
【インタビュー】プロゲーマー梅原氏に直撃インタビュー(第2回)
●プロゲーマー梅原氏に直撃インタビュー
海外メーカー“Mad Catz”とスポンサー契約を交わした梅原大吾氏。じつは僕、梅原氏と同じゲームセンターに通っていた時期がありまして、毎日ボコボコにされていた思い出が……。そんな話は置いといて、今回はプロゲーマーになった梅原氏に、週刊ファミ通『スーパーストリートファイターIV』(以下、『スパIV』)攻略班のブンブン丸、北口徒歩2分とともにインタビューを敢行! 『スパIV』についてはもちろん、梅原氏がこれまで歩んできた格闘ゲームの歴史について伺ったぞ。インタビューの内容は、全4回にわたってお届けする。なお、梅原氏と『スパIV』攻略班の対戦動画も掲載予定なので、お楽しみに!
梅原 大吾(うめはら だいご) おもな大会優勝歴 |
●格闘ゲームを取り囲む環境が楽しい
ブンブン丸 『ストZERO3』以降はどういう感じだったのかな?
梅原 『カプコンVS. SNK』ですね。
豊泉 そっか、もうそこまで行っちゃうのか。
梅原 そうですね。あのころは格闘ゲームの新作がなかなか出なくて……。
ブンブン丸 だよね。『ストIII』はかなりキツかったよね。
梅原 ええ。
豊泉 『ストIII』はやり込まなかったんですか?
梅原 はい。『ストIII』はやらなかったですね。稼動当時は、まったく流行らなかったじゃないですか。
ブンブン丸 ゲームシステムが難しかったからな。
梅原 そうですね。当時、俺の基準として、「秋葉で流行っていない格闘ゲームは終わり」だと思っていたんですよ。「どこも流行っていなかったとしても、秋葉のセガに行けば絶対対戦できる」というのが当時としては当たり前だったんですよ。ただ、『ストIII』だけは稼動直後なのにひとり用だったんです。「秋葉で対戦相手がいなかったら練習できないな」と思ってやらなかったですね。
ブンブン丸 だって、『ストIII』はプレイ感覚が3D格闘ゲームだもん。タイミングの駆け引きとか。逆に3D格闘ゲームやってる奴で『ストIII』がおもしろいって言う奴がいたし。
梅原 あぁ。なるほど。『カプコンVS. SNK』のあとが『カプコンVS. SNK 2』かな?
ブンブン丸 うんうん。『カプコンVS. SNK 2』まで行ってから、なんでまた『ストIII』に戻ったの?
梅原 やり込むゲームがなかったから……。
ブンブン丸 純粋に新作がなかったもんね。
梅原 『ストIII 3rd』が稼動して1年くらい経ったときに、各地で遊んでいた連中が新宿に集まり始めたんですよ。それを見て「『ストIII』盛り上がってるなぁ」と思って、新作もないことだしやってみようかなと。それがきっかけですね。
ブンブン丸 そのくらいからじゃない? 自分のやり込んでるゲームをずっとプレイし続けるような流れになったのって。それまでは新しい2D格闘ゲームが出たら、新作に流れる感じだったじゃん。
梅原 あぁ……うん。そうかもしれないですね。俺自身は、『ストII』をつねにプレイしてたんですよ。たとえば『ヴァンパイアハンター』と『ストII』、『ヴァンパイアセイヴァー』と『ストII』、『ストZERO3』と『ストII』という風にずっとプレイしていたので、ひとつのゲームをやり込み続ける人たちに対して違和感はありませんでした。でも『ストII』以外のゲームでも「オレはこのゲームしかやらない」という人たちが出始めたのは『ストIII 3rd』くらいからかもしれないですね。
ブンブン丸 やっぱり、やり込んでる人のプレイを見ると、自分もやってみようって気持ちになる?
梅原 『ストIII 3rd』の場合は、単純に自分がやっていなかったゲームだったので、「あ、このキャラクターはこういう風に変わったんだ」というのを見る楽しみがありましたね。
ブンブン丸 『ストIII 3rd』を実際にやり込んでみてどう感じた?
梅原 う〜ん、正直俺はあんまり好きじゃないんですよ。ほかのゲームに比べればぜんぜんやり込んでいないんですけど、なんだろうな……う〜ん。俺はシステムが強すぎるゲームが好きじゃないんです。「なんでもそれでいい」というのが好きじゃなくて……。だから『ストIII』のブロッキングは強すぎて好きじゃないですね。
北口 あぁ。なるほど。ブロッキングすればなんでも反撃できちゃいますもんね。
梅原 ブロッキングが『ストIII』シリーズのウリなんですけどね。「たとえば、ある強い技があったとして、その技をどう対処するのか?」というときに、ユンだろうがヒューゴーだろうが全キャラクターの対処方法が共通してブロッキングじゃないですか。防御手段が全キャラクターいっしょというのが、『ストII』や『ヴァンパイア』をやり込んできた俺としては「個性がなくて物足りないんです」。ただ、それは俺がいろいろなゲームをプレイしてきたからそう感じるだけで、決してそのゲームが悪いということはないんですけど……。だから、『ストIII』はゲームを楽しんでいたというより、いろいろな知らないプレイヤーが大勢いる、という格闘ゲームを囲む環境を楽しんでいましたよ。
ブンブン丸 盛り上がってて、そこに大勢人がいる環境があればおもしろくなるもんな。
梅原 俺がゲームをやる場合は、ほぼそれですね。あんまりゲーム性は見ていないかな。流行っていればやるし、気に入ったゲームでも流行ってなければやらない。
ブンブン丸 それこそ3D格闘ゲームがずっと流行り続けて2D格闘ゲームが衰退していたら、3D格闘ゲームに移行していたということも考えられる?
梅原 そうですね。間違いなくそうなっていたと思います。
●やり込みのピークは高校2年
ブンブン丸 こういったゲーム暦があったうえで『ストIV』にいたったわけだけど、『ストIV』はどう?
梅原 ゲームシステムは「こうしたほうがもっとおもしろくなる」というのはあるけど、とにかくプレイヤー人口が多いのが楽しいですね。ほかのゲームのプレイヤーも結構やっていますし。
ブンブン丸 さっきの格闘ゲームを取り囲む環境を楽しむという部分もある?
梅原 そうですね。それをひっくるめたうえでも楽しいですね。
豊泉 『ストIV』で格闘ゲームから離れていたプレイヤーも戻ってきましたよね。
梅原 そう。うん、いったんゲームを辞めていたけど『ストIV』でまた復帰したという人が多いですね。俺もそのひとり。
ブンブン丸 カプコンの格闘ゲームはずっと新作が出ていなかったしな。そもそも「もう新作はない」と言われていたくらいだから。
北口 『ストIV』て何年ぶりなんでしたっけ?
梅原 『カプコンVS. SNK2』のあとに『カプコンファイティングジャム』がありましたけど、そんなに流行らなかったし……。それを入れないと7、8年ぶりくらいですかね。
ブンブン丸 『ギルティギア』シリーズもあったけど、あれはあれで難しいゲームだからね。
梅原 ええ。でもよくできてはいると思いますよ。
豊泉 そういえば僕も『カプコンVS. SNK 2』のあとは、あまり格闘ゲームをやらなくなった時期があったなぁ。
梅原 ですよね。オレも闘劇の第2回くらいからゲームをぜんぜんやらなくなっちゃって……。
ブンブン丸 これまでの経験でプレイしていた感じ?
梅原 いや、本当にぜんぜんやらなかったです。ただ、『ストII』だけはやっていなくても動くんですよ。それで、『ストII』のプレイヤーに「リュウ戦を練習したい」と頼まれたときにちょっと対戦するくらいでしたね。『カプコンファイティングジャム』で第3回の闘劇に出たときも、大会2ヶ月くらいまえから始めて、大会が終わったらまたやらなくなりました。
ブンブン丸 闘劇のまえだけ少しやるみたいな?
梅原 そうですね。だから『ストIV』も最初はやる気がなかったんですよ。まわりに「やるんでしょ?」て言われるんですけど「いや、やらないよ」、「別にやらない」て言ってたんだけど、「せっかく出たんだしやろうよ、カードもあるしさ」と友人に言われて「ん〜じゃあ、ちょっとだけ……」と、久しぶりにゲームをやったわりには思いのほか勝てちゃって、楽しいなって……。気がついたらいろいろな大会に出ていましたね。「あれ? 俺、結構やってんな」みないな(笑)。
一同 はははは(笑)。
ブンブン丸 格闘ゲームをいったん辞めるまでに、プレイしていたのはどのあたりがピーク?
梅原 う〜ん、まず『ストII』に出会ったころのやる気はすごかった。でもお金がないんでプレイ時間は少なかったですね。ピークは中学生から高校生の始めくらいです。グラフでたとえると、小学生からずーっと上がっていって……中学2年〜高校2年くらいまでがピークですね。その期間はものすごいやってて。そこから少しずつ下がっていく……下がったと言っても『カプコンVS SNK 2』まではかなりやってるんですよ。それで第2回闘劇だから……『ギルティギア シャープリロード』をプレイしていたころからは、だいぶプレイ時間が減りましたね。『ギルティギアイグゼクス』だけはかなりプレイしていたんだけど……。その辺が最後だから23歳くらいまでですね。で、また28歳から始めたんで5、6年くらいはゲームをやっていませんでした。
ブンブン丸 そのころってさ、仕事はやってたの?
梅原 もちろん、やっていましたよ。
ブンブン丸 働き始めたのは20歳くらい?
梅原 いや、20歳のころはバイトでしたね。ゲームを辞めたころは、飲食店や雀荘で働いていました。でも28歳くらいのときに仕事を辞めたんですよ。そうしたらちょうど『ストIV』が出たんで、まぁ暇だしってことで『ストIV』を始めました。ゲームをプレイしていない期間は「オレって格闘ゲームがなくても生きられるんだなぁ」て思いながら生活してましたけど(笑)。
一同 ははは(笑)。
ブンブン丸 「ふつうの生活もできるんだ」みたいな(笑)。
梅原 うん、でもゲームをしていない期間は太りましたね。時間があると酒だったんで(笑)。
北口 アスリートみたい(笑)。
梅原 ゲームをやってないときはメチャクチャ太ってましたね。でも別にいいやって(笑)。
ブンブン丸 でもゲームから離れてみてわかることもあるよね。必要な時期っちゃあ時期だよ。
梅原 ゲームをやらないとふつうじゃないですか。その、ね。ふつうなんですよ(笑)。
ブンブン丸 わかるよ。ふつうの生活なんだよね。
梅原 本当にふつうなんです。ゲームのない生活の中では、得意なこともあれば、苦手なこともあるし、すごくふつうの人間なんですよ。でも、俺はゲームをやるとすげー勝つじゃないですか。だからゲームセンターでの俺はちょっと“特別”なんですよ。でも、5年くらいそういう特別なものがない生活をしてて……まぁそれでも別にいいかって感じでしたけど。そういった期間を経て、久しぶりに『ストIV』をやってみ気づいたんです。「あれ? オレのゲームってすげーよね」って(笑)。
一同 はははは(笑)。
梅原 5年間もやってなかったのに、こんなに勝てるのは、「10代のころに超やってたんだなぁ」というのに気づいて感動しましたね。「5年ぶりにやったのにまだ動かせる」って。
●スポンサー契約と心境の変化
ブンブン丸 『ストIV』で活動を再開して、プロになったと思うんだけど、それはどういったいきさつ?
梅原 う〜ん、どこがきっかけになるのかなぁ。ひとつは、2009年に行われたEvolution(アメリカの大規模なゲーム大会)。俺と伊予(『ストIV』全国大会優勝者)、ジャスティン(アメリカの有名プレイヤー。インタビューはこちら)、韓国のチャンプの4人でEvolutionのシード権を懸けた試合をして勝ったんですよ。最初Evolutionには出る気がなかったんですけど、「まぁ招待されるなら行くか」という程度のノリで本戦にも出たら勝っちゃって。Evolutionで勝ったっていうのは日本でも世界でもメディアの食いつきが違うんです。たとえば、日本だとアルカディア以外のちょっとゲームを扱っているくらいのメディアからもたくさん取材依頼がくるようになって。「やっぱり日本人てアメリカで勝ったみたいなのにすごい弱いなぁ」と思いましたね。
一同 はははは(笑)。
梅原 本当にそのくらい急激に取材が増えたんですよ。でも2009年のEvolutionの参加人数はすごかったですよ。いつもは1タイトルで多くても300人くらいなんですけど、2009年は『ストIV』だけで1000人も参加者がいましたから。「うわ、1000人かすげーな、コレは自信がねーな」と思ってたんだけど。
北口 1000人てのはインパクトがあると思いますよ。
梅原 そう。いままで『ヴァンパイア セイヴァー』や『ストZERO3』で参加人数が延べ1万人以上と言われても、実際に一斉にやるのってせいぜい128人なんで……。「1000人なんて大会は出たことないな」て(笑)。
豊泉 ひとつの会場に1000人集まるんですか?
梅原 はい、そうです。ほかのゲームのプレイヤーやギャラリーもいるから3000人くらい集まりますよ。だから盛り上がりもすごいですし。だから海外メディアや国内からの取材も増えたんでしょうね。「Evolutionは違うなぁ」て感じました。
ブンブン丸 なるほど。そういうイベントでの活躍をきっかけに、マッドキャッツからスポンサー契約の話がきたんだね。契約を詰めるのたいへんだった?
梅原 たいへんでしたね。2009年11月ころにマッドキャッツ(北米の大手周辺機器メーカー)から連絡があったんです。それでまずは、アメリカのマーケティングの事情に詳しいマネージャーを立てて、マネージャーとマッドキャッツのほうで契約をつめてもらいました。それが全部終わったのが2010年5月だった、というわけです。
豊泉 じっくり時間をかけて契約を詰めたんですね。
梅原 はい。とは言ってもスポンサーがついたからプロというわけでもないんですけどね。
ブンブン丸 へぇ〜、というと?
梅原 じつは今度俺のことがギネスに載るんですよ。その内容が、“もっともゲームのプロとして活躍している期間の長い人”というものらしいんです。要は、“大会で賞金を稼いでる”ということがプロとして成立するらしいんですね。
北口 なるほど。ゲームでお金を稼いでる人がプロなんですね。
梅原 FPS(一人称視点のシューティングゲーム)のプロもいると思うんですけど、FPSって1タイトルあたりの寿命が短いから入れ替わりが早いんですよ。でも俺の場合は20歳くらいから賞金をもらい始めて、このまえ28歳でまた優勝。それでこんなに長い期間活躍しているプロはいないということでギネスに載るみたい。だから、最近プロになったって言われるのはあまりよくないんですよね(笑)。
ブンブン丸 プロなんて言ったもん勝ちだからな。まぁでもスポンサーと契約したってことで、「いろいろなメディアに出ますよ」という心構えはできたんだよね?
梅原 そうですね。いままではメディアに取り上げられることが嫌でしたからね。
ブンブン丸 俺から言わせてもらえば、「なんであの人は雲隠れ的な仙人みたいな立ち位置でいるんだろう」と思っていたよ。
梅原 う〜ん、ゲームに対する思い入れが人一倍強かったからだと思いますよ。ふつうの人が勉強をしたり、スポーツをしたりして過ごすなか、負い目を感じながらもこんなに時間をかけて、こんなに真剣にやっていることを「はい、ゲームのうまい梅原さんです」という風に雑誌で軽く扱われることが嫌だったんです。だからこれまでは、メディアに出ることをためらっていました。大勢に知られる必要はないし、ゲームをやっている人だけわかってくれればいいや、という気持ちがありましたね。
豊泉 それだけゲームに対して真剣だったってことですね。
梅原 はい。でも20歳過ぎくらいから「ま、いっか」と思うようになったんですよ。というのは、メディアの人にもそれなりの事情があるんだろうな、と思えてきたし、ゲームも10代のころに比べればやる量も減っている。それに大会も開いてもらってるし「うれしくはないけど、いいですよ」みたいな。
ブンブン丸 なるほどね。大人になったんだ。
梅原 あとは、自分がいちばん得意なものを褒めてくれたり、喜んでくれるのはありがたいな、と思うようになったこともメディアに出てもいい、と考えるようになったきっかけですね。5年くらいゲームをプレイしない時期があって、ふつうの人の感覚に戻るじゃないですか。それでさっきも言いましたけど、『ストIV』が稼動して久々にゲームをやってみたら「自分は、ふつうの人にはない、すごいスキルを持っている」ということに気づいたんです。
豊泉 うんうん。さきほど言ってた“特別”てやつですね。
梅原、そう。そして「そういった特別でいられる空間や時間があることは、すごくありがたいことだなぁ」と思ったんですよ。子どものころはいろいろなコンプレックスもありながらゲームをプレイしていたけれど、歳を食ってみて1個得意なものがあるっていうのは支えになるなぁと感じたんです。それで、自然と格闘ゲームというものにはありがたみを感じてきて……。
豊泉 なるほど。心境の変化があったんですね。
梅原 ええ。なので、いままでは「写真撮らせてください」とか「サインください」と言ってくる人たちに対して「どうせ何もわかってないんだろ?」と思っていたんですけど、最近は「きっとわかってないんだろうな」とは思いつつも、それも「ありがたいことなんだ」と思うようになりましたよ。
ブンブン丸 遅いから(笑)!
梅原 (笑)。遅いかもしれないですけど、そういった心境の変化があったからメディアの取材がきても素直に受けられるようになりましたよ。
ブンブン丸 ウメみたいな人がもっと前に出てくれば、2D格闘ゲームがもっと盛り上がったんじゃないかなぁって思ってたんだよね。
梅原 あぁ。まぁでも、暗い情熱だったんで(笑)。
一同 はははは(笑)。
梅原 でも最近は視野が広がったというか、自分のことがわかってきたんですね。「俺ってこんな感じの人間なんだなぁ」と考えたときに、自分を構成するうえで“ゲーム”というものがビカビカ光ってて、「ひねくれてる場合じゃないな」って思いました。
一同 はははは(笑)。
梅原 それと、いま介護の仕事をしているんですけど、それも大きいですね。歳を取って体が衰えるとゲームができなくなるだろうし、それ以前に格闘ゲームがなくなってしまったら、プレイする機会すらないんだなぁって気づいたんですよ。
ブンブン丸 やっと気づいた(笑)。
梅原 そうなんですよねぇ。あ、ゲームをプレイしていない期間は「ゲームがなくなっても関係ないな」と思ってる時期もありましたけど。でもやっぱり自分にとって格闘ゲームは大きいものだと気づいて、「自分がプレイヤーとして勝てなくなったとしても格闘ゲームは残ってて欲しいなぁ」と思い始めましたね。
豊泉 やっぱり格闘ゲームが大好きだったんですね。ところで、プロになってやってみたいことってありますか?
梅原 ありますよ。まわりから「アイツは、プロになっていい思いしてるじゃん」と思われるようになりたいですね。いい思いをしている俺を見てプレイヤーが増え、メーカーもやる気を出してくれるようになってくれたらいいなぁ、と考えています。いままでは、なるべく目立たないようにという感じだったけど、今後はどんどん目立っていきたいですね。それで格闘ゲームに興味がない人にも興味を持ってもらえるようになりたいな、と。
ブンブン丸 格闘ゲームを守るためということ?
梅原 そうですね。残って欲しいと思うようになりましたね。青春時代が全部ゲームなんで(笑)。いまになってそれがじわじわと大きなものになってきました。
ブンブン丸 ウメがついに……。
梅原 「やっと、やる気が出ましたねぇ(笑)」。日本人て目立つと叩かれるってゆーか、人に恨みを買うところがあるじゃないですか。自分が目立ちたいならいいけど、目立ちたいわけじゃないのに勝手に敵を作るのは嫌だなぁと思ってたけど、「いまはもうどうぞ敵になってください」という感じですね。それで結果的にゲーム業界が盛り上がってくれるなら別にいいかな。たぶん、そいつらもいずれ気づくと思うんですよ。「格闘ゲームがなくなったら困るのはお前らだろ」って(笑)。
ブンブン丸 ほんとそうだよね(笑)。
●海外のゲーム大会事情
ブンブン丸 そういえば、ウメはイベントで海外に呼ばれること多いよね? 最近はどれくらいのペースで行ってるの?
梅原 最近は月に1回くらいですね。『スパIV』のタイミングなので、すごく盛り上がってます。
ブンブン丸 ウメを含め、みんなから海外の大会に出た話はよく聞くんだけど、Evolutionとかホント楽しそうだよね。俺もマネーマッチやりたいよ(笑)。
北口 マネーマッチってなんですか?
ブンブン丸 名前のまんま。プレイヤーがお互いに金賭けて対戦するんだよ。この試合勝ったら1000ドルー! とか。
北口 1000ドル!? マジッスか!?
梅原 トーナメントの大会と別に、そういうイベントもあるんですよ。突発的に始まったりしますけど。
ブンブン丸 額は試合によってまちまちらしいんだけどね。その場の雰囲気なのかなあ。
梅原 そうですね。海外のほう、とくにアメリカとかはお金を賭けることに対して、ぜんぜん抵抗がないんですよね。むしろ、なんでやらないの? みたいな。
ブンブン丸 それほんと憧れるなあ……日本でもオーケーになればいいのに!
梅原 フランスは日本人の感覚に近いみたいで「なんで金なんか賭けるんだ!?」という感じで。このあいだ行ったオーストラリアはアメリカの感覚に近かったですね。
ブンブン丸 日本じゃ金賭けてゲームなんて、絶対にありえないからなあ。でも、アメリカ人はそういうところがストレートでいいよね。盛り上がるなら金でもなんでも賭ければいいじゃん、みたいな。
梅原 そうですね。アメリカ人はホントお祭り好きですよ。俺、1回じゃんけんで100ドルのマネーマッチ挑まれたことありますから。「ジャンケンとかただの運試しじゃん」とか思いましたよ(笑)。しかもギャラリーどうしでどっちが勝つか賭けてるし。
豊泉 じゃんけんでもお金賭けるんですか!?
梅原 はい。そのときは1回負けて、その場の雰囲気でリベンジの流れになったんだけど2連敗。結局200ドル取られました。通常のマネーマッチで稼いでたときだからよかったですけど、あれは二度とやりたくないですね(笑)。
ブンブン丸 アメリカ人ほんとウケるな(笑)。
梅原 日本の大会はレベルが高いし、シビアでおもしろいけど、海外のそういう部分がうらやましく感じるときはありますね。
ブンブン丸 ちなみに言いたくなかったら言わないでいいんだけど、ぶっちゃけ1回の大会でいくらくらい稼いだことある?
梅原 僕としては海外のこういうおもしろい部分をもっとみんなに知ってもらいたいんで、まったくかまわないですよ。少し前のEvolutionでは、優勝賞金とマネーマッチを含めて10000ドルくらいですかねー。
豊泉 10000ドル!? クラクラしてきました……。
ブンブン丸 うはー! 荒稼ぎ! ちなみに最高の掛け金の試合とかは?
梅原 僕じゃないんですけど、20000ドルの試合とかありましたね(笑)。
ブンブン丸 それもうただのカイジだよな。そのうち血とか抜かれそうだわ(笑)。
梅原 (笑)。
北口 視界が歪んでそうですよ!
ブンブン丸 20000ドルを乗せて打つ昇龍拳とか……ヒリヒリするぜ!
第3回インタビュー記事は2010年6月16日掲載予定!