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【MHX】新橋のドスマッカォ

 拙著『逆鱗日和』シリーズを読み返してみると、初期のころのエッセイと最近のエッセイとで、明らかな違いがあることに気づく。それはそのものズバリ“文章量”で、1話に費やす文字の数が、昔と最近を比べると倍〜2.5倍くらいになっているのである。

 これは“読み応え”という点では、明らかに後期のエッセイのほうが勝っている。しかしこれは裏を返せば、冗長、ダラダラ、文字数稼ぎ、単行本になったときのことを考えすぎ……などなど実務的な理由がチラチラと見え隠れして、あまり美しくない。ていうかぶっちゃけ、あまり読みやすくない。最近のエッセイを中編のギャグマンガとするなら、初期の『逆鱗日和』に載っているプレイ日記は完全に4コママンガの世界で、

「起承転結があれば、それでいい!!」

 と、書いていた本人(俺だけど)も思っていたのである。
 
「ひとつのあるあるネタだけでコンパクトにまとめた、『逆鱗日和』黎明期のようなプレイ日記を書いてみたいなぁ……」

『モンハン』は『モンスターハンタークロス』の登場で新境地を開いた。ならば俺はこれを機に原点に戻り、駆け出しの記者だった“あのころ”を思い出して、手のひらに収まるような小気味いいエッセイを書いていこう!

 というわけでネタによるとは思いますが、なるべくコンパクトで読みやすいプレイ日記を心掛けようと思います。

 ……って、こういうことを書いているから、無駄に長くなるんだよな(苦笑)。

 さて。

 ここのところ毎晩のようにオンライン集会所に出没しては、同僚のたっちーとふたりで序盤の軽めの狩猟に精を出している。武器は、俺がナントカのひとつ覚えのガンランスで、たっちーが操虫棍。狩猟スタイルについては俺はブシドーで固まったが、たっちーは、

攻撃が当たるのは、どのスタイルだろう……」

 と、スタイルどうこうではなくオノレのプレイスキルに問題がある発言をしていたので、

「とりあえず、従来の立ち回りといちばん近いギルドスタイルでやってみなよ」

 とアドバイスをし、しばらくはブシドー・ガンランス×ギルド・操虫棍の組み合わせで狩りをすることになったのだった。

 そんなある日。

 『モンハンクロス』からの新モンスター、ドスマッカォの討伐に行くことになった。……そう、体験版でも討伐対象だった、“赤ら顔のハイジャンパー”ことドスマッカオである。べつにコイツの素材が欲しかったわけではなく、たっちーが相変わらず「攻撃が当たらないお!! かつての狩猟勘が、戻ってこないお!!」とやかましいので、「んじゃ、トリッキーな動きをするドスマッカォで練習せい。ワシは採集してるから」と言い捨てて、古代林に連れ出したわけだ。
  
 ところで、ぜんぜん話が変わるのだが、我がカドカワ(株)は現在、東銀座にオフィスを構えている。……ザギンですよザギン! ザギンでシースー食ってシータクで朝帰りですよ!!(できるわけねーけどな!)

 この東銀座という土地はなかなか交通の便がよくて、歩いて銀座のど真ん中はもちろん、サラリーマンの魔境と言われる有楽町や新橋にも歩いて行くことができる。このあたりは日本でも有数の飲み屋街なので酒飲みにとっては天国で(地獄をみている人もいるけど)、飲みの帰りに新橋駅前のSL広場でテレビ番組のコメント取りをされている人をよく見かけたりもする。そういう土地なので、お酒をたしなむ俺からしてもこのへんはパラダイスで、気の置けない仲間やクリエイターさんと毎晩のようにフラフラしているのだ。いやあ、いいところに会社が移転してくれたものだなぁ^^

 ……話が逸れたように見せかけて、じつは想定内の展開なのでご安心あれ。

 先日、いつものように仲間と新橋でお酒を飲み、駅の近くまで歩いてきたところで、ドリフの舞台から抜け出してきたかのような、見事なまでの酔っ払い軍団と出くわした。男性4名の男臭いパーティー(?)で、おっさんたちは全員が熟した柿のような赤い顔。加えてフラフラの千鳥足だったが、いいことでもあったのか、全員が大声で笑いあっていた。

 そんな彼らを、ちょうど信号待ちだったのでなんとなく眺めていると、もっとも年配と見られるおっさんがふいに、

「×※α%は△ωθ#$だなぁ!!^^」

 なんて、竜言語もかくやという不明瞭な言葉を放ち、そして酔っ払いとは思えないバネでビョンと跳ねて、いっしょにいた仲間の男性に抱きつこうとした。その赤ら顔と、アスリートを思わせるその場ジャンプはどっからどう見てもドスマッカォで、思わず心の中で、

(ドスマッカォは……こういうシチュエーションをモチーフに生まれたのだろうか……? “ドス真っ赤男”なんつってw)

 なんて考えてしまったほどだ。

 ちなみにこのとき、抱きつかれそうになった男性の動きはすばらしく、驚異のバネで急接近してきたドスマッカォおじさんを華麗にかわし、サッと他の男性の背後に回り込んだのである。その様子を、交差点を渡りながら見ていた俺は静かに思った。

(ジャスト回避だ……!!)

 と。きっとあの男性は、名のあるハンターだったに違いない。

 なお、標的を見失ったドスマッカォおじさんは他の仲間に支えられ、相変わらず「$#@*▲□ηβだなぁ!!^^」とゴキゲンに泥酔語を操っていた。このへんのしぶとさも、いかにもドスマッカォっぽかった。

 さて、俺とたっちーのドスマッカォ討伐は、大きな波乱もなく順調に終わりを迎えた。ただ、トドメを刺した場所がエリアの切れ目にほど近く、慎重に剥ぎ取りを行わないとすぐにエリアチェンジしてしまう。まあ、こんなことはモンハンをやっていれば日常茶飯事なので、俺は「ゆっくり、ゆっくりと……」と口に出して言いながら無事に3回の剥ぎ取りを行ったのだった。

 問題は、たっちーのほうだった。見ると彼女は、ドスマッカォの亡き骸に近づいたかと思ったら隣のエリアに移動し、慌てて引き返してきたかと思ったら再び隣のエリアに移動し……という、見ているこっちの背筋がむず痒くなる行動をくり返しているではないか。ドスマッカォの亡き骸を足元に、パッパッパッパッ……とワープをくり返すたっちー。そうこうしているうちに、ついにクエストは終了となってしまった。

 かつての自分も通ってきた、モンハンの原風景のようなマヌケな姿……。その様子を見て、俺は懐かしさを覚えると同時に「あははははははは!!!」と腹を抱えて笑ったのだった。

 村に戻ってくると、開口一番たっちーはつぎのように泣き喚いた。 

やばおぉぉぉぉぉおおお!!!! 剥げねえええええ!!!! わ、ワシの素材がああぁぁぁぁぁあ!!!!!」

 シミジミと、俺は思った。

(ドスマッカォって、やっぱりしぶといなぁ……www)

 ただでは斃れないその姿に、俺は新橋のドスマッカォおじさんの姿を重ね合わせていたのだった。

 おしまい。

投稿者 大塚角満 : 15:36

大塚角満

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週刊ファミ通副編集長にして、ファミ通グループのニュース担当責任者。群馬県出身。現在、週刊ファミ通誌上で“大塚角満のモンハン研究所”というコラムを連載中。そこら中に書き散らした『モンハン』がらみのエッセイをまとめた単行本『本日も逆鱗日和』シリーズ(4巻)が発売中。また、そこからのスピンオフとして別の視点から『モンハン』の魅力に迫る書き下ろし作品『別冊『逆鱗日和』 角満式モンハン学』シリーズも。このブログではさまざまなゲーム関連の話題を扱うつもり。一応、そのつもり。


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