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ROCKSTAR HISTORIA Vol.19 『GRAND THEFT AUTO:SAN ANDREAS』(前編)〜比類なき最高傑作の光と影
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Text by Mask de UH

 ついにこの日がやって来た。ロックスター・ゲームスの歴史を語る上で、決して避けては通れないギネス級の超傑作『GRAND THEFT AUTO:SAN ANDREAS』(以下、『GTA:SA』)を語る時がやって来てしまったのだ。あまりにも有名すぎる本作を語る際には、筆者も些か私情を挟まずにはいられないが、それはそのネタだけで本2冊は書けそうなエピソード満載につき、ここでは敢えて触れない。
 触れるべきは、『GTA:SA』という怪物タイトルが我々の社会に与えた影響であり、その比類なき完成度であり、そこから表面化した様々な社会問題だ。『GTA:SA』は、ビデオゲーム史上に輝く紛れもない至宝であると同時に、ゲームで許されるべき境界線の垣根を踏み越え、タブーとされていた領域に踏み込んで問題点を白日の元に曝してしまった、超が1つでは足りないぐらいの問題作でもある。約5ヶ月に渡って続いたこの“ROCKSTAR HISTORIA”の最終回を飾るに相応しいタイトルであり、余りに語るべきポイントが多いので前後篇に分けてお届けすることをご了承いただきたい。


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 まずは前編として、『GTA:SA』が成し遂げた様々な快挙と作品に込められた深いテーマについて解説しよう。『GTA:SA』は主人公であるアフロアメリカンの青年カール・ジョンソンこと通称CJが、母親の死をキッカケに出稼ぎ先だったリバティシティから故郷である西海岸の地方都市ロス・サントスに舞い戻るところから始まる。
 CJは弟もギャング抗争で殺されて地元に嫌気がさしていたが、従兄弟や友人と再会して故郷の置かれている状況を知り、立ち上がる。ロス・サントスは汚職警官テンペニーを筆頭とする腐敗した役人たちによって荒んでいた。ギャング抗争は激化し、対立組織との血で血を洗う抗争の中で、罠にハメられたCJはロス・サントスから追い出されてしまう。港町サン・フェリォや観光都市ラス・ベンチュラスに向かったCJは仲間を集め、故郷を汚す悪人たちに復讐を果たすべく、成り上がっていくのだった……。



 『GTA:SA』の物語は、ギャング映画の影響がところどころに散見された前2作と比較しても、非常にシリアスでハードな展開が目立つが、それは実際に発生した2つの事件に起因している。90年代初頭にアメリカ合衆国を震撼させた西海岸カラーギャング抗争とロサンゼルス大暴動、通称「ロス暴動」だ。カラーギャングの抗争に関しては、様々な映画の題材にもなっているので、簡単に勉強するなら故デニス・ホッパーが監督した『カラーズ 天使の消えた街』がオススメ(定番すぎるかもしれないが、何度観ても面白い映画なので)。ロス暴動に関してはYOU TUBEなどに様々な当時のニュース映像がUPされているので、片っ端から再生するのをオススメする。それが『GTA:SA』で描かれている世界に他ならないからだ。


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 物語の主人公CJことカール・ジョンソンの存在も特異だ。彼は設定上は何の変哲もない黒人青年だが、コミュニティのヒーローであり、愛すべき存在であり、基本的に善人である。悪人が主人公というイメージが大きいGTAシリーズだが、筆者は断言しよう。CJは善人であり、ヒーローだ。
 なぜかというと、彼はケチな強盗などは行ったが、本来の目的は陰謀によって殺された家族の復讐であり、自分たちのコミュニティを貧しい状況に追い込んだ支配者たちに戦いを挑んだ、いわばロビンフッドの黒人バージョンのような存在である。アメリカ合衆国の歴史を紐解けば、必ずぶち当たる黒人差別問題は、自由を標榜するアメリカ社会が抱える大いなる矛盾であり、長きに渡る人種間対立の火種としてくすぶっていた。
 『GTA:SA』は、その問題をビデオゲームに持ち込んだのであり、その証拠は、CJという主人公自身の存在なのだ。CJは、ビデオゲームの歴史上において初めての黒人青年の主人公であることを、ここで触れておかねばならない。バスケットボールなどの一部のスポーツゲームを除けば、黒人青年が主人公のビデオゲーム、特にアクション/アドベンチャーでは『GTA:SA』が初めての作品なのだ。これがどれほど重要な事かお分かりいただけるだろうか? 『GTA:SA』は、アメリカ合衆国の近代史を反映させて政治的な問題までも持ち込んだ、極めて深い問題定義を内包したビデオゲーム作品なのである。ここが、『GTA:SA』と他のゲームとの決定的な違いである。ちなみに『GTA:SA』の次に登場した『GTAIV』の主人公ニコ・ベリックは、うって変わって心底極悪非道な犯罪者であるのも面白い。R★のゲームの主人公は必ず何らかの止むに止まれぬ事情を背負っている場合が多いのが1つの特徴なのだが、CJほど明るく希望に満ちた男も珍しい。彼は地域を“清掃”し、収益をコミュニティに“還元”する。それが例えギャング稼業によって得られた汚れた稼ぎであっても、支配者側から奪い取ることで良しとする。そこにアメリカ合衆国におけるマイノリティ問題が集約されているといえるだろう。

 そして、『GTA:SA』に登場するのは黒人だけではない。対立するチカーノと呼ばれるメキシコ/ラテンアメリカ系移民のギャングが存在する一方で、賭博を牛耳る中国系マフィア組織も暗躍している。CJは彼らのコミュニティとも協力することで共存を図り、同じ敵を倒す目的のためと彼らを説得する。このような展開がビデオゲームの物語に取り込まれたことがあっただろうか? ファンタジーやSFの形を借りた一種寓話的なスタイルはあっても、ここまで現実社会の問題、それも特にナーバスな人種問題をリアルに直接的に取り扱ったことが『GTA:SA』が世界で評価されている理由の1つであることを、筆者はここで記しておく義務がある。この内包されたテーマを理解した上でゲームをプレイすると、全く新鮮味が違うというか、没入感が違うというのは月並みだが、これも『GTA:SA』に秘められた魅力の1つにすぎない。

 『GTA:SA』を語る上で外せないもう1つの快挙。それはサウンドトラックである。前作『GTA:バイスシティ』において、大きな革命を実現させたR★は、『GTA:SA』で更なるゲームサントラの境地を目指した。収録曲は膨大となり、黒人が主人公ということでヒップホップ、ファンクミュージックなどが強化されただけでなく、レゲェミュージックの大御所レーベルTUFF GONGとの契約も実現。ラジオ局まるごとボブ・マーレイという豪華にも程があるサントラが実現しているのだ。  これらのラジオ局ごとに収録したCDボックスセットが現在も人気があるのも、その選曲の堅実さとセンスの良さにあるのだろう(筆者個人としては『GTA:SA』のサントラはUKチャート寄りの選曲に感じるのだが、やはり開発陣の主要メンバーが英国出身であることに起因しているように思える。北米のディープな黒人ファンク/ソウルを語り出すと長くなるので、ここでは割愛)。
 もちろん声優陣も過去最大規模のキャスティングを実現させている。悪徳警官テンペニー役のサミュエル・L・ジャクソン(かなりのビデオゲームマニアとしても有名)を筆頭に、故クリス・ペン(『カラーズ』の主演がショーン・ペーンであることを知っていればニヤリとするキャスティング)、ライダー役のMCエイト(ライダーの容姿がN.W.Aの故EAZY-Eにクリソツで、それをMCエイトが演じるのはウエストサイドHIP-HOPシーンにおいては非常に重要)、麻薬栽培のエキスパートTRUTHのおやっさんにピーター・フォンダ、シンジケートを仕切る大物政府関係者マイク・トレノ役にジェームズ・ウッズ、そしてロス・サントスの人気ラッパー、MADD DOGG役にアイスT(『カラーズ』の主題歌!そしてBODY COUNT!)、対立ギャングのリーダー、T-BONE メンデス役にキッド・フロスト(LOW RIDER!解らない人は読み飛ばしてもらって結構!) もう、大作映画が1本撮れて、ついでに立派なコンピアルバムが1枚作れるんじゃないかというメンツが、1本のビデオゲームのためだけに集結したのだから、『GTA:SA』の規模が前代未聞であることを、ご理解いただけたかと思う。

 もちろん、ゲームシステム面にも大幅な改良が加えられている。CJには成長システムが採用されており、RPGほど深くはないにせよ、かなりの部分まで鍛えることができる。片手銃器のスキルを極めれば二挺持ちが可能となり、運転技術は教習所に通うことで一気にスキルアップが可能。食事を摂ることで体力が回復するものの、偏ったメシは肥満のもととなり、太り過ぎれば町中で「ヘイ!元気かデブ!」と声をかけられる屈辱の日々。一念発起してボディビルジムに通いマッチョな俺に変身! ついでに格闘技も習得して喧嘩番長を目指すのも悪くない人生だ。小銭が入れば美容院でヘアーをセット! 最高ランクのコーンロウにキメたら、次はオシャレの買い出しだ。街角のチンピラからビジネスマンまで、金さえあれば何でも買える。服でも銃でも、何でもだ。服装によっては加護の効果もあるあたりは、RPGのソレにかなり近い。賭博などのミニゲームによる資金稼ぎや不動産購入、高級車や改造車の収集などを開始すると、もはや終わりは見えなくなってくる。現実の生活におけるストレスと同等の感覚が『GTA:SA』には存在すると感想を述べる者もいるぐらいだ。

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 終わりが見えないといえば、『GTA:SA』のマップの広大さにも触れておかねばいけない。本作のマップはこれまでの“都市”のスケールを大幅に超えた“州”として構成されている。サンアンドレアスとは都市ではなく州の名前であり、州の中にロス・サントス、サン・フェリオ、ラス・ベンチュラスの三都市および山岳地帯、砂漠地帯、沿岸部などで構築。全てのエリアに行き来するためにはストーリーを中盤以降まで進める必要があるが、ストーリーを進めることで多くの条件がアンロックされるシステムであるため、序盤で無秩序な殺害を楽しんでいるだけでは到達できない仕様になっているあたりは、非常に巧みなゲームデザインといえる。
 マップに関しては『GTA:バイスシティ』の時点では、『GTAIII』の続編というよりマップ変更によるバージョンアップ作品のイメージが強かったものの、『GTA:SA』は完全リニューアルによってマップシステム全体に大胆な仕様変更が目立つのだ。特にマップの描画エンジンには注目である。前作までは短いながらもエリア移動時に読み込み画面に切り替わることを余儀なくされていたが、新たに開発した描画エンジンの適用により『GTA:SA』からその問題は解消され、広大なエリアが全てシームレスで接続する完璧なオープンワールドの世界が実現した(そのかわり建造物に進入する際にはロードが必要になった)。今では当たり前の3Dシームレスマップだが、実は本家GTAシリーズですら、実現したのは『GTA:SA』からだったのは意外に思うだろう。全ては日進月歩の積み重ね、基礎技術の改良と研鑽によって得られるのだ。適当な予算で手軽に続編を送り出すのではく、納得いくまでじっくり研究して完璧な作品を送り出そうとする姿勢こそ、R★のゲームがアート作品である所以だ。単なる“ビデオゲーム”ではなく、“ビデオゲーム”を使って表現できる限界に挑戦することが大事なのだ。

 しかし、その挑戦が、『GTA:SA』を思わぬ方向に導いていく。次回後編は、本作が残した大きすぎる社会的影響、功罪とも呼べる負の要素と遅れに遅れた日本版リリース、懸案の“熱いコーヒー”問題など、切り込める限り突っ込んでいく所存なので、次回最終回にご期待ください!

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