HOME> ゲーム> ゲーム音楽作曲家の佐野信義氏、光田康典氏がヘンな要素満載のLSIゲーム風iPhoneアプリを開発――開発裏話ロングインタビュー!
●開発秘話から今後のバージョンアップまで、おもしろトークで語ります
ふたりの著名ゲーム音楽作曲家、佐野信義氏(代表作:『リッジレーサー』、『鉄拳』)と、光田康典氏(代表作:『クロノ・トリガー』、『ゼノサーガ』)。最近では、ニンテンドーDSをシンセサイザーへと変えるソフト『KORG DS-10』を開発したことでも知られているおふたりが、iPhoneのゲームアプリを作ったという。しかも、その内容は`70年代に流行したLSIゲーム(携帯電子ゲーム)を模したもので、ゲーム部分以外にもヘンなこだわりが多数入ったアプリなのだとか!? このいろいろな意味でおもしろそうな気配が漂うゲームを見逃してはいけないと、おふたりにインタビューを決行。ちなみに佐野氏、光田氏ともに非常にトークがおもしろい方なので、ちょっとマジメなインタビューだとは思わずに読んでいただければと……。LSIゲームを知っている人もそうでない人も、ぜひ読んでください!
まずはインタビューをお届けするまえに、ゲームの簡単な説明から。このゲーム『BQLSI
STAR LASER』は、iPhone、iPod touch(第2世代以降)で遊べるシューティングゲーム。液晶の中に表示された左右の移動ボタン、射撃ボタンを使って敵を倒し、待ち受けるボスを倒せば1ステージクリアーとなる。ただし、エンディングなどはなく、あえて目標を設定するとすれば、どれだけ長く続けられるか、そして高得点が得られるかを競うものだ。
【BQLSI STAR LASER】
キャリア:iPhone/iPod touch
アクセス:iTunes→iTunes Store→App Store→ゲーム
情報料:230円[税込]
▲敵が弾を撃ちつつ上から迫ってくるので、こちらも射撃で応戦して敵を撃つ! |
▲弾を貫通しないブロックを使った攻防なども楽しめる。 |
▲ゲームを進めると仲間が増え、自機の攻撃に合わせてともに攻撃してくれるように。 |
▲通路の中での戦闘も。壁にぶつかってしまえば、もちろんミスとなる。 |
▲ステージの最後には強力なボス敵が登場。大量のザコ敵も立ちはだかる。 |
▲アーケードゲームなどにあるインストラクションカード(通称インストカード)も存在。このレトロなデザインもこだわりのポイント! |
▲実際にプレイするときは、このようにiPhoneを両手で覆うような形になる。 |
▲佐野信義氏みずからプレイしていただきました。 |
■プロフィール
(左)佐野信義氏
Sano Nobuyoshi
サウンドデザイナーとして、株式会社ナムコ(現バンダイナムコゲームス)で『リッジレーサー』、『鉄拳』などの楽曲を手掛けたのちに、株式会社キャビアへ。最近では、『KORG DS-10 Plus』(2009年9月17日発売予定)のプロデューサー、ディレクターを兼任する。
(右)光田康典氏
Mitsuda Yasunori
株式会社スクウェア(現スクウェア・エニックス)に入社し、『クロノ・トリガー』、『ゼノギアス』などを手掛ける。その後、独立し有限会社プロキオン・スタジオを設立。『KORG DS-10』にも携わる。自身が手掛けたボーカル曲を集めたベストアルバム『カラーズ・オブ・ライト 光田康典ヴォーカル・コレクション』が2009年8月26日に発売。
●こだわった部分はゲームよりもガジェット部分!?
――まずは、本作を作ることになった経緯から教えていただけますか?
佐野信義(以下、佐野) もとはiPhoneというハードがとてもおもしろいものだったので、このハードに向けたアプリで何かできないかなと考えていたんです。いろいろ考えた中で、iPhoneのサイズでLSIゲームを実現できたら、テレビゲーム前夜に男子のごく一部が熱狂的に燃えたあのLSIゲームらしさが出せるんじゃないかと、そう思いついたのがきっかけですね。
――iPhoneのサイズが、当時のLSIゲームに近かったことが発案に結びついたと。
佐野 そうです。遠目から見たら、本物のLSIゲームに見えるような錯覚が起こるんじゃないかと思ったのが最初です。当時LSIゲームが好きだった人が、これをプレイしている姿を見て「あの人、何やってるんだろ? いまの時代にLSIゲーム出たのかな?」と勘違いしてもらうのが狙いで。それがこのあと説明します、ヘンな部分に凝っていることにつながっているんです。ゲーム的なリアリティーよりも、iPhoneを含めたハードとソフト全体がガジェットに見えることを実現したかったんです。
――では、佐野さんのアイデアが企画として形になっていったんですね。
佐野 企画……というよりは、「こんなのがあったらおもしろいですよね? ね? ね?」と言ったのが、僕だったというだけで(笑)。
光田康典(以下、光田) 『KORG DS-10』の打ち合わせに行ったときに、佐野さんのブースにLSIゲームが山ほどあったんです。それで「これ懐かしいですねー」なんて言いながらカチャカチャ遊んでいたら、佐野さんから「これおもしろいでしょ? これ作りたくない?」と言われて(笑)。
――佐野さんとしては、これで光田さんが食いついたと(笑)。
佐野 まさに(笑)。周囲で食いついてくれる人が少ないなあと思っていたら、食いついてくれる世代が予想より上の世代だったんですよね。まさに“アラフォー”世代向けのものですから。
――そのLSIゲームは、佐野さんがもともと持っていたものだったんですか?
佐野 僕は子供のころ本当にお金がなくて、そのころの買いたくても買えなかった気持ちがこのゲームに現れているんです(笑)。それで、このゲームの企画を立ち上げたころに、周囲に「こういうゲームをiPhoneで作りたいんだよね」って言っていたら、みんなが「僕、持ってますよ」って持ってきてくれまして。「なんだ、みんな金持ちだったのかよ」と(笑)。僕のまわりは、僕が小さいころにゲームを遊ぶために友だちになったような人たちの集まりだったのかと(笑)。それで大量に集まったんです。
●バンド活動のように作られたゲーム
――そして、おふたりがメインで作ることに?
佐野 いえ、僕らだけではゲームは作れないので、プロキオン・スタジオさんにお願いして。
光田 うち(プロキオン・スタジオ)にプログラマーがいるので、おもしろそうだから研究がてらやってみて、難しかったらやめましょうという軽いノリで始めたんです。それが、いざやってみたらそんなに難しくなかったので、いけるんじゃないかなと。ただプロキオン・スタジオにはグラフィックデザイナーがいないので、そこをどうしようかと佐野さんに相談したんです。
佐野 それで知り合いのプランナーとグラフィックデザイナーを呼んで。アプリのリリースは、プロキオン・スタジオさんにしてもらっているんですが、何せ収益などは度外視して作っているので、僕はもちろん、その知り合いのプランナーと、グラフィックデザイナーも会社とは関係なく、まるでインディーズのバンド活動のように個人で関わっているんですよ。
――え! それは驚きですね!
光田 だから、このアプリの売り上げは次回作への研究費と、みんなの飲み代に消えていくんです(笑)。
――(笑)。では、全体で何人のスタッフで作られたんでしょうか?
光田 プログラマーふたりと、プランナー、グラフィックデザイナーひとりずつ、そして佐野さんと僕で6人ですね。
佐野 シューティング部分のゲームデザインをしたのがプランナーなんですが、彼は務めている会社では大規模なアクションRPG系のディレクターをしているんですよ。ただ、もともとシューティングが好きで、自分でLSIゲームも持っているような人なので、「こういうゲームを作りたいんだ」って話をしたら、すぐに「ああ、はいはい。やろうやろう」って言って、すぐに作ってくれました。本業が大作系なので、その合間を縫って現実逃避のように楽しみながら作っていましたね(笑)。ただ、彼は本当にシューティングが好きなので、プレイするたびに上達し、自然とハマっていくというシューティングの醍醐味はちゃんと実装されていますよ。シューティング好きな人が遊んだら、めちゃめちゃハマりますね。
――皆さん非常に楽しみながら開発をされていたんですね。
佐野 ええ、それはもう。まさにいまお話している、このテーブルでワイワイ言いながら作ってたんですよ。
光田 お菓子がこの辺に散らばってたりして(笑)。
佐野 コンビニで買ったおにぎりを食べながらみんなでプレイしているんですが、「ここの敵の設定を変えました」と言ったら、そのデータをすぐにサーバーにアップして、各自のiPhoneでもWi-Fi経由でとりにいけるようにしていて。その場ですぐ遊んでみて、「ここはもうちょっと変えよう」なんて言いながら迅速に調整できるんです。それが、本当に合宿で作るようなノリでよかったですね。このサークル活動のようなドライブ感がたまらなく魅力的で。光田さんがゲーム業界に入ったころには、まだ残ってた雰囲気ですよね?
光田 そうですね。僕がスクウェア(当時)に入ったばかりの『ファイナルファンタジーV』、『VI』も、『聖剣伝説2』も、『ロマンシング サ・ガ2』も、『クロノ・トリガー』も、そういうドライブ感がありましたねー。「キャラクター変えてみたんだけど、どう?」、「じゃあ、それでいこう」といったようなレスポンスが早い作りかただったんですが、そういう経験をしたのはひさしぶりでしたね。
佐野 僕はゲーム業界に入って1年くらいしかそういう時期がなかったので、本当に楽しかったです。
――なるほど。昔を思い出しながらゲームを作られたような雰囲気ですね。
佐野 そうですね。「ゲーム開発ってこれだよ!」みたいに(笑)。だいたい仕様書というか、つまりはエクセルがゲームをつまらなくしていると言うね。いや、もう完全に過言なんですけど(笑)。
――(笑)。
佐野 仕様や世界観、フローなどを詰め始めるとだんだんやる気がなくなっていくという(笑)。話がそれましたが、そういう採算を度外視した、やりたいからやるというバンド活動的に作ったゲームなんです。
▲こちらがその開発中の風景のお写真。飲み物やお菓子が雑然と並んだ風景や、佐野氏のリラックスした姿は、まさに合宿のような楽しそうな雰囲気が伝わってくる。 |
●ゲーム内の電池が徐々に減少!?
――開発期間はどれくらいかかったのでしょうか?
光田 最初はWindows上で作っていたんです。そのあとiPhoneに入れてみようというところで時間がかかってしまったのですが、それでも2ヵ月半くらいですね。
――そんなに早いんですね!
光田 ええ。でも、本当は1ヵ月で作る予定だったんです。
佐野 また悪いクセでいろいろとこだわってしまったんですよねー。
――そのこだわりはどういったところに?
佐野 このゲームが実際に存在するような感覚を出したくて、細部にまでこだわっているんです。
――こだわりの機能をご紹介していただければと。
佐野 では、まずは最大のウリの部分から。このゲームには電池シミュレーターが入っていまして、何回か遊んでいるとだんだん電池の容量が減ってきて絵や音がヘタれてくるんです(笑)。要するに、ゲーム画面の輝度が弱くなってきて、音はピッチが下がりつつ、揺れてくるんですね。それで「困った」と。その場合はデモ時に画面で指でスライドすると、裏ブタが表示されますので、そこで電池をタッチして交換すると正常な画面と音に戻るんです。しかも、電池も充実のラインアップで、マンガン電池とアルカリ電池の2種類がありますから(笑)。楽しみかたが倍です!
――わははは(笑)。もしかしてマンガンとアルカリで電池の持続時間は違うんですか?
光田 ええ、違います。ぜひアルカリを使ってください。もともと電池を別売りにしようかというアイデアもあったんですよね(笑)?
佐野 そうそう。デフォルトではマンガンしかついてなくて、追加でアルカリを売るというアイデア(笑)。このゲームのために電池を買うという感覚が、懐かしくていいと思いません?
――それは懐かしいですね(笑)。マンガンとアルカリを1本ずつ入れることもできますよね?
光田 できますね。でも、それはやっちゃいけない方法ですので、マンガン2本よりも持続時間は短くなります。
▲こちらが電池の交換画面。電池にタッチすると電池を取り外すことができ、再度タッチすると新たに電池をセットできる。 |
――この電池の仕様は、最初から考えられていたんですか?
佐野 ええ。電池はどうしてもやりたくて。ユーザーさんからは「電池が交換したかったので、このアプリを買いました」っていうありがたいおたよりも来ました(笑)。電池の変える音もこだわったんですよ。あと、ゲーム内のボタンを押したときの音にも。
光田 iPhoneのゲームでキータッチの音があるのは初なんじゃないかな?
佐野 あまりにふつうに音が出ちゃうから、とくに意識しないと気づかないんですよね。BGMや射撃音はゲームの音ですから、スピーカーから出ているという意識があるんですが、ボタンのハード的なクリック音までスピーカーから出ているという風には考えてくれない(笑)。
光田 でも、あの音があるから遊んでいるんだという実感や、集中につながりますよね。
――あと画面の残像もこだわっていらっしゃいますよね。
光田 そうですね。キャラクターが動くと少し残る残像をシミュレートしているんです。
佐野 うすーくボス敵も見えてしまうところとかもね(笑)。
――途中で僚機(仲間の飛行機)が登場しますが、その見た目は自機のグラフィックの一部を流用されていますよね。
佐野 ああいう「それ、うまいなー!」というのを絶対にやりたかったんです。グラフィックデザイナーはかなり若手なので、もちろんこのLSIゲームの文化はリアルタイムではまったく知らないんですが、その雰囲気を完璧につかんでいるんですよ。実機で表示されたときは本当に感動しちゃいました。
▲自機の横にいる僚機は、自機の中央部のグラフィックを流用したデザイン。 |
――ディスプレイを真空蛍光ディスプレイ(別名VFD。初期のLSIゲームに使われたディスプレイ)にされた理由は?
佐野 やはり初期のLSIゲームはVFDですから、まずはこれだろうと。あと液晶は背景が基本的にグレーなので、宇宙っぽくない(笑)。宇宙はやはり黒をバックにして、蛍光色だよなということですね。
――ゲームの開発は使える色数、音数などに縛りを決めて作られたんですか?
佐野 ええ、もちろん。だから、このゲームはそのまま実際のLSIゲームとして製品化できるんですよ。誰か、商品化してくれるメーカーさんがいらっしゃったら、ご連絡いただきたいですね(笑)。
光田 本当はiPhoneを立て掛ける充電器のようなクレードルで、実際に『BQLSI STAR LASER』の筐体を作りたかったんですよね。
佐野 当時は筐体からして夢があって、カッコよかったですから。その手触りを何とかして出したいと思ったことが、キータッチのクリック音などにもつながっているんです。
●ゲーム音楽の匠が作る、ヘタれた音
――作曲家のおふたりが関わってるということで、そういった音にもすごいこだわりが感じられるんですが、どういう分担をされたんですか?
佐野 光田さんが作曲担当ですね。
光田 曲っていう曲じゃないですよ(笑)。
佐野 いやいや、光田さんの最新曲ですから!
光田 それはそうですけど(笑)。効果音などの音まわりは佐野さんです。
佐野 僕が老体に鞭打って(笑)、すごい気合いが入りましたね。すべて1音で作らなきゃいけないんですが、昔は『ベーシックマガジン』などの古いPC雑誌で、アーケードゲームの効果音を譜面にしていたものがあったので、それをぼんやりと思い出しながら作りました。いやー、楽しかったですね。あと、先ほども言いましたが電池を変える音も、あんなに苦労するとは思わなかった、というくらいたいへんでした。実際に、いろいろなLSIゲームの電池を入れ替えて研究しましたね。あと電池のフタを閉めたときの、フタがズレてから「カチッ」と音が鳴るタイミングまでこだわっていますから。でも、これがあまりに自然すぎるからみんな気にしてくれない(笑)。
光田 どうでもいいところにばっかりこだわってますよね(笑)。ゲーム以上にガジェットまわりに力を入れてますから。
――それは非常に感じます(笑)。光田さんが作曲されたBGMというのは?
光田 ゲームスタート時とボスを倒したときに流れる曲ですね。それを8曲ほど作って、佐野さんに判断をお願いしたんです。
佐野 この短い曲に対して、候補を8個も作っているのも異常な気合いを感じておもしろかったですね。光田さんもほかにいろいろとやらなくちゃいけない仕事がいっぱいある中で、やっていますから。
光田 僕も現実逃避でやっていました(笑)。
――クリアーしたときに聴いた曲が、電池切れでヘタれているとちょっとガッカリですよね(笑)。
光田 ありがちですよねー(笑)。
佐野 ああいう音のヘタれ具合も、プロキオン・スタジオさんが音の会社ですから絶妙なんです。ああいう感覚がわかっていないと、全然違うものになってしまう。
光田 それもうちのサウンドプログラマーが作ったんですが、最初は音の揺れかたが違ったんです。だから「そうじゃないだろう!」と、「電池がこれくらいのときはこうじゃないか?」とかなりこだわりましたね。本来のLSIゲームは、電池の残量が少なくなると音のピッチが下がっていくのですが、最初にできあがったものが音が揺れただけだったんで、「全体が下がっていかないと!」と。
――電池の残量によって、液晶、音のヘタれ具合は何段階も変わるんですね。
光田 そうなんです。わからない程度に、じつは段階を踏んで変わっていっています。
佐野 だからこそ電池を変えたときに、元の画面はこんなにキレイだったんだ! ってビックリするんです。それを味わってほしいんですよね。このゲームのプロトタイプを知り合いに見せたときの爆笑っぷりはスゴかったですよ。音がヘタれるって、なぜかそれだけで笑えるじゃないですか。居酒屋で鳴らして、みんなで笑ってましたから(笑)。
光田 このデジタル機器でアナログをシミュレートしている楽しさは、若い人にも楽しんでもらえると思いますよ。
――逆に当時遊んでいた人には、昔を思い出してもらいながら楽しんでもらうと。
佐野 そうですね。でも当時を知らない人には、このおっさんの酔狂を楽しんでもらうと言いますか(笑)、なんだかわからないけど楽しんで作ってそうだなというのが伝わればうれしいです。
●爆笑必至のバージョンアップ内容
――ちょっとゲームの詳しい内容に踏み込みますが、ハイスコアーを取るコツ、裏ワザのようなものはありますか?
光田 じつは敵が自分にいちばん近いところに来たときに倒すとスコアーが高くなるんです。あとは、通路をかたどっている隕石を256発撃つと破壊でき、上から降ってくる隕石は3発撃つと破壊できます。隕石はスコアーが高いので、ハイスコアー狙いにはいいですね。
――ちなみにおふたりのスコアーはどれくらいですか?
光田 僕は、Web上の自分の日記にも書いているんですが、3700点台まで行っていますね。ただ、これはその裏ワザを使って稼いだ点なので、ステージ自体は2面もクリアーしていないんです。
佐野 僕は本当にヘタなんですよ(笑)。サンプル映像をYouTubeにアップしているんですが、あれの撮影も本当に辛かったですから。
――(笑)。で、点数の方は?
佐野 とても言えません(笑)。
――ではナイショということで(笑)。そして、今後このアプリがバージョンアップがされるとうかがいましたが?
光田 そうなんです。いくつかバージョンアップする内容があるのですが、その中のひとつは、こうやってゲーム内のボタンを何度も押していると……(iPhone上に表示されたボタンを何度も連射する光田さん)、ボタンが汚れるんです(笑)。
――わははは(笑)。
光田 そして電池を交換するときにフタを閉めないでいると、ふつうにプレイはできるんですが、こうすると……(iPhoneを左右に振る光田さん。すると、ゲーム画面が消え……)、電池が落ちるんです(笑)。
――まじっすか(笑)!?
佐野 あれ!? 僕、これ知りませんでしたよ!?
光田 フタを開けておくと、電池が落ちちゃうっていうバカなことをね(笑)。この辺をもうすぐバージョンアップしますので。これいいでしょ?
佐野 いいですねー。これ、よく考えましたね!
――ゲーム本編のバージョンアップじゃないですよね(笑)?
光田 そうなんですよ。どうでもいいところばかりで(笑)。でも、本編もちゃんとバージョンアップしますよ。まずはゲームのスコアーランキングがありますが、これと別にワールドランキングを用意して、ネットワークで世界の人と競えるようになります。あと、もう少しユーザーさんの意見を吸い上げたものを反映させて、正式にバージョンアップしたいと思います。そして、さらにこのゲームのシナリオもホームページ上にアップされる予定です。
佐野 これを書いたのがそのプランナーなんですが、そういう設定が大好きなんで、いい話になっていますよー。このゲームには驚愕のバックストーリーがありますので。
――ありがちなものではなく?
佐野 んー、ありがちと言えばありがち(笑)。ありがちで驚愕です。
――楽しみにしています(笑)。あと、ステージのエディットができるとか?
光田 そうですね。昔のようにスクリプトを打ってステージを作れるようになります。そして将来的には、できたステージをネットワークで配信して、みんなで遊べるようにしたいなとも考えています。
佐野 本当にステージのやり取りは世界中の人とやりたいんです。異常にストイックなステージを作る国はキビしい国なのかなーとか、あまり敵が出てこないステージは平和な国の人が作ってるのかなーとか、国の背景がわかったらおもしろいですよね(笑)。
――ちなみに、このアプリはどこの国で売れているんでしょうか?
光田 いまは断トツで日本ですね。ついでアメリカ、イギリスかな。
佐野 インターネットで評判を見ていると、欧州の英語圏外の方のページでいくつか取り上げられているんです。それが褒められているのか、けなされているのかわからないんですが(笑)。英語などの評判を見ると、やはりアラフォー世代、世界中のアラフォーに喜ばれていますね。ただ外国も日本もやはり同じで、外国の掲示板で「なんで電池が出てくるんだ?」って質問に、「なんでお前はそういうよさがわからないんだ?」っていう回答がされていて、どこの国でもジェネレーションギャップがあって同じだなって思いました(笑)。
●次回作の前に登場するのは会社の沿革?
――ちなみに、タイトルの『BQ』部分にはどういう意味が?
佐野 これはいろいろ意味があるんですが、その中のひとつは“B級”ですね。あとは“ブリリアントクオリティー”。それと“バーベキュー感覚”(笑)。
光田 みんなで集まってね(笑)。
佐野 みんなで「わーい!」って楽しく集まって作る(笑)。あと、酔っ払って川に入っちゃいけない。意味ありませんけど(笑)。
――(笑)。配布元の"Gomeisa Electronics(ゴメイサ エレクトロニクス)"というのは?
佐野 もともとプロキオン・スタジオさんが販売元になっているんですが、レーベル名をつけたくてできたものなんです。これには、ちょっといい話がありまして(笑)。これ、僕がベラベラしゃべっていいんですか?
光田 どうぞどうぞ(笑)。
佐野 では(笑)。プロキオン・スタジオさんのプロキオンというのは、こいぬ座の中の星のひとつの名前なんです。そして“ゴメイサ”というのも、こいぬ座の中の小さい星なんです。ところがプロキオンに比べると、異常に光が弱い(笑)。それを僕が調べていて気づいて、これはいいなと。あと、音ですね。“ゴメイサ”っていう、このもっさりした音がたまらなくよかったので(笑)、“ゴメイサ エレクトロニクス”にしました。いま、じつはこの企業の沿革を書いているところなんです。
――沿革ですか!?
佐野 後づけなんですけど(笑)。もともと"ゴメイサ"は、米伊左(こめいさ)という名前で江戸時代から伝わる会社だったのが、"ゴメイサ
エレクトロニクス"になったという経緯を妄想で作っているわけです。どっかで合併したのちに、多角経営で手を広げすぎて失敗しちゃって、残ったのがエレクトロニクス事業だったというようなことが延々と(笑)。
光田 近々、『BQLSI
STAR LASER』のホームページを正式に作るのですが、そこにはどうでもいい沿革が書いてありますので、ぜひ読んでいただきたいですね(笑)。
佐野 昔は、ゲームで作っているときにそういうことでふざけられたんですよねー。
光田 最近はシャレが通じなくなってきているので、このゲームはとことんシャレで作りたいなと。
佐野 こういうことも含めて、なんか楽しそうにやってるなあっていうのが伝わればいいですね。
――『BQLSI STAR
LASER』に続く、第2弾、第3弾の予定は?
佐野 もちろん!
光田 第2弾は、すでに企画があがってきました。
佐野 おそらく大方の予想通りという内容になりますが、それでいいかなと。またVFDを使った『BQLSI』シリーズとして出していきます。
――ちなみにリリース時期は?
光田 アップルさんの審査などもありますので厳密には言えませんが、秋には出せると思います。
――早いですね!
光田 テンションで持っている部分がありますので、テンションがあるうちにやらないと(笑)。
――では最後に、このアプリに興味を持った読者に売りとなるメッセージをお願いします!
佐野 このゲームを遊べば、もうモテモテですよ。
――(笑)。
佐野 アラフォーの男から(笑)。居酒屋で絶対に受けますから。iPhoneは居酒屋でみんなに見せるツール的な側面がありますが、それが単純にゲームだけだと辛いんですよね。でも、音がヘタれるところを見せたり、電池が交換できるところを見せれば、爆笑ですから(笑)。そうすると、「俺、昔こういうゲーム持ってた」という風に話も広がっていくと思います。
光田 これからどんどんバージョンアップしていきますが、つぎのバージョンではかなりおもしろくなると思います。いま配信しているものでまず質感を楽しんでもらって、つぎは本当にゲームに熱くなってほしいなと。ぜひスコアーをみんなで競争しましょう!
佐野 あと、光田さんの最新曲もありますから! 光田さんファンの皆さん、お待たせしました。新曲はiPhoneで(笑)。
光田 そんな紹介でいいのかな(笑)。じつはホームページ上で、この曲を細工してフル版を流そうかなと思っていますのでお楽しみに。
――バージョンアップともども楽しみにしています! ありがとうございました。
濃く、そして長いインタビューをお届けしたが、このアプリの魅力は伝わっただろうか? LSIゲームをリアルタイムに遊んでいたアラフォー世代の方はもちろんのこと、LSIゲームを知らない若い方も、触れてみればこのゲームのスゴさ、そしてとくに細部に力を入れた、いい意味でのバカバカしいこだわりが伝わるはずだ。iPhoneのほか、第2世代以降のiPod touchでも遊べるので、興味を持った方はiTunes Storeでぜひダウンロード購入し、周囲の知人に見せびらかしながら楽しんでほしい。
(取材・文章:世界三大三代川)
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