携帯電話の方はファミ通MAXをご覧ください。

HOME> ゲーム> 初日の基調講演でITの権威、原島博氏がゲーム業界に技術依存からの脱却を説く

初日の基調講演でITの権威、原島博氏がゲーム業界に技術依存からの脱却を説く
【CEDEC2009リポート】

2009/9/1

  • はてなブックマークに追加
  • Yahoo!ブックマークに登録
  • この記事をつぶやく

●「主役はかならず交代するのだから、いまだけを見ないでほしい」(原島氏)

 

 CESAデベロッパーズカンファレンス(CEDEC)が、2009年9月1日〜2009年9月3日の3日間、神奈川県のパシフィコ横浜、国際会議センターで開催されている。このCEDECは、社団法人コンピュータエンタテインメント協会(CESA)により毎年開催されている、ゲーム開発者向けの講演会。11年目を迎える今回は、2008年の約1.5倍のセッション数が用意されるなど、大きく規模を拡大して行われている。この“新生CEDEC”の模様をリポートする。
 

cede0003

  

cede0002

▲本題に先立って、自らの自己紹介を行った原島氏。ゲームとの最初の関わりは'85年に発売されたファミリーコンピュータ用ソフト『スーパーマリオブラザーズ』で、子どもの目の前で、スタートから最終ステージまでプレイして見せたという。原島氏曰く「父の権威を保てた」そうだ。

  初日の2009年9月1日の基調講演は、東京大学名誉教授の原島博氏が“情報技術はどこへ行くのか?-主役は交代している-”というタイトルで行った。原島氏は、東京大学工学部電子情報工学科の教授として研究と教育を行ってきた人物。2009年3月31日に東京大学を退官して以降は、同学の名誉教授となっている。専門はコミュニケーション工学で、情報技術(IT)の権威として知られる。また、モナリザにさまざまな表情をつける研究を行うなど、“顔学者”としても知られ、`95年に日本顔学会を設立し、現在、会長を務めるという側面も持つ。日本アニメーション学会副会長や文化庁メディア芸術祭審査委員長を務めたこともあり、コンテンツ産業にも造詣が深い。その原島氏がおもに情報技術の視点から、今後のゲーム業界への提言を行った。

 

 講演の最初に、原島氏は全体のテーマを“主役は交代している”と明かした。これだけではどのような意味なのかわからないが、原島氏による情報技術の歴史を聞くと、その意味するところがよくわかる。


 原島氏は情報技術の歴史を、コンピュータの誕生から語り起こした。'46年にペンシルバニア大学がENIACというコンピュータを生みだしたことに始まり、'49年にはEDSAC、'50年にはEDVACというコンピュータが開発された。原島氏によると、これら初期のコンピュータは「さまざまな形式の試行錯誤」(原島氏)で、最初の20年(`46年〜`65年)は成長期に当たるという。成長期を脱し、コンピュータが大人になったのは`60年代半ばのことで、'64年にIBMがSystem/360を開発したのがエポックとなったという。これにより、専門家でない人でもコンピュータが扱えるようになり、`65年には東京大学に東大大型計算機センターが設立。“科学の情報化”が始まったという。さらに、'70年代から`80年代前半にかけてIBMを中心に“ビジネスの情報化”が進行し、研究分野に続いて、企業にもコンピュータが導入されていった。「日本のコンピュータメーカーがひたすらIBMを追いかけた時代」(原島氏)だという。
 

cede0004

cede0005


 `80年代前半までは、コンピュータ産業におけるIBMの存在は非常に大きく、「巨人のように存在し、崩すことは不可能」(原島氏)かのように思われた。ところが、'80年代半ばに、「もしかしたら日本がIBMに追いつくのではないかと思われた時期があった」(原島氏)。`82年から約10年間、“第5世代コンピュータプロジェクト”という研究が行われたのだ。これは、真空管(第1世代)、トランジスタ(第2世代)、IC(第3世代)、LSI(第4世代)に続く、“非ノイマン型推論”という理論が用いられたコンピュータで、人間が脳で行っている行為をコンピュータに活用するというもの。結果的に“第5世代コンピュータプロジェクト”は一般市場向けには成功を収めることなく、「その後、コンピュータはアメリカがますますリード」(原島氏)することになった。

 

 原島氏は、この原因について「'80年代半ばにコンピュータにパラダイムシフトが起こっていた」(原島氏)と説いた。それは“大型コンピュータからPC(パーソナルコンピュータ)へ”という変化で、人間の代わりになるコンピュータから、人間がいることを前提として、人間のサポートをするコンピュータを作るという考えに変わっていったのだという。

 

 その後、CD-ROMやマッキントッシュ、ファミリーコンピュータ、バーチャルリアリティ、ワールド・ワイド・ウェブなどが登場したことで、コンピュータの世界には“マルチメディアブーム”が発生。コンピュータが扱う範囲が拡大し、さらに`90年代にインターネットが商業化。2000年代にブロードバンドの登場や携帯電話の普及により、情報技術が身近になったという。

 

 黎明期から現在までの情報技術の歴史を紐解いた原島氏は、各年代のキーワードを以下のように整理した。
 

cede0006

cede0007

 

 講演の冒頭、原島氏は“主役は交代している”というテーマを提示したが、その意味が明らかになった。大型コンピュータの誕生がIBMを生み、IBMが作ったIBM-PCがパーソナルコンピュータの時代を導いた。PCの登場によりマイクロソフトが成長し、マイクロソフトが育てたブラウザ(インターネットエクスプローラー)が検索エンジンの雄、グーグルを登場させるきっかけとなった。そのグーグルの栄華でさえ、原島氏は「これだって変わっていく。いままでの流れから言うと、すべては変わっていく」(原島氏)と断言した。
 

 続いて原島氏は、情報技術との関わりにおけるゲームの歴史について述べた。原島氏によると、ゲームの歴史は`70年代にマイクロプロセッサが登場したことにより始まるという。マイクロプロセッサの登場により、Altair 8800やApple Iといった家庭用のコンピュータが誕生。これにより、コーンピュータゲームが生まれ、それに続いて、Atari 2600やファミリーコンピュータ(`83年)といったゲーム専用機が登場した。`80年代後半はファミリーコンピュータの時代で、『スーパーマリオブラザーズ』(`85年)、『ドラゴンクエスト』(`86年)、『ファイナルファンタジー』(`87年)といった大作が誕生している。続く`90年代前半にはスーパーファミコンが発売('90年)。ハードの進化により表現力が向上した。`90年代後半にはプレイステーション(`94年)などの新ハードが発売。GPU(グラフィックプロセッサ)の進歩により3Dポリゴンの表現が可能になった。2000年以降は回路の集積化によりモバイル技術が進化。ニンテンドーDS、PSP(プレイステーション・ポータブル)などの携帯ゲーム機が花開いた。以上のようにゲームの歴史を俯瞰したうえで、原島氏は「今後も情報技術はますます進化する以上、ゲームも進化する」(原島氏)と説明した。

 

cede0011

cede0012

 

 さて、ではゲームはどのように進化するのか? 原島氏は、これからのキーワードとして以下の3点を提示した。
 

バーチャルからリアルへ

グローバルからローカルへ

パーソナルからコミュニティへ

 

 「(ゲームは)リアルなローカルコミュニティを支えるものへ」(原島氏)となっていくと予言する原島氏は、また、「リアルな空間での遊び(ゲーム)をバーチャルな空間がサポートする」(原島氏)とも言う。『モンスターハンターポータブル 2ndG』でアドホック通信によるパーティープレイが人気を博したことなど、インターネットを介さない通信プレイが盛り上がりを見せていることが思い浮かぶ発言だ。

 

 さらに原島氏は、「このことによりインターフェースも変わっていく」と発言。真っ先に思い浮かぶのはWiiリモコンとヌンチャクによる操作だが、原島氏は「個人的にはこれが最終的な形ではない」(原島氏)として、身体の動作に直結する方向とともに、“単純化”という方向に進化することを予言した。これは、PCのキーボードが両手の10指を使うのに対し、のちに出現したゲームのコントローラーがおもに両手の親指だけで済むこと。さらに、携帯電話は片手の親指だけで操作できることによる。

 

 このように、情報技術の進化がゲームの歴史を支えてきたことを述べつつ、原島氏は以下のように自らの論旨に反論を提示した。

 

 「技術はサポートするものであって主役ではない。そもそも技術依存でゲームの将来を考えることはおかしい」(原島氏)
 

 ムーアの法則(18ヵ月で2倍、5年の2倍に進化する)に従って発展する情報技術にともない、ハードは進化することになる。しかし、進化したハードに依存した高機能のソフト開発が求められることになり、ソフト開発が追いつかなくなる。開発費は高騰し、冒険的なソフトが開発しにくくなる。結果として、ソフト開発は衰退するというわけだ。

 

 原島氏によると、技術が商品の価値を決定するのは産業の発展途上期の現象で、産業が成熟した段階ではどのような付加価値をつけるかが重要になるという。その意味では、ゲームは産業としてはいまだ未成熟で、原島氏は「ゲームもそろそろ大人になる必要がある」とゲーム業界に提言した。そのために必要なのは、企画、技術、生産、営業といった総合力を身につけること。その点で、経済力(買収力)、政治力に長けたアメリカの企業は強く、「技術を企業ごと買う」(原島氏)力があると指摘。ただし、アメリカを追いかけていては、IBMを追いかけた“第5世代コンピュータ”の二の舞で、日本のゲーム業界は「諸外国から見てもおもしろいゲームが作れるはず」(原島氏)と、日本独自のゲーム制作に道を見いだすべきだとアピールした。また、ゲームが社会的に尊敬されることも“大人になる”手段のひとつで、そのためには「10年後、20年後に残る名作、古典を残す必要がある」(原島氏)とも述べた。
 

 さまざまな形でゲーム産業が脱皮する必要性を説いた原島氏は、その難しさも指摘しつつ、「主役はかならず交代するのだから、いまだけを見ないでほしい」(原島氏)と会場のゲーム開発者たちに語りかけ、最後に「ゲームはこれからもおもしろくなる」(原島氏)と締めくくった。
 

cede0013

cede0014

 

※CEDECの公式サイトはこちら
 

【CEDEC2009リポート】の関連記事

この記事の個別URL

ソーシャルブックマーク

  • Yahoo!ブックマークに登録

評価の高いゲームソフト(みんなのクロスレビュー

※ ブログ・レビューの投稿はこちら!ブログの使い方

その他のニュース

『Marvel's Spider-Man』のPS5リマスターが海外で発表。『スパイダーマン:マイルズ・モラレス』PS5版アルティメット・エディションにDLコードを同梱

プレイステーション4で発売されたアクションアドベンチャーゲーム『Marvel's Spider-Man』のプレイステーション5向けリマスターが発表。

『ポケモン ソード・シールド + エキスパンションパス』予約受付開始。Amazon限定特典は“ピカチュウスマホリング”

11月6日(金)に発売される、Nintendo Switchソフト『ポケットモンスター ソード・シールド』と追加コンテンツ『ポケットモンスター ソード・シールド エキスパンションパス』が1つになったパッケージの予約受付がAmazon.co.jpで開始された。

ポケモンセンター2020年度採用企画“キミの進化大作戦”スタート。自分の将来像をポケモンでたとえると?

ポケモンセンターは、昨年、ポケモン自己分析などで話題となった採用企画に続き、2020年度採用企画“キミの進化大作戦”を本日2020年10月1日(木)より開始した。アンケートに答えると自分自身の成長をポケモンに例えて教えてくれる。

『鬼滅の刃』10月カレンダーとして使えるPC/スマホ用壁紙イラストが公開。宇髄天元がド派手に神無月を迎える!

2020年10月1日、集英社は吾峠呼世晴による人気漫画『鬼滅の刃』公式サイトにて、カレンダーとしても使える壁紙画像の配布を開始した。

『原神』表紙イラストポスター付き配信記念スペシャル企画! 2号連続クラシックゲーム特集第1弾&『ニーア レプリカント ver.1.22』最新情報も!(2020年10月1日発売号)【今週の週刊ファミ通】

本日(2020年10月1日)発売の週刊ファミ通2020年10月15日号は、大ヒットスマートフォン向けアプリ『崩壊3rd』を世に送り出したmiHoYoの最新作『原神』が表紙!

デロリアンがトランスフォーマーに!? 『バック・トゥ・ザ・フューチャー』×『トランスフォーマー』コラボ“GIGAWATT”予約開始

タカラトミーは、『トランスフォーマー』と公開35周年を迎える『バック・トゥー・ザ・フューチャー』がコラボした“GIGAWATT”の予約受付が2020年10月1日(木)より開始する。10月17日発売。価格は5000円[税抜]。

『スマブラSP』新ファイター参戦ムービーが明日(10月1日)23時に公開! 約3分の参戦ムービーにてお披露目

任天堂は発売中のNintendo Switch用ソフト『大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL』の有料追加コンテンツ第7弾として追加されるファイターの参戦ムービーを2020年10月1日23時に公開することを発表。

『リゼロ』と富士急ハイランドがコラボ! “Re:ゼロから始める富士急ハイランド生活”が11月3日から開催

富士急ハイランドは、2020年11月3日(火)〜12月13日(日)の期間、『Re:ゼロから始める異世界生活』とコラボしたイベントを開催する。

アニメ『五等分の花嫁∬』が2021年1月に放送開始。仲睦まじい五つ子たちのキービジュアル&番宣CMも解禁

テレビアニメ『五等分の花嫁』の第二期『五等分の花嫁∬』が2021年1月より放送決定。キービジュアルおよび番宣CMも公開された。