『GTAV』デモリポート システム編
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『GTAV』デモリポート “Blitz Play”編
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『GTAV』カバーアートが公開
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『グランド・セフト・オートV』初のゲームプレイ映像が公開!
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Grand Theft Auto
マックスペイン3
『グランド・セフト・オート:バイスシティ』10周年記念盤トレーラー
ROCKSTAR HISTORIA Vol.16:『GRAND THEFT AUTO:VICE CITY』(後編)〜そして世界は完成された……!
Mercedes

Text by Mask de UH

 お盆を挟んで久しぶりの更新となってしまったが、『GTA:バイスシティ(以下、『GTA:VC』)』を十年ぶりに語り尽くす後編の登場である。前回は、本作がもたらした最も革命的な仕様、即ち現実のアーティストによるヒット曲を惜しげもなく使ったサントラについて語った。それはビデオゲームが初めて経験する本格的なサブカルチャーのクロスオーバーであり、時代や人々の趣向を示すツールとしての音楽のポテンシャルの高さを改めて我々に示してくれた。
 ヒット曲を寄せ集めた安価なコンピCDを聴くより、同じ時代の空気、文化、風俗まで同時に楽しめる『GTA:VC』は、まさしく新時代の娯楽作品に相応しいといえる。そして、音楽のもたらす効果の重要性もさることながら、本作は往年のアクション映画にも多大なるリスペクトを捧げている。
 「映画のようなゲーム」を作り上げるのは、海外メーカーの目指すデジタルエンターティメントの最終目標として、テレビゲーム誕生時から指針に掲げられている。しかし現実に作り上げるのは意外と難しく、ゲームの目的がレースかアクションか、もしくは銃撃戦なのかとジャンル分けされた状態が普通だった。しかし、オープンワールドという新たな武器を手に入れた『GTA:VC』は、ジャンルの壁をいとも簡単に破り、あらゆる映画的な内容のミッションをゲームデザインに盛り込んだのだ。



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 例えば、ゲーム開始序盤のミッションにある「借金取り立て」の場合、まず取り立て相手のいる家にクルマで向かい、対面したら喧嘩になり、今度はチェーンソーを持って走って追跡する。
 行為の1つ1つはレースゲームであり、アドベンチャーであり、アクションゲームとなるが、全部が同時に楽しめるのは、オープンワールド以外のジャンルでは難しいだろう。そしてもちろんこの「借金取り立て」ミッションはアル・パチーノ主演、ブライアン・デ・パルマ監督によるギャング映画の金字塔『スカーフェイス』の有名なエピソードが元ネタとなっている。
 『スカーフェイス』はキューバからマイアミにやって来た不法移民のトニー・モンタナが、町のチンピラからコカインギャングの総帥にまで登り詰め、破滅する人生を3時間超の長尺で追体験させる物語だが、『GTA:VC』のストーリーラインは、この『スカーフェイス』をベースに、同時代に公開された様々なギャング映画、アクション映画のシークエンスを加えたスタイルで構成されている。

 特に『スカーフェイス』と並ぶ大きな元ネタ『特捜刑事マイアミ・バイス』の存在は絶対に外せない。ソデをまくったパステルカラーのジャケットにサングラス姿という、いかにも80年代なファッションに身を包んだドン・ジョンソンと、相棒のフィリップ・マイケル・トーマスが繰り広げるリゾート地マイアミを舞台にした刑事アクションドラマであり、1984年から1989年までシーズン5も続いた名作としても名高い『マイアミ・バイス』が『GTA:VC』に与えた影響は計り知れない。もう、ゲームのタイトルからしてモロに影響下にあるのは明白だが、ついでに言及するならフィリップ・マイケル・トーマスは声優として『GTA:VC』に参加している。しかも主人公トニー・ベルセッティの相棒ランスの役で!!

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▲これは2006年に発売された『Scarface: The World is Yours』。R★のタイトルではないが、シネマゲーム史、クライムゲーム史を考える上では重要なタイトルだ。開発したRadical Entertainmentは後に、『GTA』スタイルのオープンワールドアクションを、超人と怪物が激突する世紀末的状況へとシフトさせた大虐殺ゲーム『Prototype』を生み出す。

 マイケル・ジャクソンに始まり、『スカーフェイス』に『マイアミ・バイス』と畳み掛け、警察腐敗を描いた『コップランド』や、ポルノ映画業界の内幕を描いた『ブギーナイツ』、チーチ&チョンのドラッグコメディ映画『気分は最高』など通好みのシークエンスが続々と展開し、最終的にはホッケーマスクの怪人まで登場してしまう『GTA:VC』では、映画の元ネタのみならず、前述のフィリップ・マイケル・トーマスのように俳優による声の出演も爆発的に増えた(もともと洋ゲーでは映画俳優が声優を担当する傾向が強い)。主人公トニー・ベルセッティのレイ・リオッタを筆頭に、ダニー・トレホ、デニス・ホッパー、バート・レイノルズ、そしてXXXハードコア女優のジェナ・ジェームソンと、実際に映画を撮るとしても一同に集めるのは困難なメンツが、このゲームのために揃いに揃っている事実は衝撃的だ。
 R★はプロモーションにおいては「声優推し」には積極的でない(あくまでゲームの一部分に過ぎず、声優がゲームの根幹ではないという考え方から)ために、この豪華キャストは真剣に取扱説明書を読まないと気がつかないのだが、かつてこれほどまでに映画、音楽、俳優、文化がクロスオーバーしたビデオゲームタイトルが存在しただろうか? という話である。ゲームを起動すると流れるバグルスのヒットナンバー『ラジオスターの悲劇』は、プロモビデオの登場により時代の流れによって廃れるラジオ文化の悲劇を歌った名曲だが、これは本当に象徴的である。ビデオゲームは……否、『GTA:VC』は、次の世代をエンターティメントとは何かを示し、映画やテレビを殺したのだ。しかも、ただ単に葬ったのではなく、自分たちを育んでくれた文化に対して最上級のリスペクトを捧げた。筆者自身が、このビデオゲームに殺されたといえる。この味を知ってしまったら、もう後戻りはできないからだ。ハマった人なら、その意味がわかるはずだ。


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Photo by Mask de UH

 サブカルチャーのクロスオーバーが究極レベルまで達した『GTA:VC』は、前作を軽く超えるギネス級のヒットを飛ばし、ゲーマー人口のみならずゲームに関係ない一般社会にまで衝撃を与えた。衝撃の多くは文化的な素晴らしさではなく、その危険な描写に集中しており、大人向けのビデオゲーム市場が、どのような形であるべきかの議論を呼ぶことになる(ちなみに日本は『GTA:VC』ではZ指定論争は起きていないが、露骨な残虐描写やセクシャルな表現に関しては、慣例通りの修正が加えられて無事発売された)。それを象徴する1枚の写真があるので、紹介したい。

 筆者が2003年のE3に取材で訪れた時に、NINTENDO OF AMERICAのプレスカンファレンスにて撮影した写真である(会場はハリウッドのコダック・シアター)。前年に発売された『GTA:VC』が記録的なセールスを叩き出し、今後のゲームはどうあるべきかをNINTENDOが非常に憂慮していた事実を物語る1枚といえるだろう。もちろん、任天堂ハードにはGTAシリーズは一部例外を除いて供給されていない。このカンファレンスにおいても、『GTA:VC』の写真がスクリーンに映しだされると、「NINTENDOは刺激的でバイオレンスなゲームは作らない」と宣言。今後もスタンスを崩さず家族全員が楽しめるゲームを作り続けるという意味だが、もともとGTAシリーズは「家族向けで完成度が高い日本製のゲーム」に対抗するために作られたものだからして、このNINTENDO OF AMERICAの反応は当然かもしれない(ちなみにR★はWii向けに『Manhunt 2』をリリースするなど、独自の距離を保っている)。世にも珍しい写真だが、この1枚に『GTA:VC』がどれほど社会に、そしてゲーム市場に影響を与えたかを物語っている。世界が変わった瞬間だった。

 そしてこの後、GTAシリーズおよびR★には、栄光と苦難が混在するアグレッシヴな黄金時代へと突入するのだが、それはまだ先の話。次回更新では怒濤のリリースによってブランドイメージを決定づけるR★の戦略と、過激さの一途を辿るゲームタイトルの特徴を中心に、2000年代前半のR★を包括的に語りたい。
 ネタはもちろん「人間狩り」だ!
 THE COMESの名曲をBGMに次回更新を刮目して待て!

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