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バンダイナムコゲームスと東大大学院の馬場章研究室がゲームと教育に関するシンポジウムを開催

2009/8/6

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●“ICT時代の子どもの未来を考えるシンポジウム”がバンダイナムコゲームスで行われた

 

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▲開会の挨拶に立ったのは、2009年4月1日にバンダイナムコゲームスの社長に就任した鵜之澤伸氏。子どもが好きで、かつて教員になりたかった時期があるという鵜之澤氏は、「世間一般では両極端と思われているゲームと勉強を結びつける」(鵜之澤氏)ためにプロジェクトを発足したと語っていた。

 2009年8月6日、東京、品川のバンダイナムコゲームス社屋で、“第1回 ICT時代の子どもの未来を考えるシンポジウム”が開催された。主催はバンダイナムコゲームスと東京大学大学院情報学環、馬場章研究室。両者は2009年7月29日にゲームと教育をテーマにした共同プロジェクトを発足したことを発表しており、今回のシンポジウムは、その具体的な活動の第1弾となった。

  

 シンポジウムは3部形式で行われた。第1部では、文部科学省生涯学習政策局の参事官、齋藤晴加氏が、“学校ICTの環境整備事業と教育の情報化”というテーマで講演を行った。現在、文部科学省の生涯学習政策局では“スクールニューディール構想”という計画が進められていて、そのひとつが学校のICT(情報、通信に関する技術。ITと同じ意味)化であるという。具体的には小中学校に地上波デジタル対応のテレビや電子黒板、PC、校内LANなどのインフラを整備すること。日本の学校は、アメリカ、イギリス、韓国に比べて、こうした設備の設置が進んでおらず、同局では当面、イギリス並みの水準を目指している。すでに4081億円の予算は下りており、1校当たり1100万円を使った設備が整えられつつある(応募制)。また、現在、策定中の新指導要綱では小学校でもPCの基本的な操作を学習することが検討されていることが明らかにされた。

 

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▲講演の冒頭、馬場氏が来場者に「シリアスゲームという言葉を初めて聞いた人は?」と尋ねると、会場の半数近くが手を挙げた。教育関係者にはまだ“シリアスゲーム”という言葉が浸透していないようだ。

 馬場章氏は“デジタルゲームの教育活用に向けて -シリアスゲームの可能性”というタイトルで講演を行った。その内容は、“大井町プロジェクト”、“シリアスゲーム”、“ゲームの教育的利用”の3つ。“シリアスゲーム”とは、教育や研修、広告、医療など、エンターテインメント以外のさまざまな目的に使われるゲームのことで、馬場氏が専門的に研究している分野でもある。

 

 馬場氏は3つのテーマに触れるまえに、自身の体験を語った。馬場氏はかつて都内の高等学校の非常勤講師を務めていたことがあり、その際に、あまり学校に来ない生徒と出会ったという。ところがその生徒は、馬場氏が担当していた日本史の授業だけには顔を出していた。馬場氏はこのことを自分が常勤の先生ではない非常勤講師であったことがつき合いやすさを生んだと理解し、上下関係ではない“斜めの関係”が重要と説いた。また、その生徒はコーエーの『信長の野望』シリーズが好きであったことも、授業に出席した大きな要因だったと振り返った。当時、『信長の野望』シリーズに興味を持っていたのはその生徒だけではなかったそうだ。馬場氏も試しに遊んでみたところ、「やってみたらおもしろい。しかも、おもしろいだけでなく、当時のさまざまなことを知らないとできない」(馬場氏)ことに気がついたという。この体験から馬場氏は“ゲームのプレイが知識を増やす”ことがあることを認識した。馬場氏はもともと西洋史を専門とする研究者だったが、ゲーム研究を専門とするようになった背景には、このような体験があるのかもしれない。

 

 “大井町プロジェクト”とは、馬場研究室で開発したIT技術を大井銀座商店街に活用するという企画で、2000年にスタートしている。“危険、汚い、来たくない”という“旧3K”を、“教育、環境、健康”という“新3K”に変えようというスローガンのもとに進められている。これまでの実績として、大井町のポータルサイトを開設したり、りんかい線の全線開通イベントに合わせて商店街で写真展が行われた。今後はプロジェクトを“まちづくり”に拡大させることが目標だという。
 

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 “シリアスゲーム”に関しては、医療、研修、政治などの各分野の成功例を提示した。医療、福祉分野での成功例は、バンダイナムコゲームスのアーケードゲーム『太鼓の達人RT』。これは通常の『太鼓の達人』を、高齢者や障害者向けにした別バージョン。椅子に座ったままでもプレイできるように太鼓の位置を変えられるようになっていたり、力の弱い人でも遊べるようにセンサーの感知度が変更できるようになっている。このゲームのリハビリ効果は九州大学付属病院の高杉紳一郎氏が科学的に証明している。研修目的の成功例は、スクウェア・エニックスと学研の合弁会社が製作した『D-Moment 巨大地震編』(PC用)が紹介された。これは、巨大地震が発生したときの対応が学べるシリアスゲーム。1575円[税込]でダウンロード販売されているが、2009年8月末日で販売が終了する。また、KONAMIが日本版を無料で配布している『Food Force』(PC用)も紹介された。これはインド洋の島で災害が発生したという設定のもとで災害支援活動を行うゲーム。国際連合の食糧援助機関、国連世界食糧計画(WFP)が開発したゲームで、同機関の活動が理解できる。

 

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 “ゲームの教育的利用”に関しては、講演時間の制限のため、駆け足での説明となったが、馬場氏は、いまの子どもたちは生まれたときからインターネット環境が存在していた“デジタルネイティブ”で、彼らと接するには“新しい子ども観”が必要と説いた。また、学校へのゲーム機の導入に関しては、ニンテンドーDSよりもPCを推奨するとのこと。無料ゲームが豊富に揃っているからだという。さらに、ハード、ソフトの導入に止まらず、教員による授業の組み立ても重要であることも指摘。最後に「(シリアスゲームを)東大とバンダイナムコゲームスが共同で研究していきます」(馬場氏)と宣言して、講演を締めくくった。

 

 第2部では馬場研究室の研究生ふたりによる講演と、バンダイナムコゲームスによるシリアスゲームの紹介、内田洋行の講演が行われた。

 

 馬場研究室の富安晋介氏はコーエーのオンラインRPG『大航海時代 Online』(プレイステーション3、PC用)が香川県の高等専門学校の歴史の授業に実験的に活用された例を報告。これはすでに何回か報告されている事例なので、詳細は過去の記事を参照してほしい。馬場研究室から登壇したもうひとりの研究生、鎌倉哲史氏は、ネクソンのオンラインRPG『テイルズウィーバー』(PC用)を用いた研究成果を報告した。鎌倉氏は、携帯電話というプライベートなメディアにインターネット閲覧機能がついたことで、子どもを取り巻く環境が変化したと指摘。子どもを被害者にも、加害者にもしないために、インターネットでのモラル教育が必要だと説いた。研究には杉並区のある小学校が協力。まず生徒に『テイルズウィーバー』を自由にプレイしてもらい、そのあとで、プレイのログ(記録)を返却。その際に、「君たちの行動は記録されているんだよ」と告げると、子どもたちは驚いたという。鎌倉氏はオンラインゲームでのモラルを単純に教えるよりも効果があることを予想しているが、そのデータは現在、分析中とのこと。後日行われる発表に期待したい。

 

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 バンダイナムコゲームスは3タイトルのシリアスゲームを紹介した。ひとつは“ネット利用の安全と未来推進会議”のサイト内で、2007年11月21日に公開された『ネット星みつけた!』。“ネット利用の安全と未来推進会議”とは、バンダイナムコゲームスが参加している産学官連携プロジェクトで、子どもの安全を守りながらインターネットの可能性を探ることを目的としている。『ネット星みつけた!』は、ダウンロードすることなくプレイできるブラウザゲームで、インターネットでのトラブルを解決していくのが目的。楽しみながら、“コンピューターウィルスへの対策を講じましょう”などのインターネットのルールを知ることができる。

 

 続いて紹介されたのは“遠山式立体表示法”という3D表示システム。左が赤、右が青い眼鏡をかける、いわゆる“赤青式”の3D表示システムで、バンダイナムコゲームスが特許を持っている。バンダイナムコゲームスは、この“遠山式立体表示法”に対応した撮影キットと赤青式眼鏡を全国の学校に貸し出しており、撮影した写真をアップロードできるサイトの運営も行っている。

 

 『お仕事タウン』というコンテンツも紹介された。これは“サークルリンク”というサイトで運営されている仮想空間(バーチャルワールド)で、2009年3月27日にサービスがスタートしている。約40万人の小中学生が参加。月刊のビュー数は4000万件を超えるという。仮想空間内で仕事をするとお金を手に入れることができ、そのお金で服などのアイテムを購入できるという仕組みだ。これだけでは、ありふれた仮想空間に聞こえるが、参入企業が並はずれている。バンダイナムコゲームスのほか、野村証券、大塚製薬、ベネッセコーポレーション、日本語検定委員会、東芝、光が丘動物病院グループ(発表順)といったそうそうたる企業、団体が参入しているのだ。仮想空間では、各企業が提供する仕事を体験することで、楽しみながら仕事体験が得られるようになっている。

 

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  大手事務用品商社の内田洋行、教育システム事業部教育コンテンツ企画部の青木栄太氏は、“UNIQUEプロジェクト”という産学連携プロジェクトを報告。国内外での学校へのIT機器の導入例を研究しつつ、実験的に機器の提供も行っている。

 

 第3部ではパネルディスカッションが行われた。コーディネーターを務めたのは馬場章氏で、パネラーとして品川区教育委員会事務局指導課指導主事の滝渕正史氏、内田洋行の青木栄太氏、バンダイナムコゲームス社長室、文化・教育事業推進プロジェクト、マネージャーの一木裕佳氏が登壇した。

 

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 パネルディスカッションでは、まず滝渕氏が携帯電話の問題について発言した。滝渕氏は品川区の教育委員会やPTAのメンバーからなる青少年問題評議会という機関で、小中学生の携帯電話の所持が問題になっていることを俎上にあげた。滝渕氏によると、携帯電話を所持している小学生の多くは親が持たせているケースが多いとのこと。「親は子どもが携帯電話をどこで何時間使っているかわからず、ルールを意識していない」(滝渕氏)として、家庭でルールを作ることの重要性をアピールした。これに対し、PTAの役員をしている馬場氏は、GPS機能の利用のために子どもに携帯電話を持たせたい親と、持たせたくない学校のあいだで、つねに軋轢が発生していることを指摘。品川区では教育委員会をPTAが「話し合って決めているのが頼もしい」と発言した。馬場氏が「品川区の企業としてどうでしょうか」と問うと、バンダイナムコゲームスの一木氏は、個人的な見解としながらも「危ないからと言って取り上げる必要はありません」とコメント。安全な道具として使う道を探ることを提唱した。内田洋行の青木氏は、携帯電話の問題を広くインターネットの問題としてとらえ、むしろ学校側からのニーズがあると発言。「学校で子どもが使うことによって、リテラシーが育まれるような環境を育てたい」と抱負を述べた。

 

 シンポジウムの最後に、馬場氏は「ITCが単に情報を処理することと単純化して理解されてはいないでしょうか?」と問いかけた。馬場氏は教育へのITCの導入は、「いまがどのような時代であるか、気がつく力を育む」(馬場氏)ものであってほしいと発言し、それは「広い意味でのクリエイティブを身につける教育」(馬場氏)であると語り、シンポジウムを締めくくった。

 

※バンダイナムコゲームスの公式サイトはこちら

※馬場研究室の公式サイトはこちら
 

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