HOME> ゲーム> 目指すは海外タイトルの意識改革! ユービーアイソフト社長の本音インタビュー
●「日本人クリエーターとのコラボレーションはぜひやってみたい!」
『アサシン クリードII』や『スプリンターセル
コンヴィクション』を発表し、今年のE3でもっとも目立ったメーカーのひとつ、フランスの大手メーカー“ユービーアイソフト”。単独のカンファレンスでもサッカー界の神様“ペレ”、『ターミネーター2』でおなじみの“ジェームズ・キャメロン監督”をゲストに呼び、子供からゲームコアファンに向けた幅広いラインアップを披露。いまや世界の誰もが認めるトップメーカーだ。
|
▲ユービーアイソフト日本法人社長のスティーヴ・ミラー氏。流暢な日本語で業界を鋭く分析。 |
今回は特別に、会場に現地入りしていた同社日本法人のスティーヴ・ミラー社長にE3での手ごたえを聞いた。ミラー氏は日本で15年近くゲーム業界に関わっていて、日本語も非常に流暢な人物。日本のゲーム業界にも造詣が深い。本音トーク全開のインタビューになっているのでお楽しみに。
――3ハードメーカーすべての発表会でユービーアイソフトのタイトルの映像が流れ(※)、さらに独自のカンファレンスも大成功。まだE3は開催中ですが、これまでの露出でどのような手応えを感じていますか?
ミラー 『スプリンターセル コンヴィクション』の反応が予想以上によかったですね。ブースに来ていただいた日本のメディアやゲームクリエーターの方々が『スプリンターセル コンヴィクション』の出来がいいとおっしゃってくれたようで非常に光栄です。『アサシン クリードII』も前作のヒットがあったからか、上々の反応だったように思えます。日本市場ではとくにプレイステーション3、Xbox 360のソフトに力を入れているので、この2作品の評価が高くてまずはひと安心ですね。
――カンファレンスではWii、ニンテンドーDSのタイトルがいくつも発表されましたが、日本市場ではプレイステーション3、Xbox 360用ソフトが今後も中心になるんですか?
ミラー ユービーアイソフトは携帯ゲーム機から新世代機まで幅広いソフトを展開していますが、日本市場に限って言えば、サードパーティーが任天堂ハードでいい成績を残せていない状況です。それに、開発費がそれほどかからない、アイデア勝負というところで、ニンテンドーDSやWiiへの参入メーカーは後を絶たない状況が続いている。そんな中で、海外メーカーの我々がこの分野で勝負するのは得策ではないと感じているんです。ユービーアイソフトのワールドワイドな開発力を考えると、プレイステーション3、Xbox 360で勝負するほうが日本市場に合っていますよね。
――ミラーさんは日本での業界歴が長いですが、日本の市場をどのようにとらえています?
ミラー いま日本市場は、第3の市場と言われています。だからどう考えても重要なマーケット。ハードメーカーの発祥地でもありますしね。ユービーアイソフトとしても無視することはできない市場です。ただ、海外メーカーの認知度がまだまだ低い。でも逆転の発想をすると、どこも大成功がない分、逆にチャンスがあると思っています。日本のクリエーターと組んだり、日本にスタジオを置くなど長期的な開発計画を立てれば成功に近づくと考えています。
――ユービーアイソフト(日本法人)でも日本スタジオを置くとか、今回カンファレンスで発表された水口哲也さん(キューエンタテインメント)とのコラボのような、日本人クリエーターとの協業を考えているんですか?
ミラー ぜひ、やってみたいですねー!! むしろやらなきゃいけないと思っています。これまで海外で作られて日本で大ヒットしたゲームはほとんどないですよね。でも、海外のセールストップ10を見ると、日本のメーカーのタイトルが数多くランクインしている。日本のタイトルが世界に受け入れられていることは証明済みなんです。実際、日本の作品はインターフェースもよくできているし、バグも少ないし、ゲームデザインセンス、色使い、音楽、ストーリーなどどれをとっても非常にクオリティーが高い。そう考えると日本で作ってワールドワイドで展開した方が、ヒットする確率が高いと考えているんです。
――日本で開発するとすると、スタジオを設立ですか? それともコラボレーションに?
ミラー 個人的な意見ですが、スタジオを作る必要はなくて、コラボレーションがいいと思っているんです。
――それは有名ディベロッパーに発注、みたいな形ですか?
ミラー 「こういうゲームを作りたいのでよろしくお願いします」と、すべてをお任せする発注の時代はもう終わったような気がしますね。たとえば日本人クリエーターが陣頭指揮をとって、弊社の開発陣で作る形はいいと思います。日本人クリエーターは日本で成功する秘訣を知っている。我々は世界で成功するためのノウハウがある。お互いの強みを出し合ってひとつの作品を作ればワールドワイドで勝負できるタイトルになると思いますよ。日本にはゲーム作りが本当にうまいクリエーターさんがいっぱいいますからね。
――でも『アサシン クリード』、『プリンス・オブ・ペルシャ』などを見ると、ユービーアイソフトさんのタイトルって日本を意識、もしくは日本人が好みそうなテイストの作品が多いと思いますが。
ミラー 僕はもともとエレクトロニック・アーツに在籍していたので、それは大いに感じます。フランス人は日本びいきなところがあって、クリエーターも日本の映画、マンガに影響を受けている人が多い。でも一方でアメリカの企業は基本的に自分たちがナンバーワン、という意識が強いんです。それは決して悪いことではないんですが、日本で売れるためには日本の文化に合わせないといけないかな、とも感じています。
――しかもユービーアイソフトのクリエーターさんたちは、日本の作品に影響されたことを堂々と言いますよね。たとえば『アサシン クリード』のジェイドさんが『メタルギア ソリッド』シリーズだったり、『プリンス・オブ・ペルシャ』の開発チームが『ICO』をリスペクトしていたり。
ミラー ユービーアイソフトのクリエーターは柔軟な人が多いかもしれませんね(笑)。でも、それは大昔から、多くの国が隣接して共存してきたヨーロッパ、そしてその一員であるフランスの文化とも言えるでしょう。アメリカの企業の場合、「なんでアメリカでナンバーワンソフトが、日本でナンバーワンになれないのか? おかしい!」と、そこで止まってしまうことが多いかもしれません。私もアメリカ人ですが(笑)。
――(笑)。ところで、ユービーアイソフトは『アサシン クリード』で日本での知名度がグンとあがりましたよね?
ミラー そうですね。社内の雰囲気もかわりましたね。それまでは社員の誰もが、誰も知らない海外タイトルをローカライズしている会社、という地味な印象を持っていたかも知れません(笑)。でも『アサシン クリード』で、日本でもちゃんと受け入れられるタイトルを発売できるんだとみんなの自信につながりました。そのまえの『レインボーシックス ベガス』も予想以上にヒットして、自信にはなっていたんですが。2年前のこの2タイトルで会社は変わりましたね。
――そこに、『プリンス・オブ・ペルシャ』、『ファー クライ2』が続いて……。
ミラー そこでホップステップジャンプと行こうと思ったんですが(笑)! 非常に期待していた『プリンス・オブ・ペルシャ』はユーザーを必ずしも満足させることができず、残念な気持ちでいっぱいですね。ただ、これは海外でも似たような状況で、開発スタジオはユーザーの意見をきちっと検証して、今後のゲームに生かしたいと考えているようです。
――『H.A.W.X(ホークス)』は評価高いですよね。
ミラー いまのところ好調に推移していますね。
――今回のE3でいろいろ発表されましたが、今年度に日本で発売するソフトは何ですか?
ミラー 『アサシン クリードII』、『スプリンターセル コンヴィクション』、『AVATAR(アバター)』は今年度に発売します! 断言します!
アサシン クリードII |
||
スプリンターセル コンヴィクション |
||
――『AVATAR(アバター)』はまだゲーム自体が公開されてませんが(笑)?
ミラー がんばって売り出します(笑)。
――その中でも、とくに期待しているのはやはり『アサシン クリードII』、『スプリンターセル コンヴィクション』ですか?
ミラー そうですね。『アサシン クリードII』については、前作が中近東が舞台でしたが、今作はイタリア、ベネチアが舞台ということで少しなじみやすくなったと思います。それに、ゲーム内容の単調だった部分も徹底的に改良していますし。『コンヴィクション』は、ステルスアクションの常識を変えると思います。これまでステルスアクションは地味で、マニアックな部分があったけど、もうちょっと幅広い層に訴求できると思っています。『スプリンターセル』シリーズ自体、お世辞にも日本では知名度が高いとは言えないので、これが新規タイトルだとおもって遊んでもらっても構いません(笑)。逆に先入観がない分、グラフィックのクオリティーやゲーム性が伝わりやすいかもしれませんね(笑)。
――どちらの作品も日本でもきちんと受け入れられる内容だと思います。これらのタイトルをどうプロモーションしていきますか?
ミラー これから詰めていかないといけないんですが、まず言えることは今年の東京ゲームショウにブースを出展します。アメリカのE3に、ドイツのGCにユービーアイソフトが出展しているのになぜ日本のゲームショウに出展しないの? という見栄のような考えではなくて、今年は日本人のゲームファンにアピールできる作品が揃ったから出展したいと思い立ったんです。いちばんいい状態の『アサシン クリードII』、『コンヴィクション』をお見せすることができるはず。自信を持って出展したいと思います。
――ユービーアイソフトの知名度もあがりそうですね。
ミラー そうですね〜。日本のユーザーの海外ゲームに対する意識はまだまだ変えていかなければいけませんが(笑)。
――でもひと昔まえに比べたらよくなったんじゃないですか?
ミラー 20年近くゲーム業界に携わってますが、ほんのちょっと前進しただけ。まだまだですね〜。たとえば『ファイナルファンタジー』や『ドラゴンクエスト』は初日で何百万本売り上げるソフトですが、世界を制覇したあの(!)『GTA』シリーズや『コール オブ デューティ 4』、もちろん『アサシン クリード』など1000万本クラスのタイトルであってもが日本では数十万本の世界ですからね。文化の違いとはいえど、なかなか難しいものです。それでも以前に比べれば変わりつつありますけどね。
――今年のゲームショウのユービーアイブースで、日本のゲームファンの“洋ゲーアレルギー”を払拭できればいいですね!
ミラー そうですね! 日本でもミリオンヒットしてもおかしくないクオリティーにはなるのは間違いないんで(笑)。まー、現実的に考えて、学校の休み時間に話題になるようなタイトル、ブランドになってほしいですね。
――ズバリ、日本市場でのライバルはどこですか?
ミラー うーん……まず国内でトップ10に入りたいですね。あとはやっぱりエレクトロニック・アーツを意識していない、と言えば嘘になります(笑)。日本に参入している海外メーカーを追い越して、国内大手と勝負できるようになりたい! ズバリ、曖昧な答えですが(笑)。
※任天堂の発表会で『Red Steel 2』(Wii)、ソニー・コンピュータエンタテインメントの発表会で『アサシン クリードII』、マイクロソフトの発表会で『スプリンターセル コンヴィクション』などが目玉タイトルとして放映された。
【E3 2009】の関連記事
- マイクロソフト泉水敬氏の単独インタビュー!「“Project Natal”はハードの枠を超えた取り組み」 - 更新日時:2009年7月8日
- 目指すは海外タイトルの意識改革! ユービーアイソフト社長の本音インタビュー - 更新日時:2009年6月15日
- E3 2009動画特集 まとめ&SCE編〜『GOD OF WAR3』、『アンチャーテッド 2』など大作がズラリ - 更新日時:2009年6月13日
- 実際にいち早く体験してきました! “Project Natal”は触るだけで楽しい - 更新日時:2009年6月11日
- 『Mass Effect 2』、『ダンテズ・インフェルノ(仮題)』、『The Saboteur』とエレクトロニック・アーツの重点タイトルをチェック - 更新日時:2009年6月10日
- 大量に襲ってくるゾンビの恐怖は確実に倍増!『Left 4 Dead 2』プレイリポート - 更新日時:2009年6月9日
- 『Left 4 Dead 2』の日本発売にかなり前向き――VALVE社インタビュー - 更新日時:2009年6月9日
- E3でひと目ぼれ!『スプリンターセル コンヴィクション』のプレイ動画超解説 - 更新日時:2009年6月9日
- E3いち豪華なスクウェア・エニックスブース、『FF XIV』の映像も - 更新日時:2009年6月9日
- Take-Two Interactiveブースリポートその1 世紀末ライクなオープンワールドのオンラインCo-opシューター!『Borderlands』 - 更新日時:2009年6月9日
この記事の個別URL
ソーシャルブックマーク |
評価の高いゲームソフト(みんなのクロスレビュー) |
※ ブログ・レビューの投稿はこちら!(ブログの使い方) |
その他のニュース

横スクロールシューティング『アーシオン』2024年発売決定。80年代後期から90年代初頭を彷彿させるデザインやゲーム性で開発。メガドライブほか最新機種での展開も予定
SUPERDELUXE GAMESは、横スクロールシューティング『Earthion(アーシオン)』のパッケージ版を2024年に、アレンジサウンドトラックCD“The Scheme: 21st Century Revival”を2023年11月23日に発売決定した。

ファンタジーな冒険から農作業まで楽しめる『フェイファーム』を青木瑠璃子さんが実機プレイで挑戦。魔法を駆使したスローライフを満喫
『青木瑠璃子×ファミ通・電撃のゲーム特番!』にて、青木瑠璃子さんによる『フェイファーム ようこそ精霊の島アゾリアへ』実機プレイが実施された。

反省しない悪役令嬢ラノベ『エトランジュ オーヴァーロード』のコミカライズが決定。声優は水橋かおりさん、早くも3Dモデルも【TGS2023】
“小説家になろう”、“カクヨム”で連載中の小説『エトランジュ オーヴァーロード 〜反省しない悪役令嬢、地獄に堕ちて華麗なるハッピーライフ無双〜』の漫画化が決定。作家は謎の新米作家・喜多山浪漫氏。その正体は……?

『ゲームセンターCX 有野の挑戦状1+2 REPLAY』有野課長がTGSに登場! 課長みずから新規追加のレトロ風ゲームを紹介&スコアアタックで生挑戦!【TGS2023】
”東京ゲームショウ2023”の3日目、9月23日にバンダイナムコエンターテインメントブースで行われた、Nintendo Switch用ソフト『ゲームセンターCX 有野の挑戦状1+2 REPLAY』のステージイベントの模様をお届けする。

『百英雄伝』ファミ通DXパックが予約スタート。オリジナルB2タペストリーやNOA、SEI、MERISAのアクリルジオラマなどが付属
エビテン(ebten)は、2024年4月23日に発売される『百英雄伝』について、Nintendo Switch、プレイステーション5(PS5)、プレイステーション4(PS4)ファミ通DXパックの予約受付を開始した。

『レスレリアーナのアトリエ』公式コスプレイヤーが集結! kipiさん(レスナ)、シスルさん(ヴァレリア)、伊織もえさん(ライザ)ら6人が撮影会を開催【TGS2023】
東京ゲームショウ2023のコーエーテクモゲームスのブースにある、『レスレリアーナのアトリエ 〜忘れられた錬金術と極夜の解放者〜』のフォトスポット。一般公開日初日、このフォトスポットにて、公式コスプレイヤー6人の撮影会が開催。kipiさん(レスナ)、シスルさん(ヴァレリア)、はたのゆうさん(イザナ)、猫田あしゅさん(トトリ)、つんこさん(ユーディー)、伊織もえさん(ライザ)が登壇した。

『風来のシレン6』シレンや敵がデカくなる新要素が発表。アスカのゲームプレイ映像や新たな敵“木遁忍者”なども公開!
『青木瑠璃子×ファミ通・電撃のゲーム特番!』にて、スパイク・チュンソフトの新作『不思議のダンジョン 風来のシレン6 とぐろ島探検録』の最新情報が公開された。

KONAMIより、2023年10月24日発売予定のNintendo Switch(スイッチ)、プレイステーション5(PS5)、プレイステーション4(PS4)、Xbox Series X|S、PC(Steam)用ソフト『メタルギアソリッド マスターコレクションVol. 1』の各プラットフォームの出力解像度とフレームレートが公開された。

『FF7 リバース』プレイ動画付き最新情報。世界には発見や遊びがいっぱい! ピアノ演奏やカードゲームなどさまざまなミニゲーム、チャドリーも登場【TGS2023】
東京ゲームショウ2023の一般公開日(2023年9月23日)に公開された『ファイナルファンタジーVII リバース』の最新情報をプレイ動画とともにお届け。

新時代の恋愛ゲーム『制服カノジョ』各ヒロインのファミ通DXパックが予約開始。ヒロインのひとり“八尋実桜”(声:小坂井祐莉絵)セットを紹介
エビテン(ebten)にて、Switch、PS4、PC向け恋愛ゲーム『制服カノジョ』ファミ通DXパックの予約受付がスタート。