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龍、極まる 『龍が如く3』が描くリアリティー
【プレイ・インプレッション】

2009/3/12

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●高い完成度を誇るシリーズの集大成

 2009年2月26日、伝説の龍が三度現る。
 『龍が如く3』は、2005年にリリースされた『龍が如く』シリーズの最新作。同シリーズは、主人公・桐生一馬を中心に描かれる漢(おとこ)たちの熱き人間ドラマが人気の作品である。もちろん、ドラマ部分だけでなく、爽快なアクションや多数用意されたプレイスポットなど、やり込み要素もふんだんに盛り込まれており、ふだんゲームをしない人からコアなゲームファンまで満足させる作品となっているのだ。今回、この注目のタイトルについて、元週刊ファミ通編集者の齋藤モゲがアツく語る。


●好きだからこそ、あえて放談していきたい


 ゲームに関わる筆者のような仕事をしていると、ふだんゲームにあまり触らない人から「あのゲームっておもしろい?」と聞かれることが多い。初代『龍が如く』のリリース前後は、筆者が六本木の飲み屋で働いていたということもあり、とにかくお客さんに「あのゲームってどうなの?」と聞かれまくったことを覚えている。夜の街で遊び歩いているお客さんも、“神室町”という例の街そっくりの舞台(大人の事情で明言できません)で遊べるという話、キャバクラ遊びがゲーム中でできるという話を聞いてしまっては、好奇心をそそられざるを得ないのだろう。当時、あまりにも『龍が如く』のことを聞かれるので「じゃあ、ちょっとやってみるか」という軽い気持ちでプレイして……どっぷりとハマってしまったという次第だ。今回はシリーズ全作を遊び倒した筆者が、『龍が如く3』のインプレッションを通じて、シリーズへの思いの丈をここで語らせていただきたい。

 

●万人が感じられるリアリティーを構築した功績
 

 ゲームを表現する言葉に“リアリティー”というものがある。デキのいいCGだったり設定だったりするゲームを説明する上で、必須の表現であることは筆者も異存がない。ただ、ふだんゲームに接点のないキャバ嬢のおねぇさんや黒服さん、平日の夕方から飲み歩いている不良中年の皆様(筆者のお客さんだった人々だ)にとっては、“リアルな”と言われてもおそらくほとんどのモノがピンと来ないのであろう。剣と魔法の世界なんて、ピンと来ない代表格。SFでもダメだろう。どんなにリアルに描かれていようが、彼らには映画やテレビ、小説の中のモノであり、現実とはかけ離れた場所の象徴なのである。

 しかし、神室町やキャバクラとなれば話は別。実際に飲みに行ったり遊びに行ったりするような場所がゲーム中に存在する。これこそが、ふだんゲームをやらない層が感じる“リアリティー”として、猛烈な魅力を放っているのである。舞台が架空世界であっても、現実とは地続きになっているという、ゲームにはそう多くない世界を提示した本作。物語も現実味のある(!?)極道の世界が舞台となっており、実際にはあり得ないような演出もそれなりに抑えられている(たまに「特撮かよ!」と思うようなアクション映画的な誇張部分はあるが、逆に笑って許せるような作りになっている)。“街”と“極道の世界”というふたつの現実と地続きなモノを通じ、万人に伝わる“リアリティー”を完成させたことこそが、本シリーズの大きな魅力であり、筆者がオトされた要因のひとつでもある。本作では琉球街という街も登場するのだが、これまた名前から容易に想像できる街をモチーフとしている。デキもかなりのもので、年に最低でも1回は沖縄に行く筆者が言うんだから間違いない! ていうか、たった年1回程度で偉そうに言って申し訳ないが、本当に似ているんだから仕方ない。


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※画像クリックで拡大されます。


 

●携帯アプリよりもお得!?
 

 とにかくゲーム中のプレイスポットが膨大な数になっているのは『龍が如く3』のうれしい誤算だった。しかも過去のシリーズから流用したプレイスポットばかりではなく、釣り、キャバつく(キャバ嬢育成)、ゴルフ、クイズゲーム『Answer×Answer』(自社アーケードゲームの簡易版)、ダーツ、ビリヤード、カラオケなど、まったくの新規プレイスポットも多数導入。結果的には20種類を超えるプレイスポットを収録することになった。基本的にどのプレイスポットもゲーム内ゲームとして十分以上のデキとなっているのは、本シリーズでは毎回とはいえ……感嘆する。ここで通常とはまったく逆の発想をしてみよう。本作の価格はおよそ8000円。プレイスポットだけの数でこの金額を割れば、1本当たり400円を切る。そこに加えてしっかりとした本編が収録されているんだから、コストパフォーマンスの面ではプレイステーション3ソフトの中でもトップクラスだろう。『龍が如く3』1本としては割高な感じがしたとしても、1本300円程度の携帯アプリのプレイスポットを20本買うことを考えればかなりお得だからだ(しかも払うお金は1回限りだ!)。

 ちなみにプレイスポットの中身だが、筆者的にはゲーム内のお金という、ほどよい報酬がゲットできる賭場、中でも“こいこい”がお気に入り。ほかにも、獲物とのほどよいバトル感が味わえる“釣り”、たった1度のホールインワン経験ですっかりハマった“ニアピンコンテスト”、遥を連れた“カラオケ”は何度もプレイしている。とくにシンプルなリズムアクションであるはずの“カラオケ”は遥を連れていくことでおもしろさが激増。一部のファンには“遥の声優(釘宮理恵)萌え”的な要素があるらしいが、筆者は桐生の合いの手や声援などをしっかり聞くことを勧める。おそらくいままでのシリーズを熱心に遊んでいたファンほど……笑えるはずだ。

 上記はあくまでも個人的な好みであるが、数は豊富なのでそれぞれのプレイヤーに合ったプレイスポットが見つかるはずだ。また、いずれのプレイスポットにしても、クリアーしようがしまいが、ダラダラと遊べてしまうところに完成度の高さを伺わせる。

 

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●その気になれば『3』から戻れる

 

 『龍が如く』シリーズは、元々ライトユーザー層が遊ぶことを前提に作られているということもあり、とにかくゲーム初心者にやさしい作りになっているのも、大いに評価できる点だ。説明書を読まなくてもプレイできる作り、適当にボタン連打しているだけでそれなりに戦えるシステム、弱くはないが、投げ出すほど強くもない敵の強さ……本当にアレコレが絶妙のバランスだ。また、本作『龍が如く3』においては、過去のシリーズ作をひとつもプレイしたことがない人に対するストーリー面での配慮も完璧。まず本作を遊んでから『龍が如く』や『龍が如く2』に戻ってもまったく問題ない作りとなっている。唯一の難点は『龍が如く3』を1度遊んでしまうと映像的な粗さが辛く感じるところくらいだろうか。まあ、こればっかりは『龍が如く』と『龍が如く2』はプレイステーション2のタイトルなのでしかたないのだが……。いっそのこと、そのままでプレイステーション・ポータブル用の『1』&『2』パックを出してしまえばいいのにとも思うが、世の中はそううまくできていないのだろう。非常に残念だ。

 

●主人公の桐生一馬という男について
 

 主人公の桐生一馬という男、常軌を逸した戦闘能力を持つ主人公タイプのキャラクターではある。けれど……桐生ファンには申し訳ないが、喧嘩の強さこそ突出しているものの、個人的にはステレオタイプの極道者だとしか思えないのだ。正義感が強く、男気たっぷりという点も、昔ながらの極道者を踏襲している感が強く、キャラクターとしての魅力も格好のよさも想定の範疇。意外性はゼロだ。ところが、ゲームをプレイすることを考えると、この桐生一馬という男がキャラクター的にステレオタイプであることこそ、ゲームとしての魅力を高めていると評価したい部分なのだ。

 まず、メインストーリーでは安心感というものが発揮される。本作の主題が人間ドラマにある以上、物語を進めることで各々のキャラクターの想いがプレイヤーに叩きつけられることになる。だが、桐生一馬の心情は、共通意識として存在する古きよき極道者の常識を逸脱したものがない。ある意味で、それは透明感と言ってもいいだろう。これにより、起こった事象は桐生一馬というキャラクターが歪曲せず、まっすぐにプレイヤーに届く。趣向を凝らして主人公を立たせ過ぎ、事象が素直に届かない作品(これはゲームに限らない)も多い中、しっかりとスタンダードを守る姿勢は素晴らしい。

 反してライバル的なキャラクターは強烈な個性を放っている上に、心に闇を抱えた者が多い。しかも、ただ“居る”というだけではなく、劇中で彼らがどうして闇を抱えてしまったのかを描いていることもポイントだ。『龍が如く3』に関しては物語をこれから楽しむ方々のために言及は控えるとして、『龍が如く』ならば錦山 彰、『龍が如く2』なら郷田龍司といったキャラクターがそれに当たる。主人公ではなくライバルに、本作の持つノワール的側面を落とし込む。つまり、第三者的な立場から彼らの心の闇を覗きこめるという、秀逸な手法がとられているのだ。もちろん、彼らのように心に闇を持つ主人公を立てるという手法もあっただろう。だがそれをやれば、ゲームとしてアクが強すぎてしまうのは見え見え。そういう意味で、主人公を透明なキャラクターに仕立てたのは正解だろう。

 また、メインストーリーではある意味無色透明な桐生一馬だが、街の人々の依頼を受けて事件を解決するサブストーリーでは妙に色がつくのもおもしろい。ギャグ……まではいかないが、本編に影響がないレベルで「桐生ってこんなことするんだ!?」的な要素がサブストーリーではチョイチョイ見え隠れする。こういった部分でニヤリとできるのは、経験値の獲得といったシステム的な部分とは別に、サブストーリーを進めたくなる大きな原動力になっている。これはゲームとして正しい方向性と言えるだろう。


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●タイトルは“龍が如く 極”でもよかった


 ふだんは前述のようにキャラクターや物語に言及するようなことはあまり言わない筆者ではあるが、『龍が如く』シリーズばかりはそうも言っていられない。とくに本作はその傾向が顕著だった。なぜなら、システムやら操作性やらといったゲームとしての土台が完璧であり、キャラクターや物語にどうしても目が行ってしまうから。そのくらい、舞台、バトルシステム、アドベンチャー的要素、わき道の多さ、エンディングを観るために必要とする時間のバランス、初心者に向けた設計などがよくできていると感じる。だからこそ、コアなゲームファンはもちろん、あまりゲームをやらないライトユーザーの人々にも胸を張って勧められるタイトルなのである。ここまで無条件に人に勧めるのは、『ゼルダの伝説 時のオカリナ』以来かもしれない。

 正直言って『龍が如く3』は、現段階でシリーズの集大成というべき完成度を誇っている。日本におけるアクションアドベンチャーとしても、かなり極まった存在になっているとも思う。ただ、個人的な見解としては、刃の上に置かれたモノのような危うさも感じてしまう。これ以上、足しても引いても破綻するのではないかという怖さ。もちろん、もしも続編を作るのであれば、制作サイドはジェンガのプロフェッショナルのように信じられないバランス感覚で、刃の上にさらに何かを上に積み上げてくるのだろう。それを見てみたい気がする反面、「もう、これで十分! 大丈夫だよ!」という気持ちにもなってしまう……そんなタイトルがこの『龍が如く3』だ。とりあえず、極道モノが嫌いでなく、ゲームに抵抗がなければ、絶対に遊んでいただきたい。そして、ここまで勧める本作の完成度というものを、ぜひとも味わっていただきたい。
 

text by 齋藤モゲ
 

著者紹介
齋藤モゲ

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5年ほどまえに六本木で“家の手伝い”と称し、ライター業と平行してバーテンをやるも、見習い段階で自主退学した週刊ファミ通出身のフリーライター。ダーツもキャバクラも、そのときのお客さんから学びました。もう美味しいお酒は作れないけど、美味しいゲームだけは何とか勧められる感じです。

 

龍が如く3

対応機種

プレイステーション3

メーカー

セガ

発売日

発売中

価格

7980円[税込]

テイスト/ジャンル

ハードボイルド / アクション・アドベンチャー

備考

“プレイステーション3『龍が如く』昇り龍パック”は45980円[税込]、プレイステーション3(本体色セラミックホワイト(本体に“龍”のオリジナル印刷)、ハードディスク80ギガバイト搭載モデル)同梱、総合プロデューサー:名越稔洋、プロデューサー:菊池正義



※『龍が如く3』公式サイトはこちら

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