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ROCKSTAR HISTORIA Vol.6『State of Emergency』

Text by Mask de UH

 ROCKSTAR GAMESの過去タイトルを振り返る中で、最も過激なタイトルといえば何だろうか? この問いかけに、読者諸兄の大半は『MANHUNT』と答えるだろう。確かにアレは過激だ。過剰ともいえる暴力を伴う、世界で最も残虐な結果をもたらすアクションゲームだと、40歳過ぎの中年男の笑顔で断言できるだろう。しかし、残念ながら答えとしては半分しか合っていない。そして、『MANHUNT』を語るのは、まだ時系列的に早過ぎるのだ。

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▲デストラクション! 走って逃げる人々、パクって逃げる人々、誰も彼もが叫び走る阿鼻叫喚の図。かのロス暴動は1992年に起こっている。

 『STATE OF EMERGENCY』(以下、『SoE』)は、2002年にプレイステーション2、次いでXbox&PCでリリースされたアクションゲームであり、時系列的には『GTAIII』と、ほぼ同時(数ヶ月後)に登場したクライム・バイオレンス。日本未発売のうえに、まだ日本では『GTAIII』の存在すら一部の洋ゲー好きにしか知られていなかった頃の発売だったため、他のタイトルと比べると知名度が低い。だが、その凄まじいまでにバイオレントな、それでいてどこかファニーな内容は、発売当時は海外市場に衝撃を与えた。その余りに過剰な暴力描写のために、そして『GTAIII』発売直後のタイトルであることも手伝い、パッケージには異例ともいえる「購入の際には身分証明書の掲示を義務付ける」という主旨のステッカーが貼られたほどなのだから、その内容は推して知るべし、なのだ。

 推して知るべしといっても、知らない人には当然その中身は想像つかないだろうから、ここは筆者がしっかり解説せねばなるまいが、実際のところ内容は至って単純。ズバリ言い切ってしまえば、『SoE』は<暴動を誘発するゲーム>である。腐敗した政治によって完全な管理社会と化した架空の都市を舞台に、プレイヤーは<アロハシャツのマック>、<B-BOYのスパンキー>、<女ソルジャーのリベラ>などのキャラクターから1人を選び、街に繰り出して武器を使い、あらゆるものを破壊して市民に混乱を与えて暴動を煽動させるのが目的となる。



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▲警官に火炎放射器を発射! ウルトラバイオレンス&アナーキー。

 具体的には、火炎瓶やグレネードなどで商店や車両を破壊し、周囲に点在するオブジェクト(ベンチやゴミ箱)を振り回し、その行為によって逃げ惑う市民を増加させてケイオス(混沌)メーターを上昇させるのが目的となる。混沌レベルが上がれば、腐敗した政府が派遣した警察組織による鎮圧部隊がフィールド上に出現。鎮圧に負けじとマップ内の特定箇所に置かれている武器を入手して警察を駆逐し、更に混沌レベルを上げるという流れとなっている。
 こう書くと何だか難しそうだが、ゲームプレイは単純明快で、とにかくひたすら暴れに暴れていればOK。誤って市民を傷つけると些少ながらペナルティを受けることになるが、ゲーム進行に問題が出るレベルではないので気にしないでOK。多少の巻き添えはしかたがないとばかりに、マシンガンを街中で乱射! バズーカーで機動隊を一網打尽! 倒れた相手にショットガンでトドメ! などなど、やりたい放題のハードコアな暴力が、ほぼ制限無く味わえるのが本作における最大の魅力であり、GTAとは一味違う自由度でプレイヤーを非日常的空間に放り込んでくれるのだ。

 しかし、マップはオープンワールドというほど広くはなく、クルマに乗ることもできない(破壊は可能)。キャラクターモデリングもリアル指向ではなく、どこかコミックタッチにデフォルメされているので、不思議と罪悪感はあまり感じない(編集部注:感想には個人差があります)。あくまで敵は腐敗しきった官僚と警察で、最終目的が「国家の転覆」させることなのは明確すぎる方向性といえるだろうし、このようなコンセプトで作られたゲームを筆者は他に知らない……いや、もしかするとこれはファミコンの名作暴動ゲー『いっき』に対するR★からの海を越えた返答なのかもしれない(編集部注:絶対違うと思います!)。

 そんな与太妄想はともかく、『SoE』で体験できる過剰なバイオレンスは、他のR★作品とは一線を画している。とにかく全ての破壊行為がイージーであり、非常事態宣言状態であるからして、何をしても怒られないし捕まらない。従来であれば 警官に抵抗を試み、スキあらば逃走して逮捕から逃れる必要もなく、むしろ警官を発見したら積極的に攻撃を仕掛けるべしという、大胆にも程があるゲームデザインには感服するしかない。  惜しむべくは直近でリリースされたばかりの『GTAIII』に話題を奪われてしまったこと。そして、2004年に発売された続編がR★の手を離れた挙句、デベロッパーも変更され、前作とは全く違うゲームになってしまったことだろうか。

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▲その続編。日本ではスパイクから『ステート・オブ・エマージェンシー リベンジ』として発売されている。ちなみに仕上がりがどうだったかは聞かないでほしい。

 最後に『SoE』が生まれた文化・社会的背景にも触れておこう。日本に住んでいる限りでは、街を破壊するような大規模な暴動は1970年代初頭を境に完全に鎮圧されたので馴染みがないだろうが、海外では通年どこかの国で必ず暴動が発生している。
 特にアメリカ合衆国では、人種差別や経済格差といった深刻なものから、バスケチームが地元で勝ったので目出たいという阪神タイガース優勝的なものまで、幅広い理由で暴動が頻発している。(編集部注:数年前のE3がレイカーズの優勝と被り、各方面で大変なことになった人がいたのも記憶に新しい)
 R★のクリエイターたちを輩出した大英帝国もまた、アイルランド問題や貧富の差まで様々な理由でしょっちゅう暴動が発生している。昨年起きた中産階級の若者たちによるロンドン大暴動は記憶に新しいところだろう。また、フットボールの試合でフーリガンたちが大暴れする様を海外ニュースなどで知る人も多いだろう。かの国では、暴動は遠い昔の記憶ではなく、隣り合わせにいる状況なのだ。ちなみにR★は、フーリガンをテーマにした英国映画『フットボールファクトリー』(DVDはジェネオン エンタテインメントから2006年に発売)にも製作で参加していたりする。

 社会に蔓延する不満や不穏な空気、先の見えない生活、失業による貧困層の拡大、無能な政府……。人間の心の底に渦巻く暗黒面に、ちょっとしたキッカケで放り込まれた種火が、最終的には街を焼き尽くす。『SoE』は、そんな暗黒面を スムーズに引き出し、爆発した思いの丈をぶつけることが可能な暴動シミュレーターであり、現実にやりたくても叶わない行為を実現させるという意味においては、実にゲームらしいゲームだといえる。そして、今の日本にこそ、『SoE』が必要なのではないかと真剣に思う次第である。

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