アカツキ気鋭のクリエイターを直撃! “Why”を大切にしたゲーム作り【ファミキャリ!会社探訪(87)】

2020/08/28 更新
アカツキ気鋭のクリエイターを直撃! “Why”を大切にしたゲーム作り【ファミキャリ!会社探訪(87)】
by 古屋陽一 編集部
by 村田征二朗 ライター

アカツキの中核を担う4人のクリエイターを直撃!

ファミ通ドットコム内にある、ゲーム業界専門の求人サイト“ファミキャリ!”にて、ゲーム業界の最前線で活躍している、各ゲームメーカーの経営陣やクリエイターを直撃。今回は、アカツキを訪問した。

 今年で創業10周年となるアカツキは、他社IP(知的財産)を活用した協業タイトルのほか、テレビアニメ化もされた『八月のシンデレラナイン』などのモバイルゲームを展開。今年に入ってからは小高和剛氏が代表を務めるトゥーキョーゲームスとの共同制作による新IPプロジェクト『TRIBE NINE(トライブナイン)』を立ち上げるなど、まさにいまもっとも注目を集めるゲームメーカーの一社だ。今回は、同社の中核を担う4人のデザイナーにお話を聞いた。

柴田陽一氏(しばたよういち)
アカツキ デザイナー
山川史帆氏(やまかわしほ)
アカツキ デザイナー
森信介氏(もりしんすけ)
アカツキ デザイナー
森健太郎氏(もりけんたろう)
アカツキ デザイナー

ゲーム業界に至るまでの道筋は人それぞれ。共通するのはゲームに対する情熱

――まずは、みなさんの現在の業務や、ゲーム業界を目指した経緯などについて教えてください。

柴田 僕はいま、アカツキのゲーム事業部でデザインのマネージャー的な仕事をしています。おもに採用戦略やデザインの方針決めなどに関わっています。アカツキに入って今年で7年目です。アカツキ自体が今年創業10年なので、けっこう古参になっていますね。

――柴田さんは最初からゲーム業界に入られたのですか?

柴田 広義だとゲーム業界になりますが、以前はコンシューマーゲーム機のサプライヤーで、ハードウェア作りのほうに関わっていました。おもにグラフィックチップの生産に携わっていましたね。さまざまなコンシューマーゲーム機用のグラフィックチップを生産していました。

――そういったハードウェア側からゲーム開発に移られたきっかけは何だったのでしょうか?

柴田 もともと絵を描くのが趣味で、絵やマンガを描いたりしていたんです。ゲームもすごく好きで、じつは高校を卒業するころにはファミ通さんに入りたいと思っていたんですよ。当時ハガキ職人にとても憧れていて、とくに忍者増田さんが好きでした。でも、学校の先生に相談したら、「うちではそういう方面の進路相談はやっていない」と言われてしまって(笑)。

――学生時代からマンガなどのコンテンツを作るのが好きだったんですね。

柴田 そうですね。2000年以降、ネットが流行り始めたときも個人的に描いたマンガをアップしたりしていたのです。ちょうど東日本大震災が起きたタイミングで、勤めていた会社の方向性も大きく変わりそうな時期でした。同じころにソーシャルゲームが市場として大きくなる流れもありました。そんな中、知り合いから、「起業するから手伝わない?」と誘ってもらって、上京してきました。そこでソーシャルゲームのイラストレーターやアートディレクターをやり出したのが、ゲーム開発に携わるようになった最初でしたね。その後、アカツキに入ってきたという感じです。

――わかりました。山川さんはいかがですか?

山川 私はいまゲーム事業部のUIデザイナーとして、画面のレイアウトなどを担当しています。よくある話ではあるのですが、親も兄弟もゲームが好きで小さいころからゲームに触れていたんですね。また、絵やモノを作るのが好きだったので、好きなものが合わさって自然な流れでゲーム業界に入りたいと思うようになっていました。

――気がついたらゲーム業界しか目になかったのですか?

山川 そうですね。とにかくゲームが作りたかったので、ゲームの専門学校に行って、東京のゲーム会社に就職して、それからずっとゲーム業界にいます。最初は2Dアートを描いたりしていましたが、途中でUIデザイナーにキャリアチェンジしました。アカツキに入社したのは2019年の5月なので、今回参加している中では、いちばん新しいメンバーです。

――ちなみに、子どものころはどのようなゲームが好きだったのですか?

山川 いろいろ遊んでいました。いろいろなゲームを遊んで、「ゲームって、こういう見せかたもできるんだ!」という感動がゲームを作りたいと考えるきっかけになったように思います。

――ゲームへの感動が、クリエイターを目指すきかっけになったのですね。おつぎは森信介さんお願いします。

森信介 自分も物心ついたころにはゲームで遊んでいて、中でもアーケードゲームをすごく触っていました。とくに、当時の格闘ゲームはもうグラフィックやサウンドがとにかく格好よくて、衝撃を受けてその場で動けなくなってしまいました。確かレンタルビデオ屋さんの2Fに置いてあったと思うんですけど……。

――それほど衝撃的だったのですね。

森信介 それ以降は、お金がなくてもゲームセンターに通って、後ろに立ってずっとほかの人のプレイを眺めたりしていました。それぐらいアーケードゲームにハマりましたね。その流れでイラストやCGにも興味を持ったんです。当時のアーケードゲームをリスペクトする気持ちは強くて、いまでも家庭用ゲーム機版のソフトを家に並べたりしています。いつでも見られるように(笑)。

――それは相当お好きだなあ(笑)。

森信介 一方で、映像業界から受けた影響も大きくて、当時はフィルムやセルアニメからデジタルへの変革期という事もあり、実験的な作品も多くとても刺激を受けました。言ってみれば、ゲーム、映像の両方から影響を受けた感じです。結果的には、3DCGの勉強をして、一度はそれでゲーム会社にも入りました。

――ああ、最初は3DCGのお仕事をされていたのですね。

森信介 そうですね。そこでCGムービーの背景をモデリングしたりしていたのですが、「ちょっと違うな……」みたいな感じになって(笑)。そのときにちょうど私の席の近くにキャラクターデザイナーの同僚がいたのですが、すごく楽しそうに見えたんです。そこで自分は2Dのほうが好きかもしれないと思い始めました。それからは、2Dを独学でいちから勉強し直して、映像系の業界で2Dアニメーションやキャラクターデザインの仕事を10年ほどしてきました。それである程度映像に関しては満足できたので、いよいよ憧れのゲームクリエイターになってみたいという気持ちになり、4~5年前にゲーム業界に転職したという感じです。

――では、森健太郎さんのお話を聞かせてください。

森健太郎 はい。私はいま、新規開発のデザインチームのリーダーと、デザイナーのマネジメントを担当しています。アカツキに入って、だいたい2年半くらいです。

――アカツキに入るまでは、どのようなお仕事をされてきたのですか?

森健太郎 私は、プレイステーション後期にゲーム業界に入りました。ちょうどプレイステーション2が出てくるころです。ですので、デザイナーとしてのキャリアは20年ちょっとになります。

――大ベテランさんなんだ。お若く見えますね。

森健太郎 ありがとうございます(笑)。よく見た目と年齢が合わないとは言われます。そのせいでフリーランスで働いていた時期は、若く見られて苦労することもよくありました。それはさておき、初代プレイステーションとプレイステーション2のときに3Dデザイナーとしてキャリアをスタートしたのですが、そこでいったんゲーム業界からは離れているんです。

――あら。それはなぜです?

森健太郎 そこでの業務が過酷な労働状況だったのもあり、「ゲーム以外のほかのデザインが必要な分野で働いてみるのはどうだろう?」と考え、ウェブサイトや映像を制作している会社に転職し、さらにその後は遊技機業界に進み、そこからフリーランスになって5年ほど働いたりして、デザイナーとしていろいろなキャリアを積みました。とはいえ、私もやはり幼いころからゲームが大好きだったので、「ゲームを作りたい!」という情熱を捨てきれず、またゲーム業界に戻ってきました。

――再びゲーム業界に戻られてからは、何年くらいになるのですか?

森健太郎 いまが8年目ぐらいですね。ちょうどソーシャルゲームが盛り上がり始めたころに戻ってきた形です。柴田と同じように、私のまわりにもソーシャルゲームの会社をベンチャーで立ち上げたいという知り合いがいまして、その方に誘われたんです。まず「ソーシャルゲームってどういうものなんだろう」というところから勉強してきました。そこでソーシャルゲームをゼロから作って、ビジネスモデルの理解なども深めて、いまアカツキにいるという感じです。

――ゲーム業界を目指すようになったきっかけはどのようなものだったのですか?

森健太郎 もともと、幼少期から絵を描いたりが大好きでした。将来的には絵に携わる仕事にしたいなとぼんやりと考えていたのですが、そこでTVゲームと出会ったんです。ファミコンはもちろんアーケードゲームも好きでした。いろいろなアーケードゲームを見て、ファミコンとは比べものにならないグラフィックを目の当たりにして、「こういうものを作りたい」と夢中になったのを強烈に記憶しています。

――ゲーム開発は小さいころからの夢だったのですね。

森健太郎 そうですね。子どものときからゲームというエンターテインメントに触れて、夢中になるほど楽しかったイメージが大きかったので、そういうものを作りたいと、当時から強く思っていました。それで、ゲーム業界で絵やデザインの仕事で働くにはどうすればいいのかを考え、「これからは3Dが来るから、3Dを勉強しておいたほうがいいだろう」ということで専門学校で3Dを学び、そのままゲーム業界に入りました。

“どういう体験を届けるためにこのゲームがあるのか”を追求する“Why”を大切に

――それでは、みなさんのゲーム作りに対するこだわりを教えてください。

柴田 今回集まったうちの男性3人はいずれも40歳前後で、小学生のころがファミコンの黄金時代なんですよね。みんながゲームに熱狂していた子ども時代を過ごしているんです。そのときに受けた影響というのは、すごく大きかったです。

――まさに、家庭用ゲーム機というものが浸透していった世代ですね。

柴田 ゲームといっしょに育ってきた世代でもあると思います。グラフィックの進化も目の当たりにしてきましたし、ゲームでしかできない物語体験も味わってきました。ゲームから教えてもらったことはすごくたくさんあるんです。そういう、ゲームならではの思いというものを、次世代につなげていきたいと考えています。

――ゲームならではの豊穣な体験を提供したいということですね。

柴田 たとえば、僕個人がファミコンのソフトをプレイしたときに体験した、ものすごくわくわくした気持ち、そういった先輩クリエイターの人たちからもらったものを、もう一度若い人たちに届けたいという思いはすごくあります。ですので、自分が作っていくゲームでもそういうことができるようになれたらいなとは、強く意識しています。

――たしかに、当時のゲームに対する熱狂ぶりは、ひときわすごかったですね。

柴田 当時は、新作の発売前に学校がその話題で持ち切りになったりして、それだけでわくわくしていましたね(笑)。いまはネットがあって情報が広まるのも早いですけど、当時はゲームの発売日を心待ちにしたり、発売前に、ちょっとだけ発表されたイラストからすごい想像を膨らませたり、発売までの時間が楽しいという状況がありましたね。僕らの作るコンテンツで、それぐらいの熱量があるものを作れたら本望だなと思っています。

――これまでの取り組みのなかで、そういった熱量を出すことができたな、といった手応えがあったものはありますか?

柴田 当時の私たちが味わったような規模感ではないにせよ、『八月のシンデレラナイン』のコアなファンの人たちの熱い思いは伝わってきますし、熱意も感じます。ファンの皆さんには、僕たちの思いや熱量は届いていると信じているので、今後は、より熱狂をもって受け入れられるような、さらなる高みを目指していきたいです。

――熱量に対する希求は、アカツキの方針でもあるのですか?

柴田 それは、僕個人の思いが強いかもしれません。ゲームに限らず、マンガやアニメなどのサブカルチャーから大きく影響を受けたので、その恩返しをしたいと思っています。

――“恩返し”というのは素敵な表現ですね。山川さんはいかがでしょうか?

山川 私は、“作っている本人たちが何よりも楽しむ”ことを大事にしています。自分たちが作ったものを見て、お互いに「これ、すごいね!」と言い合えるようなチームの距離感というか。そんな関係性が好きですし、みんながそう思える環境を作れたらいいなと思っています。

――山川さんはUI部分を担当されているということですが、UI領域でこだわっているポイントはありますか?

山川 UIを作るにあたって当たり前のことだと思いますが、ユーザーがどう受け取るかを第一に考え、ひとつひとつに対して理由を持って作るようにしています。色やサイズひとつを決めるにしても、ユーザーにとって使いにくくないか、誤解を与えないか、視線を誘導できているか、適切な訴求ができているか。どんな細かいものでも、汎用的な画面であっても常に意識するようにしています。

――なるほど。森信介さんがこだわっているのはどのような部分でしょうか。

森信介 私は、いまアートディレクターとして、自社の新規IPプロジェクトに関わっているのですが、とくに意識しているのは、“Why”を大事にすることです。これは弊社のポリシーでもあるのですが、「なぜそのゲームを作るのか」、「どの様な体験をお客さまに届けたいのか」、といったことをつねに意識するようにしています。

――モノのよってきたるゆえんをつねに念頭に置いていくということですか。

森信介 プロジェクトのメンバーで話をしているときにも、「その体験は自分たちが作りたいゲームにとって必要なのか?」といったことはつねに議論の最初にあります。あと、アートディレクターはレギュレーションを作る仕事も多いんですね。キャラクターをどういう思想で作るか、背景にはどんな色を使うのかなど、さまざまにあります。レギュレーション資料を作るときにも、最初の5ページぐらいは、「このゲームを通して届けたい体験は何か」を書いています。どの資料を読むときにも、初めにその前提を読んでもらうんです。

――自分たちが関わるゲームの根幹をなす“Why”の共通意識を持つということですね。

森信介 はい。あとは細かい部分で言うと、新しいデザイナーがプロジェクトに入って来たときには、1対1で30分から1時間ほどかけて「こういうゲームなんですよ」というのを伝えるようにしています。

――それは丁寧ですね。

森信介 ゲームの全体を知ってほしいんです。たとえば、その人にお願いするのは部分的なことでも、何のためにそれがあるのか、全体を意識して作っていただけるようにしたいんです。もうひとつの理由として、これは個人的にこだわっている部分なのですが、デザイナーやプログラマー、プランナー、シナリオライターなど、異業種の人が重なる部分をすごく大事にしています。

――自分の専門分野だけでなく、とにかく全体を意識しろということですか?

森信介 デザイナーはデザインをやって、ライターはシナリオを書いてそれでおしまい……、というのではなくて、全部つながっていると思うんです。物語があって、その絵を描いたりするように、お互いに補い合う部分があって、よりゲームがおもしろくなる発想が生まれてくる。ですので、意識的に重なりを作り、コミュニケーションを取るようにしています。

――チーム全体がいろいろなことを把握しておけば、クリエイティブにも違いが出てくるということですね。

森信介 そうですね。たとえば、自分がキャラクターのアートを作ったとして、そこでシナリオ側から「このキャラクターはこんな風に笑いますか?」みたいな意見がちゃんと出てきたりします。制作中にそういう議論ができるのは、すごく重要だと思います。

――なるほど。それは、アカツキ全体の方針のようなものでもあるのですか?

森信介 個人的にもこだわってきた部分ではありますが、アカツキに入って、「“Why”を大事にする」と言葉でしっかり言われたことで、より意識するようになりました。アカツキという現場は、とくに異常なくらい“なぜ?”にこだわっているんですよ。少なくとも自分が関わってきたプロジェクトは、“どのような体験を届けるためにこのゲームがあるのか”、というのはかなり重視していました。

――それはおもしろいですね。森健太郎さんはいかがでしょうか?

森健太郎 こだわっているポイントということで言えば、柴田と同じように、幼少期、ファミコンのころからゲーム業界の成長をずっと見てきたので、“自分が感じたものをこれからの人たちにも伝えたい”、という気持ちはやはり強くありますね。

――その気持を伝えるべく、実際の業務でこだわっているポイントは?

森健太郎 私はいま、山川と同じUIデザインであったり、アニメーションなども担当しているのですが、やはりUIに関しては山川が言った通り、ユーザーに届けるときにそのUIで本当にいいのか、それでユーザーにしっかりと届くのか、という“Why”を考えて、伝えたいものが届くようなデザインを心掛けています。

――UIこそが、“Why”が如実に反映される箇所と言えるかもしれないですね。

森健太郎 たとえばプランナーの出した企画が、そのUIでちゃんとユーザーに届くのか、あるいはそのUIがユーザーの操作の邪魔になっていないか、レスポンスは快適かなど、意識することは多いです。実際のところ、目指すべきは“意識しないUI”ですね。ユーザーがそこに違和感を覚えず、とくに意識しなくてもプランナーの狙った通りに、ユーザーが思った通りに操作ができるというのが、本当の優れたUIだと思っているので、そこはとくに気を使っています。

――自然とプレイさせるのは、ある意味でいちばん難しいことだと思います。

森健太郎 はい。たとえば演出にしても、その長さひとつとっても注意します。こちらの意図が通じなければ意味がないので、短すぎてはダメですが、長すぎると今度はプレイヤーの操作を阻害してしまう。バランスが大事なんです。ソーシャルゲームだと、空いた時間で気軽に楽しみたいという気持ちがあるので、そこは細かく調整しています。

――そのあたりの微妙な差異は、どのように判断されるのでしょうか?

森健太郎 自分で触ってみて、というのも当然ありますし、UIデザイナーはもとより、チームのみんなに触ってもらって判断しています。もちろん、ゲームの検証チームもいますので、その人たちにもプレイしてもらい意見をもらいながら、微調整を重ねていきますね。

――それこそ、コンマ数秒のような調整が入っていくのですね?

森健太郎 そうですね。もう少し早く、もう少し短くとか。あるいは、これぐらいの演出ならいっそないほうがいいかも、みたいな話になることもあります。もっと演出を盛ったほうがいいのか、逆に消したほうがいいのか、そういう部分も含め、調整には本当にこだわっています。

預かるIPを大切にするのはもちろん、広げることも考える

――アカツキは他社IPのプロジェクトを複数成功させていますが、既存のIPを扱ううえで心掛けていることは何でしょうか?

柴田 IPを扱わせていただけるということは、大切なものを預けていただけるということなので、版元様やそのIPを作ってくださった方々への敬意を大事にしています。それと同時に、僕らに預けてもらったからこそ、より多くの人に知ってもらえるようになって、「アカツキに預けてよかった」と思ってもらえることが、すごく大事なことだと思っています。

――IPを広げていく、というのは大事なポイントですね。

柴田 どのプロジェクトでもそうだと思うのですが、単純にIPを尊重して守るだけではなくて、そこからさらに広げていくことをすごく意識しています。そのためには、版元様から言われたことだけを粛々とやるのではなくて、「こうやるとIPがもっとよくなると思います」、「こういうお客さんが待っているので、こういうことをやってみたらどうでしょうか」みたいな提案をする姿勢は、忘れないようにしています。

――なるほど。けっこうアグレッシブに提案するのですね。

柴田 はい。あまり具体的にはお伝えできないのですが、企画自体の提案をすることもありますし、企画段階から、デザインやゲーム内容についてこちらで考えたものを提示させてもらったりすることは多いです。

――IPを預かる場合、やはり実際にIPを愛するためにも、そのIPを隅から隅まで見たりするのでしょうか?

柴田 そうですね。そのIPに本当に詳しい人は、もちろん版元様にもいらっしゃいますし、僕らのほうにもそのIPの“守護神”みたいな人が、プロジェクトにひとりふたりぐらいはいます。

――“守護神”(笑)。趣味として知っていて、というのではなくて、そういったIPまわりのチェックをする立場の方がいるのですか?

柴田 そうです。もちろん、弊社でそのIPを扱うことが決まった際に、たまたま詳しい人が別プロジェクトにいたりすることもあります。IPを扱ううえでそういう人に監修をしてもらうのはすごく重要なことなので、そういうときにはその人をアサインしてから作ることもありますね。社内にいなかったら、外部からお呼びすることも検討します。やはりそういう詳しい人たちは、知識量が圧倒的に違うんですよね。

――熱量も違ってきますかね。

柴田 もちろん熱量も違います。ただ、熱量があっても知識がないと、それはそれでたいへんなことになってしまうんですよ。その人のなかのIPとファンの人たちが思い描くIPが、ズレてしまうケースがあるんです。大事なのはやはり知識量ですね。ただ、たいがい知識量がすごい人は熱量も高いですからね。よほどの熱意がないと、まずそこまでの知識が入ってきませんから。

アカツキはハートをいちばん大事にする

――アカツキでは“A Heart Driven World.”というビジョンを掲げていますが、こちらはどのような意味を持っているのでしょうか?

柴田 もともと、アカツキが掲げていたビジョンは“感情を報酬に発展する社会”というもので、それをグローバル化に合わせてA Heart Driven World.に変更しています。

――感情を報酬に発展する社会……ですか?

柴田 それは何かと言うと、当時代表だった塩田(元規氏)がアカツキを立ち上げた理由でもあるのですが、お金や土地などの限りある資源はどうしても奪い合いになってしまって、それが究極的には戦争にもつながっていきますよね。でも、感情は無限に湧いてくるものだから、感情を報酬として機能させられるような社会にしていけば、奪い合いもなくなって、つきつめれば戦争もなくせるのではないか……という発想から始まっているんですよ。

――それは壮大な発想ですね。会社自体がそういった理念のもとに立ち上げられたのですか?

柴田 そうです。それでは、どうやって感情にアプローチしていくのか、というところから、ゲームが出てきたんです。ゲームはすごく感情を動かせるじゃないですか。

――ああ! 感情を沸き立たせる有効な手段としてのゲームということですね。“ゲームを作りたくて”というのとは、また別次元なんですね。

柴田 そうなんですよ。ほかの会社さんは、「こういうゲームを作りたいから」といったアプローチが多いと思うのですが、アカツキは“世の中の戦争を止めたい”、という課題を解決するための方法としてゲームを選んでいるんです。そこがすごくユニークなんです。

――あまりほかでは聞かない発想ですね。

柴田 そのビジョンを実現させるのは本当に難しいことだと思うのですが、僕らは本気で信じています。“感情にフォーカスしたモノづくり”というのは、ゲームを開発しているときにも考えています。塩田もよく言っているのですが、「アカツキではハートをいちばん大事にしよう」、という気持ちで仕事しているんです。自分の本当の気持ちに従って意思決定をする、ということを重視しているんですね。

――気持ちに従って、というのは社会に出るとなかなか難しいことのように思えますね。

柴田 そうですね。でも真面目に、権威や義務感、まわりの目などを一切気にせず、自分が本当は何をしたいのかを考えて意思決定をする、そうしようとしているのが弊社のおもしろいところだと思います。そういうのを“ハートに従って意思決定をする”、なんて言っていますね。A Heart Driven World.というのも、そういった思いからきているんです。

――とてもおもしろいですね。会社としては方法論としてのゲームということですが、みなさんはゲームが作りたくてアカツキに入ってこられているんですよね。

柴田 僕としては、アカツキのそのアプローチはおもしろいと思いましたし、「ゲームは害悪」と言われて育った世代としては、世の中をゲームでよくする、という思いにすごく惹かれたんです。当時はソーシャルゲームのガチャの問題もあって、それこそお金を稼ぐためのもの、みたいに言われやすい時期だったのですが、塩田は本気で世の中をよくしたいと思ってやっているので、そういったピュアな姿勢だったり、青臭いところにもすごく共感しました。

――なるほど。ちょっと別の方のご意見も伺ってみたいのですが、森信介さんはいかがですか?

森信介 そうですね。私も共感はしているのですが、途中からアカツキに入ってきた人間としては、正直完全に理解できていない部分もあります(笑)。

――そうなんですね(笑)。

森信介 アカツキのユニークなアプローチを、世の中の人たちに広く認識していただくまでは、まだまだ時間がかかると思っています。私は、最近リリースされた、アカツキの「ゲーム事業部特設サイト」( https://game.aktsk.jp/ )の制作にも関わっているのですが、そのサイトを通して、A Heart Driven World.の考えかたなどを、キービジュアルとして表現する取り組みをしているんですね。

――A Heart Driven World.という言葉をビジュアルで表現するのですね。

森信介 はい。いま柴田が話したようなことを、もっと感覚的に伝えたいんです。興味がある人は、文字でも読みに来てくれますが、そうではない人に向けて、もっと感覚的に、“こんな個性を持った会社です”、というのを表現したいんです。この様な活動を通して、アカツキのビジョンや哲学を、より広げていければいいなと思っています。

――その取り組みに対する手応えは?

森信介 まだリリースしたばかりなので、これからという感じではあるのですが、このサイトをきっかけに、アカツキに興味を持ったり共感してくれる仲間が増えていったら、とても嬉しいですね。

“いっしょにものを作っていく仲間”という意識

――さて、ちょっと話題を変えましょうか。アカツキに入社されて、よかったと思うのはどのようなことですか?

柴田 人を採用するときに人柄をすごく見ているので、対人関係でのストレスがないんです。どうしても採用はスキル偏重になりやすいとは思うのですが、その人がどういう人生を歩んできて、何がその人の核になっているのか、みたいなことを面接でしっかり聞くんですよ。

――柴田さんが入社される際の面接もまさにそうだった?

柴田 僕が正社員の試験を受けたときは、当時の社長であった塩田が面接担当だったのですが、1時間ぐらいほとんど、好きなマンガの話と人生でいちばんがんばったことを話していました。アカツキでは本当に人柄をすごく見るので、いまいるメンバーは、簡単に言うといい人が多いです(笑)。手前味噌になってしまいますが、本当にいい人が揃っていますね。

――“ファミキャリ”のインタビューで、お聞きするにはまさに理想的なコメントですが(笑)、たしかに皆さんのお話をうかがっているだけでも、なんとなくその雰囲気は伝わってきます。

柴田 はい(笑)。ですので、おもしろくて熱量を持ったいい人がいるので、そういう人たちと関わり合うと、「この会社に入ってよかった」と思うことはすごく多いです。あとは、成長に対して向き合ってくれるところも魅力ですね。会社内の関係というよりも、ひとりの人として向き合ってくれることが多くて、いわば、ビジネスライクなサバサバした関係ではないところに魅力を感じます。

――なるほど。山川さんはいかがでしょうか?

山川 柴田がお話していたように、社内にはいい人ばかりで、まわりから刺激を受けることも多いです。ちなみに弊社には“週次報告”というものがあって、毎週その発表を聞くのもおもしろいんですよ。

――“週次報告”ですか?

山川 全社員で集まって、いま取り組んでいるプロジェクトの進捗状況であったり、新しく始めることなどを報告していくんです。ただプロジェクトの内容を報告するだけではなくて、会社の経営面のお話などもあって、私にとってはすごく勉強にもなるんです。事業部以外も含めて会社全体のことをオープンに共有する風潮があるので、すごく視野が広がりますし、社員のことを仲間として信頼していると感じます。

――なるほど。そこまでオープンにしているのはおもしろいですね。森信介さんはいかがでしょうか?

森信介 私も、アカツキにはいい人が多いと思いますね。そのため、余計なストレスがないので、ゲーム作りに没頭できるんです。けっこう衝撃だったのが、一度デザイナーの事業計画を立てるということで、渋谷に集まったんですけど、何をするのかと思ったら、レンタルルームみたいなところで、ただみんなでゲームをして遊ぼう、みたいな会だったんですよ。

――それは楽しそうですね(笑)。

森信介 8人ぐらいで対戦ゲームなどを一日中していました(笑)。それで最後にお酒を飲んで解散、という流れだったんですけど、こんな経験はアカツキが初めてでした。しかも、これは休日とかではなくて、仕事の業務時間を使ってやったんですよ。業務という見地からしたらあまり意味があるようには見えないかもしれませんが、これによりメンバー同士の距離がより縮まったというか、この会があったおかげで、その後の話し合いも自然に本音を出し合えたと思います。

――それはアカツキではよくあることなのですか?

森信介 頻繁にある訳ではないですけど、リーダークラスの方々も、すごく仲間意識を大事にしているんですね。もちろん、会社なので上下関係みたいなものがないわけではないのですが、「仲間だよね」みたいな意識はすごくあります。

――すばらしいですね。森健太郎さんはいかがですか?

森健太郎 私がアカツキに入ってよかったと思うのは、心理的な安全性がすごく担保されているところですね。皆さんもお話していたように、人に対してちゃんと向き合ってくれるんです。たとえズレたことや間違ったことを言っても、まずその人の話を聞くという文化や空気があって、そういう態度でみんな接してくれるので、こちらが失敗することを恐れることがないんです。

――それはいいですね。意見が出しやすくなる、ということでは非常に重要ですね。

森健太郎 間違えたとしても評価を下げられるわけではない、というのが担保されているので、プロダクトなどについても率直な意見を言いやすくなりますし、コミュニケーションもすごく活性化するんです。ここはめちゃくちゃいいところだと思います。あとは、先ほど話に出ていたように、会社の時間を使ってゲームで遊ぶなど、コミュニケーションを重視している点ですね。

――そういった時間の使いかた以外に、コミュニケーションをサポートするような制度などはあるのですか?

森健太郎 はい。“トレーナー制度”といって、すべての社員にはトレーナーがつきます。リーダークラスのメンバーにも必ずトレーナーがいて、相談を聞いてくれる人が必ずついてくれます。あくまで成長のハンドルは自分が握り、トレーナーは成長を促す存在というスタンスです。1〜2週に1回、”1on1”という形で、仕事のこと、プライベートのこと、あるいは今後のキャリアのことでも、いっしょに考えようという仕組みがあります。それがあることで目標に向かっていっしょに向かっていけるんです。

――風通しがすごくいいんですね。

森健太郎 部署ごと、職種ごとにチームごとに壁がある、みたいな話は一般的な企業だと珍しくないと思いますし、自分が以前いた会社でもそういうことはありましたが、アカツキでは基本的にそういった話はほぼありません。どの職種でも、“いっしょにものを作っていくメンバーだ”、という認識で話しが進むので、コミュニケーションも取りやすいですし、仕事もすごくやりやすいです。これまで他の業界も含め、自分は7社ぐらいに勤めてきましたけど、個人的な経験では、アカツキがいちばん仕事がしやすいですね。

――あら! それはすごい。社内で意見が衝突するようなことはないのですか?

森健太郎 もちろん意見がぶつかることはあります。私はこう思う、僕はこう思うみたいなぶつかり合いは当然ありますけど、最終的に「では、ユーザーにとっては何がいちばんいいのか」という話になって、「そのためにはどうすればいいんだろう」、という風に話を進められるんですよ。反対意見であってもまず否定から入るのではなくて、相手の話を聞くところから始まるので、相互理解がしっかりとある状態でモノを作っていけるんです。

オフサイトミーティングや周年祭などを積極的に展開

――では、スキルアップのために社内で取り組まれていることはありますか?

柴田 たとえば、デザイナーが隔週で集まって知見や技術の共有をしたり、会社としても社外の勉強会に出るための費用を負担してくれたりして、技術向上のための勉強は推奨されています。この前は、CGワールドさんという会社が講演会を開いていたので、そこに参加させてもらったりもしました。あとは、勉強用の本についても、申請が通れば自由に買えるので、そういった制度を利用して勉強してもらうことはあります。

――社内交流に関する制度のようなものはありますか?

柴田 年に2回、社外オフサイトという全社のオフサイトミーティングがあります。いまはマッシュアップデーと呼んでいるのですが、社内カンファレンスのようなものですね。トークテーマを決めてゲストを呼んだりして、好きなセッションに行って話を聞く、といったものです。

――へえ。社内GDCのようなものですか。

柴田 そうですね。それがすごくおもしろいんですよ。あとは、今年はできていないのですが、毎年6月には会社の周年祭があって、けっこう規模が大きいんです。昨年は新木場にある会場を借りて、フェスを開きました。

――文化祭のようなものかしら。

柴田 そうですね。バンドを組んで出演する人もいたりして、それもすごく楽しいですね。それ以外の制度で言えば、社内にたくさんサークルがあって、僕はレトロゲームとインディーゲームのサークルに入っています。

――あら。そんなサークルが……。そこではどのような活動をされるのですか?

柴田 ずっと古いゲームの話をしていますね(笑)。ここにいる男性3人はレトロゲームサークル所属なんです。

――ちなみに、山川さんはどのサークルに入られているのですか?

山川 私はインディーゲームやポーカーなど、いくつか掛け持ちしています。サークル活動にもある程度会社から補助が出るので、楽しく交流できますね。

――補助が! それは素敵ですね。

求める人材は、新しいチャレンジに対して積極的になれる人

――ストレートにうかがってしまいますが、アカツキには、どのような人材が向いていると思いますか?

柴田 アカツキでは人柄を重視するところもあるのですが、やはり新しいチャレンジに対して積極的になれる人がいいですね。これまでがこうだったからこうあるべき、みたいな考えが強いと、うちとはなかなか水が合わないように思います。

――新しいスキルやツールにもどんどん取り組める人がいいですかね。

柴田 そうですね。柔軟にいろいろなことを考えて、それまでやったことのないことにも失敗を恐れずに挑戦できる人、そういう人はすごくいいと思います。あとは、デザイナーだからデザインだけやればいい、という人よりも、デザイナーだけど「こういうことにもチャレンジしたい」、みたいな思いが強い人はマッチしやすいのではないかと。

山川 あとは、まわりのこともしっかりと考えられて、大切な仲間として接することができる人といっしょに働きたいなと思います。

――最後に、いま転職を考えている方や、未経験だけどゲーム業界に興味がある人に向けたアドバイスをお願いします。

柴田 経験ということで言えば、うちはゲーム未経験で入ってくるデザイナーも何人かいるんですよ。ゲームの経験がないからこそ活きることもあって、それまでの考えかたに縛られていなかったり、異業種でやってきたことがそのまま活きるようなこともたくさんあります。未経験だから、と不安になる方も多いかもしれませんが、逆に異業種だったからこそ価値があることもあるので、そこは自信を持ってきてほしいです。逆に、僕たちが持っていない知見や、僕らでは考えも及ばないことをどんどん教えてもらって、これまで見たことのなかったゲームをいっしょに作っていけたらうれしいです。

――アカツキは、未経験者に対しても門戸は広く開かれているということですね?

柴田 そうです。とはいえ、もちろん未経験者だけを優遇するわけではなくて、経験者も同様に見ています。業界経験の有無に関してはあくまでフラットという感じですね。

――スキル面に関してはいかがでしょう?

柴田 もちろん、基礎的なデザインの考えかたなど、そういった部分はある程度は求めますが、そこをクリアーしていれば、問題ありません。実際にゲーム業界の経験がなくても活躍しているメンバーがいるので、自分がそれまでにやってきたことを活かしてもらえればと思います。

――業界経験者についてはいかがでしょう?

柴田 経験者の方についても、それまでやってきたことをそのままやってもらうというよりは、これまでにチャレンジしたかったけどできなかったことに挑戦してもらったり、自分の業務領域をより広く考えてもらったりしてほしいです。たとえば、デザイナーとして手だけを動かしてきた人が、組織作りもやってみたいといったことも、ぜんぜんいいと思います。マネジメントや採用ブランディングを考えたり、そういう動きもウェルカムなので、守備範囲を広げていきたいという人は、そういう思いで入ってきてくれるとうれしいです。

山川 さっきデザイナーからもゲームのアイデアを出したりすることがある、という話がありましたけど、実際、職種や年齢に関係なくやれることは多くて、やろうという気持ちさえあれば、まわりの人も協力してくれるんですよ。いろんなチャレンジをしたい人にとっては最高の環境だと思います。

アカツキってどんな会社?

 2010年の創業以降、心が求める活動がみんなの幸せの原動力となる世界“A Heart Driven World.”をビジョンに、主力となるモバイルゲーム事業では、複数の他社IPとコラボしてのモバイルゲームを配信。テレビアニメ化もされた同社オリジナルIPを用いた野球型青春体験ゲーム『八月のシンデレラナイン』などでも存在感を放っている。また、この2月にはトゥーキョーゲームスと共同で制作を行う新IPプロジェクト『TRIBE NINE(トライブナイン)』を発表した。

広々とした会議室では、全スタッフが集まっての報告会なども行われている。書籍も充実。

iOS、Android向け『ハ月のシンデレラナイン』は、夢破れたふたりの少年少女が、女子初の甲子園出場を目指すシミュレーション。

代表取締役CEO:香田哲朗 
設立年月日:2010年6月
従業員数(正社員、連結):451名(2020年6月時点)
事業内容:モバイルゲーム事業、ライブエクスペリエンス事業

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