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羽生蛇村日報

羽生蛇村日報 第33報 - 開発者インタビュー(後編)

 こんばんは。時計じかけ豊田です。訪れていただき、ありがとうございます。

 

『SIREN: New Translation(サイレン ニュー・トランスレーション)』の魅力をお届けしていく当ブログ。毎夜3時更新という、前代未聞のブログを33日間連続でお伝えしてきましたが、ついに最終回を迎えました。本日お届けするのは、ディレクターを務める外山圭一郎氏と、シナリオを担当している佐藤直子氏のインタビュー後編。最終回ということで、思い切った質問を投げかけてみました。


 

 

時計じかけ豊田(以下、豊田) ステージのことはよくわかりました。では、最後にストーリーに関してお聞きしたいのですが、新訳ということが足かせとなり、シナリオを構築するうえでやりにくさはありませんでしたか?

佐藤直子(以下、佐藤) ん〜、基本的にはすごくやりづらかったですね。『SIREN』は、明確なコンセプトというか美意識のもとに、こう若かりしエネルギーをつぎ込んで作られた膨大な設定があったので……。本作へどこを残すか? 根幹として何を残すか? どう解釈するかは、ずっと悩みました。何度も外山と相談したのが、どこまでをリンクさせるのか? まったくのパラレルにするのか? ということでした。最終的には外山の判断で、キーワード的にはすごく共通化しているけど、ぜんぜん違う存在ということで……。設定は『SIREN』を軸にしつつ、まったく別の話にするってところに落ち着くまでがけっこう時間がかかりましたね。すごく悩んだところでもありました。ユーザーの皆さんが大好きで、偏愛してくれている世界なだけに、軸にしたらよろこぶ人も多いけれど、少しでも改変することで夢を壊されてしまうユーザーもいると思ったので……。

外山圭一郎(以下、外山) とくに、須田恭也と神代美耶子の綺麗に閉じたストーリーをジャマすることは絶対にあってはならないと思いまして。美耶古と名前を変え、イコール別人であるということをアピールするなど、そこのニュアンスはキチンと伝えていこうと注意しました。

豊田 “欧米人の視点を通じて”というコンセプトが最初からあったわけですか?

佐藤 そうですね。枠を広げるということがワールドワイドのユーザーの方たちに受け入れられることにつながるだろうと。舞台は日本だけど、主観を外国人の視点に変えることで新訳とすること、そして外国人のキャラクターを出そうということは、最初から決めていましたね。

豊田 考えなければいけないことが多かったわけですよね? 外国人をどう物語の中で魅せていくかということもありますし。

外山 当初、佐藤自身がいつものように気持ちよく書けないんじゃないか、楽しめないんじゃないか、という不安がありましたね。まあ、杞憂に終わったんですけども(笑)。

佐藤 これまでのシリーズ作で、日本人ならではの考えかたとか感じかたとか、日本人だからこそわかる共通認識みたいなものを私たちはやってきたつもりだったし、ユーザーの皆さんもそれを受け入れてくれていたつもりだったんですよね。だから「外国人の気持ちにはなれねえよ」って、すごい反発するんじゃないかと思っていたんですが……。

豊田 思っていたんですが?

佐藤 逆になんだろう? 「日本、超怖くね? 日本、超おもしろくね?」と紹介したい自分が生まれてきたというか(笑)。

豊田 あ〜、なるほど。「日本のおばちゃん怖い」と感じてもらえるんじゃないかと……。

佐藤 そうですそうです。外国人がいつか日本に遊びにきたとき、農村で働くおばちゃんを見て「はっ! 怖いっ!!」と思ってくれたらウレシイなと(笑)。「屍人デスカ?」と言いながら、握手を求めたりとか(笑)。

外山 ない。それはない(笑)。

佐藤 え〜、ないかな?(笑)。

豊田 (笑)。登場人物を8人に決めるまでの苦労もあったと思いますが……?

外山 じつは、最初はふたり多くて、計10人の登場人物を予定していたんです。

佐藤 リソースのバランスの問題があり、最終的に8人になって……。

外山 でも、人数を絞るほど、密度が上がっていったので。人数を絞ったことによるアイデアも生まれてきたんですよね。中盤でストーリーとしてループするというギミックが生まれたり。企画当初から『SIREN』で評判のよかったエピソードを抽出してすべて組み込む、というのを目標にしていたのですが、そのギミックにより、予定していたエピソードを盛り込むことができて。

豊田 システムとしてリンクナビゲーターを導入しないということも、その時点で決定していたんですか? 

佐藤 そうですね。かなり初期からリンクナビゲーターはなしでいこうと。ただし、最初はまだ枝分かれのような形で名残があったのですが……。

外山 ダウンロード版の発売に踏み切ったことが大きかったというか……。ダウンロード版の発売が決まるまでは、前作と仕様を大きく変える、と頭ではわかっていたけど、変えきれていなかったんですよね。まだまだ、飛躍が足りなかった。間口を広げるためとはいえ、まだ抵抗感があったんです。ダウンロード版の発売が決まり、エピソードを並べ、オープニングとエンディングを用意するというアイデアが出て、そこからすごくおもしろくなりましたね。

佐藤 自分たちで自分たちの作品を作り直すということは、ふつうはやらないことですよね。だから、一度作ったものを壊して作り直そうとしても、なかなか壊せなかったんです。でも、パッケージ版とは違う枠組みを考えなきゃいけないことになり、どうしてもはみ出る部分、組み替えなきゃいけない部分が出てきて。逆に、それによって自分たちの力だけではない、外的要因から始まる大きな飛躍ができたかなと思います。

豊田 僕は本作を紹介するときに“リメイク”って言葉を使わないようにしているんです。だって、登場人物も物語もエンディングも違いますよね。あくまでも設定がいっしょなだけですし。リメイクという言葉を使うのは簡単なことですし、言葉として間違ってはいないのかもしれませんが、リメイクと言ってしまうと、ものすごく短絡的になってしまうというか。どうしても言葉が先行してしまうんですよね。

外山 そうなんですよね。ありがたい話なんですが、ダウンロード版を購入してくださるようなシリーズ1作目からのファンの方々からも暖かい反響が多く……。

佐藤 本当にホっとしたというか、夢のような気持ちですね(笑)。配信につき合ってくださった濃いファンの方から好意的な感想を聞くことができただけでも、本当にうれしくて……。

豊田 変化することに好意的な意見は多いですよね。あ、話をストーリーに戻しますが、ゲーム中にわからなかった部分をお聞きしたいなと。まず、美耶古がどういった存在なのかを伺いたいのですが……。

佐藤 例として言えば、クトゥルフ神話にある旧神のようなもの、と関連があります。通常の神々よりもさらに深い、勧善懲悪を越えたような大きな存在の神。羽生蛇村は異界との境目にある場所なので、根底にある世界に属している血筋が美耶古の血筋というわけで。あとからやってきたマナ教がそれを塗り替えんがために、美耶古という血筋を生贄として消していくという。宗教侵攻のように、土着信仰を全部抹消して取り込んでいくというものですね。その土地にある、もともとの大地母神、土着信仰的な存在の末裔が美耶古の血筋なんです。

豊田 美耶古が特別な存在であるというのは……。

佐藤 美耶古の特別性を神聖な物として崇めるのか、生贄として崇めるのかは、その時代時代の趨勢に飲み込まれているということですね。

豊田 “美耶古様にお印あり”というのは、初潮とは違うのですか?

佐藤 『SIREN』ではその設定でしたが、17歳で初潮を迎えるのは遅いので、そうではありません。“その時期が来た”という類のものですね。

豊田 “嫁入り”の意味と言うのは?

佐藤 生贄として捧げられるという意味です。特別な印をもっている人と言うのは、いい意味で捉えられれば祭られるし、悪い意味で捉えられれば排除される。美耶古の血筋は特殊なものなので、マナ教の生贄、マナ教の信義のひとつの題材、道具にされているという設定なんです。美耶古が「運命に抗いたい」、「自分は生贄なんかじゃない」と言っているのは、その枠組み、価値観の中に取り込まれて自分たちの本当の力が封印されていることを指しているんです。だから、ハワードに封印の解放を頼んだんですね。

豊田 「もう死にたくない」と言っていますが、それはいままでに美耶古という名前の女性が殺されていることを表しているんですか?

佐藤 そうですね。美耶古イコール生贄の名前なんです。ネタバレになるので明言は避けますが、美耶古の墓を見つける人物は、どこが始まりでどこが終わりか分からなくなっているんです。タイムパラドックスのひとつですね。美耶古という名前の少女が生贄なのか、生贄の名前が美耶古なのか。始まりと終わりがなくなり、ループしていくというわけです。

豊田 犀賀が実を盗んだと思われる発言がありますが、犀賀はいつ血を盗んでいたのですか?

佐藤 ハワードを助けた際、犀賀はハワードの血を自分自身にも入れているんです。

豊田 なるほど。輸血をしていたわけですね。

佐藤 ただ量が少ないし、美耶古との絆という部分で正当性もない、ほんのひと切れだけだったというわけです。犀賀自身、それはわかっていたんですけども。

豊田 そうだったんですね。これでスッキリしました!

佐藤 あ、スッキリしてくれました? なんかほっとしました(笑)。スッキリしない人が多いようなので(笑)。

豊田 ちなみに、本作はダウンロードに対応しているじゃないですか? たとえば、追加エピソードのダウンロードを考えているとか……?

外山 う〜ん、正直に言うと、その余力があれば本編に入れていますね……。無理やりオマケ要素などを水増しすることもできなくはないのですが、今回はより広いユーザー層を意識する過程で、まだまだあれもこれもやらないと全容はわからないですよ、とするのもどうかなのかと思いまして。

豊田 単刀直入にお聞きしますが、ナンバリングタイトルの予定などは……?

佐藤 外山さん、うまい答えはありますか?(笑)。

外山 どうなんでしょう。まったく白紙であることを前提に聞いてほしいのですが、もしまた『SIREN』をやるとしたら、時計の針を戻すことはないと思うんですよね。たとえば、登場人物を倍に戻し、アーカイブもHD画質で100個用意し、登場するのは日本人ばかり……というのは、素材の作り込みの工数や『NT』から入った海外ユーザーさんもいらっしゃることを考えると、ちょっとイメージしにくいというか。

豊田 本作を発売したいま、スタンダードは『SIREN』ではなく、『NT』ということですか?

外山 うーん……なんて言いますか、あまり同じことを2度3度くり返しても、開発もユーザーの皆さまも、どちらもうれしくないんじゃないかと。新鮮味に欠けますし……。

佐藤 縮小再生産になっちゃうという側面もありますしね。『SIREN』の世界観をすごく気に入ってくれているユーザーさんからは「なんで続編にしてくれないの?」とか、「過去の話をしてくれないの?」という意見も聞きますけども、けっきょくそれは縮小再生産につながってしまうと思うので。チームとしては、『SIREN』の魂を残しつつ、つねにチャレンジしていきたい、と思っているわけで……。

豊田 仮の話ですが、『SIREN』チームが作る次回作があるとすれば……。

外山 チームとしての次回作は間違いなくあります。ただ、それがどういう形のものになるか、『SIREN』になるのかならないのかも、いまはわからないんですよね。『SIREN』があって『SIREN2』があって『NT』がある。それを踏まえたうえで、『SIREN』に戻ることもなければ、『NT』をくり返すこともないというか。いままのですべてを踏まえて、つぎのあるべき姿は……というところを模索したいと思っています。 

 

 

開発チームからこんばんは

 早いもので、こちらのコーナーも最終回です。最後は本当にたいへんだった制作現場を支えてくれたスタッフ達に敬意を表して、長野取材で頑張っている時や、宿で和んでいる時の様子をご紹介します。そして、このコーナーを楽しみにしてくださった皆様にもお礼を申し上げます。本当にありがとうございました。それでは、またお目にかかる日を楽しみにしております!(外山)







 

 

ブログ後記

 33日間連続でブログをアップさせていただきましたが、正直、最初はどうなるか不安でいっぱいでした。最後まで続けることができたのは、『SIREN: New Translation』が魅力あるゲームであったからこそです。そして、僕の無理難題におつき合いいただいた、開発チームの方々のご協力あってこそ。そしてそして、毎日訪れていただいた読者の皆さまのおかげです! 約1ヵ月のあいだ、本当にありがとうございました!!

 

(c)Sony Computer Entertainment Inc.
PS3、SCEIロゴ
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時計じかけ豊田

ファミ通プロジェクトマネジメント編集部デスク。長くてよくわからない部署名だが、週刊ファミ通および姉妹誌にて"ファミ通チョイス"というマークが入っているタイトルを専属で担当する遊撃隊的部署のことらしい。編集歴10年。頭のネジがちょっぴり抜けている『サイレン』シリーズが三度のメシより好きな編集者。

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