小林ゆう『ゆうのお部屋』

【榊一郎先生・その4】榊先生の執筆活動の秘密が明らかに!?

 榊一郎先生との対談の最後は、先生の執筆活動の話がテーマ。先生の驚くべき創作旺盛ぶりとこだわりが明らかに。


●頭と指の動きにパソコンが追いついていかない!?

ゆう お話は変わりますが、先生はどのようなペースで作品をお書きになっていらっしゃるのですか?

 作品によって書けるペースが違うので、一概には言えないのですが、短編でだいたい1〜3日ですね。ちなみに短編というのは原稿用紙に換算して40〜80枚になります。一方、長編と言われるものは250〜450枚くらいで、『まじしゃんず・あかでみい』は、早いほうですが、2〜3週間くらい。ひと月はかからない感じかな。私はこの業界では早いほうみたいで、ほかの作家さんは、だいたいひと月半〜2ヵ月かかっているみたいですね。

ゆう すごい! 先生は、すごい速度であります。

 早いのには単純に理由がいくつかあって、とにかく私はけっこう”いらち”(せっかち)なんですよ。気が短いのでとにかく早く形にしたい。あと、思いついた話はすぐに書きたいというのがある。ひとつのシリーズだけだと「どうしてもできない」というストーリーもあるので、やりたいことをやるためには複数のシリーズを動かさないとね、という話になるわけです。そうなると、「どれくらいで書けますか?」となって、そこから逆算して仕事を進めちゃうわけです。人のよっては、ほかにアイデアを思いついても「とりあえずいま手掛けているものが終わるまではやらない」というストイックな人もいますが、私は思いついたものはやってしまうタイプなので、結果として書くスピードが早くなっているんですね。

ゆう せっかちということは、もしかして、私のお辞儀の時間が長くてイライラされたりしていたのですか?

 (笑)。それはありません!

ゆう よかったです。ちなみに、複数の小説を並行して進めたりされるのですか?

榊 それはやりません(笑)。さすがにそれをやると混乱してしまうので。この日からこの日まではコレ! という感じで日程を割ってやっています。ライトノベルってシリーズが前提になってしまうので、「1作書いたからこれでおしまい」というわけにはいかない。だからスケジューリングはきっちりしていますね。

ゆう スケジュールに詰まって、けっこうギリギリのお仕事になることもあるのですか?

 ありますよ。『まじしゃんず・あかでみい』の6巻だったかなあ、350枚の原稿を実質2日半で書き上げたことがありますね。

ゆう それはすごい! 先生は天才どころか人間の域を超えていらっしゃいますね! 腱鞘炎になったりされないのですか?

 腱鞘炎はないのですが、肘は痛めたことがありますね。どうやら変な姿勢でパソコンを打つみたいで。ちょっとまえまでは、腕時計をはめるのも苦痛でしたね。腕時計の金属に手首の熱が奪われちゃうんですよ。

ゆう だ、大丈夫ですか?

 じつはちょっとまえまで体を壊して入院していました(笑)。それでスケジュールを切り直して、逆に余裕ができたので、いまはそんなに切羽詰っているわけでもないんですけどね。逆にこれだけの量を書いていると、「これ以上やったらまずい!」というのがわかってきますね。私の経験で言うと、1日に50枚以上書くとアウト。つぎの日は気力か、腕かが使い物にならなくなってしまう。だから、50枚以上書いたらその日は止めるようにしています。

ゆう それにしても50枚というのはすごい。とにかく頭から文字があふれ出るような感じでいらっしゃるのですか?

 調子のいいときは、指のほうが追いつかないことはありますね

ゆう 先生はすごいです! もう、頭からいろんなところから、いろんなものが溢れ出ていらっしゃいます!

 (笑)。昔、自分がプロの作家になるまえに、ある有名なSF作家が「どんな執筆環境で原稿を書いていますか?」という質問に答えていた雑誌を見たことがあるんですね。ふつう日本語の執筆環境というと、ワープロソフトを使って書いていると思いがちですが、その人はそうじゃなくて、テキストエディターで書いていた。ご存じのとおり、テキストエディターは、本来はプログラムを打つための軽いソフトなのですが、それを使っていたんです。なぜかというと、「ワープロソフトは動作が重くて漢字変換に時間がかかる。思考と指先の動きにパソコンが追いついていかないのがイライラするから」、って書いてあったんです。それを読んだ当時の私は、「そんな話あるか! このおっさん何をカッコつけているんだ」と思ったものですが、いまは私自身がワープロソフトを使えない(笑)。変換にかかるのは0コンマ何秒かの違いだけなのでしょうが、それでも耐えられないんです。

ゆう 先生の頭脳にパソコンのスピードが追いついていけないんですね!

榊 そういう作家は多いと思いますよ。もちろん世にあるワープロソフトはすぐれたものが多いのですが、スピードという点では物足りない。

ゆう ちょっとした積み重ねが、長い目で見たらものすごいロスになりますよね。

 パソコンでも、キーボードが変わると打てないという人はよくいますね。私は浅いタッチのパンタグラフ式をよく使うのですが、うちの嫁さんはクリック感がないとダメらしくて、メカニカル式のキーボードが好きみたいですね。嫁さんはもともとピアノの先生をやっていて、キータッチがものすごく早いんです。『タイピング・オブ・ザ・デッド』をワンコインでクリアーしちゃうくらい(笑)。だから、キータッチが浅いタイプがいいのかな、と思いきやそうでもない。本当に人それぞれですね。

ゆう おもしろいですね。

 声優さんでも、声を出し過ぎたときに喉を湿らせるための薬をつかっていらっしゃる方もいますが、あれも人によってこだわりがあるみたいですね。収録の合間の飲料水も、人によって違う。傍から見れば「お茶でもジュースでもいっしょでしょ?」となるのですが、それぞれこだわりがあるんでしょうね。

ゆう はい、皆さんそれぞれ違いますね。

 まわりから見ると、ある種“くだらない”こだわりなんでしょうけど、実際プロになって限界に近いことをして初めて、こだわりが生まれてくる。そういうこだわりによって、仕事の効率が変わったりするんですよね。

ゆう それはあります! 声のためにはとにかく最善を尽くそうと思っています。私も、喉あめや吸入器など、いろいろなものを試します。

 声優さんはマイクにこだわるわけにはいきませんものね。「これはマイマイクだから!」とか(笑)。

ゆう さすがにそういう方はいらっしゃいませんね(笑)。

 でも、話は戻りますが、原稿に関しては書けないときは本当に書けないですよ。

ゆう そんなときはどうされるのですか?

 散歩に出たり、本を読んだり。家から歩いて15分くらいのところに行きつけのペットショップがあるので、散歩がてらよく気分転換をしに行きます。そこにはタイハクオウムの“タイちゃん”って子がいて、本当に人懐っこいオウムで、「タイちゃん!」って呼ぶと頭を出してくれるんですね。その子も頭をなでてもらうのがすごく好きみたいで。それでタイちゃんの頭をなでて、リフレッシュして帰ってくる(笑)。「タイちゃん、38万円もするみたいだけど貰い手いるのかな?」とか世俗的なことを考えつつ(笑)。

ゆう アハ。でも、先生の癒しになっていらっしゃるので、タイちゃんは売れないほうがいいです!

おふたりによる対談は、このあと先生の趣味であるモデルガンに話題が移ったのですが、残念ながら今回はここまで。榊先生とゆうさんのお話はどこまでも尽きなかったようです。



今回は『まかでみWAっしょい!』でお世話になっている榊先生と対談をさせていただきまして、とても素敵な時間を過ごさせていただきました。シンクラヴィアさんを演じさせていただいたご縁で、貴重なお話を聞かせていただくことができてうれしかったです。榊先生とは今回が初対面だったのですが、とても暖かく気さくにたくさんの素敵なお話をしてくださいました。そして今回は残念ながらご紹介できなかった榊先生のご趣味のことなど、お話は尽きなくてあっという間の対談でした。知らなかったことを教えていただいたり、とてもためになる楽しい時間でした。博学で穏やかで、とても丁寧にお話をしてくださるお姿が印象的な榊先生。お忙しい中、本当にありがとうございました。このような素晴らしい機会をいただきまして大変感謝しています。 小林ゆう


【榊一郎先生新作情報】

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『まかでみックス さーど 将軍様と呼ぶんじゃねえッ!』
著者:榊 一郎 イラスト:BLADE
発売日:発売中
定価:630円[税込]
発売元:エンターブレイン

ごくふつうの高校生、周防千里は“アバロン学園都市”に入学するが、そこに待っていたのはとんでもない学園生活だった! ネオ・ハイブリッド学園ラブコメの第3巻です! 


【DVD情報】


『まかでみ・WAっしょい!』DVD「その2である」
発売日:発売中
定価:6090円[税込]
発売元:ティー・オーエンタテインメント
販売元:メディアファクトリー

ハチャメチャな学園ラブコメディ『まかでみ・WAっしょい!』が満を持してDVDでリリース。DVDでは、テレビでは放送できなかった“むき出し”なシーンもたっぷり収録しているとのこと(全6巻予定)。

  

【小林ゆうさん出演作情報】

銀魂 猿飛あやめ役
テレビ東京(毎週木曜日午後6時〜6時30分)などで放送中

まりあ†ほりっく 祇堂鞠也役
チバテレビ(毎週日曜日深夜0時30分〜午前1時)などで放送中


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魔法先生ネギま! 〜白き翼 ALA ALBA〜 桜咲刹那役

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【獄・】さよなら絶望先生 木村カエレ役

 

小林ゆうさんスペシャルギャラリー

▲大いに盛り上がった対談ですが、話題はいつしか榊先生の趣味である銃のことに。残念ながらそのやりとりはご紹介できませんが、その代わりに……というわけでもないのですが、小林ゆうさんが銃を手にした写真を掲載。さすが、小林ゆうさん決まってます!

 ※写真/小森大輔

小林ゆう

2月5日生まれ。東京都出身。以前はモデルを務めていたほどの抜群のスタイルとルックスで人気を集める声優。代表作はアニメ『DAN DOH!!』の青葉弾道役、『魔法先生ネギま!』の桜咲刹那役、『さよなら絶望先生』の木村カエレ役など多数。