『GTAV』デモリポート システム編
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『GTAV』デモリポート “Blitz Play”編
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『GTAV』カバーアートが公開
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『グランド・セフト・オートV』初のゲームプレイ映像が公開!
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ROCKSTAR HISTORIA Vol.13:『GRAND THEFT AUTO III』(前編)〜それは、ビデオゲームの在り方を変えた
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▲ついに連載もいよいよ本番、『GTA3』からの三部作に突入! ここまでのシリーズはこれを語るための予習編と言っても過言ではない。

Text by Mask de UH

 遂にというか、やっとというか、この連載で『グランド・セフト・オートIII』(以下、『GTAIII』)を取り上げる機会が訪れてしまった。『GTAIII』が市場にドロップされてから十年の月日が経過した今、改めて『GTAIII』という怪物的タイトルをテーマに原稿が執筆できることを素直に喜びつつ、『GTAIII』が如何にビデオゲーム史上に多大なる影響を与えたかについて、満を持しての前後編で語り尽くしたい。実際のところ、筆者も『GTAIII』そのものに関して論説を発表するのは十年ぶりなのだが、十年前に受けたアノ衝撃は、昨日のことのように鮮明に思い出せる。それほどに、ショックだったのだ。

 いかにして筆者が『GTAIII』に出会ったか? そこに至るまでの流れを説明するので、私事ながらお付き合い願いたい。『GTAIII』の発売を知ったのは、2001年度に開催されたE3の出展タイトル映像が収録されたUK版のゲーム雑誌だった。
 たしか、同年の夏前に銀座の洋書店で購入したと記憶するが、もしかしたら渋谷のタワーブックスだったかもしれない。当時の目当ては記事よりもDVD。UKの雑誌なのでPAL版だったが、そこにはE3にてお披露目された『GTAIII』の初プレイ動画が収録されていたのである。

 Youtubeも無く、ネット環境は現在とは比較にならないほど貧弱だった時代、海の向こうで公開されたゲームの新作映像など、よっぽどメジャーなタイトルでない限り、日本国内で公開されることは無かった時代の話である。洋ゲー道を追求する者にとっては受難の時代でもあり、高額な輸入ソフト、リージョンの問題、慢性的な情報不足などなど、何かにつけて苦労を強いられるアンダーグラウンド極まりない世界だった。本当に本当に、今は恵まれた時代になったと実感する次第で、感無量である。

 何冊か購入した洋ゲー雑誌を自宅に持ち帰り、リージョンフリーのDVDプレイヤーで早速再生すると、そこにはまだ開発段階で荒々しい画面ではあるものの、現在よく知られている『GTAIII』と全く同じように動くトレイラー映像が約3分収録されていた。今でこそ見慣れているオープンワールドも、初見で見せつけられた衝撃は計り知れず、正直「一体何がどういうゲームシステムなのか?」、即座には理解できなかったほどだった。



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 何しろ似たようなゲームが何一つ思い浮かばないのだ。念のため、『GTAIII』以前のオープンワールドを巡る歴史について補足しておくと、既に日本には『シェンムー』があり、オープンワールドといえば『シェンムー』における自由度が、日本市場におけるオープンワールドへの上限レベルと思われていた。
 『シェンムー』の何が凄かったかといえば、およそミッションに関係のないアパートの裏庭や蕎麦屋の路地裏、公園の遊具などが完璧に作り込まれていたことであり、3Dとはいえ、ステージクリア型のアクションゲームが主流の時代に、ミッションに直接関係のない行動をとってもペナルティの無い(厳密にいえば、ある)ゲームデザインは野心的すぎたともいえる。


 実際のところ、オープンワールドというジャンルへの挑戦自体は、既にPS1、NINTENDO64時代から試験的な導入が始まっていた。筆者的には、『GTAIII』に近い思想で作られたタイトルとしては、『シェンムー』と『ミザーナ・フォールズ』、『DRIVER』の第1作目、そして『ゼルダの伝説・時のオカリナ』辺りが、現代的オープンワールドの始祖である考えている。いずれも、当時はオープンワールドなんてジャンル名すら存在しなかったので、一律で「3D箱庭ゲーム」と括られていたのも懐かしいが、「ロードを介さずに、どこまでも進めるマップ」は、ゲーム開発者たちにとって大きな夢であり、これに対して宮本茂氏、鈴木裕氏といった日本人クリエイターが果敢にも挑戦していった歴史の流れは『GTAIII』誕生に全く無関係ではないと断言できる。洋ゲーでは『DRIVER』が、犯罪者の車両強盗を主人公に3Dマップによるチェイスゲームを実現させていた(ドライバーがクルマから乗降できるわけではなく、あくまでクルマを運転するだけだったので微妙に違う気もするが)。『ミザーナ・フォールズ』は、どちらかといえば『アラン・ウェイク』に近いだろう。こうしてみると、『GTAIII』のオリジナリティは突出している。

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▲『Driver』。最新作『Driver: San Francisco』辺りではヤングに「フーン、要はGTA系っしょ?」と思われがちだったが、実は初代は1999年の発売で、『GTA3』よりも早いのである。

 『GTAIII』が過去の3D箱庭型ゲームと何よりも違った点は、「犯罪者を主人公の座に据えた」ことだろう。そもそも、ビデオゲーム30年の歴史の中で舞台設定が現代社会で犯罪者が主人公のゲームなんてものは希少である。犯罪者を追いかけるゲームはあっても、犯罪者となって逃げ切るゲームは一部のレースゲーム以外ではお目にかかれなかったという歴史の流れは、これまで何度もこの連載で解説している通りである。「警察から逃げる」をゲームデザインに盛り込んだのが『GTA』および『GTA2』であり、培われた思想と積み重ねられた技術的センスが『GTAIII』で結実することになるのである。

 前置きが長くなってしまったが、『GTAIII』の登場は歴史的必然だったことがお分かりいただけたかと思う。ゲーム市場が家族で遊べるファミリーゲームや、小中学生を対象にした冒険アクションばかりが注目されていたゲーム市場に向けて、「大人が本気で遊べるゲーム」として投入されたのが『GTAIII』だったのだ。当然、それまでの健全な市場を支持していた層からは猛烈なバッシングを受け、最終的にはゲームの年齢推奨制度そのものを見直す羽目になってしまうのだが、『GTAIII』で最も多く語られるのは、こういった問題ばかりであり、ゲームそのものの評価は、特殊なゲーム市場が形成されている日本においては今日まで置き去りにされていた感がある。

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 『GTAIII』で評価すべきポイントとは、「完全なる世界の構築」を実現させたことにある。『GTAIII』は架空の都市ではあってもファンタジーの世界ではない。電車やバスやタクシーが走り、様々な人種、階級、思想を持った人々が暮らしている。それが顕著に表れているのが、クルマを盗んだ時である。路上で放り出されてアジトに帰るのが面倒な距離、そんなことよくありますよね? とりあえず信号待ちしてるクルマを奪って帰宅すると、カーラジオは上品なジャズが流れてくる。「そういえば、運転してたのは上品そうな老夫婦だったなぁ、ジャズ好きなんかな〜」なんて盗人の分際で思いを馳せてしまうこともあれば、道路がツギハギだらけの下町エリアで奪ったボロいトラックのラジオはレゲェ全開。クルマを盗んだだけなのに、その持ち主の人種や趣向まで図らずもプロファイリングできてしまうのである。
 他にもポケベルや公衆電話など日用品アイテムも駆使したり、ポルノショップで待ち合わせなど、およそ他のゲームでは考えられないシチュエーションが飛び出すが、実は現実を生きる大人にとっては日常行為であり、それをゲームに持ち込んだだけに過ぎない。ここに発想の転換があった。  完全な非日常の、SFファンタジーな世界観ではなく、日常の延長をゲームにする。クルマを盗むだけでなく、傷つけずに持ち帰るのも大事だし、信号を律儀に守って運転することが、無法を犯すより難しいことに気付いた時、『GTAIII』の目指した地平が理解できた気がした。

 プレイヤーはゲームの中で「超人になる」のではなく、「自由になる」のだと。

 自由度なんて言葉で表現できる、リアクションの自由ではない。プレイヤーが、あらゆる制約から解放される自由なのである。ストーリーを進める、進めないなど瑣末なことで、『GTAIII』とは、リバティーシティという都市をしゃぶり尽くせるか、どこまで遊び倒すことができるかをプレイヤーに課した、R★からの挑戦状であり、完全なる世界の構築を実現させたからこその挑戦なのである。

 さて、次回更新では、グッと踏み込んで『GTAIII』の中で再現された、社会構造の真実について迫ってみたい。英雄ではなくマイノリティが主人公なのは何故なのか? アメリカ合衆国の抱える人種コミュニティの問題にも鋭く切り込んでいる『GTAIII』の周辺文化を知れば、また新鮮な気持ちでプレイできる。今ならiPhone/iPad対応の『GTAIII:10周年記念版』が絶賛ダウンロード販売中! 10年の時を経てグラフィックも生まれ変わった『GTAIII』をプレイしながら、来たるべき『GTAV』に備えるのだ!


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