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日韓の国際的なゲーム研究者が成果を発表、オンラインゲームは教育に役立つのか?

2008/12/21

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●韓国でオンラインゲームが授業の正式カリキュラムに導入されることが明らかに

 2008年12月20日、東京大学にて、日韓国際シンポジウム“オンラインゲームの教育利用〜なぜオンラインゲームは教育に役立つのか?”が開催された。近年、ゲームの教育分野への応用に関する研究が積極的に行われているが、こと“オンラインゲーム”に限定すれば、まだまだ研究は始まったばかりという状態。そういった意味では、オンラインゲームの研究では最先端を走る、日韓それぞれの研究者による最新の成果が明らかにされる場として、今回のシンポジウムは極めて有意義だったと言えるだろう。会場は満席状態で(定員180人)、参加者の関心の高さを物語っていた。

 東京大学大学院情報学環主催によるこのシンポジウムは、日韓の研究者による6つの講演、およびオープンディスカッションという、休憩時間を含め3時間20分のたっぷりとした内容で行われた。その概要は以下に紹介していくが、“サプライズ発表”を用意していたのは、韓国ソウル中央大学経営戦略学科のウィ・ジョヒン教授。ウィ教授は、「韓国で来年の4月から、3つのモデル学校で、オンラインゲームを授業の正式なカリキュラムとして取り入れることになりました。韓国ではまだオフレコで(笑)、日本で初めて正式に発表します」と発言したのだ。日本でも、研究目的でオンラインゲームが授業で使用されることはあるが、正式カリキュラムとして採用されたことはない。“オンラインゲームは教育に役立つのか?”というのが研究者にとっての大きなテーマとなっているが、韓国で授業のカリキュラムとして正式に採用されたことは、まさに長年の研究成果の成果と言ってもいいだろう。

■“歴史教育におけるオンラインゲームの活用”

馬場章氏(東京大学大学院情報学環・教授)  


▲東京大学大学院情報学環の馬場章教授。

 馬場教授が、コーエーや香川県の高等専門学校の協力を得て、『大航海時代 Online』などのオンラインゲームの積極的な活用の可能性を科学的に解明する研究を行っているのはご存じのとおり。研究の動機を、「テレビゲームイコール悪という、ステロタイプの先入観を取り払って、しっかりと科学的に検証すべき」という必要に迫られたためと説明した。先端科学技術とエンターテインメントが融合した“テレビゲーム”は人類の過去に例がない、現在の“知的共同体”であり、そのためには新しいメディアとしてのゲームリテラシー(新しい情報に対する判断能力を養うこと)が必要だというのだ。ここ数年にわたって行っている『大航海時代 Online』を使用しての研究結果では、授業にゲームを導入するだけでも、学習に対する興味を引き上げ、ゲーム導入は知識の定着にも貢献するという結果が出ているという。そして、歴史の授業に対する成績も、オンラインゲームを遊んだ生徒のほうが伸びているという。もちろん、科学的な検証にはさらなる調査が必要だが、馬場教授は「オンラインゲームは教育に有効なのか?」や「すべてのデジタルゲームが教育に活用できるのか?」などを今後の課題として挙げた。
 

▲馬場教授は数年にわたって『大航海時代 Online』を使用しての検証を行なってきた。


■“社会性の向上をもたらすオンラインゲームの活用”

坂元章氏(お茶の水女子大学大学院人間文化創成科学研究科・教授)


▲お茶の水女子大学大学院人間文化創成科学研究科の坂元章教授。

 ゲームが社会におよぼす影響について詳しい坂元教授は、自身研究成果を披露。“シャイネス者の社交訓練”の実験では、恥ずかしがり屋の人がオンラインゲームで“社交的な役割”を演じさせると、現実生活でもある程度社交的になるが、その効果は短期間にとどまること、“日本人と韓国人の国際友好”の実験では、日韓の対象者がオンラインゲームをいっしょにプレイすることで顕在的、潜在的な好感度は上がったとした。ただし、「相手に対する好意を高めるためは、異なる集団が交流するだけでは不十分で、相手がいないとクリアーできないような目的を達成することが必要」(坂元)とのことだ。また、オンラインゲームはその極度の没入感ゆえに、社会的不適応者を増やすという悪影響が懸念されているが、坂元氏の調査では、「悪影響があるという結果はいまのところでていない」とのことだ。最後に坂元氏は、「オンラインゲームが社会性のあるツールとして有効だったとしても、プレイヤーに及ぼす悪影響をしっかりと分析したあとでなければ活用すべきではない」と示唆に富む発言をして講演を終えた。

■“ゲーム産業戦略とゲームの社会的認知、活用の現在”

野澤泰志氏(経済産業省商務情報政策局文化情報関連産業課・専門官)

 

▲経済産業省の野澤泰志氏。

 経済産業省のメディア・コンテンツ課にて、“コ・フェスタ”などを主導する野澤氏は、「なぜ映画を1年で200本見ると感心されるのに、ゲームを1日に14時間遊んでいると嫁さんから嫌われるのか?」と自身の体験(?)を披露して会場を笑わせつつ、ゲームが置かれている現状を巧みに説明。GDP(国内総生産)に占める国内コンテンツ産業の割合は2パーセントに留まっており、この数字は世界平均(3.2パーセント)やアメリカ(5.1パーセント)に遠く及ばないと紹介(数字は2004年のもの)。「潜在的には国内市場が拡大する余地は大きい」(野澤)とした。続けて野澤氏は、国内のゲーム産業の課題として、「国内展開、海外展開ともに顧客のライフスタイルの多様化に対応したゲームの提供」や「社会との関係の向上」を挙げつつも、来たるべき未来像としては、日本のゲーム産業が(1)世界をリードしていき、(2)社会や国民に広く支持を受けることにあるとした。そのためには、社会的認知と人材確保の好循環が必要で、「子供がゲームクリエーターになりたいと言ったときに、親が泣きださないような環境が必要です(笑)」と再度来場者を笑わせた。

▲国内におけるオンラインゲーム市場は右肩上がりで上がっていると野澤氏。


 

■“効果的な教育ツールとしてのオンラインゲーム”

ウィ・ジョンヒン氏(ソウル中央大学・教授)/ウォン・ウンソク(ソウル中央大学博士課程)

 

▲ソウル中央大学教授のウィ・ジョンヒン氏。

▲同大学の博士課程のウォン・ウンソク氏。


 韓国におけるオンラインゲーム研究の権威であるウィ・ジョンヒン教授は、ウォン・ウンソク氏とともに、韓国におけるオンラインゲームを使っての教育実験の結果を紹介。韓国のMMORPG『君主Online』を使用しての、小学生への試験結果では、「自己効力感や興味、経済の知識が増大し、オンラインゲームが教育の強力なツールとなることが示されました」(ウンソク)とのこと。冒頭でも触れたとおり、韓国では、2009年4月よりオンラインゲームが正式な学校にカリキュラムとして採用されるとのことだが(小学校2校、高校1校)、教員の人材育成があると、ウィ・ジョンヒン氏は指摘する。教師にもこだわりがあり、教師が変わっていかないとオンラインゲームを教育目的で有効するのは難しいからだ。課題は山積といったところだが、「老人に対する再教育やビジネスマンに対する教育など、(オンラインゲームは)産業界にインパクトを与えられるのではないでしょうか?」と、その目標は高い。

▲韓国における『君主Online』の小学生たちの取り組みが、映像で紹介された。

▲オンラインゲームをプレイすることで、歴史に対する興味や理解が深まっていくという結果が得られたとのこと。


■“小学校の英語教育におけるMMORPGを用いた授業”

ソ・スンシク氏(春川教育大学コンピュータ教育学部・准教授)


▲春川教育大学コンピュータ教育学部のソ・スンシク准教授。

 ソ・スンシク氏はまずオンラインゲームを、“さまざまな社会的活動ができる”、“ロールプレイングをする空間”、“多くの要素を含む”と分析。わけても、聞く、読む、書くという総合的なアプローチができるMMORPGは、言語教育は効果があるのでは?と着目。小学校5年生を対象に、MMORPGをとおして体験的な学習教育に取り組んでもらった。MMORPGには、“学び手の参加意欲の向上”、“相互交流の促進”、“積極性の増大”、“現実世界に学習成果を還元する”といった効果も期待していたという。その結果は、明らかに英語学習に対する成果が促進されたとのこと。ソ・スンシク氏は講演を終えるにあたって、「今後は量的な実験だけでは不十分で、質的な研究をしていかないといけない。子供たちから見て、何が効果があるのかを測定する必要がある」と今後の課題を挙げた。

■“韓国における政策支援と課題”

ユー・ビョンチェ氏(韓国文化体育観光部文化産業課ゲーム産業チーム・課長)


▲韓国文化体育観光部文化産業課ゲーム産業チームのユー・ビョンチェ課長。

  最後に講演したユー・ビョンチェ氏は韓国テレビゲームの現状を紹介。「日本やアメリカはコンテンツ大国だが、韓国もコンテンツ産業の重要性は認識しており、今後5年以内に5大コンテンツ産業国に仲間入りしたい」と語るビョンチェ氏は、現在韓国の娯楽活動の43パーセントはゲームで占められており、「韓国のリーディング産業がゲーム業界」(ビョンチェ)と説明。さらに、韓国内のゲーム産業のうち43.5パーセントがオンラインゲームであると紹介した。ビョンチェ氏によると、世界のゲーム市場におけるオンラインゲームの比率が8パーセントとのことなので、いかに韓国ではオンラインゲームのビジネスが突出しているかがわかる。また、韓国では「教えやすく学びやすい」(ビョンチェ)ツールとしてシリアルゲームに注目。政府が予算を出してシリアスゲームを制作したという。ただし、先生や保護者とのシリアスゲームに対する認識の相違から、教育現場には充分に普及していないのが現状だという。今後の韓国の政策としては、シリアスゲームが学校に受け入れられるように援助するとともに、言語教育ゲームを中心に、さらなる教育用ゲームの制作を目指すという。

 最後は、その日に登壇した講演者が全員参加しての“オープンディスカッション”が行われた。馬場氏が「日韓のオンラインゲーム研究者が一同に会してシンポジウムを行うのは初めて。個人的には歴史的な1日になりました」と語れば、坂元氏も「スタンドァローンのゲームの影響やシリアスゲームの研究は最近見るようになったが、オンラインゲームの研究は少ないので、印象深い1日」と語るなど感慨深げ。韓国でオンラインゲームが授業の正式カリキュラムに採用されたことに関しては、経済産業省の野澤氏いわく、「触発されました。とても先進的な取り組みで興味深いです。日本でもそういう動きがあってもいいと思う。オンラインゲームがどう活用できるか、今後さらに研究してみたいです」とオンラインゲームの教育現場への働きかけに積極的な姿勢を見せた。

 まだまだ課題が多い、オンラインゲームの教育現場への活用だが、東京大学の馬場教授をはじめとする研究者の取り組みは、着実な成果を結びつつあるのではないだろか。そんなことを実感させる国際シンポジウムだった。

▲盛況のうちに幕を閉じた日韓国際シンポジウム。

 

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