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いま明かされる『PSO』、『PSU』のトライ&エラーの歴史
【CEDEC 2008】

2008/9/10

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●あちらを直せばこちらが問題に……

 

 オンラインゲームでは一般のパッケージゲームとは異なり、単に開発するだけでなく、運営チームからのフィードバックを受けて連携しながら、長期的なサービスの提供を目指すのが重要だ――2008年9月9日から都内にある昭和女子大学で開催されているCESA デベロッパーズ カンファレンス 2008(CEDEC 2008)。社団法人コンピュータエンターテインメント協会(CESA)が主催する、国内最大級のゲーム開発者向けカンファレンスで、今回もオンラインゲームの開発や運営がテーマとなったセッションが多く予定されている。
 

 初日である9月9日はセガの見吉隆夫氏が登場し、“ネットワークゲームの開発と海外展開について”と題した講演で、国産オンラインアクションRPGの雄『ファンタシースターオンライン』(以下、『PSO』)、続編の『ファンタシースターユニバース』(以下、『PSU』)を通じて蓄積された運営ノウハウを披露した。

 

 まず『PSO』企画当初のコンセプトとして“全世界対応ネットワークRPG”、“協力プレイとコミュニケーション”、“日本におけるネットワークゲームの普及”という3点があったという。この3番目からもわかるとおり、原案が作成された`99年当時には、まだ日本ではオンラインゲームは現在ほど普及していなかった。このため、見吉氏が開発スタッフと最初に行なったのは当時のオンラインゲームを実際にプレイして研究すること。ゲームそのものや通信データの構成、コミュニケーションの構造などを分析し、家庭用ゲーム機への転換を行なうことにした。
 

 その結果、通信データを低減しながら(PCでのマウス+キーボード操作ではなく)パッドで操作する、ナローバンドで実現可能なアクションRPGの模索と、『パンツァードラグーン』のものを応用したモーフィングでの体形変化による、個性を出すキャラクターエディット、そしてチャットの吹き出し化、ワードセレクトシステムなどの採用に至る。
 

 印象的だったのがチャット部分で、『Diablo』などをプレイした際に見吉氏たちが気づいたのは、そもそも日本語でチャット入力できるものが少なかったうえ、発言がただチャットログに表示されるだけでは、画面上の誰の発言かわかりにくいという問題。そこでまず漫画の吹き出しを応用して発言者をわかりやすくし、さらにシンボルチャットや各国語に翻訳された形で表示させる定型チャットのワードセレクトシステムといったものを導入して、言語の壁を無くそうとしたのだとか。
 

 結局は「gg」(グッドゲームの意)などの英語由来の省略語を入力するのが主流になったものの、初期の導入としては役立ったと認識しているそうだ。なお、『PSU』でシンボルチャットとワードセレクトシステムは実装されていないが、これは単純に開発期の工数による問題によるとのこと。

 

 本格的なオンラインゲームの蓄積があまりないなか、当初から世界に通用するものを作ろうと意図された『PSO』開発期には、さまざまな苦労があったようだ。まずデバッグだけを取っても、4人プレイのMOタイプのゲームでは、デバッグ作業が(非オンラインゲームに対して)これまでの4倍かかる。そして現在とは異なり、対象プラットフォームにハードディスクが実装されていなかったことから、オンラインゲームでは常識のβテストや発売後の修正アップデートも困難。さらにプログラム本体以外のライブラリーも完成版ではなく、課金システムなどと同様に本体プログラムと同時進行で不具合を修正していかなければならないという、新たな領域に足を踏み出した苦労が語られた。

 

 そうしてできあがった『PSO』だが、一定の成功を収めるとともに、新たな問題が降りかかる。日本での運営で判明した問題点は、まず前述したように、ハードディスクがないので不具合の修正点ができないこと。これにより、チート行為(プログラムの穴をついて行なう違反行為)によるアイテムの増殖や、パラメーター操作が横行し、最終的にはほかのユーザーのデータを破壊するようなチートも発生することになる。

 

 ここで示されたユーザー推移のグラフによれば、運営開始後2か月目で一度大きく減ったのち、約半年で『PSO Ver.2』をリリースして大きくユーザーを増やすところまでは織り込み済みだったようだが、その後次第にユーザー数を減らしていき、24ヵ月でほぼ終息へと向かっていく。これによりわかったのは、(チート対策はもちろんだが)運営の重要性と継続的なコンテンツのアップデート。当初は専属のGMを置くこともなく、開発スタッフですべてを切り盛りしていたそうだ。

 

▲開発者向けということもあり、貴重なデータが公開されるのもCEDECの特徴だ。

 

 続いて台湾と韓国でリリースされたPC版では、サーバーサイドにデータを置かなかったことからクライアント側のチート行為に対応できず、数か月でユーザーが激減していったという。『PSOBB』の中国サービスではサーバー側にデータを置き、秒単位でログインを管理してこうした問題に対応し、ユーザー数の激減こそなかったものの、一方でMO形式のゲーム自体に課金する意識が低く、当地の運営会社が中国のオンラインゲームには欠かせないネットカフェとのつながりが薄いなど、ユーザーが順調に増えない……といった貴重なトライ&エラーの歴史そのものが披露された。
 

 すべてが“初めて”だった『PSO』だが、公式BBSの荒らしを調査したら中学生が自信満々にやっていたという意外なストーリー、チート行為をするプレイヤーと面談したという、いま振り返ると牧歌的な話以外にも、ユーザーから国際結婚した報告が来た話や、ユーザーがマッキンリー山に登頂する際に立てる旗を提供したエピソードなども公開された。

 

▲本記事では失敗談や苦労話が並ぶが、『PSO』は国内外の賞を受賞した、れっきとした名作なのである。

 

 続く『PSU』ではそれまでの課題を反映し、データをサーバーに保存するようにし、修正パッチも当てられるように。アップデートも企画段階から予定し、ゲームコンテンツ面でもオフラインでもストーリーを展開させ、オンラインに誘導、ロビー部分は多数のプレイヤーが集まれるよう、2年間以上の運営を想定して作られたという。だがそれでも、同時接続者数を読み間違えたことによる発売日のサーバートラブル、運営途中での課金システムの変更、果てはブログの炎上と、問題が重なっていく……。最後に、炎上したブログや大手掲示板のコメントを読んだスタッフがメンタル面に支障をきたしてしまったこともあり、チームのケアも重要であるとしてしめくくられた。

 

▲『PSU』のユーザー推移。Xbox 360のユーザーがほとんど変わらず、ユーザー数を維持しているのに驚き。

 

 記者がこれまで取材したなかでも、「ユーザーはこちらの想定を超える行動をする」といった内容のことを数々のオンラインゲームの関係者が口にしていた。不特定多数が接続するオンラインゲームでは、問題はある意味、必ず発生するもの。本講演はその意味で、国内有数のオンラインゲームである『PSO』、『PSU』の開発と運営での失敗談が聞ける貴重な機会だったと言えるだろう。

 

※CEDEC 2008公式サイトはこちら

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