大塚角満の ゲームを“読む!”

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【MH4G】第27回 カオス4兄妹、我が道を行く(その2)

「何がキークエなのかわからんから、とりあえず目に付いたものを片っ端からやっていこうぜ」

 俺の提案に、中目黒目黒、岩田ジュビ漏、Tさんの3人が頷いた。

「なんでもやってやりますよ!」と目黒。

「僕に任せておいてください!」と岩田。

「…………………………………」とTさん。

 4人揃ってからしばらく経ったが、相変わらず人見知り大爆発のTさんは無言で、

 (´・ω・`)

 ↑こんな顔をしている。とはいえ、このメンバーで俺のつぎに戦力になるのは間違いなくTさんで、初期装備そのままの目黒と岩田は「オチさえしなければそれでいい!!」ってくらいのものだ。目黒などは、「フフフ〜ン♪」なんて鼻歌を歌いながら嫌がらせ用の大タル爆弾、小タル爆弾をせっせ購入している始末である。俺は目黒に「爆弾はいいから、せめてハンマーで気絶を取ってくれよな」と釘を刺し、Tさんに「俺らふたりでやるようなものだからな」と発破をかけて、“美味との遭遇?”のクエストを貼った。岩田がチラチラと俺を見ながら、「僕には何もないんですか?」と言ってきたが、とりあえず無視した。

 遺跡平原のキャンプに降り立ったところで、俺はようやく岩田に声を掛けた。

「ねえねえ、岩田さん。俺、チャージアックスの人とクエストに出るの初めてなんだけど、よかったら動きを見せてくれない? 立ち回りの参考にするからさ」

 このときに岩田が見せた、極めつけのうれしそうな笑顔が忘れられない。

「お!! 見たいですか!? し・か・たないなぁ〜^^ いいですよ!! 見せましょう!! えーっと、まずチャーアクという武器はそもそも、剣モードと斧モードのふたつがありましてぇ……」

 支給品ボックスの前で、ガシャガシャと武器を出したり引っ込めたりをしながら不器用なダンスを踊る岩田ジュビ漏。その姿をポケーッと眺めていると、目黒とTさんのキャラがエリア1に向かって走り出したのが見えた。それを見届けてから、俺は岩田に言う。

「ありがとう岩田さん! よーくわかった!! じゃあさっそく、アルセルタス討伐に行こうじゃないか!!」

 言われた岩田、「え? あ、もういいんすか? まあ、見たかったらいつでも言ってくださいよ^^」と半開きの口で笑い、そのまま支給品ボックスに取り付いた。

 そして、叫ぶ。

「……ってちょっとおおおおおお!!!!! 支給品ボックス、カラッポになってるんですけどぉぉぉ!!! 地図とたいまつしかねえぞ!!!! 俺の応急薬と携帯食料はどこいった!!!(怒)

 岩田がキャンプで踊っているあいだに、目黒&Tさんの窃盗団が支給品を根こそぎ持っていったのだろう。ふたりは何も応えず、肩を震わせて「うぷぷぷぷ」と笑っている。俺はもともと支給品には興味がなかったので、応急薬が残っていようがなくなっていようがどうでもよかった。なのでひと言、

「どんまい」

 とだけ岩田に言い、目黒たちを追ってエリア1に向かって走り出した。

 そんなアルセルタス討伐クエストだが、さすがに4人だとアッと言う間だった。“乗り”からダウンしたアルセルタスに殺到する仲間を見て、目黒が素早く小タル爆弾を仕掛けて吹っ飛ばしたりしやがったが、その程度の妨害ではビクともしない。アルセルタスは早々に脚を引きずり、エリア7を目指してプィ〜〜〜ン……と弱々しく飛んでいってしまった。

「よし、イケる!! とっとと片付けようぜ!!」

 俺の号令に「応ッ!!!」と応えた3人。足並み揃えてドドドドドッ……とエリア7になだれ込んだ。見ると、アルセルタスは壁に張り付いて翅(はね)を休めている。その姿を見て、目黒があっけに取られたような声を出した。

「壁にひっ付いていますが……あれは、どうすりゃいいんですかい?」

 ちょっと思案してから、俺は「はっ!!」とあることに気づき、目黒に提案した。

「壁に上って攻撃してもいいんだけど……って、そうだ!! 目黒、ハンマーで俺たちを打ち上げてくれよw 『4G』では仲間に斬り上げられてから落下攻撃に移行できるんだわww あいつを撃ち落そうぜwww “空中雑技団”、出撃だ!w」

 目黒が「うひひ!」と笑った。

いいっすね!!w やりましょうやりましょう! ホレ、ジュビ、たっちー、壁の下に並んで並んで!!w」

 空中雑技団、1発目は、岩田ジュビ漏だ。「うりゃ!!!」とケツを思いっきり斬り上げられた岩田の分身、ぴゅるるるる〜〜〜……という放物線を描いて壁に張り付くアルセルタスに接近していった。

「おし!! ここだ!!!」

 チャージアックスを抜いた岩田ジュビ漏、渾身の武器出し攻撃をくり出すも、アルセルタスの手前3メートルくらいの虚空を斬ってポトンと落下してしまった。アルセルタスは相変わらず「zzzzz……」と寝息を立てている。

「うわ!!w 完全に距離を見誤った!!www 岩田、使えねえ!ww

 岩田はまったく悪くなかったが、俺と目黒に口々に言われてシュンとうなだれてしまう。そんな岩田はほっといて、つぎだつぎ!

「たっちー!! もうちょっと壁に近づいて!! ……ヨシ! いくでえええ!!」

 そう言ってTさんのキャラに接近した目黒が、ハンマーで脳天をボコンと殴打した。

「ちょっと!! なにすんのよ!!!」とTさん。

「ボタン、間違えちったwww」と目黒。そんなド突き漫才を展開しながらも2回目の挑戦でTさんのキャラは宙を舞い、アルセルタスの手前50センチほどのところを双剣で斬ってズザザザザっと地上に降りてきた。空中乱舞、惜しくも失敗である。

「残念!! でもまだ、弾は1発残っているぞ! 最後は俺だ!! ガンランスだったら、絶対に当たる!!!

 壁の下に陣取り、放物線の角度を想像する俺。いまにも目黒が斬り上げをしそうだったが、「待て!! ここじゃ当たらない!! もうちょっとズレて……」と微調整をくり返した。そしてようやく、

「わかった!! ここだ!! 発射準備完了ッ!!! 目黒、よろしく!!!」

 と納得し、ハンマーを抱えた目黒が武器を振り回そうとすると……!

 ぷいぃぃぃぃぃ〜〜〜〜〜ん…………

 痺れを切らしたアルセルタス、「もう寝たフリはゴメンだよ」とばかりに壁から離れてパタパタと飛びだしてしまった。

 けっきょく空中雑技団の妙技を見せることなく、そのクエストはドタドタとアルセルタスを討伐して終了。でも俺たちは口々に、

「つぎは絶対に、空中雑技団でフィニッシュしようぜ!!」

 と懲りずに話したのでしたw


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投稿者 大塚角満 : 14:38

【MH4G】第26回 カオス4兄妹、我が道を行く(その1)

「大塚さん、ぼちぼち俺を上位にしてくれてもいいんじゃないですか?」

 ある日、他力本願日本代表のような中目黒目黒がニンテンドー3DSをぶら下げながら詰め寄ってきた。“ぼちぼち上位”なんて言っているが、このときの目黒のハンターランクは恐怖の“ゼロ”で、要するにパッケージを開けたばかりの“まっさら”の状態だったのである。俺は、「ハイハイ。そういうことは、せめて集会所のギルドマスターに話しかけてから言おうね」と呆れながらも、(ここに書くネタが増えそうダナ)とソロバンを弾いて、目黒のために一席設けてあげることにした。会社の会議室を数時間キープしてから、俺は関係各位に連絡を飛ばす。

“【緊急連絡】本日18時より、第7会議室で狩り会を行います”

「任せてください」と目黒。

「僕が手伝ってあげますよ」とファミ通App編集者の岩田ジュビ漏。

え!? それって、キミとおにい(目黒のこと)のほかに誰か来るの!? ……え?? 岩田ジュビ漏れ!!? いやあああああああ!!! 岩田、いやああああああ!!><」とTさん。あまりの拒絶反応に驚いた俺が、

「えww 岩田にヘンなことでもされた過去があんの?w」と尋ねると、「ううん^^; ひと言もしゃべったことない^^;; 人見知りで、緊張するだけ^^;;;」とTさんは恥ずかしそうに言う。……どんだけ超絶人見知りやねん!!! と思わなくもなかったが、ここでもまた(何かネタが拾えそうダナ)と確信できたので、

「最初は緊張するかもしれんが、やっぱモンハンの醍醐味は4人協力プレイだぜ。絶対に楽しいから、顔出しなよ!」

 とだけ伝え、俺は会議室に向かって歩き出した。4人でプレイするのは、『4G』発売日の佐賀以来だなー。

 第7会議室に入っていくと、いち早く来ていた目黒と岩田がガアガアとやり合っていた。

「あ、大塚さん! コイツ、“俺が手伝う”とか言ってたくせに、ハンターランクがまだ“2”っすよ!!!」

 と怒る目黒に対し、岩田は、

「ふふん。ハンターランクなんて、ひとつの尺度に過ぎませんよ。僕は僕なりの、ハンター道を歩みますから!!」

 などとかっこつけて言い放っている。そこで俺と目黒は口々に、

「んじゃ、キミはひとりで村クエでもやっていなさい」

オマエの緊急クエストが出ても、いっさい手伝わないからな」

 とピシャリ。岩田が慌てて、「なんで4人で遊ぶってのに、ひとりだけ村にいなきゃいけないんすか!?」と言い繕っていたところで、第7会議室の扉がちょっとだけ開いた。見ると、

|ω・`)コソ

 ↑まさに、この顔文字そのままのTさんが顔を覗かせて、中の様子を伺っているではないか。気づいた目黒が、「たっちー(Tさんのこと)、遅いよー! 早く集会所に入ってこいよー!」と呼びかけると、Tさんは無言でチョコチョコと入ってきて、岩田から逃れるように俺の陰になっている席に腰を下ろした。こうして、仲がいいのか悪いのかよくわからない4人による狩り会が始まったのである。

 さてこの4名、これから当プレイ日記のレギュラーになりそうなので、改めて情報を整理しておこう。以下、簡単なプロフィールだ。

【大塚角満】
週刊ファミ通副編集長兼ファミ通コンテンツ企画編集部編集長。“世界一のガンランサー(笑)”の異名を持つ老ハンター。メインの武器はもちろんガンランス! 

【中目黒目黒】
現・ファミ通App編集長。大塚角満の、十数年来の盟友。モンハンは無印からプレイしている10年選手だが、その知識は初心者のTさんと同等だ。メインの武器はハンマー。好きなモンスターはイャンクック。

【美人ドSゲーマー・Tさん】
編集とは別の部署に所属する我々の同僚。ひょんなことから俺や目黒と仲良くなって、いっしょにゲームで遊ぶようになった。モンハンは『4G』が初プレイ! メインの武器は双剣。167センチの長身。

【岩田ジュビ漏】 
よく知らない。

「ちょっと!!! “よく知らない”ってどういうことっすか!! メインの武器はチャージアックスですよ!! それくらい書いてくださいよ!!!」

 プロフィールを読んだ岩田がクレームをつけてきたが、本当に知らないんだからしょうがねえだろw まあメインの武器のチャージアックスについては、

「大塚さん、『4G』のメイン武器は双剣かチャージアックスにしようと思っているんですけど、どっちがいいですかね?」

 と岩田に聞かれたとき、すでに双剣はTさんが使っていたので、「キミはチャージアックスにしなさい」と俺が決めたものだったわ。そんな会話をしつつも、『4G』で岩田と遊ぶのはこの日が初だったので不安しかなかった。なので、俺は提案した。

「とりあえず、目黒のハンターランクを上げていこう。★1のクエストをやりつつ、岩田の同行を見守ることとするわw」

 さてさて、この“カオスな4兄妹”の前にどんな狩猟風景が広がるのかな……?

 次回に続く〜。


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投稿者 大塚角満 : 16:15

【MH4G】第25回 錆びた岩船に乗って

いい加減、私が活躍したときの話も書けよ!! このままじゃ、ただのバカ女だと思われるじゃん!!!!

 ここまでの一連のプレイ日記を読んだTさんが、ナゼか俺にクレームを入れてきた。あることないことを書いているんだったらわかるが、俺は“あることあること”しか書いていないのだ。文句を言われても困る。

 とはいえ最近のTさんは、確かによくがんばっていた。最初のころは、ニワトリに無理やり双剣をくくり付けてバタバタと走らせているだけ……って感じだったが(若干、失礼か)、近ごろはオチる回数もめっきり減って、逆に俺のせいでクエスト失敗になることが目立ってきたほど……。少しずつ、でも着実に、いっぱしのハンターへの道を歩んでいるのが見て取れるのだ。

 そんなTさんの成長を強く感じられたのが、上位ハンターになるための登竜門、緊急クエスト“高難度:砂を渡るは錆びた岩船”をやったときだ。

「これを越えれば、ついに我々も上位ハンターだぞ!!」

 集会所で叫ぶ俺にTさんは、

うおおおおおし!! やろう!! やってやろう!!!」

 と気合十分で、いつもの双剣・ギルドナイトセーバーを背に大砂漠への旅について来たのであった。

 さて、このブログの読者の皆さんには釈迦に説法もいいところだと思うが、ダレン・モーランのクエストは非常に独特で、覚えておいたほうがいい“約束事”がいくつもある。“撃龍船”に備わっているいくつもの装備の使いかた、モーランの背に乗ったときの行動、そして最後は“決戦ステージ”で決着をつけること……。

 事前にこれらをTさんに教え込んでおくこともできたのだが、俺はあえて、まっさらの無情報でTさんを撃龍船にいざなった。まずは何も知らない状態でダレン・モーランと対峙し、盛大に驚いたままドタドタと走り回って、この特殊なクエストを堪能してほしかったから−−。3オチ上等!! 初見だからこそ味わえる驚きや感動って、絶対にあるからな。

 そんなこんなで始まったダレン・モーラン討伐。俺は、「まずは挨拶代わりに……」とかなんとかつぶやきながら船尾に向かい、大砲の弾を拾って豪快にぶっ放した。それを、2回、3回……とくり返すうちに飽きてきたので(オイ)、ちょうどいいタイミングで出た“乗れるマーク”に接近し、モーランの背に飛び乗る。ひと通りの採掘ポイントを見回ってから、弱点の噴気孔を爆弾やらガンランスの砲撃で破壊し、「ふう、満足♪」と納得して船に戻った。その間、チラチラとTさんの立ち回りを見ていたのだが、意外なことに大砲やバリスタを巧みに使って攻撃し、なんとモーランの背にも乗ったりしているではないか! しかも、俺が密かに期待していた大銅鑼の無駄鳴らしもせず、撃龍槍を「ばい〜〜〜〜ん……」と虚空に発射することもない。一度だけ、俺が撃龍槍のボタンの横で攻撃を食らったときに、

ぷぷ!!www スタンバってるのに攻撃食らって転がってったwwwww」

 とSkypeが飛んできたが、それ以外はじつに順調で、決戦ステージに入って早々のところで“クエストクリアー”となったのである。

 俺は驚いた。

 まさかこんなにもあっさりと、ダレン・モーランの緊急クエストをクリアーしてしまうとは思わなんだ。

「わーいわーい!! 名前の色が変わったーーー!! 角満よりも先に上位になったーーーー!!!!

 集会所で、我が世の春とばかりに踊り狂うTさん。先にTさんの緊急クエストをやってあげたので、彼女が先に上位に上がったのは当たり前のことなのだ。

 いやでも、そんなことはどうでもいいのだ。なぜこうもあっさりと、我々はダレン・モーランの壁を越えられたのだろう? 俺はSkypeを立ち上げ、Tさんにメッセージを送った。

「ようよう、なんかうまいこといったけど、このクエストが特殊だってこと、知ってたの?」

 すぐに、Tさんから返事がきた。

「ううん、まったくwww」

 以下、我々ふたりのやり取り。

:そのわりに、巧みに立ち回っていたように見えたけど。大砲もバリスタも使っていたし
:角満がやっているのを見て、全部マネしたのwww 最初、双剣で攻撃しようと思ったんだけどまったく届かなくて、何をしていいのかサッパリわからなかった^^;;;
:余裕だった?
:それが……人知れず船から落ちてばっかいたwww
:あ、そうだったの? 剣で斬ろうとして?
理由は永遠の謎なんだけど、気がついたらロープで引っ張られてて……
:……
:で、引き上げられたらベッドで寝て回復→すぐ落ちる→引っ張られる→ベッドで回復→すぐ落ちる→引っ張られる→ベッドで回復→また落ちる…………ってのを延々とくり返していたwwwww
:……それ、ほとんど攻撃できてないんじゃ
見えないところでがんばっていたんだよ!!!
それ、がんばってねーよ!!!w
失敬な!!!!!!!

 どうやらクエスト中の大半の時間を、Tさんは砂漠で引きずられることに費やしていたようだ。いやでも、俺からしたら、大銅鑼と撃龍槍のボタンを押さなかったことだけでも“ファインプレー”と言ってやりたいところである。なので、言いました。

「しかし、よく大銅鑼と撃龍槍のボタンを押さなかったなー。キミ、“なんだコレ?”とか言って真っ先に押しそうなのに」

 Tさんが、テレたように笑った。

「なんだコレとは思ったけど、勝手に押したら角満に怒られる予感がしたのでスルーしたwww やっぱり、押さなくてよかったんだwww」

 おお……! これぞ見えないファインプレー!ww

 続く俺の緊急クエストも難なく突破することができ、我々ふたりは晴れて“上位ハンター”になることができたのでした!

 ということで次回からは、怒涛の“上位ハンター編”をお届けします! お楽しみに〜!


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投稿者 大塚角満 : 15:10

【MH4G】第24回 我が青春のドンドルマ

 毎晩のように同僚の美人ドSゲーマー・Tさんと集会所で遊んでいるわけだが、それとは別にコツコツと、村のクエストも進めている。11月15日にはついに、“我が青春のドンドルマ”にも足を踏み入れ、「アリーナとか懐かしい!!><」「この階段の向こうに憧れていたんだよなぁ……;;」なんて、見るもの触るものすべてに感激して目をウルウルさせておりました。

 思えば、ドンドルマを最初に訪れたのは、いまから8年も昔(マジかよ!)の2006年2月。プレイステーション2用ソフト『モンスターハンター2(ドス)』のときだった。当時は『みんなのGOLF オンライン』や初代『モンスターハンター』で出会った、顔も本名も性別も知らないテレビの向こう側の“ネットの友だち”とばかり遊んでいて、夜を徹してひたすらチャットをしたり、“季節”が切り替わるのを待って一斉に狩りに出掛けたりと、それはそれは楽しくて充実したハンティングライフを送っていたのだ。

 あ、いまサラリと“季節”って書いたけど、『2(ドス)』には寒冷期温暖期繁殖期という3つの季節の概念があって、ハンターたちの狩猟サイクルに一定のリズムを与えてくれていたのよ。たとえば、寒くなる寒冷期には“雪山”に行けなかったり、特定の季節でしか受注できないクエストがあったり……。数時間単位で3つの季節が移り変わっていたので、特定の素材とかモンスターを狙っているハンターはオンラインロビーでひたすら動かず“季節待ち”なんてしていたっけ(俺もしょっちゅうしていたw)。誰かと競い合うわけでもなく、マイペースで牧歌的な雰囲気に包まれていた当時の“モンハン風景”は、いまでもシミジミと「ステキな時間だったなぁ……」と思い返すことができるわ。

 そんなドンドルマの中央広場から伸びる長い階段の上に、ハンターの憧れである“大老殿”がある。まわりの友だちよりもゲームの進行が遅かった俺は(いまも昔も変わらねーな^^;)、つぎつぎと大老殿に吸い込まれていく仲間が心の底からうらやましくて、何度か侵入を試みたりした。でも当然のことながら長いランスを持った屈強な衛兵に止められ、「強くなき者は去れ!!」と叱責されていたんだよな……。俺はそのたびに、

「オマエ、こんなところに突っ立ってないで、その長いランスを持ってモンスター討伐に行けよ!! 俺みたいな弱いヤツを相手にしている場合じゃないだろ!!」

 なんて、やけっぱちになって口走っていたのである。でも同時に、

もっともっと強くなって、仲間の待つ大老殿に行くんだ!! そして、まだ見ぬ屈強なモンスターたちと渡り合うんだ!!!」

 と決意を新たにし、友だちよりもたくさんの時間はかかっちゃったけど、数週間後には大老殿に入ることを許されるのであった。

 初めて大老殿に踏み入ったときのことは、いまでも鮮明に覚えている。ドキドキしながら入り口に入り、大長老の巨体を「うわぁ……」と嘆息しながら見上げたとき、その場に集っていた仲間たちが一斉に“褒める”のボディーアクションをして口々にこんなことを言ったのだ。

「ミドさん(俺のこと)、ようこそ!!」

「おめでとーーー!!!」

「さあ狩りにいこう!!w」

「待ってたよ!!!!!」

 嗚呼……。俺はまた彼らと、大老殿をメインの拠点として狩りに行くことができるんだ……。今日から第二のハンティングライフが始まるんだ!!!

 そんなことを思ったものである。

 そして、いま。

 8年の時を越えてやってきたドンドルマで、当時と同じく、俺の前に立ち塞がる衛兵ランサーがいる。

 そう−−。

 俺にはまだ、この先に進む資格はない。でもいつか必ず、上位のクエストを駆け抜けて、大長老のおわす大老殿に歩みを進めるんだ!!

角満〜〜〜!! 今日、緊急クエストやるんでしょ!! とっととクリアーして、先に進もうぜ!!!」

 Tさんからメッセージだ。よ〜〜〜し、やりますか!!

 まだまだ道のりは長いけど、慌てず、でも着実に、前に進んでいくことにします。

 思い出のドンドルマで、マイペースな決意表明。


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投稿者 大塚角満 : 14:37

【MH4G】第23回 食らい続ける理由

 今日は、短くスッキリとまとめます。

 前回の記事で、同僚の美人ドSゲーマー・Tさんはゲリョス討伐に行くと、毎回毎回死んだふりに引っかかって瀕死の重傷を負っている……という話を書いた。あまりにも律儀に食らい続けているので一度、

「あれ、死んだふりだからw 不用意に近づくんじゃねえよww」

 と助け舟を出してあげたのだが、その翌日にはすっかり忘れて「うりゃりゃりゃ……ぎゃあ!!!」となっている。ここまでくると「相手の攻撃はすべて受けきる!!」という横綱精神でモンスターに胸を貸しているのかも……なんてことも考えられるので、改めてTさんに尋ねてみた。

「あのさー、ゲリョスっているじゃん?」

 これに対する彼女の反応がすでに、予想のナナメ上を飛んでいった。

ゲリョス……って、なんだっけ?

 ピシッッッッ!!!!!!!!!

 と身体の末端部分が石化し始めたのを感じながらも、俺はTさんに食らい付いた。以下、我々のSkypeでのやり取り。

:ゲリョスってなに……って!!!! ホラ、毒を吐く、たまにピカッて光るモンスターがいるだろが!!!
:いま見た目で判別できるモンスターは、レイアだけです
!!!!?? 紫色の、しょっちゅう狩ってるヤツがいるでしょ!!?
レイアだけです
:…………………………
:外国の人は全員同じに見えるワタクシですが、モンスターも同様にまったく見分けがつきません
:……ほれ、こいつだよ

 ゲリョスのイラストを、彼女にペロンと送付する。そうしたら、ようやく……。

:おおお!! こいつ!!! ボッコボコにしてやったわ!!!
:……キミがいつまで経っても死んだふりを食らう理由がよくわかったわ

 同じ攻撃を何度も食らい続ける秘密は“モンスターの見分けがついていない”ってことにあるのはわかったが、じつはもうひとつ、“Tさんvs.ゲリョス”のやり取りを見ていて疑問に思っていることがあった。俺は質問を畳み掛ける。

:ゲリョスがたまに光ると、ハンターが目を回して気絶するじゃん?
ほほう
:いや“ほほう”じゃなく。キミ、しょっちゅう食らってるでしょ? 双剣はガードできないからさ
:うんうん

 俺はここで、疑問に思っていたことをそのままTさんにぶつけた。

「キミ、気絶しても何もせず、ず〜〜〜〜〜っとピヨピヨしたまま突っ立ってるじゃん? あれは、何をしているの?w」

 そうなのだ……! Tさんはゲリョスの閃光を始め、敵に気絶の攻撃を食らっても何の対処もせず、いつまでもいつまでもそこにたたずんで目を回し続けているのである! 気がつけば駆け寄っていって蹴飛ばしたり、ガンランスの砲撃をぶっ放して正気に戻してあげているのだが、そうでもしない限りは一生、ピヨピヨピヨピヨ……と目を回し続ける勢いという……。

 俺の疑問に対し、Tさんは簡潔にこう答えた。

“さっく”(Tさんの筆頭オトモ)が助けてくれるのを待ってる

 椅子からズリ落ちながら、俺は叫んだ。

「ネネネ、ネコに頼るんじゃねえよ!!!w」

 コレに対するTさんの返答は、さらに時空を超えていった。

え?? あれって、自分でどーにかできるものなの????

 俺は泣き出した。

ガチャガチャやってりゃ解けるんだよ!!!w ……いや、おっかしいと思ったんだ。モンスターにつぎの攻撃食らうまで気絶のまま放置しているから……」

 Tさん、悪びれずにこう言った。

「自然に治るのを待ってたよw」

 俺のセリフは、もはや悲鳴である。「治らねーーーよ!!!」。

 しかし、俺の断末魔の悲鳴などまったく届かないらしく、Tさんはニコニコ顔で、

「またひとつ賢くなりました^^ さあ、ひと狩り行こうぜ^^

 と言って、集会所に飛び込んでいくのだった。

 おしまい。
 

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投稿者 大塚角満 : 15:14

【MH4G】第22回 こざかしい罠

 相も変わらず同僚のTさんとふたりで狩りをしている。基本、キークエとかはいっさい気にせずに行きたいフィールドに行き、欲しい素材を集めることを主として遊んでいるので、何度も続けて同じモンスターの討伐に出向くことも多い。

 ここ最近はナゼかやたらとゲリョス討伐に行くことが多かった。Tさんがライトクリスタルを欲しがったのも理由のひとつだが、なにより未クリアーのクエストを選ぶ中でたまたまゲリョスが出るクエストが多くなってしまった……というのも、大きな原因だったと思う。

 まあ理由はどうあれ、ゲリョス狩猟に幾度となく行ったわけです。

 俺とゲリョスは無印のころから10年もの歴史があるので、“おたがいのすべてを知り尽くしたタダならぬ関係”ということができる。相手がいま何を考え(ピカーンと光っちゃうゾ! とかね)、何をしたいのかってことが手に取るようにわかるので、そうそうヘンなことをされない限りはピンチに陥ることもない。そういう意味では、じつに“御しやすいモンスター”だ。

 ところが、『モンスターハンター』シリーズに触るのが『4G』が初めてのTさんにとっては、イャンクックやゲリョスはもちろん、ランポスやブナハブラにいたるまでが“初見”のモンスターなので、何をされるのかがわからない。いちいち俺が、「イーオスは毒に気をつけて!」とか「レウスはワキャキャって鳴いたらキックしてくるよ!」なんて手取り足取り教えてあげればいいのかもしれないが、何をされるかわからない未知のモンスターに挑むことが『モンハン』シリーズの最大の楽しみだと思っているので、俺はいっさいの情報を彼女に与えていないのだ。そういう意味では、ゲネポスの麻痺に驚き、ダレン・モーランの巨大さに度肝を抜かせる彼女の現在は、ことのほか幸せな状態と言えるのではなかろうか。

 そんな感じなので当然、Tさんはゲリョスのことも知らなかった。毒のことも閃光のことも教えずに最初のクエストに臨んだので、俺は内心、(おそらく毒で1オチ、閃光で気絶した状態で1オチ……ってところだろうな)なんて想像していたのである。そしてまんまと、Tさんはゲリョスの毒を浴びまくって紫泡コポコポ状態に。

「あー、食らっちゃったか^^; ま、そうなるよな。でもこれでつぎから、解毒薬を持ってくるようになるだろ^^;」

 授業参観のときに答えを間違えてしまった我が子を見守る感じで、Tさんを見やる。すると驚いたことに、彼女は俺の目の前で解毒薬をあおって毒状態から復活したではないか! すぐに、「ああ、支給品で取ったやつを使ったのか」と納得したが、その後も彼女は5回も6回も毒状態になり、でもそのたびに回復していたので、事前に解毒薬を持ち込んでいるのは間違いなかった。なので俺は、クエスト終了後に尋ねたのだ。「ゲリョスが毒のモンスターだって、知ってたの?」と。するとTさんは、こんな健気なことを言ったではないか。

「ううん、知らなかったよ。でも角満がいつも“フィールドでは何が起こるかわからないんだから、準備は万全にな”って言ってるので、解毒薬、ホットドリンク、クーラードリンク、ウチケシの実あたりは、いつも持ち込んでるの^^;」

 おお……(涙)。キチンとハンターとして成長しているではないか!>< 感激した俺は、

「エライ!>< その初心は、今後も忘れずに成長してくれ! ……でもクーラーとホットは、フィールドを選んで持っていけばいいと思うよ^^;;」

 とTさんに言った。

 しかし、だ。

 じつは一連のゲリョス討伐において、どうしても気になることがひとつだけあった。

 それは狩りの終盤。ハンター諸君だったら、「ゲリョのやつ、ぼちぼち“アレ”をやるころだなw」と薄笑いを浮かべるそのタイミングで、まんまとゲリョスが“死んだふり”をした。剥ぎ取りを狙えるチャンスでもあるが、見誤ると大ダメージを受けてしまうリスクがあるので、俺は無理せず、死んだふりをされたら放っておくことにしている。しかし、Tさんは違った。

「動きが止まった!! うりゃりゃりゃりゃ〜〜〜!!」

 と、鬼人乱舞の荒業で斬りかかっていったのだ。当然ながらすぐにゲリョスが気づき、起き上がりざまの特大攻撃。一気に体力を削られ、Tさんはズタボロにされた。

 これが1回だけだったら、「まあ、初見だしなw 俺も最初はそうだったよw」と笑ってスルーできたのだが、つぎの狩猟でも、そのつぎの狩猟でもTさんはゲリョスが死んだふりをするや、

「動きが止まった!! うりゃりゃりゃりゃ〜〜〜!!」

 をくり出し、瀕死の重傷を負ってゴロゴロと転がっている。しかも剥ぎ取りを狙っているわけでもなく、ただひたすら「うりゃりゃりゃ〜〜〜……ゴフッ!!!」をくり返しているので、さすがに俺は告げました。

「あの……w なんで毎回毎回、死んだふりをするたびに斬りかかって大ダメージ食らってんの?w」

 言われたTさん、心からギョッとしたらしく、

「死んだふりだったんか!!!!」

 と驚き、つぎのようにゲリョスに噛み付いた。

「こざかしいヤツめ!!!!!!」

 そのこざかしい罠を毎回律儀に食らってあげて、きっとゲリョスは、

「ううう>< マンネリと言われる死んだふりに毎回引っかかってくれるとは、なんていい人なんだろう><」

 と思っているに違いない。

 ……ちなみにコレ、数週間前の出来事だったんだけど、夕べゲリョス討伐に行ったときもTさんは死んだふりに引っかかっていましたww

 おしまいw


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投稿者 大塚角満 : 14:12

【MH4G】第21回 石ころとネンチャク草のエレジー

 同僚の美人ドSゲーマー・Tさんとふたりで狩りに行く以外にも、コツコツと村のクエストを進めている。何度も言うように俺は『モンスターハンター4』のデータを引き継がなかったので村のクエストも最初からなのだが、限られた武器と防具、そしてアイテムを駆使して屈強なモンスターを攻略していく過程は、苦難と試行錯誤のくり返しでことのほか楽しかったりする。

 とはいえ、「なるべくストレスを少なくして狩りをしたい」と思ったら、それ相応の準備をする必要がある。それが下位であれ、G級であれ。大型モンスターと対峙してしまったらあとは自分の腕次第なので、せめて狩猟を手助けしてくれるアイテムくらいは、キチンとしたものを揃えたいと思うのがハンターというものでしょう。個々で差はあるだろうが、俺が思う“狩猟の必携アイテム”は、

・回復セット
・こんがり肉
・砥石
・ペイントボール
・シビレ罠
・落とし穴
・閃光玉
・捕獲用麻酔玉
・こやし玉

 このあたりで、バイク乗りのヘルメット、料理人の包丁、大塚角満にビールと枝豆ってくらい大事なものだったりするのだ。

 しかし、上のアイテムリストを見て気づいた方がおられるかもしれないが、これらを潤沢に揃えようと思ったら意外なほど高いハードルを越える必要がある。やたらと消費する消耗品の礎でありながら序盤はまったく安定流通してくれない“いけず”なアイテムが、俺の心の平穏を乱すのだ。そのアイテムとは……そう!!

“素材玉”

 ですよ奥さん!! こやつがず〜〜〜〜〜っと希少だったせいで、俺がどれだけ苦労をしたか……><

 最初に「あれ……?」と思ったのは、リオレイア討伐に出向いたときだったと思う。

「そうだ! 閃光玉を持っていこう! これがあれば、だいぶ楽になるもんな^^」

 ニコニコ顔でアイテムボックスを漁ったのだが、目当てのアイテムがひとつもなかった。でもそんなことは、モンハンで遊んでいれば日常茶飯事である。

アイテムがなければ、作ればいい。これぞ、ハンターの基本!!」

 俺は力強くそう言って、閃光玉を合成しようと試みた。

 ところが。

 素材がまったくない。

 いっぽうの素材である光蟲は、マメに昆虫採集をしていたおかげで潤沢にあった。しかしもういっぽうの雄・素材玉が、1個としてないのである。

 とはいえこれすらも、俺は「ふふふ」と笑って流すことができた。

「アイテムがなければ、作ればいい。これ(以下略)」

 再び同じセリフを発して、俺は素材玉を作ろうとアイテムボックスにかじりついた。

 ところが。

 素材が(以下略)。

 さすがに、冷や汗を禁じえない。

「おいおい、なんで素材玉なんてチョロいアイテムが作れないんだ……?」

 おっかしいな……と首を捻りながらの、ひとつの可能性に行き着く。

ああああ!!! も、もしかしたら俺の知らぬ間に、素材玉の製作レシピが変わったのかも!!?

 俺の頭にあったレシピは“ネンチャク草×石ころ”。どこにでも転がっている安価なアイテム2品で、素材玉は作ることができたはずなのだ。ジワリとにじむ程度だった冷や汗が、ダラダラの滝のようになった。

「も、もしかしたら石ころじゃなく、ノヴァクリスタルあたりで作るようになってたりして…………!!」

 跳ねる心臓を押さえつけながら、“禁じ手”として封印していたネットを駆使して素材玉のレシピを調べると、

「……って、やっぱネンチャク草と石ころじゃねえか!! 驚かせるんじゃねえよ!」

 誰に対して怒っているのか自分でもわからなかったが俺は「ぺっぺ!」とツバを撒き散らし、「だったら、なんで作れないんだ?」とつぶさにアイテムボックスを調べ始めた。そして判明したのが、

・石ころ足りない病
・ネンチャク草足りない病

 というふたつの病。とくに石ころは深刻で、この時点でアイテムボックスにひとつも入っていなかったのである。

 こうなると、あとはドミノのように悪いことがバタバタと続いていくだけだ。

「いまはマカライトやドラグライトよりも、石ころのほうがダイヤモンドである!!」 

 なんて叫びながら幾ばくかの石ころを採掘して持ち帰るも、1個や2個の素材玉なんて瞬時に消費してしまう。というのも、モンスターが強くなってくれば「討伐じゃなく捕獲で帰ってきたい><」と当然ながら思って捕獲用麻酔玉を作りたくなるし、大型モンスターの2頭討伐が増えてくると「こやし玉を10個持っていないとクエストにもいけないよ!><」ってんで、そっちにも素材玉を回したくなる。おかげで、つねに石ころ&ネンチャク草は自転車操業で、それは上位ハンターになったいまでも続いている有様だ。竜人問屋の“アイテムを増やす”でネンチャク草を増やし、“品物を見る”で石ころがあればポイント交換するようにしているが、それでもなかなか、安定供給には程遠いのが現状である。

「もしも俺が『4G』の世界に住んでいたなら、ネンチャク草専用の畑と石ころ専用の採掘所を運営して、ひと儲けたくらむところだなぁ……」

 そんなしょうもないことを言いつつ、今日も、「少しでも足しになれば><」と、素材ツアーに出掛ける俺でした。

 ……って、いま↑この原稿をTさんに見せたら……………!!

「……え? なになに? 素材玉って初耳なんだけどwwwww 合成で作ったことあるの、回復薬グレートだけですよ?w」

 ……こいつはイチから、教育し直す必要がありそうだわ(怒)。

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投稿者 大塚角満 : 18:28

【MH4G】第20回 いい日の予感

 家で『モンスターハンター4G』を遊んでいる人のほとんどは、ニンテンドー3DSに充電器を刺したままにしていると思う。そうすればバッテリー切れの心配はなくなるし、翌日の通勤中とか仕事中に(ん?)『4G』で遊ぶときも、「パンパンに充電してあるから安心安心^^」と、大船に乗ったつもりで狩りに臨めるから。

 俺もご多聞にもれず、家に帰ったらビールの栓を抜くよりも早くカバンから3DSを取り出し、ブッスリと充電器に接続している口だ。その際、「さあさあ、お腹が空いたでしょう。今日も1日ご苦労様^^ たーんと電気をお食べ^^^^」とねぎらいの言葉をかけることも忘れずに。充電器につないでもらった3DSは明らかにうれしそうで、「ひゃー! 働いたあとのメシはうめーなぁ!!」と言わんばかりに電気をむさぼり食っているのがよくわかる。心なしか、スーパーファミコンカラーのカラフルなボタンも、充電器につなぐ前と後では輝きが違うように見えた。

 そして、人間のほうがご飯やお酒を摂取して人心地がついたあとに“今日のひと狩り”が始まる。コツコツと進めている村のクエストをいくつかこなし、“欲しいものリスト”(武器や防具を作るのに必要なものを書き留めたメモ)を眺めて素材回収を行ってから、俺はおもむろに「……んじゃ、ボチボチいくかな」と独り言を言って集会所を開設する。と同時にTさんに、「(集会所を)作ったぞー。ひと狩り行くかー」とSkypeをして集会所の食卓のあたりに集合。

「キリンいこ!!!!」

「モンハンはキリンだけじゃないんですけど」

「じゃあゴア・マサラ!!!!

「マガラだっつの」

イヤンってヤツでもいいよ!!!」

クックって言えよ!」

「いや、ガルルガだよ?」

「だったらそう言えや!!!」

 なんていう不毛なやり取りをしつつ、適当なクエストに。日によってまちまちだが、だいたい4〜5クエくらいをこなしたところでTさんが「寝る!!!」と言い出すので、0時前後にはお開きになる。その後、俺はたいがい村に戻って村人のお願いなどを聞き、深夜1時過ぎに寝室に……。その際、3DSには、「朝まで飯を食いながら、ゆっくり休んでくれよ」とやさしく告げ、本体を撫でてやることも忘れない。こうすることで明日も、バッテリーパンパンの元気な3DSで退屈な通勤時間に臨めるのである。

 そして、本日。

 いつものようにネコに起こされて布団から這い出ると、カーテンの隙間からキラキラの陽光が射し込んでいるのがわかった。窓を開けると、中に入りたくてしょうがなかった11月の透明な空気と、キラキラの朝日が部屋に飛び込んでくる。

「おお……。なんだか今日は、じつにさわやかで気持ちのいい日ではないか」

 こんな日は、ステキなことが起こる予感がするものだ。

 俺は、いつもより早めに出社の準備をし、バスか自転車を使ことが多い駅までの道を歩いて進むことに決めた。

「いい1日になりそうだなー♪」

 駅に向かう足取りは軽かった。快晴の空とさわやかな空気、そしてポジティブな予感が、自分を10歳くらい若返らせてくれたような気すらしていたのである。

 そして−−。

「よーし^^ 週刊ファミ通のコラムとかは昨日終わらせちゃったので(奇跡)、今日は余裕があるぞ^^ 夕方まで『4G』で遊んじゃおっかなー^^^^」

 ニコニコ顔でカバンを探ると、自慢のお手製3DSケースが出てきたのだが……。


空〜〜〜〜〜ん……

 これはセミの抜け殻か、もしくはスルメの切れっ端か……。

 俺、誰もいない朝の編集部で絶叫する。

3DSと『4G』を忘れてきちゃったよぉぉぉおお!!!>< ステキな予感ってなんやねん!!!!!><」

 いまヤケクソでコレを書いたわけだが、本当に何もする気が起こらねえ……(苦笑)。

 もう今日は帰ろう……。


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投稿者 大塚角満 : 13:55

【MH4G】第19回 キリン事件(その3)

 前回の続き。

「こうなったらいよいよ、“アレ”に頼るしかないかもしれん」

 いっこうにキリンの角をへし折ることができず、さすがに焦りを覚えてきた俺。「どうするの?? どうすればいいの??」とわざとらしくナヨナヨするTさんに、俺は“最終手段”を告げた。

「なんとなく、打撃武器のほうが角を破壊しやすいような気がする。そこで、打撃武器の代表である“ハンマー使い”を召喚したいと思う」

 Tさんが目を輝かせた。

「おおおお!! なんかいけそうな気がしてきた!! ……で、そのハンマー使いの候補は??」

 俺、数多くいる“達人ハンター”の顔を思い浮かべながら、Tさんにこう告げた。

「第一候補は……『4』からハンマーしか使っていない、辻本良三プロデューサー

「ぎゃああああああああ!!!!」という悲鳴がSkypeから漏れた。

「そそそそんな!!!! 畏れ多すぎるわバカタレが!!!!>< こんなヘッポコなふたりの手伝いに、そんな人を召喚していいわけがないだろ!!!><」

 ……いまなんか、俺までヘッポコの一員に加えられたような気がしたが、とりあえず無視して続けた。

「いや、良三さんだったら気軽に手伝ってくれると思うんだが……w でもまあ、キミが極度の人見知りってことも理解しているので、別の候補もリストアップしてある」

 Tさんが再びハシャギだした。「さすが!!!! それはどなた!?」。俺、若干言いよどみながらもその名前を口にした。

「め、目黒」

「ぎゃああああああああ!!!www」という笑い混じりの悲鳴がSkypeから漏れ出てきた。Tさんが言う。

「おにい(Tさんは目黒のことをこう呼ぶ)かー!w いやでも、キリンの角が折れるの??w 『逆鱗日和』を読む限り、あんま頼りにならなそうなんだけどww」

 俺、「ナルホド。それはもっともだ」と思い、さっそく目黒にSkypeをした。以下、俺と目黒の会話。

角満:目黒、『4G』って始めたかい?
目黒:3DSの充電は終わりました。

 こいつ、まだ始めてねぇな……と確信しつつも、話を続ける。

角満:たっちー(Tさんのこと)がキリンの角を欲しがっているんだけど、なかなか折れないんだわ。そこで、打撃武器の人に登場願いたいと思って。
目黒キリン!!www なつかしいwww
角満:まあ、目黒に折れるかどうか知らないけどw
目黒キリンの動きは読み切っています。無印の時代から!

 俺、(やっぱ無理だナ)と悟り、「あ、いいや^^; また今度な^^;」と言って目黒とのSkypeを打ち切った。

 さあ困った。下位キリンの角など一撃で粉砕しそうな悪魔の子たちの顔が頭の中を駆け巡ったが、一度彼らに頼ると一生たかってしまう自分の姿が想像できたので、その考えは締め出す。

「じゃあ、角満がハンマー使えばいいじゃん! 使えるんでしょう??」

 Tさんは気軽にそう言ってきたが、「ガンランスを1000回使うまでほかの武器には手をつけない」と心に誓っているので、その提案はすぐに「ヤダね」と却下した。

 さてさて、どうしようか……と考え込んでいると、いきなりTさんが「そうだ!!」と言って集会所を飛び出していった。そして数分後に「できた!!!!」と力強く叫び、↓こんな格好で戻ってきて……!

できたよ!!! フルボッコ!!!!!

 俺、飲んでいたコーヒーを「ブーーーッ!!!」と毒霧のように噴き出した。

フルボッコじゃなくてフクロダタキだろが!!!!! ……ていうか、使えもしないハンマーを作ってきちゃってからに……」

 Tさん、悪びれずにこう言う。

「あw フクロダタキかw 間違えちゃったww まあそれはいいから、キリンいこキリン!! 角なんてへし折ってやるぜ!!!

 でまあ、ハンマーを担いだTさんとふたりでキリン討伐に出向いたわけですが……。

 結果は……お察しください……

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投稿者 大塚角満 : 17:55

【MH4G】第18回 キリン事件(その2)

 前回の続き。

 Tさんのキリン装備を完成させるにはやっかいな部位破壊報酬である“キリンの雷角”が4本も必要だと判明し、我々の集会所にドヨドヨの雷雲がたれこめた。はたして俺とTさんのふたりで、キリンの角を破壊することは可能なのか!? おずおずと、俺はTさんに切り出した。

「あのさ……。雷角を手に入れるには、どうあってもキリンの角を破壊しなきゃいけないんだわ。なので極力、攻撃は頭を狙ってくれ。ショボい水滴も、いつかは岩に穴を開けるんだしさ……」

 ネガティブな俺の発言に、Tさんが噛み付いた。「ショボい水滴ってどういうことや!! やっちゃるで!!!」。

 というわけで、2回目のチャレンジ。1回目よりも徹底して頭部に攻撃を集中させ……ているつもりだったのだが、どう見てもキリンは「屁のカッパやな」てな表情をしている。この手応えのなさはまさに、暖簾に腕押しで雪に小便な風景……。いや、

「この場合は文字通り、馬の耳に念仏もしくは馬耳東風

 半ばあきらめてSkypeにそう書き込むと、Tさんが「うまいこと言ってないで、早く折ってよ!!」と金切り声を上げた。

 しかし、チャンスは完全に潰えたわけではない。『4G』にはハンター側の伝家の宝刀“乗り”があるのだ!! 乗り後にキリンを横倒しにできれば、しばらく頭部に攻撃し放題。ガンランスのフルバーストと竜撃砲、双剣の鬼人乱舞を叩き込めれば、いかに堅いキリンの角でもヒビくらいは入れられるのではなかろうか!?

「よし!! 我々の生きる道は“乗り”しかない!! 絶対に失敗はできぬ!!」

 フンドシを締め直して乗りのチャンスをうかがっていると、あろうことかTさんがキリンの背に飛び乗ったではないか! これまで、乗りは基本的に俺の役目で、Tさんがモンスターにしがみつく姿はほとんど見たことがなかった。それを、この極限状態でお披露目してくるとは……! 俺、日々成長を続けるTさんの姿に感涙を禁じえない。

「いつの間に乗りをマスターしたんだお嬢>< 俺はうれし」

 そこまで言いかけたところで、Tさんの分身がポイ〜〜〜ンと宙を舞ったのが見えた。開始4秒で背中にたかったクワガタ虫(双剣のことね)を振り落としたキリンは元気一杯で、Tさんに怒りの追撃を加えている。でもホトケの角満、Tさんに恨み節をぶつけることはしなかった。

「まあ、キリンは暴れ馬だからな。振り落とされても仕方ない仕方ない」

 俺はTさんの救出に走り、しばらくは無言でボコンボコンと砲撃をくり返したのだった。

 するとしばらく後、やたらと高台が多いエリアにキリンがエリアチェンジをした。ここならば容易く、乗り状態になることができるぞ。

よし!! 今度こそ、俺が!」

 Xボタンを叩く親指に力を溜めながらにじり寄ると、なんとまたまた、Tさんがキリンの背に飛び乗ったではないか!!

「うげ!! またやられっ」

 感嘆のセリフも言い終わらぬうちに、今度は2.6秒の早業でTさんがスポポポポ〜〜〜ンと空を飛んだのが見えた。

「!!!!!!」

 言葉をなくした俺はキリンを度外視してTさんに接近し、「くぬやろ!! くぬやろう!!! 乗ったなら倒しやがれ!!!」と怒声をあげながら炎の連続ローキックをお見舞いする。すると、あろうことかTさんが反撃してきて、狩り場は時ならぬ一大キックボクシング大会に……。これを、自分の存在を無視されたキリンが看過するわけもなく、「あたしをほっとくんじゃないよ!!」とばかりに巨大なカミナリを落として、アホなふたりを屠り去ったのであった。

 けっきょく2回目も、キリンの角を破壊することはできなかった。こうなったらいよいよ、“アレ”に頼るしかないだろう。俺は集会所で、Tさんにつぎの作戦を伝えた。

「お嬢、やむを得ないので、つぎは“爆弾”に頼ることにする。乗りのあとだったら十分置けると思うので、もしも乗ったら絶対に倒せよな」

 Tさんは、元気に頷いた。「おう!!! まかせとけ!!!」。どっからその自信が出てくるんだ……。

 しかし、“爆弾”という単語が出てきた時点で薄々オチは読めてしまったかもしれないが、この作戦は大失敗だった。……いや、事細かに作戦の骨子をTさんに伝えておけば“あの惨事”は防げたのかもしれないが、「ま、なんとかなるダロ」という、貯金ができない男の軽薄思考で臨んだのがマズかったのだ。

 俺が持ち込んだのは、ナケナシの大タル爆弾G(2個)だった。これをつねにアイテムウィンドにセットしていつでも置けるようにし、「俺が乗る!! おめーは見てろ!!」とTさんを牽制してからキリンの背に飛び乗った。そして数秒のロデオ後、計算通りにキリンを横倒しにすることに成功したのである!

「おっしゃ!! 爆弾いくぜ!!」

 ズザザザザと地面を滑る身体を立て直し、キリンの頭部に駆けつける俺。スキュラ装備で爆弾設置が神速になっているので、瞬時に2個の大タル爆弾Gを置くことができた。

 しかし。

「さあ距離をとって起爆だ!!」

 ……と振り向いた瞬間、2本の剣で斬りかかろうとするTさんの分身と目が合って……!!

 カッ

 ボボボボボボボボンッッッ!!!!!

 Tさんが力尽きました。

 俺、もう悲鳴しか出ない。

うわああああああ!!!!! ばばば、爆弾置いてるのに斬りかかんじゃねえよ!!!! バババ、バカぁぁぁああああ!!!><

 起爆の罪に問われたTさん自身が、ビックリ仰天しているようだった。「角満に言われた通りに頭を狙ったら、なんか爆発した!!!!」。爆弾に攻撃したんだから、当たりめーだろ。

 そんな、Tさんの身体を張った攻撃(?)でもキリンの角は折れることがなく(驚愕)、我々はいよいよ、窮地に追い込まれてしまう。うなだれて集会所に戻ってきた俺は、誰にともなくつぶやいた。

「こうなったらいよいよ、“アレ”に頼るしかないかもしれん……」

 爆弾作戦のときにも同じことを言ったような気もするが、もうそれは忘れてください。

 我々がとった、最後の手段とは……?

 キリンのお話、もうちょっとだけ続きます。


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投稿者 大塚角満 : 15:08

【MH4G】第17回 キリン事件(その1)

 まるで“麒麟児拳”という一子相伝の必殺技みたいな記事タイトルだが、そんなかっこいい話ではないです。

 例の如く同僚のTさんと下位のクエストをこなしていたある日。クエストから戻るたびに「見て見て〜〜〜!! お姫様みたい〜〜〜!!」と若干無理あるセリフを発しながらレイア装備を見せびらかしていたTさんが、ピタリと踊りやんで「あ」と言った。「ん?」と思って画面を見ていると、Tさんがチャットでこんなことを言ったではないか。

「そういえばこのあいだ“レイア装備がかわいい”って教えてくれたとき、もうひとつ何か言ってたよね?? なんだっけ?」

 ああ……と思い出して、俺は答えた。

“キリン”だね。ドレスのようなレイア装備とは違う、露出が多めの野生的なコスチュームって感じだよ」

 言いながら、俺はキリン装備の画像をTさんにメールした。するとすぐに、

なにコレ!! 馬じゃん!!! 野生的すぎるよ!!!><」

 という予想通りの反応が来たので満足し、「ごめんごめんw それ、男性用装備だった」と白々しく言い訳をしてから女性用キリン装備の画像を送ってあげた。すると。

キタ>< 私、この装備にする>< ……さっそくキリンに連れてけ!!!!

 というわけで、長く、きびしい道のりとなった“キリンの素材集め”の旅が始まった。

 とはいえ、俺もTさんも通常のクエではキリン討伐は出ていないので、ギルドクエストを利用することにした。たまたますれちがい通信で下位のキリン討伐を手に入れていたので、「ここぞ!!」とばかりに投入したわけだ。Tさんは、キリンを見るのも触るのも初めてなので大いに戸惑うだろうが、レベル6の赤ん坊のようなクエストなので、まあなんとかなるだろう。

 ベースキャンプに降り立ち、あたりに散らばっている応急薬やら携帯食料やらをあらかた回収してから、我々はフィールドに飛び出した。ふたりでギルドクエストに出向くのは初めてだったので、雰囲気の違うフィールドにTさんが慌てふためくかと思ったが、村クエで何度か経験しているらしく、Skypeで何も言ってこない。

「じつに平和だ。静かでよろしい」

 そんなことをつぶやきながらエリアチェンジをくり返していると、まもなく、神秘の幻獣が目の前に現れた。その瞬間、Skypeがけたたましくわめき出す。

ちょ!!! なんかいる!!!! ビカビカ光ってる!!!!!

 俺は「騒がしくなってきたナ」と独り言を言いつつ、「あれがキリン」とシンプルに返事。さあさあ、無印時代からの因縁の相手、幻獣・キリンとの生存競争のスタートだ!

 ガンランスを構えた俺は、「キリン相手となれば……やっぱコレだな!!」と鋭く言い捨て、砲撃を中心に立ち回りを組み立てていった。かつては大剣やハンマーで振り向きざま狙いの強引な立ち回りでどうにかしようとし、それでもラチがあかないときはボウガンを持ち出して強引にケリをつけていたキリンだったが、ガンランスを手にしてからはそれらに頼ることもなくなった。

振り向きざまに砲撃ッ! 踏み込んでの砲撃ッ!! それでもダメなら竜撃砲ッッ!!

 そう、ガンランスの砲撃が、おもしろいようにキリンにダメージを与えてくれることに気がついたのだ。気合の火炎に身を焼かれ、角からチリチリと煙を上げる白き幻獣。これを見るに、ガンランスほど対キリンに適した武器はないんじゃないかと考える。

「……まあ俺、『2(ドス)』以降はガンランス以外の武器にほとんど触ったことがないから、よくわからんけどナ」

 フフフとニヒルに笑いながらキリンと対等に渡り合い、余裕の体で相方のTさんのほうに目を向ける。すると彼女はちょうど、ガキーンと攻撃を弾かれてノックバックし、無防備な脳天に雷を落とされ、さらに追撃の突進を受けてピヨピヨのフラフラ状態になったところだった。俺が、

「あ」

 と思ったときには時すでに遅く、「Tさんが力尽きました」の文字が画面に表示されてしまう。その瞬間に、ガアガアガアとSkypeが騒ぎ出した。

「堅っ!!!! 強っ!!!! こいつ、あかんヤツや!!!」

 Tさんである。初見ということも手伝ってか、彼女はキリンのあらゆる攻撃をモロに食らい続けていたので、オチるのは時間の問題だろうナと思っていた。そしたらまんまとキリンの“地獄送りフルコース”を食らって昇天したので、俺は思わず、「うは!!! 必勝パターンがものの見事に決まって、キリンはいま感動に打ち震えているだろうなwww」といって笑った。

 しかし、笑ってばかりもいられない。レベル6程度で苦しんでいたら、この先のギルドクエストはほとんど全滅ってことになってしまう。俺はアイテムリストからトッテオキの秘薬を選択して“渡す”を実行。我が分身の手のひらで、秘薬がピキーンピキーンと光りだした。仕方ないから、大事な大事な秘薬をキミにあげよう。これを飲んで体力満タンで復活し、キリンに目にモノを見せてやるのじゃ!!

 しかしTさん、何を思ったのか、アイテムを手渡そうとする俺の分身を「げしっ」と蹴飛ばしてきたではないか。

「おいおい。ボタンを間違えているぞ。しっかり受け取れよな」

 再び秘薬をピキーンピキーンと光らせると、Tさんまたまた「げしっ」と蹴っ飛ばす。

 ピキーン

 げしっ

 ピキーン

 げしっ 

 ピキーン

 げしっ

 ピキーン

 げしっ

 ……ってナニしてんだこの女は!!!!(怒) さすがに我慢という名のダムは決壊し、俺は怒りの大放水を行った。

「てめ!!! 蹴っ飛ばすんじゃねえよ!!! アイテム渡そうとしてんだ!!! とっとと受け取れや!!!!(怒怒)

 するとTさん、悪びれずにSkypeでこう返す。

「えw ごめw 何かの合図だろと思ったんだけどわからなくて、とりあえず蹴っ飛ばしてみた^^;

 とりあえずでローキックかますんじゃねえよ!!!!

 そんなふざけたやり取りをしつつも、レベル6キリンはほどなく討伐。残念ながら角を折ることはできなかったが、いくばくかの素材は持ち帰ることができたぞ。俺は、「楽勝すぎる!!!」とはしゃぐTさんになにげなく声を掛けた。

「誰かが1オチしたから楽勝ではなかったけどな。……ところでお嬢、キリンの素材ってどれくらい必要なの?」

 言われてすぐに加工屋に確認に走ったらしく、しばらく後にTさんが答えた。

「えーっと……“キリンの雷角”ってのが必要みたい。出なかったんだけど、これってレア?」

 俺の頬を、冷や汗がツツーッと伝った。俺は重ねて、Tさんに尋ねる。

「雷角は部位破壊報酬なんだが……何本必要??」

 なんの危機感もなく、Tさんはシレッと言った。「4本」

 ……はいはい始まりましたよ!! いま必死に狙って折れなかった角が4本も必要とかいう、修験者も裸足で逃げ出す素材探求の難行荒行が!!!

 以後しばらく、俺とTさんはひたすらキリンを追い回すことになるのだが……。

 以下次回。

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投稿者 大塚角満 : 17:18

【MH4G】第16回 マイナスは、どこ行った?

 今日は短くまとめる。

 前回の記事で、同僚の美人ドSゲーマー・Tさんがまんまとレイア装備を完成させた……という忌まわしき(?)記事を書いたが、若干その続きとなる。

「わーい! レイアだレイア! レイア装備できたー!!」

 それまでの無計画極まりないメチャクチャな格好から一転、可憐なレイア装備一式に身を包んだTさんは、いつまでもうれしそうに集会所を走り回っていた。確かに我が身を振り返るに、初めて統一性の取れた装備に身を包んだときは、同じように仲間に自慢しまくっていたっけ。俺のときは、確か……。

 脳内に、10年前の出来事がフラッシュバックした。

「……あ、思い出した。俺は“ランゴ装備”を一式作って、仲間から“虫臭い”とか言ってバカにされたんだった……」

 ランゴスタという、ブナハブラに似た巨大昆虫の素材を熱心に集めて、どうにか全身をその装備で覆ったんだよな。でも、完成したルックスはどっからどう見ても“人間ランゴスタ”と言える二足歩行の巨大な虫で、俺がいたロビーのチャット窓は「wwwwwwww」という笑いマークで満たされたんだよなぁ……。

 シミジミと当時の思い出を噛み締めていると、喜びのダンスを踊るTさんが「クエストに行こうよ!!」と言ってきた。レイア装備で、フィールドを駆け巡りたくて仕方がないらしい。

「完全に、新しいジャージを買ってもらったばかりの小学生だなwww」

 と笑いつつ、俺はTさんに言葉をかけた。せっかくなのでこの機会に、“スキル”の説明をしようと思ったのだ。

「クエストに行く前に、そのレイア装備をより完璧なものにしようぜ」

 そう前フリをし、俺は説明を続ける。

「レイア装備を揃えたことにより、いまお嬢は“体力+20”、“火属性攻撃強化+1”、そして“回復速度−1”っていうスキルが発動しちゃってると思う」

 Tさんが頷いた。「うむ。なんかよくわからんが、そういうことになったらしい」。俺は言葉を続けた。

「プラスがついているのは、基本的に“いいスキル”。そしてマイナスのは“悪いスキル”だよ。とりあえずプラスのほうは置いといて、マイナススキルは消したほうがいい」

「ほうほう」

 とTさん。俺は核心に迫った。

「加工屋に行って、“装飾品”を見てみ。そのリストの中に“早復珠”ってのがあるから1個作って、レイア装備の空いている穴にハメてもらいな。そうすれば、マイナススキルが消えるから」

 噛んで含むような俺の説明を聞いてすべてを理解してくれたらしく、Tさんはひと言「わかった!!!!」と言った。そして、「装飾してくる!!!!」と元気にわめいて集会所を飛び出していったのだった。

 そして、数分後。

「装飾してみた!!!!」

 というチャットが届いたので、「どれどれ」とTさんのステータスを覗いてみる。するとナルホド、さっきまでついていた回復速度−1が消え、プラススキルだけになっているではないか。俺はうれしかった。飼いネコがトイレの作法を覚えてくれたのを見たときと、同じようなヨロコビだったかもしれない。

「よくできました!! エライエライ!!」

 そう褒めつつ、なんとなくステータス画面の右のほうに目を向けた。

 そして俺は、石像と化す。そこに、メドゥーサが潜んでいたのかもしれない。

 Tさんの装備一覧は、こうなっていたのだ。

 石と化した口を、俺はビキビキと強引に動かした。

「お、お嬢さん? なんで穴が全部埋まっているの……? キミはいったい、何個の早復珠を作ったの……??」

 シレッと、Tさんが答える。

ありったけ作ったよ!!! おかげでマイナスがめっちゃ減ったわ!!」

 俺はたまらず、「うわあああああああ!!!!」と悲鳴を上げた。

「なんでありったけ作るんだよ!!! 1個でいいんだ1個で!!!>< ……って、武器穴にまでハメちゃって!!! そりゃマイナスも減るわ!!!><」

 言われたTさん、テレ隠しのためか、

「えへへ」

 と笑い、

まあいいじゃん!! クエストいこクエスト!!!」

 と言って、ガツガツと飯に食らいついたのだった。

 おしまいw


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投稿者 大塚角満 : 14:22

【MH4G】第15回 物欲センサー、健在なり

 まだ下位の話ですので、G級のツワモノたちはサラッと読み流すことをオススメします。

 とある日。

レビなんちゃらが欲しい」、「なんちゃらクリスタルを取りに連れてって」、「なんちゃらなんちゃらって、どこにあるの?」という、もはや火星語とも言えるTさんの言に従ってクエストをくり返すうちに、いつの間にか我が懐がぬくぬくと温かくなってきた。そう、下位ハンターとは思えぬほどゼニーが潤沢になってきたのである。

 こうやって小金が貯まるとすぐに何かを買いたくなるのが大塚角満という男で、先日もン万円もするロードバイクをペロンと購入してしまったのだがそれはまったく関係のない話でした。

 えーっと、何が言いたいのかというと、資金に余裕が出てきたら武器を新調したくなるのがハンターの性なので、俺は素直にそれに従い、新たなガンランスを作ることに決めたのである。何に目をつけたのかと言うと……。

「ここはやはり……“プリンセスバースト”しかないでしょう!! 毒武器最高!!!」

『逆鱗日和』のディープな読者の方だったらご存知かもしれないが、俺は無印(初代『モンハン』のこと)の時代から毒属性の武器が大好物。仲間が麻痺武器で必死になってモンスターの動きを止めようとしている傍ら、コッソリと持ち込んだ毒の武器でモンスターを紫泡コポコポ状態にして「うひひひひ。毒った毒った」とほくそ笑んでいたのである。

 プリンセスバーストは、そんな毒属性のガンランスである。骨銃槍からの派生で作ることができ、大骨銃槍→ジャギィガンランス→プリンセスバーストと強化の道をたどる。“プリンセス”の冠からもわかる通りメインの素材はリオレイアで、さらなる強化を促すには大量のレイアの素材が必要になる。そこで俺は、頭はウルク、胴はジャギィ、腰はザボアで脚はアロイという、ちんどん屋さんも裸足で逃げ出す斬新な格好をしているTさんに言った。

「お嬢、ぼちぼち防具を揃えて、スキルを考える時期に来たかもね」

 言われたTさん、きょとんとした表情で答える。

「スキル〜?? それはよくわからんけど、着替えるならかわいい防具がいいなぁ♪」

 ここぞとばかりに、俺は畳み掛けた。

「かわいい女子装備といえば、無印の時代から“レイア”と“キリン”と相場が決まっておる!! キリンはまだちょっとアレなので、レイア装備を揃えたらどうか!!」

 するとしばしのあいだ、Tさんの動きが止まった。ん? 何をしているんだ……? と思ってTさんのキャラのまわりで踊っていると、いきなりSkypeがガァガァと鳴った。

レイア装備かわいいぃぃぃぃ!!>< 私、これ作る!!! さあ早く連れていけ!!!」

 どうやらネットで、レイア装備を検索していたようだ。俺は渡りに船だとばかりにニヤリと笑い、リオレイアの討伐クエストを貼ったのだった。

 そして。

 プリンセスバーストは、簡単に作ることができた。これにより、念願の毒属性武器を手に入れることに成功したのである。

 しかし、下位でもまだまだやれることがある。俺はTさんに、さらなる発破をかけた。

「お嬢、しばらくレイアのクエストを回して、可能な限り素材を集めよう!! 今日中に全身の装備を作ることはできないだろうけど、明日につなげるのじゃ!!」

 言いながら、俺は心のうちでつぶやいていた。

(逆鱗が出るまで、帰れまてん……)

 そう……。

 プリンセスバーストをプリンセスバースト改に強化するには、“序盤のツチノコ”とも言われる(誰にだ)激レア素材、“雌火竜の逆鱗”がどうしても必要なのだ。俺の引きの悪さを考えると、プリンセスバースト改を作るまでに何体のリオレイアを狩る必要があるのかさっぱりわからない。でも、じつはTさんが目指すレイア装備にも雌火竜の逆鱗は必要なので(腰装備に1個必須)、俺はいつまで経っても腰だけ作れずに泣く彼女の姿を想像し、それをモチベーションにすることに決めた。

「Tさんがレイア装備を完成させる前に、プリンセスバースト改を作ってやるぜ!!」

 画面に向かってそう叫び、俺は再びリオレイア討伐クエストを貼ったのだった。

 それからしばらくのあいだ、俺たちはひたすらリオレイアを狩り続けた。当初、同じクエストが続くことにTさんが辟易し、「またレイア〜? もう違うクエストやろうよ〜><」と泣き言を言うんじゃないかとヒヤヒヤしていたのだが、

「よし、つぎ!!」

「レイアァァァァァアア!!!!」

「もういっちょ!!」

「レイアァァァァァアアッッ!!!!」

「まだいこう!!」

「レイアァァァァァアアッッッ!!!!」

 てな感じで、Tさんの勢いはまったく衰えない。逆にこっちが気を遣って、「ここで一度、違うクエストをはさんでもいいよ?」と言ってみたが、彼女はプルプルと首を振って、「レイアいこ!! レイアレイア!! この子、超楽しい〜〜〜!!!><」とすっかりレイアの虜になった様子。俺は、10年前に始めてリオレイアと対峙したときのことを思い出し、

「やはりハンターは、誰もが一度はレイアに魅せられるんだなぁ……。ホント、こんないい女はなかなかいないもんな」

 とつぶやいた。

 さて、そんなリオレイアの討伐数が5体になっても、雌火竜の逆鱗は出てくれなかった。やはり、序盤のツチノコは、そうそう安っぽくは出てくれないんだな……。

「でも」

 と俺は低い声を出した。

 これがモンハンなのだ。

 これが火竜の逆鱗なのだ!!!

 誰もが欲し、誰もが憧れる激レア素材だからこそ、俺は記念すべき1冊目の単行本に『本日も逆鱗日和』という名前をつけたのである。

「簡単にポロリと出ちまったら、それこそ逆鱗の名が廃るってもんだ。出ないからこその逆鱗!! 届かないからこその逆鱗っ!!!

 集会所で厨二っぽくわめいている俺の目の前を、Tさんのキャラクターがパタパタと駆けていった。かわいらしく膨らんだ、真新しいスカートを身に着けて……。

 その姿を見て「ひっ!」とうめいた俺、鼻と目から飲んでたビールを噴出させた。

ぢょッ!!! お、お嬢!!! そそそ、そのスカートはどうした!!? なんでレイアフォールドをはいてるんだよッ!!!!!

 驚くのも無理はない。レイア装備で唯一、素材として雌火竜の逆鱗を求めるのが、このレイアフォールドなのだから……。驚き、暴れる俺に向かって、Tさんは不思議そうな声を出した。

「なんで……って、作れたからだよwww このスカート、超かわいい〜〜〜!!>< あ、ちなみに、全身レイア装備になったよ^^ 最高^^」

「あうあうあう!!」と、俺は声にならない声を出した。

ちょっと待てや!!! キミ、逆鱗出たの!? いいい、いつの間に!?」

 しばしの間をおいて、Tさんがこの日のトドメのフルバーストをぶっ放した。

「雌火竜の逆鱗ってやつだよね?? いま見たら、2個あるよ^^ さっき装備で使ったから、3個あったみたいだねー♪」

 もう、泣き叫ぶしかなかった。

「物欲センサーさん、もうカンベンしてくださいぃぃぃぃいいいい!!!><」

 またこの超高性能センサーに悩まされる日々が始まるのか……。

 ちなみに、その後3回ほどリオレイアのクエストを回して、俺もようやく“逆鱗の美酒”に酔うことができたのでした。


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投稿者 大塚角満 : 14:39

【MH4G】第14回 リーサルウェポン、参戦す!

『逆鱗日和』シリーズを熱心に読んできてくれた読者の皆様。

「『逆鱗日和』各巻の、“前半”のレギュラーと言えば?」

 と問われたら、誰を挙げますか?

「達人のWちゃん

 おお。初期も初期、初代『モンハン』や『2(ドス)』を遊んでいたときに、つねに俺のまわりにいたネット友だちのWちゃんを知っておられるとは! なかなかマニアックですなあ。

女尻笠井っていたよね」

 おおお! 女尻笠井は俺の元部下&後輩で、やっぱり無印や『2(ドス)』のころにずっといっしょに遊んでいたんだよなー。あのころはまだお互いに若く、時間もあったので、会社の机に設置したプレイステーション2に齧りついて、仕事中に狩りにいそしんでいたっけ……。懐かしいなぁ。あいつ、元気でいるのかな。身体壊したりしていないかな……って、笠井はいまもファミ通Appで働いているんだけどな。

 さてそんなふたりよりも遥かに頻繁に、かつ、本当に『逆鱗日和』の前半“だけ”に登場する稀有なキャラクターが存在する。

 ……はい、もうおわかりですね。熱血パズドラ部や動画番組“これ、知ってる?”などでもおなじみ、ファミ通Appの編集長、中目黒目黒がその人だ。

『モンハン4G』の発売を前に、俺は目黒に尋ねた。「『4G』が出たら、やるのかい?」と。すると目黒、鼻の穴を膨らませて「なに言っちゃってるんすか!!」と吐き捨てたあと、憤ったフリをしながらこんなことを言ったではないか。

やるに決まってるじゃないっすか!! 俺はこう見えて無印からず〜〜〜っとプレイしている、貴重な“モンハン皆勤賞”の男ですよ。当然、『4G』もやります!! やってやろうじゃないですか!!!」

 確かに目黒は、10年前の初代『モンハン』の発売日からプレイしているベテランハンターのひとりである。しかし、ベテランなのは間違いないのだが、この男はゲームの決まりごとだとか特徴といったものをいっさい覚えようとしないので、知識と実力は永遠にルーキーハンターのままなのだ。モンハンの新作が出るたびに俺は目黒に、「大塚さん、モンハンって属性の概念ありましたっけ?」とか「やべえ!! レイアのサマーソルトに毒の判定が入りましたよ!!」などと言われ、まるで覚えの悪いイヌにおすわりを教えるかのように、「目黒ちゃん、属性は無印からあったよね」、「サマソルの毒も最初から入ってたよね」と噛んで含むように教えている。しかし目黒は、モンハンのつぎの作品が出るころにはそれを忘れてしまうので、また再びイチから、「属性は……」、「サマソルは……」といった授業をすることになるのであった。

 そんな目黒が『4G』の封を開けたのは、ついさっき(3時間ほど前w)のことである。なんやかんやと理由をつけていまのいままでパッケージを開けていなかったのだが、ようやく重い腰を上げたようだ。その目黒がSkypeで、こんなことを言ってきた。

「大塚さん、『4』のデータって引き継いだほうがいいですよね? 俺、けっこうやってた記憶がありますし」

 目黒といっしょに『モンハン4』を遊んでいた1年前のことを思い出しながら、俺は冷たく言う。

「けっこうやってたって…………目黒がやってたの、闘技大会のクック討伐だけじゃんwwww “狩王決定戦に殴り込みましょう!!”とか言って。けっきょく東京予選で惨敗して、そのまま目黒は『4』からフェードアウトしたんじゃねえかwww」

 そうなのだ。なぜか俺と目黒のふたりで「狩王決定戦に出よう!」ということになり、予選の種目だったイャンクック討伐のタイムアタックだけを毎日のように練習していたのである。そしてそれが終わり、「さあこれからふつうの狩猟人生の始まりだ!」って段階で目黒の姿はバルバレから消え、いつの間にか誰の口の端にも乗せられなくなってしまった。つまり、目黒が『4』のデータを引き継いだところで得られるのは大量の生肉くらいで(闘技大会の報酬ね)、大勢に影響はほとんどない。俺はそれを指摘して、

「目黒の場合、引き継ぎをしてもしなくても同じだと思いますけどwww」

 と笑うと、目黒は寂しそうな表情で、

「でも……。生肉が……。生肉がぁ……><」

 とうなだれるのであった。

 でまあ、けっきょく目黒は引き継ぎをせず、俺と同様にイチから『4G』のプレイを始めた。そしてつい先ほど、

「いまオープニングが始まりましたよ〜!!」

 という興奮気味のSkypeに続き、「!!!!!!!」と大量のビックリマークがSkype窓に貼り付けられる。ナンダナンダ。何があったんだ?? と思っていると、目黒はこんなことをつぶやいたではないか。

ディ、ディアブロスがサボテン食べてる……!! こいつ、こんな顔して草食動物だったんすか!!?

 ああ、そこかw 俺はコクコクと頷いた。「うまそうにむさぼり食ってるよねえ」。

 目黒の、どこかズレたSkypeは続く。もっとも驚いたのは、つぎのセリフだった。

「いまオープニングを見終わりました! 最後に出てきたのが、『4G』の象徴っぽいですねえ。いかにも、ひと癖もふた癖もありそうなヤツだなぁ〜!!

 俺、会社の自席で盛大にズッコケた。

「オマエ……まるで初めてそいつを見たようなこと言ってるけど……東京ゲームショウで体験プレイしたじゃねえかよ!!!www セルレギオスだよセルレギオス!!!www」

 東京ゲームショウ2014のカプコンブースで、俺、目黒、笠井、そして江野本ぎずもの“真・逆鱗日和ファミリー”の4人で、セルレギオス討伐を体験させてもらっていたのだ。言われた目黒、しばし (・_・;) ←こんな顔で石仏化するも、すぐに我に返ってテキトーなことをのたまった。

「あー、そういえばwwwww」

 コイツ、絶対に覚えてねぇな……と確信しつつも、今後は俺と目黒、そして同僚の美人ドSゲーマー・Tさんの3人で狩猟生活を送ることになりそうだ。

 ……だ、ダイジョブかなぁ。

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 何度かお伝えしてきましたが、9月26日に3年ぶりの刊行となる『逆鱗日和』シリーズの新作、その名も『本日もやっぱり! 逆鱗日和』が発売となりました!! 過去7作の『逆鱗日和』から選りすぐりのプレイ日記78編(!)を抽出した傑作選となっておりますが、もちろん! 書き下ろしもたっぷり収録!! モンハンショートショートあり、藤岡要ディレクターとのロング対談ありと、過去作を持っておられる方も楽しめる造りとなりました! シリーズ初の文庫サイズとなり、持ち歩きも楽チンになりましたので、興味のある方はぜひとも手に取ってみてください!

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投稿者 大塚角満 : 15:16

大塚角満

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週刊ファミ通副編集長にして、ファミ通グループのニュース担当責任者。群馬県出身。現在、週刊ファミ通誌上で“大塚角満のモンハン研究所”というコラムを連載中。そこら中に書き散らした『モンハン』がらみのエッセイをまとめた単行本『本日も逆鱗日和』シリーズ(4巻)が発売中。また、そこからのスピンオフとして別の視点から『モンハン』の魅力に迫る書き下ろし作品『別冊『逆鱗日和』 角満式モンハン学』シリーズも。このブログではさまざまなゲーム関連の話題を扱うつもり。一応、そのつもり。


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