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開発者も“みっくみく”にされるVocaloidの魅力
【CEDEC 2008】

2008/9/12

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●匿名性が逆にキャラクターを生む

 

 社団法人コンピュータエンターテインメント協会(CESA)の主催で、毎年開催されている国内最大級のゲーム開発者向けカンファレンス“CEDEC”。今年の“CEDEC 2008”は、東京都世田谷区にある昭和女子大学を会場に、2008年9月9日〜11日にかけて開催された。

 

 会期中は直接ゲームを取り扱っているわけではなく、注目の技術を取り扱ったセッションも数多く行なわれた。2日目にはヤマハの大下隼人氏とクリプトン・フューチャーメディア(以下、クリプトン)の佐々木渉氏が音声合成ソフト“Vocaloid”についての講演を行なった。

 

▲左がクリプトンの佐々木氏で、右側がヤマハの大下氏。大下氏が最近覚えた趣味は、“初音ミク”曲を聴いて“みっくみくにされること”。

▲大下氏による、プログラム上の構造と製品の担当部分を重ね合わせた図。キモとなるエンジン部分をヤマハが提供し、歌声合成に使用するライブラリーをクリプトンなどのメーカーが担当する。

 

 まず大下氏が歌声合成技術の背景として、自然楽器から電気楽器、シンセサイザー、サンプラーへと進化していく様子を紹介し、人の声は“一番初めにあった楽器”でありながら、これまで再現が難しかった唯一残された“聖域”だったという。歌声は歌詞があり、音色のバリエーションも広く、“あ”、“い”という発音だけでも、楽器なら別の楽器とも言えるぐらいの音色の違いがあるのだとか。

 

 Vocaloidではあらかじめ録音された音声を小さなパーツ“素片”へと分解し、入力に合わせてこれらを連結し、歌声を合成している。開発時に意図されたのは“歌詞が聞き取れる”、“スムーズである”、“自然である”ということ。このため合成用のデータベースには、日本語の場合500以上もの“素片”が各ピッチごとに収録されている。また、たとえば音を伸ばすために単純にループを行なうと、人間の声と比べると不自然なブザー音に近い音が発生してしまう。Vocaloidでは伸ばした音にある程度のゆらぎを与えるなど、少しでも自然な音へと調整を行なっていることで、人口的でありながら、音に表情がある独特な歌声が奏でられるのだ。

 

▲歌声ライブラリの録音方法は“企業秘密”として詳細は明かされなかったが、「意味のない5〜6文字の文字の羅列」(大下氏)を読み上げる作業を繰り返していくらしい。

▲“Sing a Song”と歌わせる際にどのような処理をしているか、という図。入力された歌詞を細かく分解して、対応する音を合成し、発音タイミングを調整して、ピッチを変化させる。

 

 続いてVocaloid技術を『初音ミク』などに商品化してきたクリプトンの佐々木氏が「すでにご存知かとは思いますが……」と前置きしながら、“初音ミク”や“鏡音リン・レン”などのVocaloid キャラクター・ボーカル・シリーズ(以下、CVシリーズ)のヒット具合を説明した。Vocaloidはクリプトンによって2004年より製品化されてきたが、CVシリーズになったことでそれまでの10倍以上の売り上げになったという。
 

 バーチャルシンセなどのソフトウェア楽器は通常250本〜3000本くらい、音素材集なら80枚〜500枚くらいというのが同社が把握していた相場だったが、“初音ミク”は42000本、“鏡音リン・レン”は24000本をの売り上げを記録する。それまでの音楽制作を目的とするユーザー層と完全に違う市場を開拓し、キャラクターそのもののファンにも普及。佐々木氏は、実際に定期的にソフトを起動して音楽制作に使用するアクティブユーザーは多くても10000から15000人程度と予測しているそうだ。

 

 本来音楽制作の専門的なソフトを取り扱うメーカーであったクリプトン。“初音ミク”というキャラクターを抱えるコンテンツメーカーにもなって、それまで知らなかった領域に進むことになり、驚きの連続だったと言う。爆発的な人気を誇るフィギュアをはじめとしたグッズはもちろん、メディア展開ひとつをとっても大きく異なる。従来専門誌で展開される情報では、プロによる音楽ジャンルに特化した記事などがあったが、“初音ミク”では注目度が非常に低くなり、むしろ楽曲制作のうえでの基礎知識や、基本的な技法が喜ばれるんだとか。

 

 PSP(プレイステーション・ポータブル)で発売が予定されている『初音ミク -プロジェクト ディーヴァ-(仮題)』など、歌声合成技術の枠を飛び出していく“初音ミク”の魅力。佐々木氏は初期の設定があまりなく、自由度の高い歌声があったことで、匿名性が逆に歌詞の親近感やドラマ性を生み、ほかのユーザーが制作した楽曲を聴いた人が、捉えどころのないイメージを共有していくことで「ユーザー側が大勢でミクを包み、刺激を与えることで」ひとつの世界が成立しているのではないかと分析していた。

 

 前述の『プロジェクト ディーヴァ』などの大型のタイアップは昨年9月下旬までのオファーが中心になっており、今後の展開としては、コラボレーションは募集しつつ、CGM(ユーザーが作成したメディア)ならではのメリットや魅力を活かした展開も検討中とのことなので、今後の発表に期待しよう。

 

※CEDEC 2008の公式サイトはこちら

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