ヴァナ・ディール5周年を記念するブログ連載。各界で活躍する方からの「おめでとう」をお届け! 連載第12回は はせがわみやび さんです。
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『きゅきゅきゅきゅ〜♪』
「文筆業にも経費ってあると思うんです」
「どしたの? みやびさんってば」
「書いたものに取材の成果が反映されていれば、旅費も経費だと思うんですよね」
「ほほー。みやびさん。取材旅行にでも行った? 香港とかシドニーとかインドネシアとか?」
「あう。ピンポイントな地名を並べないでください。そりゃ……香港は行きましたけど」
「行ったんだ」
「行きましたとも。いやいや、そっちの旅行ではなくてですね」
「みやびさんがサッカー観戦以外の旅行をするとは思わなかったな。じゃ、どこよ?」
「ヴァナ・ディール」
「……………………すくなくとも『旅費』じゃないんじゃないかな……」
唐突に失礼しました。
ヴァナ・ディールを愛するみなさん、こんにちは。
『FFXI』のノベライズを書かせていただいておりますはせがわみやびです。
祝! 『ヴァナ通.com』オープン!
おめでとうございます。
次の追加ディスク『アルタナの神兵』の発売も発表されて嬉しいところに、さらに嬉しい知らせが届くとは。
末永くこのサイトが賑わうことを女神さまに祈っております。
さて、『FFXI』も早くも5年。したがって、ノベライズシリーズのほうもそろそろ5年になるわけで──いやはや長いシリーズになりました。
というわけで、ここでは、ふだんはあとがきに書かないノベライズの楽屋裏なんてものを書いてみようかと思います。
そう──。
たしか、最初は〈エルディーム古墳〉でした。
「リアリティが足りないです!」
と電話口の向こうで担当編集の宮地さまはおっしゃったのです。
絶句したのは、みやびでした。
「り、りありてぃ……?」
「そう! この、エルなんとか古墳」
「〈エルディーム古墳〉」
「それそれ(宮地さまは3文字以上の名前を覚えるのが苦手なのです。タルタル娘のペルタタを最初にペタと略したのは宮地さまでした)。その古墳の中のようすがうまく描けていないと思うの。ここだけ、いきなり暗闇にいるみたい。もっと描きこまないと」
「あう」
痛いところを突かれました。
墓といえばアンデッド。
みなさまご存知のように〈エルディーム古墳〉といえば、強いアンデッドモンスターの出るところなわけで。
友人と一度は訪れたものの、たしかに充分観察したとは言い難い。
しかし、締め切り間際で生活習慣が不規則化しているこの時期に友人と待ち合わせて冒険するのは難しい(昼の三時にようやく寝る、みたいな状況ですからね)。
行くならばひとりで。
でも、みやびのキャラはそこまで強くない。さて、困った。
「行くんだったら、スクリーンショットもよろしくねっ! イラストの参考になるようなやつ!」
イラストレーターさんへの配慮も忘れません。さすがです。さすが宮地さまです。
いよっ、編集の鑑!
「だいじょうぶ。レベル下がるの、わたしじゃないし」
「そりゃ、そうです」
「でも、ほら。みやびさん言ってたじゃない? 自分の姿とか足音とかを隠して歩ける薬があるからだいじょうぶだって」
「あれば、ですよ。ないんです」
「売ってないの?」
「競売には売ってます」
「じゃ、買えばいいじゃん?」
「ないんです」
「何が?」
「お金」
「……がんばれ」
頑張りましたともさ。
やっぱり戦闘不能になりましたけど。レベル下がりましたけど。その成果が多少なりとも小説に現れていればいいんですけど。
それから5年。
ヴァナ・ディールのさまざまな地を訪れました。
〈虚ろ〉だって、訪れちゃいました。
ほら。

〈アラパゴ暗礁域〉では、〈アプカル〉に倒されてみたり。

〈ロ・メーヴ〉では、〈ゴーレム〉に倒されてみたり。

「……倒されてばっかりね」
「しくしく」
「この、アラパゴって、何を確かめに行ったんだっけ?」
「それはですね。〈アプカル〉ってどんな声で鳴いたっけ? と疑問に思ったからで」
「ああ! あったあった。そんなこと言ってたわー」
「いちおう、近寄って耳を澄ませ──や、実際には、ボリューム上げて、ですけど。んで、念のためにと、戦闘のときも何か声が出てるかもしれないから」
「戦ってみた、と」
「そです」
「んで、きゅーと」
「きゅーと」
「倒されたわけか」
「わけです」
そんなこんなを繰り返して、ノベライズは書かれているわけなのでした。
どうか、同じサーバーのみなさま、ヴァナ・ディールのどこかで「きゅー」となって倒れているみやびのキャラを見かけたら「ああ、またか」と生暖かい目で見守ってやってくださいませ。
「あ、でも、もうすぐリレイズを覚えられるんです!」
「それは、これからは、いくら倒されてもだいじょうぶってこと?」
「……え?」
「じゃあ、どんどん新しいモンスターも出して、あちこち新しい場所も描かなくちゃね!」
「あややや……」
ちなみに、こちらが最新版の取材映像。

さて、これはどこでしょう?
答えは7月末発売予定の22巻目『ファイナルファンタジーXI 幸運の条件』で!
そうして──。
これからも、みやびのキャラはヴァナ・ディールのどこかで倒れているのです。
たぶん、きっと。
★プロフィール
はせがわみやび
1963年6月30日生まれ。埼玉県浦和在住。物語とゲームがあれば、他に娯楽はいらないという人。既著は『ティアリングサーガ ユトナ英雄戦記』(全3巻/ファミ通文庫)、『ファイナルファンタジーXI』シリーズ(ファミ通文庫)、『新フォーチュン・クエストリプレイ』シリーズ(深沢美潮と共著/電撃文庫)。浦和レッズの熱烈なサポーター。
【HP】Miyabi Hasegawa HP
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ヴァナ・ディール通信責任編集
『5th Anniversary Vana'diel Memoirs』
5th アニバーサリー ヴァナ・ディール メモワールズ