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巧みなシナリオ構成がプレイヤーを引き込む 『イレブンアイズ クロスオーバー』
【プレイ・インプレッション】

2009/4/2

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●“赤い夜”が誘うミステリアスな物語

 PCでリリースされ人気を博したアドベンチャーゲーム『イレブンアイズ』が、数々の新要素を追加してXbox 360へ移植される。タイトルは『イレブンアイズ クロスオーバー』。謎多き物語が描かれ、多くのゲームファンを魅了したPC版。そのPC版で明かされなかった謎や、サブキャラクターの秘密が本作で解明される。そんな『イレブンアイズ クロスオーバー』を、おもにファミ通系の雑誌で活躍しているゲームライター・本田やよいがいち早くプレイ。そのインプレッションをファミ通.comでお届けする。


●運命的な出会いを果たした、数少ないゲーム

 

 ゲームライターという職業を生業にしていると、ゲームとの“運命的な出会い”を果たす、そんなことがままある。

 紹介記事を書いてくれと依頼され、渡された画面写真やイラスト、世界観などに関する資料に目を通しているうちに、そのゲームに対する魅力を少しずつ感じていく。さらに、自分の言葉でゲームの説明文を書いているうちに、知らず知らずそのゲームに感情移入していく。そして、早くそのゲームが遊びたいと渇望し、発売日が待ち遠しくていてもたってもいられなくなり、ついには担当編集者に「ぜひ攻略記事を書かせてください!」とお願いする。もちろん発売日よりも早く、ゲームを遊ぶためである。その願いが叶った時は、ゲームライターという仕事を選んで本当によかったと思う。

 

 で。

 

 この『イレブンアイズ クロスオーバー』は、私にとって久々に、そういうゲームだったのだ。

 

 私の心を奪ったのは、PC版オープニングのPVだった。

 本作はPC版からの移植作品なのだが、PC版開発元“Lass.”の公式サイト(※編集部註:18歳未満の方は閲覧できません)で公開されていたPVを見て、そのあまりのカッコよさに心酔してしまった。

 楽曲のレベルの高さと、カット割りのクオリティーの高さ。

 私が説明文を書いた登場キャラが、つぎつぎと画面上に現れては消えていく、そのPVをひと目見て、もうすっかり虜になってしまった。

 (ちなみにXbox 360版のPVが現在、Xbox 360のビデオマーケットプレースやファミ通.comにて配信中なので、興味のある諸氏はぜひとも見てもらいたい)

 

 PVで興味を持った私のこのワクワク感を、きっと満足させてくれるゲームに間違いない、という確信が私にはあった。紹介記事用に配布された資料に書かれていた世界観が、その時点ですでに私を魅了していたからだ。

 

 “赤い夜”。

 

 その単語だけで、私の想像は高まった。


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※画像クリックで拡大されます。


 

●罪を背負った者は誰? 罰を与える者は誰?

 

 本作は、メインとなる「罪と罰と贖いの少女」編と、そのアナザーストーリーである「虚ろなる鏡界」編の2編からなる。

 「虚ろなる境界」編については、Xbox 360版オリジナルということもあって、発売まえに深く言及することは避けたいので、本稿ではメインの「罪と罰と贖いの少女」編について記述していきたい。

 

 物語は、主人公の駆と幼なじみのゆかが、突如“赤い夜”に迷い込んだことから始まる。

 “赤い夜”とは、駆とゆか以外の、生命あるものの存在がいっさい感じられない世界。

 毎日通う高校が、見慣れた商店街が、駅前のビルが、青い空が。

 すべてが赤――夕日に照らされた暖かい朱ではなく、深い、血の色を連想させる赤――に包まれている世界。

 その世界で、駆とゆかは異形の者たちに追われ、命を狙われる。

 反撃する手段を持たないふたりは、逃げ惑うことしかできない。

 そして、赤い夜は突如明ける。

 そこには、ふだんと変わらない、級友の笑い声が響く、平穏な世界があった。

 

 “赤い夜”はいつ訪れるのか、いつ明けるのか、まったくわからない。

 誰もいない世界に、なぜ駆とゆかだけが紛れ込んだのか。そして、なぜ命を狙われるのか。

 何もわからないまま、2度目の“赤い夜”がやってくる。

 

 だが、そこで駆たちは“仲間”と出会う。

 駆たちと同じように、“赤い夜”に紛れ込んだ者たちがいたのだ。それも、合わせて“6人”。

 彼らは、襲いかかる異形の者たちを撃退する、特殊な能力を持っていた。

 

 陰陽師の美鈴。

 守護天使“アブラクサス”を召喚することができる菊理(くくり)。

 驚異的な再生能力と、高い戦闘力を持つ雪子。

 炎を自在に発生させることができる賢久(たかひさ)。

 

 この4人は、力を合わせ、異形の者たちを撃退する。

 だが、駆とゆかのふたりだけが、何の能力も持ち合わせていない。

 なぜ、彼らは特殊能力を持っているのか?

 なぜ、自分とゆかは何の能力も持っていないのか?

 そして、自分たちだけが“赤い夜”に呼ばれる、その意味は――?

 物語は、多くの謎をはらんだまま、ゆっくりと進行してゆく。 

 
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●緊迫感を際立たせる、平穏な日常の描写

 

 この物語の緊迫感をもっとも高める要素は、紛れもなく“赤い夜”だ。

 物語は、基本的に駆の視点で進行する。

 駆が仲間たちと笑い合い、楽しい時間を過ごしている最中に、突如画面上に大きなひび割れが入る。あたかも、テレビの画面そのものが、鋭利な音を立てて割れたかのように。

 そして世界は“赤い夜”へと一転するのだ。

 

 この“赤い夜に突入する瞬間”の緊迫感たるや、半端ではない。

 最初のうちはまだ、そういう世界観のゲームなのだとわかっているので、こちらもそれなりに警戒しながらゲームを進める。だから、赤い夜が突如発生しても、それなりの衝撃で済む。

 だが、このゲームの憎いところは、学園生活の描写にあるのだ。

 

 主人公の駆は、数年まえに姉を亡くし、半ば自暴自棄な生活を送っていた。幼なじみのゆかに強引に誘われて、クラスメイトと最低限の交友を持っているようなものだった。

 だが、“赤い夜”を経験し、仲間との絆を深めていくうちに、平穏で怠惰な学園生活を、少しずつ“楽しい”と感じていくようになる。

 

 “赤い夜”の仲間たちは、雪子が立ち上げた“考古学部”ならぬ“考現学部”に無理矢理加入させられてしまう。最初は赤い夜の訪れに備えて、ふだんからできるだけ行動をともにしたほうがよい、との考えでしぶしぶ入部した一同だったが、絆が深まり、お互いを知るにつれて、少しずつ“いっしょにいることの心地よさ”が高まっていく。

 バカ話をしたり、ゲームで盛り上がったり、女の子どうしでかわいい服を着てファッションショーをしたり。そんなくだらない、たわいのないことが楽しく、かけがえのないものになっていく。

 

 本編は、この“日常生活の描写”に、かなりの時間を割いている。

 正直、冒頭部分はやや冗長な印象を受けた。駆やゆかの学園生活での位置づけや、各キャラクターを説明するためとはいえ、級友の匡や香央里との掛け合いの描写が長く、くどいなぁ、と感じていたことは否定しない。

 だが、ゲームを進め、駆が考現学部の連中や匡、香央里と親しくなっていき、彼らのことを知るにつれ、この意味のない掛け合いが、プレイヤーにとって少しずつ心地よいものになっていくのだ。

 その要因は“会話が生きていること”に尽きるだろう。とくに匡と、突如転校してきた謎の美少女・栞の会話がおもしろい。世話好きでお調子者で、隙あらば下ネタを炸裂させる匡に対する、ふだんは寡黙な栞の「死ねばいいのに」や「黙れ」などのツッコミが的確で、漫才を見ている気分になる。

 さらに、超ハイテンションな雪子、堅物の美鈴、匡同様下ネタ炸裂大魔王の賢久。この3人の会話がとてつもなくチグハグで、テンポがいい。仕事でゲームをする関係上、セリフの字幕を読んだ段階で、ボイス再生を待たずにAボタンを押してセリフを飛ばすことの多い私だが、彼らの掛け合いが聞きたくて、ボイス再生が全部終わるのを待ってボタンを押す。それくらい楽しいのだ。

 

 そして中盤、喫茶店“ツィベリアダ”で開催されるゲーム大会は、本編屈指の名場面と言っても過言ではない。“ハグル”というゲームをみんなで遊び、優勝者は負けた人に3つの命令を下すことができる、という趣旨の大会。堅物の美鈴にフリフリのメイド服を着せたい賢久、なぜか駆にメイド服を着せたがるゆか、そして何やら不埒なことを考えている匡。それぞれの思惑が交錯し、ゲームは最高潮に盛り上がる。ハグル自体のおもしろさもあって、登場人物が真剣に駆け引きする様子があまりにおかしく、ボイスをフルに再生しながら、何度も声を出して笑ってしまった。

 

 プレイヤーとキャラクターが共有する、楽しいひととき。

 

 そんな小さな幸せを――“赤い夜”は一瞬にしてぶち壊す。

 

 この緊迫感を演出するために、学園生活の描写が仔細なのだと気づくまでには、そうそう時間はかからない。

 

 この楽しいひとときを、どうか終わらせないでほしい。

 命を削って死闘をくり広げる世界に、どうかもう巻き込まないでほしい。

 仲間の血が流れる場面は、もう見たくない。

 

 だが、赤い夜はそんなプレイヤーの願いなど、意に介してはいない。

 容赦なく、彼らの命をおびやかす。

 

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●こじつけではない、深みのあるシナリオ 

 

 もうひとつ重要なのは、“赤い夜”の世界は、現実と乖離した世界である、という“認識”だ。

 赤い夜に存在するのは、駆たち“6人”と、それに敵対する存在のみ。ほかの生命の存在はいっさい感じられない世界。

 逆に言えば、赤い夜から現実に戻れさえすれば、命の危険はない。

 

 だが――彼らのこの認識は、後半、根底から覆されることになる。

 

 本当に現実と乖離した世界なのか?

 現実と赤い夜の境界線はどこにあるのか?

 

 そして。

 いま生きているこの現実は――果たして本当に“現実”なのか?

 

 これらのヒントは、じつはかなり序盤のあたりから、あちこちに散りばめられている。

 会話中に難解な用語が多い本作だが、そんな中に、じつにさりげなく、“あとで考えると「ああーそうだったのかー!!」と膝をポンと打ちたくなる要素”が含まれた会話を、登場人物たちは交わしている。

 

 そして、それはプレイヤーが疑問に思う“ギャルゲーにありがちな展開”を逆手にとっている、とも言える。

 なぜ、6人の仲間が全員、虹陵館学園の学生なのか。

 なぜ、駆とゆか以外の全員が、敵と戦うのに都合のいい能力を持っているのか。

 なぜ、死んだ姉にうりふたつの人物が学園内にいることに、赤い夜に巻き込まれるまでまったく気づかなかったのか。

 

 これらは、ふつうに考えれば“ギャルゲーに都合のいい要素”で済まされる事項だ。

 だが、本編ではじつに見事に、これらの問いに対する答えが用意されている。

 そして、それらのどれもが、プレイヤーを驚かせるに十分な側面を持っている。

 それが単なるこじつけではなく、真にプレイヤーを納得させ得るものであることは、ゲームをクリアーしてみればわかることだ。

 クリアーしてみて改めて、シナリオ構成の質の高さを感じさせられる、そんな作品だ。


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●他者の視点から本編を追体験できる“クロスビジョン”

 

 シナリオのことにばかり話が及んだので、システムについて1点。

 本作には“クロスビジョン”というシステムが存在する。

 駆以外の登場人物に起きていた事項を、その人物の視点から“視る”ことができる。

 本稿で“基本的に駆の視点で進行する”と書いたのは、そういう意味だ。

 だが、どの人物のどの時点の行動でも視られるわけではない。

 基本は一本道のシナリオだが、特定の時点で特定の選択をしないと、目的のビジョンが解禁にならない。

 ビジョンが発生する時点はわかっていても、解禁になっていないと視ることができない。

 そして、このクロスビジョンをすべて視ないと、真の謎は解けない。

 “一度クリアーしただけではすべての謎は解けない”というのは、アドベンチャーゲームにはよくあるシステムだ。だが、それを他者の視点から追体験させるというシステムにしたところが画期的だと思う。

 そして、“それをいつ視るか”をプレイヤーの任意にまかせたところが粋だと思うのだ。

 主となる物語をひと通り体験してから視たい人もいれば、発生した時点ですぐに視たい人もいるだろう。いったんすべてを見通したあとで個々の謎に迫ったほうが、それらの事項が発生した背景がわかりやすい。だが、物語が複雑に入り組んでしまうと、とりあえず発生した時系列の直近にあるビジョンから視ておいたほうが、より理解が進むこともある。プレイヤーの力量や好みに合わせて、ある意味“神の視点”から物語を“好きなように視る”ことができるのだ。

 

 これだけの、難解な単語が飛び交い、複雑で膨大なシナリオを、一度に理解せよと言われても難しい。そういう難所を補うために、好きな時点の物語をすぐに振り返ることができるこのシステムは、とくにテキストアドベンチャーゲームにおいてはもはや必須なものなのかもしれない。
 

Text by 本田やよい

 

 

著者紹介
本田やよい

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ファミ通系列の雑誌を中心に執筆活動を行うゲームライター。もと週刊ファミ通編集者。最近になってギャルゲーや乙女ゲーをプレイする機会が増えたため、いい年して声優オタになりつつある。とくに『MAJOR』で主人公の茂野吾郎役を、『イレブンアイズ』では賢久役を好演している森久保祥太郎さんの大ファン。チャラ系&強気系の役が上手い人が好きらしい。



イレブンアイズ クロスオーバー

対応機種

Xbox 360

メーカー

5pb.

発売日

発売中

価格

7140円[税込]

テイスト/ジャンル

異世界 / アドベンチャー

備考

限定版は9240円[税込]、豪華描き下ろしパッケージBOX仕様、イレブンアイズ クロスオーバー ドラマCD、イレブンアイズ クロスオーバー ポストカードブック同梱、原作:Lass



※『イレブンアイズ クロスオーバー』公式サイトはこちら
 

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