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羽生蛇村日報

羽生蛇村日報 第33報 - 開発者インタビュー(後編)

 こんばんは。時計じかけ豊田です。訪れていただき、ありがとうございます。

 

『SIREN: New Translation(サイレン ニュー・トランスレーション)』の魅力をお届けしていく当ブログ。毎夜3時更新という、前代未聞のブログを33日間連続でお伝えしてきましたが、ついに最終回を迎えました。本日お届けするのは、ディレクターを務める外山圭一郎氏と、シナリオを担当している佐藤直子氏のインタビュー後編。最終回ということで、思い切った質問を投げかけてみました。


 

 

時計じかけ豊田(以下、豊田) ステージのことはよくわかりました。では、最後にストーリーに関してお聞きしたいのですが、新訳ということが足かせとなり、シナリオを構築するうえでやりにくさはありませんでしたか?

佐藤直子(以下、佐藤) ん〜、基本的にはすごくやりづらかったですね。『SIREN』は、明確なコンセプトというか美意識のもとに、こう若かりしエネルギーをつぎ込んで作られた膨大な設定があったので……。本作へどこを残すか? 根幹として何を残すか? どう解釈するかは、ずっと悩みました。何度も外山と相談したのが、どこまでをリンクさせるのか? まったくのパラレルにするのか? ということでした。最終的には外山の判断で、キーワード的にはすごく共通化しているけど、ぜんぜん違う存在ということで……。設定は『SIREN』を軸にしつつ、まったく別の話にするってところに落ち着くまでがけっこう時間がかかりましたね。すごく悩んだところでもありました。ユーザーの皆さんが大好きで、偏愛してくれている世界なだけに、軸にしたらよろこぶ人も多いけれど、少しでも改変することで夢を壊されてしまうユーザーもいると思ったので……。

外山圭一郎(以下、外山) とくに、須田恭也と神代美耶子の綺麗に閉じたストーリーをジャマすることは絶対にあってはならないと思いまして。美耶古と名前を変え、イコール別人であるということをアピールするなど、そこのニュアンスはキチンと伝えていこうと注意しました。

豊田 “欧米人の視点を通じて”というコンセプトが最初からあったわけですか?

佐藤 そうですね。枠を広げるということがワールドワイドのユーザーの方たちに受け入れられることにつながるだろうと。舞台は日本だけど、主観を外国人の視点に変えることで新訳とすること、そして外国人のキャラクターを出そうということは、最初から決めていましたね。

豊田 考えなければいけないことが多かったわけですよね? 外国人をどう物語の中で魅せていくかということもありますし。

外山 当初、佐藤自身がいつものように気持ちよく書けないんじゃないか、楽しめないんじゃないか、という不安がありましたね。まあ、杞憂に終わったんですけども(笑)。

佐藤 これまでのシリーズ作で、日本人ならではの考えかたとか感じかたとか、日本人だからこそわかる共通認識みたいなものを私たちはやってきたつもりだったし、ユーザーの皆さんもそれを受け入れてくれていたつもりだったんですよね。だから「外国人の気持ちにはなれねえよ」って、すごい反発するんじゃないかと思っていたんですが……。

豊田 思っていたんですが?

佐藤 逆になんだろう? 「日本、超怖くね? 日本、超おもしろくね?」と紹介したい自分が生まれてきたというか(笑)。

豊田 あ〜、なるほど。「日本のおばちゃん怖い」と感じてもらえるんじゃないかと……。

佐藤 そうですそうです。外国人がいつか日本に遊びにきたとき、農村で働くおばちゃんを見て「はっ! 怖いっ!!」と思ってくれたらウレシイなと(笑)。「屍人デスカ?」と言いながら、握手を求めたりとか(笑)。

外山 ない。それはない(笑)。

佐藤 え〜、ないかな?(笑)。

豊田 (笑)。登場人物を8人に決めるまでの苦労もあったと思いますが……?

外山 じつは、最初はふたり多くて、計10人の登場人物を予定していたんです。

佐藤 リソースのバランスの問題があり、最終的に8人になって……。

外山 でも、人数を絞るほど、密度が上がっていったので。人数を絞ったことによるアイデアも生まれてきたんですよね。中盤でストーリーとしてループするというギミックが生まれたり。企画当初から『SIREN』で評判のよかったエピソードを抽出してすべて組み込む、というのを目標にしていたのですが、そのギミックにより、予定していたエピソードを盛り込むことができて。

豊田 システムとしてリンクナビゲーターを導入しないということも、その時点で決定していたんですか? 

佐藤 そうですね。かなり初期からリンクナビゲーターはなしでいこうと。ただし、最初はまだ枝分かれのような形で名残があったのですが……。

外山 ダウンロード版の発売に踏み切ったことが大きかったというか……。ダウンロード版の発売が決まるまでは、前作と仕様を大きく変える、と頭ではわかっていたけど、変えきれていなかったんですよね。まだまだ、飛躍が足りなかった。間口を広げるためとはいえ、まだ抵抗感があったんです。ダウンロード版の発売が決まり、エピソードを並べ、オープニングとエンディングを用意するというアイデアが出て、そこからすごくおもしろくなりましたね。

佐藤 自分たちで自分たちの作品を作り直すということは、ふつうはやらないことですよね。だから、一度作ったものを壊して作り直そうとしても、なかなか壊せなかったんです。でも、パッケージ版とは違う枠組みを考えなきゃいけないことになり、どうしてもはみ出る部分、組み替えなきゃいけない部分が出てきて。逆に、それによって自分たちの力だけではない、外的要因から始まる大きな飛躍ができたかなと思います。

豊田 僕は本作を紹介するときに“リメイク”って言葉を使わないようにしているんです。だって、登場人物も物語もエンディングも違いますよね。あくまでも設定がいっしょなだけですし。リメイクという言葉を使うのは簡単なことですし、言葉として間違ってはいないのかもしれませんが、リメイクと言ってしまうと、ものすごく短絡的になってしまうというか。どうしても言葉が先行してしまうんですよね。

外山 そうなんですよね。ありがたい話なんですが、ダウンロード版を購入してくださるようなシリーズ1作目からのファンの方々からも暖かい反響が多く……。

佐藤 本当にホっとしたというか、夢のような気持ちですね(笑)。配信につき合ってくださった濃いファンの方から好意的な感想を聞くことができただけでも、本当にうれしくて……。

豊田 変化することに好意的な意見は多いですよね。あ、話をストーリーに戻しますが、ゲーム中にわからなかった部分をお聞きしたいなと。まず、美耶古がどういった存在なのかを伺いたいのですが……。

佐藤 例として言えば、クトゥルフ神話にある旧神のようなもの、と関連があります。通常の神々よりもさらに深い、勧善懲悪を越えたような大きな存在の神。羽生蛇村は異界との境目にある場所なので、根底にある世界に属している血筋が美耶古の血筋というわけで。あとからやってきたマナ教がそれを塗り替えんがために、美耶古という血筋を生贄として消していくという。宗教侵攻のように、土着信仰を全部抹消して取り込んでいくというものですね。その土地にある、もともとの大地母神、土着信仰的な存在の末裔が美耶古の血筋なんです。

豊田 美耶古が特別な存在であるというのは……。

佐藤 美耶古の特別性を神聖な物として崇めるのか、生贄として崇めるのかは、その時代時代の趨勢に飲み込まれているということですね。

豊田 “美耶古様にお印あり”というのは、初潮とは違うのですか?

佐藤 『SIREN』ではその設定でしたが、17歳で初潮を迎えるのは遅いので、そうではありません。“その時期が来た”という類のものですね。

豊田 “嫁入り”の意味と言うのは?

佐藤 生贄として捧げられるという意味です。特別な印をもっている人と言うのは、いい意味で捉えられれば祭られるし、悪い意味で捉えられれば排除される。美耶古の血筋は特殊なものなので、マナ教の生贄、マナ教の信義のひとつの題材、道具にされているという設定なんです。美耶古が「運命に抗いたい」、「自分は生贄なんかじゃない」と言っているのは、その枠組み、価値観の中に取り込まれて自分たちの本当の力が封印されていることを指しているんです。だから、ハワードに封印の解放を頼んだんですね。

豊田 「もう死にたくない」と言っていますが、それはいままでに美耶古という名前の女性が殺されていることを表しているんですか?

佐藤 そうですね。美耶古イコール生贄の名前なんです。ネタバレになるので明言は避けますが、美耶古の墓を見つける人物は、どこが始まりでどこが終わりか分からなくなっているんです。タイムパラドックスのひとつですね。美耶古という名前の少女が生贄なのか、生贄の名前が美耶古なのか。始まりと終わりがなくなり、ループしていくというわけです。

豊田 犀賀が実を盗んだと思われる発言がありますが、犀賀はいつ血を盗んでいたのですか?

佐藤 ハワードを助けた際、犀賀はハワードの血を自分自身にも入れているんです。

豊田 なるほど。輸血をしていたわけですね。

佐藤 ただ量が少ないし、美耶古との絆という部分で正当性もない、ほんのひと切れだけだったというわけです。犀賀自身、それはわかっていたんですけども。

豊田 そうだったんですね。これでスッキリしました!

佐藤 あ、スッキリしてくれました? なんかほっとしました(笑)。スッキリしない人が多いようなので(笑)。

豊田 ちなみに、本作はダウンロードに対応しているじゃないですか? たとえば、追加エピソードのダウンロードを考えているとか……?

外山 う〜ん、正直に言うと、その余力があれば本編に入れていますね……。無理やりオマケ要素などを水増しすることもできなくはないのですが、今回はより広いユーザー層を意識する過程で、まだまだあれもこれもやらないと全容はわからないですよ、とするのもどうかなのかと思いまして。

豊田 単刀直入にお聞きしますが、ナンバリングタイトルの予定などは……?

佐藤 外山さん、うまい答えはありますか?(笑)。

外山 どうなんでしょう。まったく白紙であることを前提に聞いてほしいのですが、もしまた『SIREN』をやるとしたら、時計の針を戻すことはないと思うんですよね。たとえば、登場人物を倍に戻し、アーカイブもHD画質で100個用意し、登場するのは日本人ばかり……というのは、素材の作り込みの工数や『NT』から入った海外ユーザーさんもいらっしゃることを考えると、ちょっとイメージしにくいというか。

豊田 本作を発売したいま、スタンダードは『SIREN』ではなく、『NT』ということですか?

外山 うーん……なんて言いますか、あまり同じことを2度3度くり返しても、開発もユーザーの皆さまも、どちらもうれしくないんじゃないかと。新鮮味に欠けますし……。

佐藤 縮小再生産になっちゃうという側面もありますしね。『SIREN』の世界観をすごく気に入ってくれているユーザーさんからは「なんで続編にしてくれないの?」とか、「過去の話をしてくれないの?」という意見も聞きますけども、けっきょくそれは縮小再生産につながってしまうと思うので。チームとしては、『SIREN』の魂を残しつつ、つねにチャレンジしていきたい、と思っているわけで……。

豊田 仮の話ですが、『SIREN』チームが作る次回作があるとすれば……。

外山 チームとしての次回作は間違いなくあります。ただ、それがどういう形のものになるか、『SIREN』になるのかならないのかも、いまはわからないんですよね。『SIREN』があって『SIREN2』があって『NT』がある。それを踏まえたうえで、『SIREN』に戻ることもなければ、『NT』をくり返すこともないというか。いままのですべてを踏まえて、つぎのあるべき姿は……というところを模索したいと思っています。 

 

 

開発チームからこんばんは

 早いもので、こちらのコーナーも最終回です。最後は本当にたいへんだった制作現場を支えてくれたスタッフ達に敬意を表して、長野取材で頑張っている時や、宿で和んでいる時の様子をご紹介します。そして、このコーナーを楽しみにしてくださった皆様にもお礼を申し上げます。本当にありがとうございました。それでは、またお目にかかる日を楽しみにしております!(外山)







 

 

ブログ後記

 33日間連続でブログをアップさせていただきましたが、正直、最初はどうなるか不安でいっぱいでした。最後まで続けることができたのは、『SIREN: New Translation』が魅力あるゲームであったからこそです。そして、僕の無理難題におつき合いいただいた、開発チームの方々のご協力あってこそ。そしてそして、毎日訪れていただいた読者の皆さまのおかげです! 約1ヵ月のあいだ、本当にありがとうございました!!

 

羽生蛇村日報 第32報 - 開発者インタビュー(中編)

 こんばんは。時計じかけ豊田です。訪れていただき、ありがとうございます。

 

『SIREN: New Translation(サイレン ニュー・トランスレーション)』の魅力をお届けしていく当ブログ。本日は、ディレクターを務める外山圭一郎氏と、シナリオを担当している佐藤直子氏のインタビュー中編をお伝えしていきます。


 

時計じかけ豊田(以下、豊田) おもしろポスターや看板が随所にある羽生蛇村ですが、各エリアの見どころを教えていただけますか?

外山圭一郎(以下、外山) まず、病院は『SIREN』の病院と学校の融合と言いますか。

佐藤直子(以下、佐藤) 役割としてはそうなりましたね。本当は学校も出したかったんですが……。

豊田 学校の取材には行かれていたのですか?

外山 若干行ってますね。リソース的な限界で、どちらかを選ぶかというところで病院になりました。病院はとくに緻密に取材をしていますので、見どころは本当にいっぱいありますね

豊田 解剖人形を置こうと思ったのも取材から得たアイデアですか?

外山 あれも取材した病院にありまして。

佐藤 頭が取れて転げたりとか(笑)。

外山 いつの間にかそうなってたんだよね。

豊田 “開発チームからこんばんは”で手術室の写真がありましたけど……。

外山 手術室はメチャクチャ気合入ってますね。かなりいい感じに再現されていると思います。

豊田 ちなみに、階段の構造も取材に行った病院をもとにしているんですか?

外山 そうですね。あと、現場にあったという理由で入れたものは焼却炉ですね。ふつう、あんなものが地下にあると思わないじゃないですか。

豊田 あ、実際に地下にあったんですか?

佐藤 そうなんです。実際に屋内の地下にあって。

外山 いや〜、本当に怖かったですね。取材した中でも、あの辺りがいちばん怖かったです。地下は基本的に、撮影にもほとんど使われていないらしく、ほったらかしになっていて。あまりにも怖かったので、本当はそこでイベントをやりたかったんですよ。お化け屋敷を1回作ってみたかった(笑)。いずれ実現できたらいいかなと。

豊田 (笑)。では、つぎに合石岳のお話を……。

外山 目玉は、トロッコを使った仕掛けですね。

佐藤 トロッコは、スクリプトのプランナーから絶対やりたいという意見があって。かなり苦労したんですけど、結果的に非常にいい感じに仕上がったと思います。

外山 『SIREN』では屍人に当たっても貫通していたんですよ。それが心残りで。本作ではふつうに轢けるようになっているので、そこには注目してほしいですね。

佐藤 あそこは取材をしたさまざまな場所を混ぜて作っているので、風景的なおもしろみが強いですね。鉄橋は奥多摩にある鉄橋がモデルになっているので、廃墟感がタップリ出ているかと。

豊田 なるほど。つぎは波羅宿集落を……。

外山 この場所は、取材したものをそのまま、というのではなくて、断片的なものを集めたものですね。とにかく水没の村をやりたいという僕の強い要望があって。ようやく、本当にようやくなんですけど、かなり苦労して完成した場所ですね。

豊田 プレイしているとふつうに感じちゃいますが、あの水没している感覚はやっぱりスゴイですよね。

佐藤 すごくたいへんでした。じつは、水面に力を注いだ関係で、夜の表現ができなかったんです。光が水に反射したり、水面に影が落ちたりするので処理しきれず……。ですので、波羅宿集落には夜のシーンがないんですよ。

豊田 流れているものもさまざまなものがありますし、水自体もちゃんと波打っていて……。

外山 物理エンジンで物を浮かべるのは簡単だと思っていたら、ものすごくたいへんで。「浮遊物がないなら、今回も登場させない!」という強いこだわりがあったので、自前のプログラムを組んで何とか実現できたという。

佐藤 水が濁っているということにもかなり力を入れていますので、じっくりと見てください。

豊田 続いて、刈割の見どころを。

外山 ある意味、『SIREN』シリーズで最初にやりたいと思ったのが棚田だったということもあり、本作でも絶対に出そうと決めていました。本作では、僕の理想に近い完璧な棚田が表現できたと思います。

佐藤 この場所も夜がないんですけどね。

外山 ふつう、ゲームでは水面は均一なんですよ。でも棚田は段差があり、当然ながら水面が反射する場所にも高低差が生まれるんです。それぞれの反射を表現するのは、処理的に非常にたいへんなんですよね。

豊田 でも、棚田は本当に美しいですよね。植物も一見するとただ緑があるだけだと思うかもしれませんが、よく見るといろんな種類があって……。全体を眺めると、本当にキレイな景色を生み出していて。

外山 植物の揺れの設定も、風が通りやすいところとか、風向きを考えて作っていますので。

豊田 続いて、屍人ノ巣のお話を伺いたいのですが。

外山 この場所は『SIREN』とはぜんぜん違いますね。もちろん、本作のほうが理想的と言いますか、こうしたかったということが実現できています。

豊田 僕の印象は整理されたカオスなんですけれども……。

佐藤 カオスには変わりないんですが、どれだけ多くのアンテナで受信するんだよ、という(笑)。

外山 ボンネットバスは僕の希望で取り入れたもので。あれは僕の幼少時にもすでになかったんですけど、田舎に行くと名残でたまに保存してあるのを見たりしていたので。日本の昔の風景の象徴ってことで、ぜひ取り入れてほしいとお願いしたものなんです。

佐藤 ただあるだけじゃなくて、揺れますからね(笑)。構造もアートディレクターががんばってくれて。屍人ノ巣は複雑な構造になっているので、指示するほうも、されるほうもたいへんだったんですよ。立体的なので図面で表現することも難しいんです。チームメンバーで何度も集まって「このつながりはどうなってたっけ?」というミーティングをくり返しながら作成を進めていって。

豊田 さらに、その場所をキャラクターや屍人が動き回るわけですもんね。

外山 もうカオスですよ。内部は本当にカオスですね(笑)。あのゴチャゴチャしたところをどう動かしていいのかと……。本当に毎度のことなんですけど、せめぎあいがあって。ある意味ゲームとして成立させることだけを考えるなら簡単なんですよね、その気になったらどんどん単純な構造にしちゃえばいいだけですから。見せる部分とゲーム部分は切り分けちゃえばいいんですけど、うちのスタッフは絶対にそれをやらないという(笑)。

佐藤 キャラクターと怪力屍人は違うルートを進んでいくので、そういった部分を見ていただけると、スタッフ一同、非常にうれしいですね。

豊田 最後に伊東家ですけれども……。

外山 『SIREN』でもっとも評判を呼んだステージでしたので、敢えて必要最小限の変更でもう一度登場させようと。

豊田 4人目がいたことには驚きました(笑)。

佐藤 外山から目玉になるステージだからという話があったんですが、「そのままだとつまらないよね」と言っていたんです。前回を越えるほどのおもしろさをどうしようかと話をしていたら、いつの間にか4人目としておじいちゃん屍人が増えていて(笑)。それを見た瞬間、「あ、これは絶対におもしろくなる」という確信を持ちました。

外山 タイムアタックに難があるなど、『SIREN』で不満だったところを全部解消するつもりだったので、けっこう作り込んでいますね。侵入方法のギミックも異常に多いですし。

豊田 薪を使った侵入方法には驚きましたよ(笑)。

外山 伊東家のモデルは、僕の妻の実家なんですよ。松戸にある昔は2階建てだった、いまは平屋の家屋なんです。さすがにちょっと古くなってきて危ないので、もうすぐ壊してしまう予定で。ですので、本作で見納めというか(笑)。

豊田 取り壊すまえに、最後にもう一度取材しそうですね(笑)。

外山 「(取材を)するならどうぞ」と言われてますね(笑)。

豊田 あ、エピソード1で訪れる下粗戸のことを聞き忘れていましたが……。

外山 あそこは結構紆余曲折を辿ったエリアで、当初は試作のみのミニマップだったんです。妙に雰囲気がいいというか、おもしろいということで本編で使うことになって。ですので、最初は交番はなかったんですよね。坂を上ったさきにある民家も、当初は廃屋でした。

豊田 あ、そうだったんですか?

佐藤 気づく人は気づくと思います。人が住んでいるにしてはボロ過ぎですから(笑)。

外山 序盤のシナリオがいったん完成し、演出強化のために死体を配置することになったんです。そのときに廃屋じゃダメじゃん、ってことになり……。

豊田 なるほど。

佐藤 急遽、電気を通したり、テレビをつけたりと、住んでいるようにリフォームしました(笑)。

外山 リフォームはしたけど、もとが廃屋なので、壁に穴があったり(笑)。こんなところ住まないよ、という感じですが(笑)。

佐藤 居間と風呂場に死体が置いてあったり、やり直すと新たな発見がある場所ですね。

外山 クローゼットに隠れないで、風呂場に隠れても進めることができますし、警官がドアを開けたところを強引に突破する方法があったり、意外といろいろなことができる場所なので、やり直してみるとおもしろいかもしれませんね。

(インタビュー後編へ続く)

 

 

 

開発チームからこんばんは


 スタッフロールのスペシャルサンクス欄に、『SIREN』で安野依子を演じてくれた水野雅美さんの名前があることにお気付きになったでしょうか。彼女は現在、ご実家の不動産業に関わっていらっしゃるのですが、オープニングを撮れるロケ場所がみつからず途方に暮れていた我々に、軽井沢に所有する別荘用地の使用を快諾してくださいました。まさに女神。しかし突然「2万坪ほど自由にどうぞ」と言われ困惑(笑)。実は撮影にも参加してくれて、儀式の村人の一人として出演もされてます。(外山)

 

 

ブログ後記

 ステージに関するお話をメインにお届けしていきましたが、いかがでしたでしょうか? まあ、もっともビックリしたのは、“開発チームからこんばんは”で述べられた水野雅美さんの情報だったりするかも知れませんが……。というわけで、さっそくオープニングシーンを見直してみました。……え〜、どれが水野さんなのか、よくわかりませんでした(笑)。あとでもう一度見直そうと思います。それでは、今日はこの辺で。ではまた明日。

 

羽生蛇村日報 第31報 - 開発者インタビュー(前編)

 こんばんは。時計じかけ豊田です。訪れていただき、ありがとうございます。

 

『SIREN: New Translation(サイレン ニュー・トランスレーション)』の魅力をお届けしていく当ブログ。本日からは3日間連続で、開発者の声を皆さんにお伝えしていきます。ご登場いただくのは、本作のディレクターを務める外山圭一郎氏と、シナリオを担当している佐藤直子氏です。

  


 

 時計じかけ豊田(以下、豊田) 昨日まで5日間連続でアーカイブ裏話をお伝えしてきたのですが、アーカイブの制作はかなりたいへんだったのでは……。

外山圭一郎(以下、外山) 細部までこだわって作っていますので……。

佐藤直子(以下、佐藤) 地獄を見ましたね(笑)。

豊田 ひとつひとつのクオリティーがすごいですよね。

佐藤 HDですので細部まで読めちゃうってところがまず地獄で……。今回は武器アーカイブという要素が増えたので、一個一個のネタを増やすというよりは、密度を濃くするというアプローチをして。50個すべて、実際にそこにあるかのように作らなきゃいけないってことが本当にたいへんでした。

外山 たいした内容じゃないものや、くだらないアーカイブほど作るのがたいへんで……。

佐藤 毎回、アーカイブ担当者は死ぬか生きるかの瀬戸際まで追い込まれるんですけども、本作のアーカイブ担当デザイナーの船山という人間は、結婚式の前日まで徹夜という地獄を味わっていました(笑)。

豊田 ……え〜と、逆にいい思い出になってよかったですね、と言っておきます(笑)。

佐藤 あ〜、確かに人間として大きくなった感じがしましたね(笑)。

外山 『SIREN2』のアーカイブ担当者から、アドバイスをまとめた書類が船山へ手渡されたんです。「タイムスケジュールをこういう風にしておくとスムーズになるよ」という類のものが。で、その書類の序盤には「出すもの出すものリテイクの嵐。精神的にツライ時期」と書かれていて(笑)。

佐藤 どんな時期だよ、と(笑)。

豊田 ある意味では的確なアドバイスですね(笑)。

佐藤 正解の形がないんですよね、アーカイブは。だんだん作っているうちにみんなの思い入れがおかしくなっていきますし。

豊田 でも現場は楽しそうですね。反面、「その場にはいたくない」とも思いますが(笑)。

外山 ある意味、通過儀礼ですので(笑)。

豊田 ちなみに、羽生蛇三大麺は、羽生蛇蕎麦、はにゅうめんのほかに、もうひとつあるんですよね? 最後のひとつは……?

佐藤 いまだ未公開です。ここまできたら、麺のゲームを作ってでも紹介したいですね(笑)。

豊田 (笑)。そういえば、犀賀の幼少期の声は、外山さんの息子さんが担当されていますよね?

外山 じつは大人の声優さんで収録を行ったんですけど、どうしてもリアリティーがないということでオファーがあり……。

豊田 あ、チームからオファーが出たんですね。

外山 で、長男と次男で家庭内オーディションを行って(笑)。

佐藤 長男が勝ち取ったんだよね(笑)。おもしろかったのが「このまえやったようにやりなさい」って指導しているんですけど、長男が「パパは無理しないでいいって言ってたよ」とつぶやいていて。外山の家庭の顔と仕事場の顔の両面が見えた、貴重な体験でした(笑)。

豊田 “開発チームからこんばんは”でも述べられていましたが、身近な方が多数登場されていますよね?

佐藤 特徴的な方と出会うと「いつかアーカイブに使ってやろう」と思っちゃうんですよね。たとえば、“独眼竜ドラゴン”のポスターのモデルになっている女豹役の女の子は、いつも背中に“スケバン”って書いてあるパーカーを着ていて、どう見ても現代の子じゃないんですよ(笑)。それを見て、「いつかアーカイブに……」と思っていて(笑)。家庭内手工業と言いますか、少ないソースをいかに最大限活かすかという。それは外山の教えでもあるんですよ。制限の中でよりクオリティーの高いものを作り出そうという。

外山 まあ、ようするに貧乏性ってことですかね。ふつう、予算的なお話はしないのですが、オープニングシーンは脅威の総予算50万円という格安のものですから(笑)。

佐藤 バス1台にスタッフを詰め込んで撮影に挑んだという(笑)。

豊田 次世代機でその価格はスゴイですね。

外山 小道具も衣装も全部手作りです。

豊田 次回作があるなら、ぜひ出演させてください(笑)。

佐藤 そう言ってくださる方はけっこう多いんですよね。

外山 過酷ですよ(笑)。いや、本当に(笑)。

佐藤 過酷なのは本当で、オープニング撮影のときも、雨は降ってるわ、寒いわで……。私なんて薄手の看護服で頭には袋かぶって、足元はタイツ一枚にサンダルですから(笑)。その格好のまま、整備なんてまったくされてない小石とか木の枝が転がっている地面をズルズルと引きずられて倒されてですもん。そのうえ、平気で外山から「あ〜、NG。もう1回」って(笑)。

外山 葉っぱが写ってたんだよ。

佐藤 葉っぱが写ってるからやり直しって(笑)。そのときは、かなり険悪な雰囲気になって、NGが出た瞬間にすごい眼で睨んで罵声を浴びせましたから(笑)。

豊田 気になったのがその、喧嘩とか言い争いが頻繁に起こるんじゃないかなって……。

佐藤 喧嘩するほど仲がいいチームですよ(笑)。

外山 口に出して言っている分には健全ですから(笑)。

佐藤 でも、ここまでこだわれて、なんていうかぶつかり合えるのは、なかなか得がたいコミュニケーションだと思いますね。

豊田 それはシリーズを重ねてきたチームだからこその結束力ということですか?

佐藤 そうですね。チーム全体に、費用対効果を度外視して限界の限界を目指そうという気概がありましたね。

豊田 お話を聞いていて、昔のファミ通編集部を思い出しました。幼児用プールに飛び込む写真が欲しいと言われれば、ものすごい高さから本当に飛び込む時代だったので(笑)。

佐藤 そういうノリは確かにありますね。グランドを10周走り終えてクタクタになり、疲れ果てて地面に倒れこむ瞬間に「あと10周ね」って平気で言われる状況が何回か起きましたし(笑)。でも、意外かもしれませんが外山が癒し系なので耐えられたというか。チームのトップなのに、いちばんの癒し系なんですよね(笑)。

外山 いや、周りが怒ってくれるので、僕が怒る必要がないんですよ(笑)。これ以上怒っても意味がないなぁ、と。

豊田 (笑)。そういえば、今回のアーカイブは笑いの要素が押さえ気味だなという印象を受けましたけども。

外山 『SIREN2』と比べると少ないかもしれませんね。

佐藤 確かに数を50個に絞った分、笑いを入れる余裕がなかったという要因もありますが。

豊田 ひとつの人形を4パターンに加工するなど、制作時にはさまざまな工夫をされていたそうですが……。

佐藤 何枚も領収書を落とすのはきびしいというか(笑)。新人の女の子に、「アーカイブの領収書を清算しといて」と何回か頼んだんですけど、あまりにも奇妙なものを購入しているんで、上司に呼び出されて「これはいったい何に使うんだ?」と(笑)。

豊田 『SIREN』のときは、人形がもっとも高くて6000円だったと記憶していますが、本作でもっとも高価だったのは?

佐藤 角ウサギ男の着ぐるみですね。でも、どのアーカイブもすべて低コストですよ。あ、ハワードのブログであまり注目されていないんですけど、天狗のお面があるんです。あの天狗のお面は領収書を清算するのがめんどくさくなって自腹で買いましたね(笑)。上司に天狗のお面をゲームの何に使うのか説明するのがイヤになって(笑)。

豊田 でも高いんじゃないですか?

佐藤 いや、800円くらいです(笑)。

豊田 武器アーカイブも50種類用意するのは苦労したのでは?

外山 でも、ボツになった武器もいくつかあって。いちばん残念だったのはコケシですね。

豊田 え!? 木彫りのコケシですか?

外山 ええ。すっごくがんばって推したんですけどね。屍人の口にねじ込むカットインが入ったり(笑)。完全にギャグになるということと、海外ではわからないという理由で泣く泣くボツに(笑)。

豊田 あ、そうだそうだ。武器を使って屍人を倒したときのカットイン演出ですが、正式名称はあるのですか? 説明書にも載っていなかったので……。

外山 チームでは“フェイタルムーブ”と呼んでいます。

豊田 なるほど。あれは武器と場所の組み合わせで発生するものなんですか?

外山 まず、武器によってフェイタルムーブのあるものとないものがあります。あるものでも、場所が重要で、出せる場所というのがあるんですよね。開発途中は「なんとなく出るというよりも、意味があるものにしようか」という提案もあったんです。たとえばカウンターだったらとか、ボタンを変えたらとか。スタッフと議論を重ね、幅広い層に受け入れてもらいたいのに重要な演出が見られない可能性があるシステムはどうなんだろう、という結論に達して。

豊田 狙って出せないことによって、テンポにもいい意味で変化が生まれていますよね。

佐藤 フェイタルムーブを捜すのも楽しいですし。

外山 僕もすべてを把握していませんから(笑)。

豊田 アーカイブもスゴイですけど頭脳屍人もスゴイですよね? なんて言えばいいんでしょう。突き抜けた感じがするというか……。

外山 頭脳屍人は「おもしろければもう何でもいいよ」という割り切りをしました(笑)。ハードがプレイステーション3になったので、ギミックとして変わったこと、次世代機でしか表現できないことは全部仕込もうと思って作りましたね。

豊田 最初に遭遇する頭脳屍人からしてスゴイですよね。人型ですらないですし(笑)。

外山 車椅子に乗っているという設定だったので、どういった形にするかが難しかったんですよね。病気や怪我などを連想させるものはNGにしつつ、インパクトのあるものを……と考えていたときに、逆に解釈の幅がドーンと広がった感じで。

豊田 ちなみに、あの屍人は【入院患者の手紙】を書いた人と同一人物ではないんですか?

佐藤 今回、その辺は深くつなげていないんです。

外山 頭脳屍人のコンセプトは“出オチ”なんですよね(笑)。バカバカしさというか。

佐藤 とはいっても、ユーザーの皆さんが気つかないかもしれないという部分、細部の細部まで徹底的にこだわって作っていますので、怖いとか気持ち悪いという感情を乗り越えて注視してもらえるとうれしいですね(笑)。

豊田 (笑)。24日には北米でもダウンロード配信がスタートしましたが、反応はいかがでしたか?

外山 毎夜0時に解禁されるという仕様ではないのですが、リアクションはすごくいいですね。ビックリするくらい評判がいいんです。ネット専売で価格的にリーズナブルだったこともプラスに働いて。また、これまでプレイステーションネットワークで配信されていたものは、ライトな感じのゲームが多かったんですけど、ユーザーは意外とヘビィなものをやりたかったようで。「プレイステーションネットワークでリッチなゲームができるのがうれしい」という声が多くて驚きました。北米では『SIREN』の認知度は日本と比べると低いんですけど、ハワードのブログとか写真ネタとかをすごく新鮮に楽しんでくれていて。日本では即日に解明されてしまったアーカイブ捜しも、ユーザーどうしで質問しあったり、時間をかけて見つけていますから。

豊田 確かに日本のユーザーはあっという間にアーカイブを集めちゃいましたよね。僕のブログがアップされる前にすべてが終わっているという(笑)。あ、ちなみに犀賀のキャラクター性は、北米ではどのように受け止められているんですか?

佐藤 「すごくいい」というリアクションを聞いています。ワールドワイドに受け入れられる日本人像を意識して服部さんというすばらしい役者さんに行き着いたので、うまく伝わってくれたなと。

豊田 ユーザーからの反応と言えば、ゲーム本編以外にも“羽生蛇村を求めて”のページはとても人気がありますよね?

佐藤 正直あそこまで人気が出るというのは……。

外山 ちょっと意外でした(笑)。設定や世界観の整合性としては微妙なもので、どちらかというと『SIREN』を知らない層に向けて「なんか変なことをやってるな」という興味を惹くものとしての試みだったんです。半分オフィシャル、半分お祭りのようなノリの(笑)。

佐藤 お祭りという要素としては、すごくよかったなと思っています。

外山 まあ、「1年前の事件がライブかよ!」っていうツッコミもあるわけですが(笑)。

佐藤 でも、12時にサイレンが鳴るときにはみんな大盛り上がりで(笑)。定刻にサイレンが鳴るだけでよろこんでもらえているのがうれしいですね。

豊田 いやぁ〜、初めて見たときは「ライブなの?」って思いますもん(笑)。

外山 「小屋に隠れて出演の準備をしてるのかな?」と思ってくれた方もいたらしくて。

佐藤 「スタッフおつかれ〜」って、そんなわけないだろ! って(笑)。

豊田 シリーズのファンとしては、「サイレンチームならそこまでやりかねない」って思うわけですよ。

外山 ライブだとしたら、タンクトップの役者さんのギャラは安いですね。出すぎですから(笑)。

豊田 収録はどちらで行われたんですか?

外山 奥多摩ですね。

豊田 ちょっと待ってください。もしかして、本編制作後にわざわざ収録に行ったんですか?

佐藤 ええ、そのためだけに行ってきました(笑)。

外山 天気がちょうどドンピシャで、ずっと雨がシトシトと降っていたんですよね。

佐藤 サイレン日和だったんです(笑)。

豊田 なるほど。ライブだと感じたひとつの要因が、あの季節感のなさだったんですよね。

外山 ラッキーでしたね。行き当たりばったりで行ったのに(笑)。

豊田 (笑)。あ、“羽生蛇村を求めて”に出演されているキャストの方は、そのためだけにキャスティングをされたんですか?

外山 そうですね、エピソード0も含めて、そのためだけに(笑)。

佐藤 みっちゃん役の方は、お弁当を食べているときに垣間見せてくれた素の部分も役柄に落とし込んでいます(笑)。エピソード0は、いままでの異聞録とはちょっとやりかたが違うんですけれど、まったくゲーム本編と絡んでいないわけではなく、ゲームプレイ後に映像をチェックするとそれなりに楽しめるようなギミックが入っているので、まだ見ていない方はぜひチェックしてみてください。

豊田 各所で目にするポスターや看板も、さまざまな種類がありますよね。あれを決める会議は楽しいだろうな、と感じたんですけど(笑)。

外山 いやぁ〜、アートディレクターが本当にきびしくて、“何となく”っていうのはダメなんですよ。「なんでこの商品の名前はこうなの?」という鋭いツッコミが入るわけです(笑)。

豊田 バックボーンまで考えて作れ、ということなんですか?

佐藤 バックボーンもそうですけど、見た人にどう伝わるのかという部分を大事にしていて。たとえば、パロディーをやるなら、パロディーとしてどういう意図があるのか、見た人にどう伝わるのかと、本当にビックリするくらいきびしいんです(笑)。

豊田 ブログでもいろいろ書かせていただきましたが、すべてを拾い切れなかったのが心残りで……。ちなみに、“会えるかな、マンチェ”というポスターがありましたよね? あれは何の商品なんですか?

佐藤 キャンディーですね。

豊田 なるほど。では、“腋”と書かれた看板は、読みかたは“わき”でいいんですか?

外山 じつは、“月夜”(つきよ)です。え〜、くだらないんですが、デザインに失敗して文字が近すぎるために“腋”と読めてしまうという裏設定があります(笑)。

豊田 (爆笑)。

佐藤 そんなくだらないものがデモシーンで思いっきり目立って写っているという(笑)。

外山 あれでも暗くしてもらったじゃん。最初はもっと煌々と光ってたんだから(笑)。

(インタビュー中編へ続く)

 

 

 

開発チームからこんばんは

 デモパートのリハーサル。ハワードを背負う犀賀…と台本では簡単に書かれますが、成人男子一人を担ぎ上げるのは結構たいへんです。(外山)


おんぶしてみました。とてもクライマックスに向かう雰囲気ではありません…。


モーション演出のギャビンの指導でカッコいい背負い方が完成。
そのギャビンさんを背負っての一枚。
 

 

 

ブログ後記

 蛇足ですが、インタビュー中の雰囲気もお伝えしたかったので、敢えてラフな感じの構成にしています。お話を伺って感じたのは、チームの結束力ですね。“いいものを作ろう”とチーム全員が一丸となっていることがひしひしと伝わってきました。外山さんと佐藤さんの息がピッタリだったことも印象的です。明日は、インタビュー中編をお届けいたします。それでは、今日はこの辺で。ではまた明日。

 

羽生蛇村日報 第30報 - アーカイブ大全(No.37〜No.45)

 こんばんは。時計じかけ豊田です。訪れていただき、ありがとうございます。

 

『SIREN: New Translation(サイレン ニュー・トランスレーション)』の魅力をお届けしていく当ブログ。本日はアーカイブ大全第5弾として、アーカイブNo.37からNo.45を取り上げていきます。

 

 

 

アーカイブNo.37【合石岳異記】

外山 宇理炎の説明が書かれたアーカイブですね。

豊田 今回、宇理炎で意識されたことってあるんですか?

外山 宇理炎は『SIREN』では土偶型だったんですね。で、本作は海外も視野に入れていたので、土偶型が必殺武器というのもピンとこないだろうなと思って。

豊田 ピンとこないでしょうね(笑)。

外山 映画『ヘルレイザー』でも箱型というのはおなじみでしたので、キューブ状にしたわけですが……。

豊田 わけですが?

外山 終盤にデザインが決まったので、箱状でのモーション撮影をしていなかったんです。だから、それを合わせるための修正がたいへんでしたね。あと、わかりにくいと思うんですけど、ハワードが宇理炎を放つときは箱型が変形して腕に巻きつき、血を吸っているというモーションになっているんですが……。

豊田 ええっ? これまたぜんぜん気づきませんでした……。

外山 構えると宇理炎から触手のようなものが3本出て腕に刺さりますので、ぜひ注意して見てください。

豊田 わかりました。ちなみに、これまたあえて伺いますが、宇理炎という名前の元ネタは……。

外山 天使の“ウリエル”から名づけています。字面がよかったので本作でも宇理炎という名前はそのままです。

 

 

アーカイブNo.38【バミューダ3のレコード】

豊田 「トゥララ〜、トゥララ〜、トライア〜ングル〜」ですね。

外山 “開発チームからこんばんは”でも書かせていただきましたが、あのアフロはCGディレクターの近藤氏がモデルです。

豊田 歌、長いですよね。

外山 予算的にはエンディングよりもかかっています(笑)。

豊田 だからやりすぎですって(笑)。そういえば、歌詞には深い意味が込められているんですか?

外山 聴いていただいたとおりですね。二丁目テイストあたりも佐藤のアイデアです。ちなみに、「恋の三角海域SOS」はアーカイブに書かれているとおり、歌っているのはふたりだけなんですが、気づきました?

豊田 もうひとりはタンバリン担当という設定ですよね?

外山 じつは、それは後づけなんです。収録時、歌手3人を雇う予算がなかったので(笑)。ちなみに、ラジカセを調べてレコードが手に入るのはおかしいという指摘もありますが、ラジオを聴いていたという設定になっていますので、レコードが入手できるというのは間違いではないんです。

 

 

アーカイブNo.39【リリアン】

外山 実物のリリアンを購入してきて、若干加工しています。海外にはリリアンがないので、説明文を英訳するのがたいへんでした。

豊田 このあとのふたつに大きく関わってくるアーカイブですもんね。

外山 複合的なアーカイブを入れることは早い段階から決めていたので、組み合わせがうまくいってくれて安心しています。

 

 

アーカイブNo.40【虫取りセット】

豊田 箱に書かれている“ひろし”は、お兄さんの名前なんですか? 伊東家の表札に書かれている名前の順番から察するに、お父さんのようにも思えるのですが……。

外山 よく見てますね(笑)。佐藤じゃないとわからない部分ですので、あとで佐藤に確認しておきます。

豊田 当時の雰囲気を感じるデザインですが、箱は実物を作成されたんですか?

外山 似たようなものを購入し、デザイン担当者が描いたイラストを表面に貼っています。この箱はエピソード0にも登場しているんですが、ナイトモードなのでまったくわからないという(笑)。

豊田 (笑)。

外山 このアーカイブもたいへんだったことがあって、アメリカには虫を採る習慣がないという突っ込みが入ったんです……。虫を採る習慣って日本独自のものなんですよね。変えようもないので、ベラは変わった子だから、と強引な設定で押し切るしかなく……。海外向けに「ペット?」みたいな説明的なセリフを入れてごまかしています(笑)。

 

 

アーカイブNo.41【ハニュウダカブト】

外山 最初、「ちょっと変わった特徴を」というお願いをしたら、ものすごく大きいカブトだとか、角が8本だとか(笑)。でも、それは勘弁してくれと言って、いまのおとなしい形に落ちついたわけです。

豊田 これは標本を撮影したのちに加工したんですか?

外山 そうですね。廃村に生えていた木に標本を置き、撮影をしています。

  

 

アーカイブNo.42【世界UMA大百科事典】

外山 このアーカイブにはこだわりがあって。左ページの下に写っている双子の写真は『SIREN2』のアーカイブで使用していたものなんですが、手抜きをして流用したわけではないんです。僕はよくUMA本を買うんですけど、眺めていると頻繁に写真を流用しているんですよね。「また同じ写真使ってるよ」と思うわけです。ですので、そのスタイルのオマージュとして『SIREN2』で使った写真をあえて流用しているんです(笑)。

豊田 ……『SIREN2』の写真と比較すると、微妙に傷が違いますよね?

外山 若干変えています。そこもこだわった部分ですね(笑)。

 

 

アーカイブNo.43【合石岳壁画】

外山 全アーカイブ中、唯一のCG画面です。エピソード中に登場するものをそのまま使っています。

豊田 ぜんぜんわかりませんでしたよ。

外山 同じような岩が見つからず、時間が足りなかったこと。そして、違った岩を使ってしまうと今度はエピソード中のグラフィックを変えなければならなくなるので、デザイン担当者が泣く泣くCGにしたんですよね。デザイン担当者は心残りだったと思います。

  

 

アーカイブNo.44【サム・モンローのボイスレコーダー】

豊田 ボイスレコーダーはリュックの上に置かれているんですよね。

外山 そうです。サムが背中にしょっているリュックの上にボイスレコーダーを置いたというシチュエーションです。内容的にはいたってまともなものなので、ほかに説明する要素はないかなぁ。

豊田 『SIREN2』に登場しているボイスレコーダーとは異なったデザインですよね?

外山 これも新たに作成したものですので、形はまったく違いますね。

 

 

アーカイブNo.45【カセットテープ】

外山 このアーカイブも意外と語ることがないなぁ(笑)。

豊田 ハニュウダカブトがカセットテープをつかんでくれたのは……。

外山 カセットテープにジャムがついているからです。まあ、はにゅうめんを食べて、そのときにイチゴジャムが床の穴に垂れて、そこにカセットテープが落ちるという、ありえない状況なんですけども(笑)。あ、音声の内容ですが、当初は襲ってくる相手の笑い声が入っているバージョンも収録したんですけど、声がないほうが怖いという結論に達して……。

豊田 あ〜、確かに無言のほうが怖いですね。

 

 

 

 

開発チームからこんばんは

 

 

 撮影モデルの中には合成素材用なんてものもありまして、全身にくまなく傷やただれを施した写真を撮影して、それを後ほど屍人のアクセントとして適宜使用するわけですが、その撮影風景はなんだか物悲しいものがあります。(外山)

 

 

ブログ後記

 5日間にわたってアーカイブの魅力に迫ってみましたが、いかがだったでしょうか? とにかく、どのアーカイブもこだわり抜いて作られているので、この機会にぜひもう一度見直してみてください。新たな発見があること、間違いなしですから。本当は、残り5つも取り上げたかったんですけども……。全部扱うことができず、すいませんでした。すべてのアーカイブ情報をお届けできる日が来ることを祈りつつ、今日はこの辺で。ではまた明日。

 

羽生蛇村日報 第29報 - アーカイブ大全(No.28〜No.36)

 こんばんは。時計じかけ豊田です。訪れていただき、ありがとうございます。

 

『SIREN: New Translation(サイレン ニュー・トランスレーション)』の魅力をお届けしていく当ブログ。本日はアーカイブ大全第4弾として、アーカイブNo.28からNo.36を取り上げていきます。

 

 

 

アーカイブNo.28【8ミリフィルム】

外山 実際には8ミリで撮ったものではないのですが、メディアとしてあり得るものはすべてアーカイブに入れたくて……。

豊田 レコード、カセットテープ、ビデオテープ、ボイスレコーダー、携帯電話……。なるほど、アーカイブNo.46以降のものも含めると、すべての記憶媒体があるわけですね。

外山 裏話としては、エピソード中に登場するアマナがかぶっているフードの色とは違っていることですね。エピソード中は黒、このアーカイブ中では赤。昔は赤くて、時代を経て黒くなったという……。

豊田 また細かいですねぇ。

外山 え〜、すいません。アーカイブ収録時には、まだきちんと色を決めていなかったんです(笑)。フードがリバーシブルで赤黒になっていて、あとで「黒のほうがいいよね」ということになり、エピソード中に登場するフードを黒に統一したんです。

 

 

アーカイブNo.29【うらないのカンヅメ】

外山 このアーカイブの説明文章は僕が書いています。最初は受験を題材にしていたのに途中からボクシングマンガになるという、あるマンガのパロディですね(笑)。

豊田 前世うらないの内容も外山さんが?

外山 これは佐藤といっしょにネタ出ししました。イラストはアーカイブ担当デザイナーが描いています。

豊田 内容、かなりシュールですよね?

外山 入手時に4タイプからランダムで選ばれるわけですが、お母さん、ミトコンドリアはまだしも……。

豊田 取っ手、ブラックホールって、人ですらないですからね(笑)。

 

 

アーカイブNo.30【聖画 −虚母ろ主−】

外山 屍人のデザイン担当者が描いたものです。う〜ん、それ以外は語れる要素がないですね(笑)。

豊田 あえてお聞きしますが、なぜ“虚母ろ主”という表記なんですか?

外山 政治体制に弾圧された隠れキリシタンのように、当て字を用いて信仰を隠していたという設定のため、このような表記になっています。

 

 

アーカイブNo.31【アトランティス創刊号】

外山 シリーズでもっとも多く作られているアーカイブです。いったい何度作ったことか(笑)。

豊田 おなじみの謎解明マガジンですね。1976年7月創刊号なわけですが。

外山 ちゃんといままでのシリーズには登場していない号にしています。ちなみに、『SIREN』では1976年7月創刊特大号と2003年7月増刊号、『SIREN2』では8月増刊号(年代不明)となっています。実際に雑誌の表紙デザインなども担当している方に作成を依頼しているので、本物の雑誌ソックリというか、もう本物の雑誌ですね(笑)。

 

 

アーカイブNo.32【JOYLiNK −ウルトラネットワークキング−】

豊田 これまたやりすぎのアーカイブですよね。まさかネットワークを介して、ミニゲームが遊べるとは……。しかも3種類も用意していますし。

外山 Tsuchinoko、Skyfish、Jackalopemanの3種類が遊べます。コンセプトは心ないローカライズです(笑)。当初、「UMAをモチーフにしたゲームを3つくらい用意しよう」と軽く言っていたんですが、ネタとして淡白すぎておもしろくないねという話になり……。

豊田 そこで洋ゲーを日本のメーカーがムリヤリなローカライズをしたという設定に……。

外山 そうせざるを得ない状況になったというか(笑)。ハワード・ライトのブログにも、アメリカのゲームを日本の会社がメチャクチャなローカライズをしたという日記を入れていますし。

豊田 ブログでは”独眼竜ドラゴン”のパッケージも載せていますよね。

外山 ちなみに、独眼竜ドラゴンのポスターが伊東家2階の空き部屋に貼ってあるんですけど、主役の男性のモデルは無駄に筋肉ムキムキのCGデザイナーを使っています。佐藤が「いつかあの無駄な筋肉をゲームで使ってやろう」とずっと目論んでいて実現したんです(笑)。

  

 

アーカイブNo.33【犀賀省悟の絵日記】

外山 山口というデザイナーが描いたんですが、色の使い方をブルー系とレッド系でイメージを変えていて……。

豊田 う〜ん、意味がよくわかりません(笑)。

外山 色鉛筆の使い方を子供心に表現するというか。新しいお父さんとお母さんは怖いから、ブルー系で書いているという……。

豊田 詳細を見たときに表示される新聞記事の切り抜きですが……。

外山 いままでだと三隅日報とか、新聞全面を載せていたんですけど、HDだと全部読めちゃうんですよね。ですので、切り抜きにしたという(笑)。

 

 

アーカイブNo.34【ハワード・ライトの携帯電話】

外山 “画像を保存”を選ぶと、ハワードが羽生蛇村を訪れるまでの写真がプレイステーション3メニューのフォトフォルダに保存されるというアーカイブです。このアーカイブはかなりがんばりましたね。ゲームからフォトに追加される、というのは前例がないのでけっこうモメたんですよ。いろんなところに話を聞きにいって確認する必要があって……。

豊田 画像が21枚もありますよね。

外山 JPGデータなので撮影日時やメーカー名が表示されてしまうんですけど、それを書き換えるのがものすごくたいへんで。撮影日時や詳細情報、それに撮影機器も表示されるので……。

豊田 撮影機器の名前は……。

外山 PG333XOという架空のカメラメーカー、ペタゴン製のものです(笑)。じつは、書き換え作業はなぜか僕がすべて行っていて、写真も僕が撮影したものを使用しています。写真のコンセプトは最初はふつうだけど、だんだん怖くなるというものですね。

  

 

アーカイブNo.35【オイルライター】

外山 エピソード0にも登場するライターですね。

豊田 “NT”という刻印を入れることは最初から決めていたんですか?

外山 最初からです。『New: Translation』の“NT”ですが……。

豊田 エピソード0に登場した……。

外山 エピソード0を観ていただければ誰のイニシャルかわかりますので、ぜひそちらをご覧になってください。

 

 

アーカイブNo.36【三田村家のアルバム】

外山 犀賀役の服部整治さんからアルバムをお借りして、幼少時の写真をそのまま使用しているんです。

豊田 え? ご本人なんですか?

外山 ええ。汚したり、なくしたりしたらたいへんなことになるので、扱いに気を遣いましたね。ただ、1枚だけは担当デザイナーの家族写真を利用しています(笑)。あ、担当デザイナーといえば、このアーカイブを入手するときのシチュエーションを廃村で再現して撮影したんですけど……。

豊田 屋根から落ちて、ストーブの上にアーカイブがあるという状況ですよね。

外山 同じ状況で撮影したんですけど……完成したアーカイブからはそれがまったくわからないという(笑)。

豊田 あははははは! それ絶対わかりませんって(笑)。

 

 

 

 

開発チームからこんばんは

 

 アフレコ時のベラ役リアーナちゃん。実はアメリカ人のお父さんと日本人のお母さんとのハーフなので、撮影時には髪に金色のスプレーを施したりしていました。撮影後に日本を発って現在はアメリカ在住のはずで、向こうに行って忘れてしまうといけないから、とお母さんと漢字の勉強をしていたのが印象的でした。某ゲーム機で。(外山)

 

 

ブログ後記

 皆さんは、アーカイブNo.29【うらないのカンヅメ】入手時の結果は、どの内容でしたでしょうか? 僕は“お母さん”でしたので、ある意味勝ち組です。ちなみに、編集部で本作をプレイしている人間に尋ねてみたところ、“ミトコンドリア”と“ブラックホール”は確認できたのですが、“取っ手”はひとりもおらず。……“取っ手”、レアなのでしょうか? それでは、今日はこの辺で。ではまた明日。

 

(c)Sony Computer Entertainment Inc.
PS3、SCEIロゴ
プロフィール画像

時計じかけ豊田

ファミ通プロジェクトマネジメント編集部デスク。長くてよくわからない部署名だが、週刊ファミ通および姉妹誌にて"ファミ通チョイス"というマークが入っているタイトルを専属で担当する遊撃隊的部署のことらしい。編集歴10年。頭のネジがちょっぴり抜けている『サイレン』シリーズが三度のメシより好きな編集者。

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