
【インタビュー】プロゲーマー梅原氏に直撃インタビュー(第4回)
●プロゲーマー梅原氏に直撃インタビュー
海外メーカー“Mad Catz”とスポンサー契約を交わした梅原大吾氏へのインタビューもついに最終回! 最後は、梅原氏にまつわる伝説を中心に質問をぶつけてみたぞ。あ、そうそう、インタビューのあとにファミ通攻略班と梅原氏で『スパIV』を対戦したんだけど、その模様を数試合ほど録画しておいたので、そちらもぜひご覧ください。また、ご意見、ご要望などありましたら、ブログ下段のメールフォームよりお送りください。今後の記事作成の参考にしたいと思います。では、インタビュー最終回をお楽しみください!
梅原 大吾(うめはら だいご) おもな大会優勝歴 |
●梅原伝説“強キックを使わずに50連勝”
北口 梅原さんにまつわるさまざまな伝説についてお伺いしたいと思います。まずは“『ヴァンパイアハンター』の大会まえに50連勝くらいしていたにもかかわらず、強キックが効いていなかった”という伝説は本当ですか?
梅原 ああ、○ゲ屋の話ですね。本当ですよ。最初はふつうに使えたんですけど、10連勝か20連勝くらいしたところでまったく効かなくなったんです。そのときはサスカッチを使っていたんですけど、サスカッチにとって強キックは永久コンボに使用するからすごく重要なボタンだったんですよ。だけど途中で「あれ、効かね。」って……。でもそろそろ大会が始まるし「なんとかなるかなぁ」と思ってそのまま続けていたら、さらに20連勝くらいしたことを覚えています。
一同 すげー(笑)。
梅原 そのとき、のちに友人になる奴が散々俺に乱入していたんですよ。それで、俺のことを「強いなぁ」と思っていたらしいんですね。だけど、大会が始まるまえに「強キックが効いていなかった」ということを聞いて、その日の大会を出ずに帰ったらしいんです(笑)。
一同 はははは(笑)。
豊泉 もう勝てないと思ったんですかね。
ブンブン丸 「たしかに強キック使ってなかった!?」とかね。
梅原 「そう言われてみればコンボがおかしかった」と、あとから気づいたらしいですよ。まぁでもボタンが効かないのにプレイし続けていたのはそれっきりですね。
●梅原伝説“体を洗いすぎて全国大会に遅刻”
北口 つぎは『カプコンVS. SNK』の大会に遅刻したときに「いやぁー体を洗い過ぎた」という発言をした伝説。これは?
梅原 あぁ言いました(笑)。覚えていますよ。話すと長くなるんですが、『ヴァンパイア セイヴァー』の全国大会のとき、じつは『ヴァンパイア セイヴァー』があまり好きじゃなくて、大会も「別にいいや」という感じだったんです。それで全国大会の前日にクラハシ(『ストII』でガイルを使う強豪プレイヤー)と徹夜で『ストII』をやっていて、そのまま全国大会に行ったら優勝しちゃったんですよ。『ストZERO3』のときもホテルにみんなで泊まって、徹夜をしてから大会に行ったんです。このときは2日くらい寝てなかったかな? そしたらまた優勝できて……。だから「俺って寝ないと調子いいのかも知れない」と考えたんです。それで『カプコンVS SNK』のときも徹夜しようと考えたんですよ。ただ、いままでは友人と過ごしていたからよかったんですけど、『カプコンVS. SNK』のときはひとりだったので、すごく暇だったんですね。それで、夜中の3時くらいに「まだまだ時間あるからどうしようかなぁ」と思ったんですよ。家ではゲームやらないしね。それで「あ、久々に体をメチャクチャ綺麗にしよう」と思いついたんだよね。
一同 (笑)。
北口 清めようと思ったんですね(笑)。
梅原 そう。そういう感じ。ゴシゴシ擦ってすごくサッパリしたんです。そしたら当然眠くなるんですよね。体はほぐれるし、疲れるし。朝5時くらいにさすがに眠くなって「ま、いいや寝ちゃえ」って(笑)。
北口 寝ちゃった(笑)。
梅原 自宅から会場の幕張は2時間くらいかかるんですけど、起きたのが集合時間でしたからね。だからもう諦めたんですよ。「あ、終わった」という感じで。でもそのころは大会に執着していなかったんで「まぁいいや」と思っていました。それで友人に連絡したら「なにやってんだよ」と言われたんですけど「もういいよ。だっていま家だし」って。だけど「出られるかわからないけど、カプコンに言っといてあげるから来い」と友人に言われたから行ったんですよ。そしたら待っててもらえて「すいません……」て感じでしたね。そしたら友人に「なにやってたんだよ」と聞かれたから……「いや、体洗いすぎちゃって」と。
一同 ははは(笑)。
梅原 友人には「意味わかんない」って言われましたね(笑)。
●梅原伝説“小足見てから昇龍余裕でした”
北口 よく相手の牽制などに昇龍拳を当てる“ウメ昇竜”ってあるじゃないですか。そこからきていると思うんですが、梅原さんが「小足見てから昇龍拳余裕でした」という発言をしたという噂は本当ですか?
梅原 あぁーそれはね、勝手にひとり歩きしている噂のひとつですね。
ブンブン丸 いくらなんでも小足は無理だもんな。
梅原 その話は、俺が知り合いに聞いたんですよ、逆に。「なんなんだそれは?」って。
豊泉 へぇ。逆に聞いちゃったんですか。
梅原 「そんなの身に覚えはないぞ」てね。そしたら、俺が相手の足払いによく昇龍拳を当てるから「あいつは見えてるんだろう」と、対戦仲間が言ったのがドンドンひとり歩きしたみたいなんですよね。
ブンブン丸 半ばネタだよね。そもそも最初は「大足見てから……」だった気がする(笑)。
梅原 これは見てからだろうなってわかるものは見てからやっていますけど。
北口 なるほど。相手の波動拳に滅・波動拳を合わせるのとかはそうなんですかね。
梅原 もちろん。そういった明らかなものは見てからです。
北口 うまい人は地上戦に意識を持っていって、対空は勝手に昇龍拳が出せるっていいますが、実際どうなんですか?
梅原 まぁそうですね。ただ、考えないといけないことがいっぱいあると出せないこともありますよ。たとえば、ジャンプの軌道変化やダッシュにも対応しなくてはいけないとなると、対空が出ないこともありますけど。純粋にジャンプしかないキャラクターには何も意識していなくても出せます。
北口 なるほど。ジャンプ軌道の変化があるキャラクターには出せないこともあるんですね。
梅原 そうですね。ただ、軌道変化があるキャラクターに対しては、昇龍拳を出すのが正解というわけじゃないですから。なので、わざと出さないようにする場面もあります。
豊泉 読みの精度が上がるまでは無理しないっていう感じですかね。
梅原 そうですね。うん。
●跳ばれない“ウメ波動”の秘密
北口 つぎは“梅原さんが波動拳を撃っているときは相手が跳んでいなくて、相手が跳んだときは梅原さんが波動拳を撃ってない”という梅原さんの波動拳なんですが、こういった波動拳の撃ちかたは長年の経験からくるものなんですか?
梅原 そういう波動拳を撃ちたいと思ったのは、オゴウ(Xサガットを使う『ストII』の強豪プレイヤー)さんという人と『ストII X』で対戦したことがきっかけですね。彼に対戦中延々とタイガーショットを撃たれて、「いい加減にしろ、リスクあるんだぞ」と思いながら俺がジャンプすると、彼はタイガーショットを撃ってないんですよ。それで最初は「こいつ運がいいな」と思ったんです。でも何試合やっても“俺が跳ぶときだけ相手がタイガーショットを撃ってなかった”んですよ。まぁ当時の俺のジャンプは、かなり甘いジャンプだったと思うんだけど、それでも『ヴァンパイア ハンター』でかなり勝っていたし、ぜんぜん負けなかった時期なんですが……。対戦したあとに「わけわかんねぇよコイツ」と思ってオゴウさんに話しかけたんです。たぶん、負けて相手に話しかけたっていうのはあとにもさきにもこれが最初で最後でしたね。
豊泉 たしかに。梅原くんが完封されるなんて、考えられないですもんね。
梅原 それで、「強いですね」と話しかけたら、「お前もなかなかだよ」と言われて。「あ、そうっすか」みたいなやり取りがあったんです。
ブンブン丸 ウメが見下されてる(笑)
梅原 そう。完全に上から目線で言われましたね(笑)。そういったやり取りがあって、彼の飛び道具の撃ちかたを真似したいと思ったんですよ。俺はもともとリュウ使いだったから波動拳の撃ちかたの基礎はできていたので、比較的早く真似することができました。だから、飛び道具の撃ちかたで特別苦労した経験はないんですよ。子どものころからリュウを使っていたからできた、というのがあるのかな?
ブンブン丸 すごいな。波動拳の撃ちかたにセオリーはないの?
梅原 もちろん、ある程度のセオリーはありますよ。このくらい撃つと相手が跳ぶというポイントが。そういう心理的なネタは使っていますね。
豊泉 罠を張るみたいな?
梅原 そうですね。ただ、そういうネタは抜きにして、単なる読み合いの勝負になったとしてもふつうの人より跳ばれることは少ないと思います。それは、経験なのかなぁ。
北口 人の癖を読むこともある?
梅原 いや、何も考えてないんですよ。「そろそろ跳びそうだな」とかじゃなくて、むしろ何も考えないで撃つんです。怖いと思うと撃てないんで。だから何も考えず「波動拳、波動拳、波動拳」と撃っていると、相手が跳ぶ瞬間に「ヤバイ」って感じるんですよ。「そろそろ来るな」って。だから20発撃とうが30発撃とうが平気なんです。「あ、来る」て感じたときに撃つのを辞めると、相手が跳んでるから(笑)。自分でも理由はわからないんですよね。相手の癖を無意識のうちにつかんでいて、自分でも気がつかないうちに「コイツはそろそろ跳ぶ奴だ」というのがわかっているんでしょうね。
北口 すごいなぁ。
梅原 あと、ラウンドの開幕時、相手が飛び道具を撃つタイミングもピッタリわかるんですよ。たとえば、30試合で勝負を決める“30本ガチ”をやったときに、俺がリュウで、相手がサガット。そして“相手が一度も開幕にタイガーショットを撃たない”、“俺も一度も開幕に前方ジャンプをしない”。そんな試合がずーっと続いて……そう、18試合目の1ラウンド目にサガットがたまたまグランドタイガーショットを撃ったとしますよね? そのとき俺は「跳んでる(笑)」。
一同 ははは(笑)
梅原 なぜかね(笑)。だから理屈があるわけじゃないんですよ。「これがこうだから18試合目の1ラウンド目に撃つ」とかじゃなくて、試合が始まる直前に「あ、コイツ撃つな」て感じるんですよ。
北口 恐ろしい。
梅原 ある時期を境に感じるようになったんです。そういう感覚を。
豊泉 どれくらいの時期ですか? 『ストZERO3』?
梅原 いや、ぜんぜん。もっとあとですよ。
豊泉 じゃあ『カプエス2』くらい?
梅原 それよりちょっとあとくらいかなぁ。「なにか来る」という気配を感じるんですけど、最初はそれがなんなのかわからなかったんです。「いつもと違うな」という感覚を感じ取るんだけど、何をしていいかわからなくて……。それで最初は、とりあえず様子見をしていたんです。それが何度もくり返されているうちに「あ、俺は相手が波動拳を撃つタイミングがわかってるんだな」ということに気づいたんですよ。それからジャンプするようにしました。
北口 跳べばいいじゃんて。
梅原 そう。でも怖いじゃないですか。なんで相手が波動拳を撃つのかわからないのに、なんとなく跳ぶっていうのは。最初はいまいち信用できなかったんですけど、「俺は経験で波動拳を読めるらしい」て気づいたんですよ。
北口 勘は当たるって?
梅原 う〜ん、勘というか、「自分が気づかない情報を拾ってるのかな?」って。
北口 無意識のうちにいろいろな情報が頭に入ってるんですね。
梅原 そうみたいなんですよ。だから、そういう感覚が来たときは「ええい、跳んじゃえ」ってジャンプしていますね。そうすると「おぉー撃ってる撃ってる、気持ちいい」みたいな(笑)。そればっかりは経験ですね。何十万試合やらないとわからないと思いますよ。
豊泉 そういう感覚って通信対戦でも感じるものなんですか?
梅原 相手の癖がわかればできますね。同じ相手と何十試合もやればわかります。
北口 なるほど。あのぉ〜通信対戦てまったく知らない人と戦うことが多いと思うんですけど、初見の相手と戦うときに注意しなければならないことってなんですか?
梅原 知らない相手と対戦するときは、“基本どおりに戦うこと”が大切です。仮に自分がいつも勝てる人間だとすると、負けるときは“基本戦法とのズレ”が生じるじゃないですか。基本がしっかりしていればしている人ほど、“ズレ”に敏感になると思うんです。
豊泉 自分の勝ちパターンというか、戦いのセオリーを確立させておくことが重要なんですね。
梅原 そう。セオリーがあれば、“相手の変化に気づきやすい”ということですね。セオリーなしにふだんからテキトーにプレイしていると、負けたときに自分が負けた理由がわからない。でもセオリーがしっかりしていれば、“この人は攻めてくる人”だとか、“無敵技をドンドン出す人”だとか、“逆に慎重な人”なんだとか、自分が勝てる相手との違いをつかみやすいんですよ。だから自分の基本になる戦いかたをちゃんと作って、そこからの“ズレ”を修正していくのがいいんじゃないかなと。ただ、1試合だけだとさすがに限度がありますけどね。対応できなくて負けることもありますよ。
豊泉 なるほど、勉強になります。
一同 本日は長時間ありがとうございました!
※インタビューを終えたあと、梅原君には僕ら『スパIV』攻略班のメンバーと対戦していただきました。そのうちの数試合を映像に抑えてあるので、対戦の模様はこちらをご覧ください!