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不可能を可能にする! 小島監督が基調講演で語る、新たなる『メタルギア』への決意表明
【GDC09】

2009/3/27

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●いかに不可能を可能にしてきたか? 『メタルギア』を足がかりに自身の開発スタイルを語る

 2009年3月23日〜27日(現地時間)の5日間、アメリカ・サンフランシスコのモスコーニセンターにて、ゲームクリエーターのための国際会議、GDC(ゲーム・デベロッパーズ・カンファレンス)09が開催。世界中のクリエーターによる技術交流を目的としたGDCでは、トップクリエーターらによる注目の講演が多数予定されている。ファミ通.comではその模様を総力リポートする。
 

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▲海外でも絶大な人気を誇る小島監督がGDCに初登場。


 GDC09もいよいよ折り返し。開催4日目にあたる3月26日には、KONAMIの小島秀夫監督による基調講演が行なわれた。とくに海外で絶大な支持を得る小島監督だが、GDCに来たのは意外にもこれが初めてとのこと。「GDCに来れば、生涯功労賞をあげるよと言われてやってきました」と前置きして会場を笑わせた小島監督は、聴講者をまえにしてゲーム開発における哲学を語った。講演名は“ソリッドのゲームデザイン:「不可能」を可能にする”で、自身の代表作である『メタルギア』シリーズを例に引きながら、いかに“不可能”と思われることを“可能”にしていくかのプロセスを語ったもの。

 「“画期的なこと”というのは前例のないこと。不可能を可能にすることで“画期的なこと”は生まれる」と語った小島監督は、ゲーム開発を“大きな壁”にたとえ、たとえ超えることが不可能だと思われる壁でも、視点の変更およびソフトウェアテクノロジー(ミドルウェアやツールなど)の手助け、およびゲームデザインという“はしご”をかけることで、“大きな壁”を乗り越えることは可能だと説明する(ハードの進化により地面の底上げが果たされる)。「不可能可能は単なる思い込み。不可能と思われていることを可能にするには、既成観念を壊す必要がある」と語る小島監督だが、小島監督のゲーム開発は、まさにこの“既成観念”を打ち壊す日々であった。以下に『メタルギア』シリーズの例をとりながら、小島監督がいかに“大きな壁”を乗り越えてきたかを紹介しよう。

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▲大きな壁があってもやりかたや視点を変えることで必ずや乗り越えられる。ゲーム開発の場合は、ハードの進化やソフトウェアテクノロジーおよびゲームデザインというハシゴをかけることで飛び超えることができると小島監督。

 

『メタルギア』(1987年)

1985年にKONAMIに入社した小島監督は、「MSX2でコンバットゲームを作れ」というミッションを受ける。当時『ランボー』という映画が流行っていたことから発想されたものだ。ところがMSX2というハードは、一画面で一度に8枚のオブジェクト(スプライト)しか表示することができない。とうてい複数の敵と戦う戦闘アクションは実現できない。ここで大きな壁にぶちあたった小島監督は、発想の転換を図る。面と向かって撃ち合うことができないなら、“隠れて逃げる”ゲームにすればいいのだ。いままでになかったゲーム性だし、単独で敵地に潜入する“かくれんぼゲーム”だと、より緊張感も高まる。そんな発想から1987年に業界初(!)のステルスアクションである『メタルギア』が生まれた。

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『メタルギア2 ソリッドスネーク』(1990年)

『メタルギア』がヒットして続編を……ということになった。当初は「新しいハードでより深いステルスゲームを」とのミッションだったが、新しいハードは登場しなかった。同じMSX2でより深いステルスゲームということでさらなる壁が立ち塞がったが、敵がプレイヤーキャラを認識する視界をより人間らしくしたり、画面以外の敵も動いているようにしたり(画面端に出るレーダーで敵の動きを把握する)、聴覚の要素を取り入れるといった形でゲーム自体の緊張感を高め、“より深みのあるステルスアクション”という難題をクリアーする。1990年に発売された『メタルギア2 ソリッドスネーク』である。

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『メタルギアソリッド』(1998年)

『メタルギア2 ソリッドスネーク』も大ヒット。当然続編を……という話になる。かくれんぼは視点が変わったほうが楽しいので、「MSX2で3Dのステルスゲームを」という発想になったが、さすがにMSX2で3Dは無理! このプロジェクトは立ち消えしてしまったが、それから4年後に事件が起きる。1994年プレイステーションの発売である。当時研究所のスーパーコンピューターでなければできないと言われていたリアルタイム3Dを、いともあっさりと実現してしまうプレイステーションの登場はまさに“事件”。ハードにより“地面”の底上げがなされ、3Dになった『メタルギアソリッド』が1998年に発売される。ダクトに逃げ込むと1人称視点に変化するなど、3Dならではの演出にもこだわった。ボイスも収録しており、6ヵ国語に対応している。

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『メタルギアソリッド2 サンズ オブ リバティー』(2001年)

『メタルギアソリッド』は世界中で大ヒット! 世界中から「続編を作って欲しい!」という声が沸き起こる。そこで「よりリアルさを追求したゲームを」と考えていたとき、2000年に新しいハード、プレイステーション2が発売される。非常にすぐれたハードで、「このテクノロジーを使って高みに上がろう」と決意する。それが2001年に発売された『メタルギアソリッド2 サンズ オブ リバティー』に結実する。さすがのプレイステーション2でも実生活に近いリアルさはきびしいということで、本作で見た目のリアルさではなくて、リアルな臨場感を目指そうということになる。温度や湿度を感じさせる環境や場所による影の長短の変化といった演出で、“いかにもそこにいるような臨場感”を高めることに成功する。60フレームによる滑らかな動きも大きかった。結果『メタルギアソリッド2 サンズ オブ リバティー』は空前のヒットを記録する。

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『メタルギアソリッド3 スネークイーター』(2004年)

前作での大成功を受け、当然「次回作を……」との話になるが、前作と同じプレイステーション2で前作を超えるものを目指すことになる。つまり地面の底上げは望めず、ソフトウェアのテクノロジーとゲームデザインだけで前作を超えないといけないことになったわけだ。そこで小島監督は歴代シリーズで“どこに潜入したか”を振り返ってみて、自然環境を舞台にすべしという結論に至る。もちろん、いままで人工的な建物にばかり潜入していたのにはちゃんとした理由があって、それは人口物のほうがテクスチャーやボリゴンを押さえられるから。自然環境は描写も複雑なので、それだけマシンに負担をかけることになってしまう。そこで、小島監督は3Dエンジンをいちから作りなおし、「新しいエンジンを使って新しいステルスゲームを作る」ことを目標にする。これが、『メタルギアソリッド3 スネークイーター』(2004年)だ。テーマはずばりサバイバル。本作ではスネークはジャングルに潜入、ゲームデザインにもサバイバルを取り入れ、怪我をしたら自分で治癒するといった要素も盛り込んでいる。「カットシーン(ムービー)は『2』に比べて少し短くしてあります。『2』では怒られたので(笑)」と話して会場を笑わせた。

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『メタルギアソリッド4 ガンズ・オブ・ザ・パトリオット』(2008年)

『メタルギアソリッド3 スネークイーター』は世界的に大ヒット。当時『メタルギア』は3部作で終わるという宣言をしていたが、ヒットをしたのでつぎも作らなければならないという葛藤があった。そんなときに頭に浮かんだのが「究極の『メタルギア』を作ろう! そうすればそれ以上作らなくていいから」という思い。一方で、2005年に「ものすごいモンスターハードが出る」といううわさを聞きつける。「そのものすごいモンスターハードで究極のステルスゲームを作る!」というのが小島監督の目標になる。うわさのマシンプレイステーション3は1年後の2006年に発売される。“モンスターハード”ということでものすごい妄想を膨らませていたが、さすがに究極のステルスというのかきつそうなので、「プレイステーション3で新しい潜入感覚をもったゲームを」に目標を切り替える。テーマは“新しい状況への潜入”。舞台は戦場。敵味方が変化するという流動的な状況でプレイヤーが自由に遊ぶといういままでになかったシチュエーションを採用している。『メタルギアソリッド4 ガンズ・オブ・ザ・パトリオット』だ。2008年に発売された同作が、世界的なヒットを記録したのはご存じのとおりだ。

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「最初にMSX2でコンバットゲームを作れと言われたときに、諦めていたらいまの『メタルギア』シリーズはありませんでした。ハードの限界がなかったら、いまの『メタルギア』はなかったかもしれません。そういった意味ではハードとソフトウェアの進化があってこそ、いまの『メタルギア』がある」と小島監督は語る。

 ハードの制約を受けて“できないこと”を見極めてからスタートするのが従来のゲームデザインのありかただとすると(とくに日本のクリエーターに多い)、近年の潮流としては、ソフトウェアの進化を得て、真っ向勝負で壁を駆け上がっていく方法論が増えているという。海外のゲームクリエーターはこちらの手法が多くなっているが、“どこまでもロードなしに走れる”とか、“あらゆるものを破壊できる”など、最初に技術があってゲームデザインがある。「いま人気のゲームはほとんどこの手法だ」と小島監督は分析する。

 そのうえで小島監督(および小島プロダクション)は、自分たちの将来を「ふたつのいいところを足した手法、ハードの進化とソフトウェアの進化を踏まえたうえでのゲームデザインを目指したい」と宣言する。そしてそのさきに「新しい『メタルギアソリッド』シリーズがある」と。

 最後に小島監督は、自身による「不可能と思われることの90パーセントは可能である。残りの10パーセントも技術とともに可能となる」という言葉を来場者に披露したあとで以下のとおりに続けた。「ミッションインポッシブルは本当に不可能なのでしょうか? ここにいるみんなでいっしょに不可能を可能にしていきましょう。不可能を可能にして未来を作っていけたらと思っています」とエールを贈って講演を終えた。それは、来場者へのメッセージであるとともに、さらに新しい作品を作り続けるという小島監督の決意表明でもあったようだ。そんな小島監督を、来場者は盛大な拍手をもって見送った。
 

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▲『メタルギア』シリーズの歴史。幾多の壁を超えてきたのがわかる。

▲新しいゲーム制作方法として技術の裏支えがあってゲームデザインがあると小島監督。

 
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▲乗り越えた壁の先にはさらなる『THE NEXT MGS』が。小島監督の飽くことなき挑戦は続く。

▲「残りの10パーセントは技術とともに可能になる」と小島氏。

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