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「ひとつの転換期を迎えないといけないのかな」(郷田)――Xbox 360『テイルズ オブ ヴェスペリア』の開発秘話
【CEDEC 2008】

2008/9/10

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●『テイルズ オブ ヴェスペリア』の新たな試みとは?


 2008年9月9日から都内にある昭和女子大学で開催されているCESA デベロッパーズ カンファレンス 2008(CEDEC 2008)。本イベントは、社団法人コンピュータエンターテインメント協会(CESA)が主催する、国内最大級のゲーム開発者向けカンファレンス。
 

 バンダイナムコゲームスの看板RPG『テイルズ オブ』シリーズの最新作、Xbox 360用ソフト『テイルズ オブ ヴェスペリア』を題材にしたセッションが、2008年9月10日に行われた。

 

 “Xbox 360『テイルズ オブ ヴェスペリア』から見たハイデフRPG開発”と題したこのセッションは、プロデューサーの郷田努氏、クリエイティブプロデューサーの樋口義人氏、ローカライズプロデューサーの三好秀一郎氏が、シリーズ初となるハイデフ機を使った開発、北米版との同時発売など、『テイルズ オブ ヴェスペリア』で試みた新たなチャレンジについて興味深いトークを展開した。

 

▲(写真左から)郷田氏、樋口氏、三好氏。セッションはこの3人のキーマンで展開された。

 

 「『テイルズ オブ』シリーズは、ワールドワイドで1000万本をセールスし、13年の歴史を持ったRPG。だからこそ、いままでプレイしたことがない人にとっては、どの作品から始めたらいいのかわからない。そんな声を社内でも耳にして、ひとつの転換期を迎えないといけないのかな」(郷田)と、そんな意味も込められていた『テイルズ オブ ヴェスペリア』の開発。長い歴史の中で培ってきた『テイルズ オブ』シリーズの作りかた、アプローチ(予約特典)など、“いままでどおり”のいい部分は残しながらも、「たとえばオンラインといった世の中の流れを見ながらやりかたを変えることも必要」と郷田氏は続けた。ただ、「藤島康介先生のイラストやアニメーション、主題歌などに響いてくれるユーザーをターゲットに作り続けることで、RPGにおける『ドラゴンクエスト』とも『ファイナルファンタジー』とも違う立ち位置を確立できたと思う」(同)。

 

▲「シリーズのいい部分は残しつつも、“いままでどおり”を禁句にして、『テイルズ オブ ヴェスペリア』で新しいやりかたを探した」(郷田)。

 

 『テイルズ オブ ヴェスペリア』立ち上げの詳細ついて語ったのは樋口氏。まだプラットフォームが決まっていない当時、『テイルズ オブ ジ アビス』がビジネスとして好調だったため、社内で「次回作もプレイステーション2で」という話になったという。しかし、現状維持的な発想ではブランドが衰退するという意見もあり、「今後の『テイルズ オブ』の方向性を示すべく、ハイデフ機での開発、つまり次回作はプレイステーション3、もしくはXbox 360という展開になった」(樋口)。“プレイステーション3で”、“両ハードで”という案もあったようだが、最終的には「開発に着手するにあたっていろいろ有利だった」(樋口)というXbox 360がチョイスされる。このとき、「国内ではまだ十分に普及していなかったXbox 360向けにソフトを作るとなると、販売本数に限界があるし、スタッフのモチベーションを上げるのが難しい。どうしたらいいか?」と郷田氏は悩んだ。が、Xbox 360の海外での好況を考慮すると、「海外も含めて展開すればビジネスとして成功する」と皆を説得した。

 

▲『テイルズ オブ ヴェスペリア』のプラットフォーム選びに関しては、さまざまな議論の末にXbox 360に決まったことを語る樋口氏。

 

 これらの紆余曲折が、最終的には『テイルズ オブ ヴェスペリア』の日米同時発売という思い切った決断につながる。北米版を同時に発売させようとした理由は、「海外展開に関して、国内で発売したのち、北米で数ヵ月遅れて発売する流れだと、ソフトの鮮度が落ちて、引き受けてくれるパブリッシャーが出てこない。どのみち海外でも発売する予定なら、同時に出してみようと」(樋口)決断したという。日本版、北米版を同時展開するとなると、重要になってくるのがローカライズ。そのローカライズを任された三好氏は、「北米ユーザーにも日本のユーザーと同じ感覚で物語を楽しんでほしかった」とエッセンスを共有化させることを意識したと語る。ひとつの例としては、「あるキャラクターが責任を取るために、切腹をするシーンがあるんです。北米でも切腹は“ハラキリ”として認知されています。しかし、介錯人についてはわからないと思うので、その部分をどう説明するかが難しかった」(三好)。それでも、北米版のローカライズが順調にいったのは、ピーター氏という現地スタッフが、サムライそのものといった人物で、日本のわびさびを知っていたからこそ。郷田氏も「彼なくして今回のローカライズはありえなかった」と絶賛した。

 

▲三好氏は「日本語の中に英語を交えてしゃべるキャラクターを、北米版でどう表現するかも悩みました。英語のセリフの中に日本語を入れるわけにもいきませんし(笑)」とローカライズの難しさを話した。

 

 

▲北米版のローカライズに欠かせない存在だったピーター氏。

 

 そのほか、『テイルズ オブ ヴェスペリア』に関わる開発チーム、営業、プロモーション、海外ローカライズといった各部署のスタッフを全員集めた会議を定期的に行い、作品に対する統一の考え、一体感を持たせる“クロスファンクション”の実施や、ゲーム発売の同タイミングで主題歌CDや関連グッズを発売させるクロスメディア展開など、新たな試みについても紹介。その結果、「『テイルズ オブ ヴェスペリア』は、顧客満足度(Webで実施している『テイルズ オブ』シリーズのアンケートの結果)ナンバーワン、Xbox 360タイトルの初週販売本数で1位、Xbox 360タイトルの累計販売本数で2位という結果を残しています。今後もいろいろな試みをしながら、上を目指したい」と、郷田氏は『テイルズ オブ ヴェスペリア』、『テイルズ オブ』シリーズのさらなる飛躍を誓った。

 

▲スクリーンで説明されたクロスファンクションの構図。

 

※CEDEC 2008公式サイトはこちら

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