大塚角満の ゲームを“読む!”
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ザザミ装備を完成させた同僚の美人ドSゲーマー・Tさんこと“たっちー”は、すっかり意気軒昂となった。つぎの日、オンライン集会所に入っていくとすでにクエストが貼ってあり、たっちーは俺の姿を見た瞬間につぎのように吠えたのだ。
「遅い!!! ホレ、行くぞ!!! ドドブラの緊急や!!!」
そう、我らふたりは『モンハンクロス』を発売日に手に入れて2週間以上遊んでいたにも関わらず、このときまだハンターランクは“1”だった。まあ今回は過去作にも増してノンビリ気分で、それこそ1年以上かけて遊んでいこうと思っていたので、自分の成長スピードはあまり気にしていない。……しかし改めて“2週間経ってもハンターランク1”という現実と向き合うとジクジクと焦り汁みたいなものがにじみ出てきて、あまりいい気持ちはしなかった。加えて★1のクエストだと出会うモンスターも集められる素材も本当に限定されるので、武器や防具の選択肢も広がらない。
「ここは早急に、ハンターランク2にならなくてはっ!!!」
しばらく前からコレが、我らドタバタコンビの共通見解となっていたのである。
というわけで、たっちーの緊急クエストであるドドブランゴ討伐に出掛けてきた。彼女が早々にハットトリック(3オチのこと)を喫し、ザザミ装備を作らざるを得なくなった、因縁のクエストである。が、堅いザザミ装備に守られたたっちーは自信満々の面持ちで、すっかり上から目線になって、ナメ腐ったことを俺にほざく。
「もうワシ、オチることはないと思うで! きっちりとザザミ装備に投資したからな!! 問題はオメーだ!! いまだにケチって初期装備だけど、もしもそのせいでクエストに失敗したら、ケルビの装備でもなんでも作らせるからな!!!」
ケルビ装備なんてものがあるのかどうか知らないが、そんなことになったら末代までの恥である。
「ドドブラ相手に、俺がオチるわけねーだろ!!!w さあ、いくぞ!!」
こうして我々は、雪山の人となったのであった。
しかし改めてこのクエストで、我々は防具の大切さを教えてもらうことになる。ハットトリックをしたときと同じようにたっちーはドドブランゴの攻撃を喰らいまくってはいたのだが明らかにダメージ量が減っていて、回復薬の消費も格段に抑えられている様子。これにより“対等以上に渡り合えている”という自信が生まれ、より果敢にドドブランゴとの距離を縮めることに成功していた。
その結果見事、一度もオチることなく討伐成功!! たっちーがガーガーとがなった。
「おっしゃ!!! おつぎはキミの緊急や!!」
さらに続ける。
「でもその前に、ちょっとくらい防具を作ったほうがいいんじゃない?w けっこう削られてたっぽいけどw」
俺は笑い飛ばした。
「ふふんw まあ多少は攻撃喰らったけど、我がブシドースタイルにはジャストガードがあるからな! こいつを完璧に使いこなせたら、防具どころか回復系アイテムもいらなくなるわwww なので、余裕だよwww」
そして、俺の緊急クエストが始まった。たっちーはこのときも絶好調で、たびたびドドブランゴに乗っては倒し、着実にダメージを与え続けている。しかし元気がよすぎて手数が余り、頻繁に俺に操虫棍の切っ先を突き刺してくるではないか。すると俺、思わずたっちーの攻撃をジャストガードで受けてしまい、ドドブランゴの目の前でヒラリヒラリとガンランスの舞を踊ってしまう。そして都合が悪いことにダンスの終わり際に思いっきりドドブランゴのブレスが当たり、俺は当然雪だるま。
「あっ!!!!!!」
と思ったときにはすでに遅く、そのままラリアットを喰らって昇天させられてしまった。「余裕wwww」と吹かした、わずか7分後の出来事であった。
「ちんだwwwwwwww」
すかさずたっちーからSkypeが送られてくる。うるせー! 誰のせいだ誰の!!
それでも気を取り直し、再びドドブランゴの元へ。なんだかんだ動きは知り尽くしているので、落ち着いてさえいればそうそう致命傷を負うこともない。要所要所でフルバースト、竜撃砲、そして覇山竜撃砲を使い分け、火と文明の恐怖を白いお猿に植えつけてやる。うん、いいぞ! このままいけそうだ!!
しかしそう思ったのも束の間、たびたび召喚されるブランゴどもに小突かれたり、躓かされたりしているうちに、思いも寄らぬピヨピヨ(気絶)状態に!
「あっっっ!!!!!!!」
と思ったときにはすでに遅く、そのままドドブランゴのラリアットを喰らって昇天させられてしまった。1オチしてから、5分後の出来事であった。
「ちょっとwwwwww ホントに何やってんのwwwww」
すかさずたっちーからのSkype。いよいよ後がなくなったが、じつはドドブランゴのほうも青色吐息で、脚を引き摺り始めていたのである。……あと数発! あと数分攻撃を入れれば、間違いなく討伐することができるのだ!!
「よし!! こっからは本気だ!!! 俺の覇山竜撃砲でケリつけてやる!!!」
キャンプを出るや、俺は一目散にエリア3に向かった。自分の緊急クエストである以上、トドメは自分で刺したいからな!!
そして……。
ドドブランゴが寝てからエリア3に入ったなら、きっと違う結果になっていたのだろう。しかし今回、俺が到着したときにはドドブランゴは怒り状態で大暴れしており、狭いエリア3に裸(初期装備)では手に負えるものではなく……。
「あっっっ!!!!!!!」
と思ったときにはすでに遅く、そのままドドブランゴのラリアッ(以下略)。
なんと、まさかのハットトリック……。ジンオウガでも、ゴア・マガラでも、4種の新看板モンスターでもない、最初の緊急クエストの相手であるドドブランゴに屈辱の3オチを喰らうなんて…………。
集会所に戻ってきたときの、たっちーの第一声が↓こちら。
前回のコラムで予言(?)した、
“これでもしも俺が、つぎのドドブランゴ討伐で1オチでもしたら……一生言われるんだろうなぁ”
↑コレの通りになってしまいました……。
『モンスターハンター』はどの作品もそうだが、序盤の序盤に必ず、どんなハンターでもぶち当たる分岐点のようなものがある。それはズバリ、
“どの段階で防具を作るか?”
という生産ロードマップの問題で(なんかかっこいい)、「デザインが好みじゃないけど、取り急ぎクック装備でも作るかな……」、「レウスまでがんばる><」、「上位になるまで何も作らない!><」なんて思い悩んだこと、誰でも一度はあるのではなかろうか。
このたび『モンハンクロス』においても、まるで息をするかのごとく当然の成り行きでこの分岐点に差し掛かった。ある日、集会所の最初の緊急クエスト、ドドブランゴ討伐に出向いたとき、相棒のたっちーが震え声でこんなことを言ってきたのだ。
「あ、あの……! こ、このおサルさん……こんなに攻撃力ありましたっけ?((((( ;゚Д゚)))))」
クエスト開始から10分。すでにたっちーが2オチを喫し、我々は崖っぷちまで追い詰められていた。俺は俺で、
「ドドブラなんて物の数ではないと思うが、最初の緊急クエストに敬意を表し、初めて回復薬グレートを作って持っていってやろう^^」
ってんで余裕の体でクエストに臨んだのだが、ひさびさのドドブランゴということもあって攻撃を喰らいまくり、初期装備のペラペラ具合と相俟って、とっくの昔に回復系アイテムを使い果たしていた。けっきょく、その後すぐにたっちーがハットトリックを決めてクエストは失敗となり、我々は茫然自失の状態で村に強制送還されたのである。
雪山から戻るなり、たっちーがわめいた。
「あかん!! いまのままじゃ、これから先に進める気がせん!!>< いい加減、防具を作らな!!!><」
俺はコクンと頷いた。
「確かにこのままじゃ、我々は一生、★1のクエストをやり続けることになりそうだ。さすがにそれはあまりにもアンマリなので、防御力を高めていくことにしよう」
今度はたっちーが頷いた。
「せやな!! ……で、どのあたりの防具がオススメ? 『4G』ではキリンとかレイアにお世話になったけど、それはまだ作れないのかね?」
『モンハンクロス』では一度たりとも出会ったことがないのに、キリンやリオレイアの防具が作れるわけねーだろ。いま我々が作れそうなのって……マッカォとイャンクック、よくても……、
「ダイミョウザザミがいいところだ!! ていうか、ザザミにしようぜ! この段階では防御力は優秀だし、女子のほうはとくにデザインもいいしな!!」
俺の提案を聞いて、たっちーは我が意を得たりとばかりに手を叩いた。
「よし!!! ザザミにしようか!!! アイツはさんざん『4G』のときに狩ったので、手の内はお見通しだしな!! なりよりいま、カニは旬だし!!! 作ろう作ろう!!」
というわけで、真冬のカニ漁……じゃなくて、ダイミョウザザミ素材回収ツアーが始まった。
旧砂漠を舞台にしたダイミョウザザミの討伐クエスト“鉄壁の盾蟹”は、たっちーが豪語した通り、比較的楽にこなせるクエストだった。これまで、エリアルやブシドーといった狩猟スタイルに振り回されてなかなか攻撃を当てることができなかったたっちーも、オーソドックスなギルドスタイルに切り替えてようやく、ひとりの戦力として機能するようになっていたし。逆に、ときたま俺が、
「ジャストガーーーー…………ぐはぁっ!!!!!><」
とジャストガードを狙いすぎて昇天するという本末転倒な立ち回りをしてクエスト失敗になることがあったが、2回、3回とクエストを回すごとにザザミの素材はザックザク。輪島の朝市もかくやという豊漁で、たっちーはひとつ、またひとつとザザミ装備を揃えていった。
そして昨夜、彼女はひとりでコツコツと足りない素材集めに奔走したそうで、ついにザザミ装備のフルセットを完成させたと言うではないか!!
「できたできた!! チアリーダー装備ができあがった〜〜〜!!^^」
たっちーはしばらく、ウレションしそうな勢いで野良犬のように走り回っていた。が、しばらくして「あれ??」と言い、我が分身の前で立ち止まる。そしてしげしげと俺の装備を見つめてから、つぎのように言った。
「ん? キミも早くザザミ装備作ってきなよ。もう素材集まっただろ??」
不思議そうに言うたっちーに、俺は当然の如くつぎのように答えた。
「え???ww なんで俺がザザミwww 作るわけねーだろwww 最初は最低でもリオレウスあたりだわwww だって、素材もゼニーももったいないじゃーーーんwww」
軽薄にそう言った瞬間、俺は人生で初めて死の恐怖を覚えた。しばらく能面のような顔をしていたたっちーの口が耳元まで裂け、ぎざぎざに生えた牙の隙間から二股に分かれた舌をチロチロと出しながら、彼女はつぎのように毒づいたのだ。
「…………ちねッッッ!!!!! ちんでしまえッッッ!!!!!(激怒) オメーがザザミにしようって言ったんだろがッッッ!!!!!」
これでもしも俺が、つぎのドドブランゴ討伐で1オチでもしたら……一生言われるんだろうなぁ。
「カニの呪いだ!!!!! 思い知ったか!!!!」
って。
拙著『逆鱗日和』シリーズを読み返してみると、初期のころのエッセイと最近のエッセイとで、明らかな違いがあることに気づく。それはそのものズバリ“文章量”で、1話に費やす文字の数が、昔と最近を比べると倍〜2.5倍くらいになっているのである。
これは“読み応え”という点では、明らかに後期のエッセイのほうが勝っている。しかしこれは裏を返せば、冗長、ダラダラ、文字数稼ぎ、単行本になったときのことを考えすぎ……などなど実務的な理由がチラチラと見え隠れして、あまり美しくない。ていうかぶっちゃけ、あまり読みやすくない。最近のエッセイを中編のギャグマンガとするなら、初期の『逆鱗日和』に載っているプレイ日記は完全に4コママンガの世界で、
「起承転結があれば、それでいい!!」
と、書いていた本人(俺だけど)も思っていたのである。
「ひとつのあるあるネタだけでコンパクトにまとめた、『逆鱗日和』黎明期のようなプレイ日記を書いてみたいなぁ……」
『モンハン』は『モンスターハンタークロス』の登場で新境地を開いた。ならば俺はこれを機に原点に戻り、駆け出しの記者だった“あのころ”を思い出して、手のひらに収まるような小気味いいエッセイを書いていこう!
というわけでネタによるとは思いますが、なるべくコンパクトで読みやすいプレイ日記を心掛けようと思います。
……って、こういうことを書いているから、無駄に長くなるんだよな(苦笑)。
さて。
ここのところ毎晩のようにオンライン集会所に出没しては、同僚のたっちーとふたりで序盤の軽めの狩猟に精を出している。武器は、俺がナントカのひとつ覚えのガンランスで、たっちーが操虫棍。狩猟スタイルについては俺はブシドーで固まったが、たっちーは、
「攻撃が当たるのは、どのスタイルだろう……」
と、スタイルどうこうではなくオノレのプレイスキルに問題がある発言をしていたので、
「とりあえず、従来の立ち回りといちばん近いギルドスタイルでやってみなよ」
とアドバイスをし、しばらくはブシドー・ガンランス×ギルド・操虫棍の組み合わせで狩りをすることになったのだった。
そんなある日。
『モンハンクロス』からの新モンスター、ドスマッカォの討伐に行くことになった。……そう、体験版でも討伐対象だった、“赤ら顔のハイジャンパー”ことドスマッカオである。べつにコイツの素材が欲しかったわけではなく、たっちーが相変わらず「攻撃が当たらないお!! かつての狩猟勘が、戻ってこないお!!」とやかましいので、「んじゃ、トリッキーな動きをするドスマッカォで練習せい。ワシは採集してるから」と言い捨てて、古代林に連れ出したわけだ。
ところで、ぜんぜん話が変わるのだが、我がカドカワ(株)は現在、東銀座にオフィスを構えている。……ザギンですよザギン! ザギンでシースー食ってシータクで朝帰りですよ!!(できるわけねーけどな!)
この東銀座という土地はなかなか交通の便がよくて、歩いて銀座のど真ん中はもちろん、サラリーマンの魔境と言われる有楽町や新橋にも歩いて行くことができる。このあたりは日本でも有数の飲み屋街なので酒飲みにとっては天国で(地獄をみている人もいるけど)、飲みの帰りに新橋駅前のSL広場でテレビ番組のコメント取りをされている人をよく見かけたりもする。そういう土地なので、お酒をたしなむ俺からしてもこのへんはパラダイスで、気の置けない仲間やクリエイターさんと毎晩のようにフラフラしているのだ。いやあ、いいところに会社が移転してくれたものだなぁ^^
……話が逸れたように見せかけて、じつは想定内の展開なのでご安心あれ。
先日、いつものように仲間と新橋でお酒を飲み、駅の近くまで歩いてきたところで、ドリフの舞台から抜け出してきたかのような、見事なまでの酔っ払い軍団と出くわした。男性4名の男臭いパーティー(?)で、おっさんたちは全員が熟した柿のような赤い顔。加えてフラフラの千鳥足だったが、いいことでもあったのか、全員が大声で笑いあっていた。
そんな彼らを、ちょうど信号待ちだったのでなんとなく眺めていると、もっとも年配と見られるおっさんがふいに、
「×※α%は△ωθ#$だなぁ!!^^」
なんて、竜言語もかくやという不明瞭な言葉を放ち、そして酔っ払いとは思えないバネでビョンと跳ねて、いっしょにいた仲間の男性に抱きつこうとした。その赤ら顔と、アスリートを思わせるその場ジャンプはどっからどう見てもドスマッカォで、思わず心の中で、
(ドスマッカォは……こういうシチュエーションをモチーフに生まれたのだろうか……? “ドス真っ赤男”なんつってw)
なんて考えてしまったほどだ。
ちなみにこのとき、抱きつかれそうになった男性の動きはすばらしく、驚異のバネで急接近してきたドスマッカォおじさんを華麗にかわし、サッと他の男性の背後に回り込んだのである。その様子を、交差点を渡りながら見ていた俺は静かに思った。
(ジャスト回避だ……!!)
と。きっとあの男性は、名のあるハンターだったに違いない。
なお、標的を見失ったドスマッカォおじさんは他の仲間に支えられ、相変わらず「$#@*▲□ηβだなぁ!!^^」とゴキゲンに泥酔語を操っていた。このへんのしぶとさも、いかにもドスマッカォっぽかった。
さて、俺とたっちーのドスマッカォ討伐は、大きな波乱もなく順調に終わりを迎えた。ただ、トドメを刺した場所がエリアの切れ目にほど近く、慎重に剥ぎ取りを行わないとすぐにエリアチェンジしてしまう。まあ、こんなことはモンハンをやっていれば日常茶飯事なので、俺は「ゆっくり、ゆっくりと……」と口に出して言いながら無事に3回の剥ぎ取りを行ったのだった。
問題は、たっちーのほうだった。見ると彼女は、ドスマッカォの亡き骸に近づいたかと思ったら隣のエリアに移動し、慌てて引き返してきたかと思ったら再び隣のエリアに移動し……という、見ているこっちの背筋がむず痒くなる行動をくり返しているではないか。ドスマッカォの亡き骸を足元に、パッパッパッパッ……とワープをくり返すたっちー。そうこうしているうちに、ついにクエストは終了となってしまった。
かつての自分も通ってきた、モンハンの原風景のようなマヌケな姿……。その様子を見て、俺は懐かしさを覚えると同時に「あははははははは!!!」と腹を抱えて笑ったのだった。
村に戻ってくると、開口一番たっちーはつぎのように泣き喚いた。
「やばおぉぉぉぉぉおおお!!!! 剥げねえええええ!!!! わ、ワシの素材がああぁぁぁぁぁあ!!!!!」
シミジミと、俺は思った。
(ドスマッカォって、やっぱりしぶといなぁ……www)
ただでは斃れないその姿に、俺は新橋のドスマッカォおじさんの姿を重ね合わせていたのだった。
おしまい。
ここんとこ立て続けにイレギュラーな仕事やら、会社のなにやらが入ってきてしまって、原稿を書く以前に、まともにゲームで遊べない。『モンハンクロス』も、まだ触りの部分しかプレイできていないのでエラソーなことは書けないのだが(そもそも偉そうなことなんて書けないがw)、ちょっとだけ、どうしても記しておきたいことを。
11月28日の発売日、早朝5時に新宿のビックロに赴いて『モンハンクロス』の発売記念カウントダウンを見守った。そして、関係各位への挨拶もそこそこにイベント会場を後にし、家路の途中にある量販店でも『モンハンクロス』のみ早朝販売をしていたので、そこで無事、ソフトを手に入れることに成功したのでありました。
帰宅したのは、午前9時ごろだった。
まずは、空腹の腹いせに「おんぎゃぁぁぁあ!!! あんぎゃああああ!!」と大音声で鳴き叫びながら足にまとわりついてきた飼いネコのミュウを蹴飛ばし、「ホレ!! 好きなだけ食え!!」と吐き捨てて食器にエサを出してやる。
「にゃわわわわん……!!」
毎度のことだが、歓喜の声を漏らしながらネコメシをがっつくミュウを見て、思わず「バカだなぁ(苦笑)」と呆れ笑いが漏れる。こいつを家に迎えてから18年間、毎日のように展開される朝の風景だ。
俺はその足で、棚の上に置いてある青い箱の前にやってきた。そして箱に向かって「おはよう。『モンハン』の新作買ってきたんだー」と小さな声で報告してから、供えてある手のひらサイズの皿を手に取る。
「いま、水をかえてやるからね」
キッチンに行き、相変わらず「にゃわわわん!!」と鳴きながらエサと格闘しているミュウを横目に、皿の水を交換する。それを再び青い箱にお供えしてから、俺は小さな声でつぶやいた。
「いまから『モンハンクロス』やるんだぞ、アクア」
暗い話になってしまって恐縮だが、俺は今年の6月21日に、溺愛していた愛猫のアクアを病気で亡くしてしまっている。あれから半年近い時が流れ、だいぶ精神的に落ち着いてはきたのだが、ふいに元気だったころのことを思い出して涙が止まらなくなってしまうくらい、心に大きな穴が空いてしまった。なのでいまだにスマホやPCに大量に保存されている写真や動画を見ることができないし、彼女の写真を何枚か掲載している『逆鱗日和』も開けなかったりする。いくら心を強くもとうとしても、こればっかりはどうにもならないのだ。
俺は、アクアが我が家にいてくれた14年のあいだ、あらゆるゲームシーンで彼女の名前を使わせてもらっていた。主人公の名前はもとより、『ドラゴンズドグマ』のポーンもそう、競馬ゲームの馬の名称もそう−−。ネコのような姿をしているオトモアイルーなんて最たるもので、俺は一瞬たりとも躊躇することなく、任意の名前を付けられる1匹目のアイルーには必ず“アクア”という名前をつけた。俺にとってそれは、息をすることにも似た“当然の行為”だったのである。
コーヒーで眠気を押さえつけながら『モンハンクロス』を始めると、すぐに1匹目のオトモアイルーを迎え入れる段取りとなった。名前と、そして外見を決めて、そのコを雇うことができる。ここで自然と、俺の口から声が漏れた。
「どうしよっかな……」
いつの間にかメシを食べ終わったらしく、ミュウが俺にくっつきながら毛づくろいを始めていた。その頭をゴシゴシと撫でつつ、オトモアイルーの外見の項目をチラ見する。
「えっと……毛並みで近いのは、アメショ……かな」
アメショを選んで、おつぎは目だ。ここはほとんど迷うことなく、
「“ふつう”だろうなー。まあ、アクアはもっと美人だけど♪」
なんて言いながら“ふつう”を選んだ。
つぎは耳。ここも、すぐに決めた。
「耳は何気に、“聞き耳”がソレっぽいんだよねw いたずらっ娘だったから、動いているものを見るとすぐに耳がペタンと寝ていたしw」
尻尾に関しては、完全に“カギ”1択だった。
「このカギ型の尻尾!w これ、アクアのために用意されてるとしか思えんなーw もっと短かったけど、曲がり具合がソックリすぎるよww」
最後は声だが、これも、
「うん、“TYPE2”だ! アクア、声もメチャクチャ女の子だったからなーw これしかないわww」
と即決。そして完成したオトモアイルーに俺は“アクア”と名付け、まず最初に傍らのミュウにその姿を見せびらかした。
「見ろよミュウ!! アクアだぞ! ホレ、そっくりだろ!!ww」
画面に目を戻し、生まれたばかりのアクアを目を細めて眺める。そして改めてその姿を見たとき、俺はほとんど無意識にいまは亡きアクアの姿をオトモアイルーに重ね合わせようとしていたことに気がついたのだった。
「あ……。ついクセで、アクアを作っちゃったよ^^;」
思えば11年前に初代『モンスターハンター』が発売されたとき、すでにアクアは俺の傍らにいて、イャンクックやリオレウスと激闘をくり広げるハンターをじっと眺めていたんだよな。そしてときたま、激しく動く画面に闘争本能を刺激され、「うにゃ!!!」と鋭く叫んで画面にジャレついていたんだよなぁ(笑)。
くっきりと、当事の情景が頭に思い浮かぶ。まだ俺もアクアも若くて、命がキラキラと輝いていた時代−−。
これから毎日プレイするたびに、この名前を目にしていろんなことを思い出しちゃうだろう。でも無理に想いを封じ込めるより、楽しかったころを反芻しながらいっしょに飛び跳ねたほうが楽しいんじゃないか……!?
……よし、決めた! 今回もオトモアイルーのアクアといっしょに冒険しよう!!
「よ〜〜〜し!! アクア、またよろしく頼むな!!!」
俺は潤んだ目をこすりながら、アクアとともにフィールドに飛び出していったのだった。
そして−−。
昨日、ようやく集会所で同僚のたっちーと合流し、初めて協力プレイに向かうことができた。ともにオトモアイルーを連れ、1回目はイャンクック討伐に出かけたのだが、森丘のキャンプに降り立つなり、たっちーからSkypeが飛んできた。
「アクアちゃんや!!!!」
「元気に、飛び跳ねてる!!!><」
うれしくなって、俺もすぐに返事を返した。
「おう!!! 当たり前だ!!! これからずっといっしょに、狩りにいくんだからな!!! よろしくな!!!」
こうして、俺の『モンハンクロス』は始まったのだった−−。
おしまい。
大塚角満

週刊ファミ通副編集長にして、ファミ通グループのニュース担当責任者。群馬県出身。現在、週刊ファミ通誌上で“大塚角満のモンハン研究所”というコラムを連載中。そこら中に書き散らした『モンハン』がらみのエッセイをまとめた単行本『本日も逆鱗日和』シリーズ(4巻)が発売中。また、そこからのスピンオフとして別の視点から『モンハン』の魅力に迫る書き下ろし作品『別冊『逆鱗日和』 角満式モンハン学』シリーズも。このブログではさまざまなゲーム関連の話題を扱うつもり。一応、そのつもり。
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