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企画・ニューストピックス

第五回「現役であるということ」
ブルボン小林のE3末端レポート

芥川賞作家にして「ゆるいゲームコラムニスト」でもあるブルボン小林氏が、ロサンゼルスからE3レポートを送信します。本当にE3いってるのかという、よそみぶり、脱線ぶりをお楽しみ下さい。でも、会場の模様もお伝えします。

 

ブルボン小林のE3末端レポート

第五回「現役であるということ」

 

 5月18日。E3開幕日の早朝六時、ふじのっちの電話で起こされる。任天堂の宮本茂さんと、ヒロミ・グレースと朝食をとるのだ。
 えべ太郎さんも同席のはずが、この二日間ろくに睡眠をとっておらず、さすがに寝ることにしたという。
 ふじのっちも、こちらにきてから二時間も寝ていないって。取材が立て込んでいるとはいえ、なんというハードワーカー!
 日本のゲームメディアとして、この大イベントをあまさずに報道するという気概に満ちた様子だ。それだけE3は大事な催しということなのだろう。
 してみると、宮本さんと少人数でトークするなんて、このE3中においても千載一遇のチャンスではないか。しかし、ふじのっちは挨拶だけで、食事にはいかないつもりだという。
「ファミ通が同席すると、宮本さんもリラックスできないかもしれませんから」
 そういってふじのっちは元気に出かけていった。ジャーナリズム側が作り手を尊敬しているということの証をみたようで、感心してしまう。

 

 ヒロミと合流し、ホテルの外の、横断歩道を渡った先のバーガーキングで時間をつぶす。いよいよ公開の迫ったスターウォーズのタイアップで、ダースベーダーが入り口に立っていた。ヒロミがいう。
「ブルボンさん、明日あたりスターウォーズ観ましょうよ」ヒロミは思い付いたアイデアをすぐに実行しようとする。
 いや、僕も一応取材できてるんですけど……、いいかけるけど、スターウォーズなら字幕なしで分かりそうだし、いいかもしれない。
 ヒロミはハードスケジュールの合間をぬって、こうした機会には必ず宮本氏に会うようにしているのだという。ホテルに戻ると、すぐに宮本さん登場。
「ラウンジにいきましょうか」ホテル滞在者だけが利用できるラウンジが最上階にあるそうだ。
 静かなラウンジに日本人の姿はない(日本人はラウンジを使うという発想がとぼしいみたいだ)。ビジネス客らしい連中が新聞をめくったり、静かに談笑している。
 と、ヒロミの様子がにわかにおかしくなる。上着と下着の間に虫が入り込んだような居心地の悪そうな表情。一目で、こういうムードのところ、苦手そうだと分かる。
「じゃあ、表で食べますか」宮本さんもすぐに気づき、さっと引き返す。
「あそこのバーガーキングで」さっきだべっていた店に引き返す。宮本さんとバーガーキングで飯食うなんて思わなかったなあ。よく「飾らない人」という褒め言葉があるけど、字義通りの意味でそういう感じだ。

 

 ここでどんな話をしたか。それはほとんどナイショです。

 

 要約すると、テレビゲーム雑誌の「〜のだ。〜だぞ。」の多用される文体のこと。任天堂ゲームの命名(カエルのために鐘は鳴る、銀河の三人)のこと。ゲーム世界(ファン、作り手、語り手)の「男女比」のこと。それから最新作「ニンテンドッグス」のパッケージ撮影のことも。
 あの三種類のパッケージはそれぞれ犬が一匹ずつ映っているけど、本当は全犬種を撮影したのだそうだ。一ゲームに五種類登場するから、一パッケージに五匹の犬の写真というアイデアもあった。
 しかしDSのパッケージは小さいので「いいや」と、必殺の一匹にしぼったのだという。英断だ!!

 

 宮本さんといえば、マリオとゼルダの人という印象が強い。他のタイトルにはクレジットこそされているけど、ちょっとしたアドバイス程度のことしかしていないのかな(あるいは広告塔的な立場になっているのか)……勝手にそんな印象を抱いていたが、まったくそうではありませんでした。バリバリの「現役」だ。

 

 もう一つ、印象的なのは「ヒロミさんは、ゲーム作るの上手になりましたねえ」といったこと。
 これは、ヒロミのこれまでのゲームが下手だったという意味ではない。ヒロミがパソコンゲーム畑の人だったことを踏まえ、家庭用ゲームというもののコツというか、肝をつかんだ、という意味だと僕は思った。ヒロミはむっとしただろうか、嬉しかっただろうか。


 きっと、嬉しかったんじゃないか。

 

 宮本さんと別れ、ヒロミと二人、バスでE3の会場へと向かう。ヒロミも宮本さんとの会話でエキサイトしたようで、いつも以上に能弁になった。
「私はね、年をとっても内田裕也みたいになりたくないんですよ」ムードだけで、なにやってるか分からないでしょう、あの人。唐突な例えだが、まったくそうだと思い、頷く。
「駄作でもいいから、なにか作品の発表をしつづけてないと」うんうん。そうなんだよ。僕もついさっき同じ事を考えていた。人は、作り手ならば特に、「現役」でないといけない。ヒロミは寡作な作家だが、新作が久々に世に出ようとしている。
 ヒロミは今回のE3で発表される「次世代機」についても語り始めた。
「なんでもそうだけど、普及すればするほど売れなくなるんですよ」CD−ROMが十倍普及して、ソフトが十倍売れるようになるかというと、ならなかった。
 それはセックスと同じだという。
「同棲したり結婚したりしてセックスの回数増えるかっていうと、減るでしょう?」手元に置いておきたいというのは、手に入らない状態だから起こる渇望なのだ、手に入ってしまうことが停滞につながる、そういう仕組みになっているんだ、と。美しい映像もリアルな動きも、今、果たして我々は「渇望」しているのだろうか。

 

 ……そう思いつつ、こうも思う。テレビゲームが「現役」であるために、ゲーム機も常に「次のもの」を世に問い続けなければならないのかもしれないと。
 バスは広い道を走る。E3の大会場に向かって。
(次回に続く!)

 

BGM:You`re Wonderful(MADNESS)

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