り口から『龍が如く』に引っかかるポイントを設けようと念頭に置いているとのことで、それがゲームユーザー以外の層に『龍が如く』が浸透した理由のひとつになったようだ。その名越氏のこだわりを表すキーワードは“信念と責任”。名越氏は、たとえタブーに近い題材であっても“信念”を持って作り上げること、それとともに作るだけでは不足であると語った。ゲーム制作者には、題材を消化して作ったうえで、理解してもらうという“責任”があるという。1作目では伝えきれなかったところがあったという名越氏は、その“責任”を果たすために『龍が如く』をシリーズ化し、それが名越氏に題材へのさらなる理解をもたらしたそうだ。
3つ目のテーマ“つぎの世代に望むこと”では、日野氏、名越氏のふたりによる若いゲークリエーターへのアドバイスという趣旨でトークが行われた。名越氏は、現在、さまざまなメディアでゲームが遊ばれている状況を理解する必要があることを説いたうえで、しかし、「自分は誰よりも知っているというものを、ぜひ売れる形にしてほしい」と、“売れるから”というマーケティングに偏った考えでハードを選んでほしくないと訴えた。一方日野氏は、同業者に向けた発言として、筋のとおったゲームを作ってほしいと願いを述べた。“筋のとおった”というのは、作り手の思いやコンセプトのはっきりしたゲームで、名越氏の“信念”というキーワードにも通じるところがある。日野氏はそうしたタイトルの中から、『ドラゴンクエスト』や『ファイナルファンタジー』シリーズに続く、新たなゲームが登場する可能性を見ているとも語った。
最後に観客からの質問が募られたが、「新作の制作は?」という質問に対し、名越氏が『龍が如く』シリーズではない完全新作を制作していることを明らかにした。『龍が如く』シリーズで固まった開発チームの結束力を『龍が如く』シリーズだけに止めるのはもったいないと考え、完全新作に取りかかったというが、もちろん『龍が如く』シリーズをおろそかにすることはないとのこと。発表はまだ先になりそうだが、名越氏が描く新たな世界が見られる日を楽しみに待ちたい。
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