大塚角満の ゲームを“読む!”
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遠くにいたら触手にぶっ叩かれ、近づいたら谷底に転落する……。
この、行くも地獄、退くも地獄な爛れ続けるものとの一戦は、正直自分が勝利するイメージがまったく湧かなかった。どっからどう見ても相手のほうが格上の風貌をしているし、何より身体のサイズが違いすぎる。強力な遠距離魔法でもあればまったく違う戦況になるのだろうが、こちとら、ときたま触手を「えいえいっ」と斬るくらいで決定的なダメージを与えることができない。しかも、触手の叩き付け攻撃をまともに食らったら瀕死の重傷なのである。これまで何度も窮地を救ってくれた火炎壺も、炎の化身のような爛れ続けるものには、まったく効果がないだろう。ダメージを与えるどころか、逆に強くしてしまうかもしれない。
「火炎壺ならぬ“水壺”なんていう便利アイテムはないのか!!」
光の入り口の前で、俺はしょうもないことをわめき散らした。
しかし、いくら待っても水壺は手に入らなそうだったので、俺はしぶしぶ光の入り口に入っていった。勝ち目がなくとも立ち向かわなければならないのが、聖騎士の辛いところである。
「いやだからw あんた聖騎士じゃなくて山賊でしょwww」
Hの発言に対し、俺はパタリと耳を塞いだ。
爛れ続けるものとの戦闘ポイントは、黒金糸装備が入っていた宝箱の近辺となる。ここはちょっとした広場のようになっており、立ち回りがしやすいのだ。しかし遮るものが何もない場所だけに、爛れ続けるものの触手が容赦なく襲い来る。この場所に長時間滞在するのは、危険極まりない行為と言えた。
「うーん」
その広場の手前にある小山の裏で、俺は腕を組んで考えた。ここは小山が盾の役目を果たしてくれるおかげで、さすがの触手も当たらない。いわゆる“安全地帯”なのだが、ずっとこの場所に留まっていると互いに不干渉ということになり、どちらも死ぬことなく永遠に逗留し続けなければならなくなる。いや、いつかは生身の人間である俺が、餓死して朽ち果てるに違いない。
しびれを切らした俺は、小山の裏にある細い道を広場に向かって歩き出した。すると思った通り、道から広場に1歩出た瞬間に、爛れ続けるものの触手が上空から降ってくる。
「わあああああ!! やっぱダメだ!!」
慌てて後方に転がって、触手の直撃を避ける。安全地帯の小山の裏に入ったので、追撃を受けることもないだろう。あー助かった……。
……って、あれ? 待てよ?? コレ、もしかしてイケるんじゃないか……?
おぼろげな作戦を思い付いた俺は、小道を通って広場とは逆側の入り口に向かった。するとすぐに爛れ続けるものに気付かれ、再び触手が襲ってくる。
ズガーーーーンッ!!!
凄まじい破壊力により、画面が土煙で覆われる。しかし俺は、触手が叩き付けの予備動作をした瞬間に山の裏に逃げ込んだので、当然ながら無傷である。これなら、ダメージを受けることはない。しかし、作戦はこれで終わりではない。俺は×ボタンを押してダッシュをくり出し、触手に肉薄して黒騎士の斧槍を振り回した。
「いけえええ!!! オラオラオラッ!!!」
ザクザクと攻撃が刺さり、若干ながら爛れ続けるものの体力が減った。それを見た俺はすぐに山の裏に取って返し、今度は広場側の入り口に向かう。すると爛れ続けるものは気配を察知し、またまた触手を叩き付ける予備動作を行った!
「わああああ!!! 逃げろ逃げろ逃げろ!!!」
山の裏に逃げ込む俺。すると背後の地面に、触手が叩き付けられた音がした。それを合図にクルリと振り返り、×ボタンでダッシュ!! 再度触手に接近し、黒騎士の斧槍をブン回した。この立ち回りを見たS君が、歓喜の声をあげる。
「おおおおおっ!! なるほど!! これはいい!! 安全地帯の山の裏を活かした、安全便利な作戦だねっ!!」
ニヤリと笑って、俺は言った。
「リスクは最小限に!! もしも1発食らっても、山の裏に逃げ込めばダイジョーブ!! これぞリスクヘッジ!! キーワードはリスクヘッジッ!!」
まあ、我ながら意味がよくわかりませんが(笑)。
この作戦の弱点は、一気に大ダメージを与えることができず、ひたすら根気よくチクチクと触手を削って体力減らすしかない……ってところだが、バクチを打って失敗し、何度も何度も死に続けるよりはよっぽどマシだ。
けっきょく俺は10分以上もこの立ち回りをくり返し、どうにかこうにか爛れ続けるものを討ち果たすことに成功する。長く、そして何よりも“熱い”戦いでありました……。
〜後日談〜
その後、2週目に突入したS君が爛れ続けるものと対峙したとき、「そういえば、こいつを一瞬で倒して退ける方法があるのを知ったよ〜」と言って、“ある作戦”を実践して見せてくれた。それを見た後の、俺のひと言。
「俺の、あの苦労はなんだったんだ…………」
いろんな立ち回りがあるものです(苦笑)。
デーモン遺跡に陣取るデーモン“爛れ続けるもの”は、その巨体が発する迫力だけで人が殺せるんじゃないかと思えるほど、圧倒的な存在感を放つ。前回、“爛れ続けるものと比べたら人間なんてカナブン程度のもの”と書いたが、より間近でその威容を見ると、「カナブンなんて……おこがましすぎる!!」と思ってしまうから恐ろしい。それくらい、爛れ続けるものには威厳がある。彼(彼女かもしれんが)と比べたら俺なんて……打ち損じて「クシャ」ってなっちまったホチキスの失敗針みたいなものですわ>< ……って、どこまで卑屈になってんだって感じですがね。
まあとにかく、それほど大きくて存在感のある爛れ続けるものと戦闘になったわけです。こいつはエラいことだ。
しかし、強力な遠距離攻撃を持たない俺にできるのは、相手に接近して黒騎士の斧槍を突き立てること。これしかない。なのでどれほどビビっていようが、懐に飛び込まない限り勝機はないのである。
そこで俺はがっちりと盾でガードをしながら、爛れ続けるものに接近を試みた。体力は満タンだったし、盾の受け能力もなかなかのものだったので、予期せぬ攻撃が振ってきたところでしばらくは持ちこたえられるだろうと思っていたのだ。そんな俺に向かって爛れ続けるものは、右肩あたりからワシャワシャと生えている触手の1本をグイと持ち上げ、思いっきりそいつを叩き付けてきたではないか! 俺、盾でしっかりとその攻撃を受け止めて……と思ったところで、画面に意外なメッセージが表示された。
「YOU DIED」
ちょ…………。この叩き付け攻撃、一撃死かよっ!!! このゲームをプレイし始めてから何度目になるのかわからないが、またもやドス黒い暗雲が俺の空(かっこいいな)に広がった。
死にはしたがそれでも、俺には収穫があった。それは例の、爛れ続けるものが動き出すきっかけとなった宝箱のブツ、黒金糸シリーズの装備である。これ、ステータスを見て驚いたのだがとんでもなく優秀な防具で、物理防御力はもちろん、各種耐性(とくに火)も、それまで着ていた防具が安宿の浴衣に思えるほど抜きん出ていたのだ。見た目こそ好みの分かれるところだろうが、これほどの才能を「ルックスがちょっと……」などというつまらぬ理由で切り捨てるわけにはいかぬ。俺は才能至上主義なのだ。強ければそれでいいのだ。
俺は「ナノダナノダ♪」とゴキゲンに歌を歌いながら、全身を黒金糸装備で覆った。火耐性に優れる防具なので、これで爛れ続けるものに少しは対抗できるだろう。しかし、黒金糸装備に身を包んだ我が分身の姿を見て、Hが不満の声を上げる。
「ちょっとー。やめなよ、黒金糸を着るのは」
ん? なんでなんで? これほど優秀な黒金糸装備に、何か弱点でも? 不思議に思って、俺は聞いた。「なんで黒金糸はダメなの?」と。これに、Hは不機嫌そうに答える。
「私とS君のキャラも、全身黒金糸なのよ! 3人とも同じになったらつまらないでしょ!! だから、あんた脱ぎなよww」
なんで現在進行形で炎の怪物に手こずっている俺が脱がなきゃならんねん!!! 俺はHの発言を「ハイハイ」と聞き流し、2度目の挑戦に向かった。
しかし、黒金糸に身を包んだ2回目の挑戦でも、触手の叩き付けが直撃した我が分身は天に召されてしまった。さすがにあれだけの巨体からくり出されるパワーを前にしたら、ちょっとくらい物理防御力と火耐性が上がったくらいではウデムシの小便ほどの効果もないらしい。
ここから俺は、余裕で10連敗くらいした。何度か、叩き付けられた触手が地面にめり込んでいるうちに攻撃をし、ほんのちょっとだけ爛れ続けるものの体力を削り取ることができたが、その程度ではヤツは、指にトゲが刺さった程度にも痛みを感じていないことだろう。この微々たるダメージも、ずーっと続けて蓄積できればいずれ勝てるのだろうが、それまで触手の攻撃を避け続けられる自信がまるでない。1発でも当たったら死ぬ弾丸をかわしながら、100回以上素手で殴らなければいけないようなものなのだ。これは、ちょっとキツすぎる。
そんな、苦闘する俺に向かって、S君がこんなことを言った。
「俺も、メチャメチャ苦労したんだよねコイツ……。呪術師の炎なんてまったく効かなかったし……。どうやって倒したのかよく覚えていないんだけど、思い切ってヤツに密着しちゃうのってどうなんだろう? 意外と、触手攻撃の死角になってるんじゃないかな?」
俺は、天啓を得たかのように顔を輝かせた。「そうだっ!!! それしかないっ!!!!」。
S君の助言を胸に抱いた俺は、10数回目の挑戦に出発した。大男は手足が長いので、密着されてしまうと急に戦いづらくなるものだ。かつて横綱の曙が、幕内最小・最軽量の舞の海に懐に潜り込まれ、何度も苦杯を舐めていたことを俺はよく知っている(相撲好きなだけ)。
「キーワードは舞の海だっ!!」
と俺は吠えた。
爛れ続けるものの前に立った俺は、脇目も振らずに巨体目掛けて走り出した。触手が当たらない懐に入り、好きなだけ斬り刻んでやる。そんな野望に突き動かされて。しかしつぎの瞬間、野望はただの儚い夢だったということをオノレの死をもって理解する。
ぴゅるるるるるぅぅぅ〜〜〜〜〜…………。
「YOU DIED」
あ…………。
大地と爛れ続けるもののあいだ、崖になってたのね……。ハ、ハハハハハ……。
こんな体たらくで、俺はどうやって爛れ続けるものをクリアーしたのか?
次回に続く。
デーモン遺跡と呼ばれるこの場所は、確かに遺跡の名残と思われる建物の残骸が転がっているものの、基本は赤熱の大地と、それを照らす溶岩に覆われた火山地帯のように見える。赤い空間は茫漠で、眼下に広がる溶岩の海はどこまでも広い。
生身の身体でこの溶岩に触れたら、きっとひとたまりもないだろうな……。
さすがにマヌケな俺でも、それくらいは思う。だってこれまで、さんざん油断して死んできたんだもの。それに懲りてないと言ったら、何度殴られてもテーブルの上の食い物を盗もうとする飼いネコのミュウといっしょだ。このゲームでは、慎重の上に慎重を重ねてそれをコネて石橋を作り、さんざん鉄の棒でぶっ叩いてビクともしないことが確認できても、「やっぱ渡るのはやめよう」と言って引き返すくらいの落ち着きがないと生きていけないのだ。
しかし俺という男はじつにメンド臭い生き物で、「慎重に」と思うのと同時に「ちょっとだけ触ってみたいナ」と思ってしまうものなのよ。こうなると、もう止まらない。俺はジリジリと溶岩に近づいて「サテ、湯加減は……」とつぶやいてから、そこに1歩踏み込んでみた。すると……。
じゅ。
「YOU DIED」
ハイハイ。
溶岩が熱いことが確認できたので、俺は安心して(?)先に進むことにした。一見、溶岩に道を塞がれていて前進不可能のように見えるが、篝火の真下あたりから1本の細い橋が対岸に向かって伸びており、そちらに行くことができるようになっていたのである。そしてその先には白い光の入り口が……。
「あの光の入り口をくぐるしかなさそうだね」
何気なく口を突いた俺のセリフに、S君がこう応えた。
「うん、そうだね。でも、その先で待っているのは…………」
S君がじつに言いにくそうにしているので、俺は追及した。「まさか、あのウネウネした赤いヤツと戦わなきゃいけないの?」と。この言葉にS君は何も答えず、代わりに「光の入り口を入っちゃうと戻れないから、準備は万端にしておいたほうがいいと思うよ」と言った。
しかしもとより、それほど血眼になって用意しておくものなど持っていない。なので俺は心を決め、ゆっくりと光の入り口に入っていった。すぐさま、あの赤いウネウネが襲い掛かってくることを想像しながら……。
ところが拍子抜けしたことに、光の入り口に入っても何も起こらなかった。巨人どころか、ザコすらも襲い掛かってくる気配がない。ただただ、前に進む道が続いているだけだ。
「な、なんだ。ビビらせやがって……」
俺はゆっくりと歩き出した。前に向かって。S君が言った通り、光の入り口は光る壁になって戻ることができなくなってしまったので、そうするしかなかったのである。相変わらず前方に盾を突き出したへっぴり腰に徹したが、やはり敵が襲ってくる気配はない。
そうやってしばらく進んだところで、いきなり赤いウネウネが我が家のテレビに大写しになった。無数の触手……というか昆虫の脚のようなものが、ワシャワシャと空気を掻くように忙しなく動いている。その脚は、溶岩と同じ色をし、溶岩と同じように光っていた。猛烈な勢いで、イヤな予感が丹田のあたりから込み上げてきたのを感じた。
「な、なんなのあいつ……。デ、デカすぎるんですけど……。こんなのと戦えなんて言わないよな……」
しばらく呆然とその異様を眺めていたが、ヤツは俺の存在に気付かないのか襲ってくる気配がない。でも考えてみたら、あの巨体と比較したら俺の大きさなんてカナブン程度のものでしかないので、気付かない(もしくは気にしない)としてもおかしくはない。俺はジリジリと、前に進んでいった。するとじょじょに赤いウネウネの全貌が見えてきて、それがじつは、真っ赤な大巨人の肩のあたりから生えていたものだとわかる。熱い溶岩の前だというのに、俺の背中を悪寒が走る。
「こ、怖い……。こいつが怖い……。ここまでプレイしてきた中で、いちばんの恐怖を感じているかも……」
しかし相変わらず、大巨人は襲ってこようとはしなかった。それが返って不気味ではあったが、ほかに道はなさそうだったので俺は前に進む。すると道の突き当りに、宝箱が落ちているのが見えた。
「お? なんか仰々しい宝箱があるぞ」
宝箱のオーラに当てられた俺は一瞬だけ大巨人の存在を忘れ、パタパタと駆けていった。そして脇目も振らずに宝箱に取り付き、その蓋を開ける。すると中から、“黒金糸”と名が付いた防具の一式が飛び出してきた。
「お! なんかよさげなものが出てきたぞ!」
喜びに躍り上がる俺。しかし黒金糸シリーズを取り出した直後、背後で何かが動き出した気配を感じた。ま、まさか……。この宝箱を開けることが、ヤツを動かす鍵だったのか……!!?
恐る恐る振り向く俺。と同時に、画面の下に恐るべき文字が表示されたではないか!
“爛れ続けるもの”
『ダークソウル』でもっとも巨大なデーモンとの、熱い死闘が幕を開けた−−。
次回に続く。
ひとつ白状する。
病み村のボス・混沌の魔女クラーグを倒すと“下の目覚ましの鐘”を鳴らすことができ、センの古城の扉が開くが、俺は過去の記事において“病み村→センの古城”というルートでゲームを進めてきたように書いてきた。でも本当はセンの古城に行く前に“ある場所”を経由していたのである。
その場所は“デーモン遺跡”−−。
下の目覚ましの鐘から道なりに行くと自動的にここに着いてしまうので、勢いで突き進んでしまったのである。
ではなぜ、デーモン遺跡での出来事をすっ飛ばしてセンの古城のことを書いたのか? もちろんこれには、深い理由(わけ)がある。それは……。
書くのを忘れてしまったから。
なので、しかたのないことだったのだ(いい加減にしろ)。
じつはセンの古城でのエピソードをふたつくらい書いた後になって、ふいに「……アレ? 俺、なんか忘れてないか??」という思いが脳裏に閃いた。“何かを忘れているかも”という思考ほど不安をあおるものはないわけで、俺は一瞬でダークサイドに堕ちる。かなり重要なことだった気がする。なんで人は、大事なことほど簡単に忘れてしまうのだ。……いまドサクサに紛れて大きく“人”というくくりで書いたが、大事なことを簡単に忘れるのはもしかしたら“俺”だからかもしれない。違うかもしれない。ま、それはいいや。
俺は、忘却の彼方に消えてしまった記憶を引っ張り出すためのヒントをアレコレと探した。センの古城を攻略しているときに身に着けていた武器はなんだった? 手持ちのアイテムは?? 防具は??? ……はっ! そうだ防具だ! 俺はこのとき、何を身に着けていたんだっけ?? しかし、俺の痛い脳ミソはそれすら思い出すことを拒否しやがったので、Hにメールで訪ねてみる。「センの古城のとき、俺は何を着ていたっけ?」と。するとすぐに、つぎのような返事が返ってきた。
「“黒金糸”シリーズだったよ。それ拾ってから、ずっと着てたじゃん」
く、黒金糸……?? ……ってことは!!
その単語を見ただけで、自分が何を忘れてしまっていたのかを思い出した。
「デーモン遺跡のこと、書くの忘れてたああああ!!!」
なぜ“黒金糸=デーモン遺跡”なのかは、そのうちわかります。
と言うわけで、デーモン遺跡(前半)のことを書きます。
混沌の魔女クラーグを撃破し、下の目覚ましの鐘を鳴らした俺は、そのまま道なりに歩みを進めた。道は、階下につながる階段になっている。ここを行くしかないようだ。
いつものように蜘蛛の盾を前に構えて、慎重に進む。気が付くとまわりの景色が赤く染まっており、進む先で炎や溶岩が踊っているのが見えた。
「毒沼のつぎは、炎かい……」
俺の頬を、冷や汗が伝った。
階段を下り切った先は、円形の小部屋のような空間だった。壁の1ヵ所が割れており、先ほど見た溶岩ゾーンに通じていると思われる、トンネルのような道が伸びている。すでに、このトンネルの内部から真っ赤っかだ。
「なんか、イヤな予感がする……」
なぜ人は、“赤”という色に精神的な圧迫を感じるのであろうか? まあ人によっては、赤色を見て激しく興奮して暴れたり、わめいたりもするのだろうが、俺はどちらかと言うと恐怖を感じる。しかしとりあえずは進むしかなさそうだったので、いままで以上に慎重に、ゆるりゆるりと歩みを進めた。
しばらく歩くと、トンネルの終点が見えてきた。その先は広い空間になっているようで、地面も壁も真っ赤に見える。
「うーん……。行きたくないな……」
俺はボソボソと泣き言を言った。でも、イヤだろうがナンだろうが進むしかない。
トンネルの終点から外に出ると、いきなり画面につぎの文字が表示された。
“デーモン遺跡”
デ、デーモンの遺跡か……。こいつは本格的に、ロクなことにならなそうだぞ……。見ると我が分身のまわりでは、たくさんの“たまご背負い”がズリズリと腹を引きずって苦しそうにうめいている。俺の不安はさらに大きくなったが、とりあえず目の前に篝火があったのでそれに触る。これによりちょっとだけホッとして、ゆっくりとあたりを見回す余裕ができた。
そこは非常に広い空間で、どこまで行っても赤い世界が広がっている。遺跡と言うだけあって朽ちた建物の残骸がところどころに転がっており、そこだけ見れば風情すら感じさせる場所だ。
しかし、さらにカメラを回して遠くを見たとき、俺の目に妙なものが映った。それは、手だか足だか触手だかわからないが細長い木の枝のようで、遥か遠くの岩陰でウニウニと激しく動いている。この距離であれほど大きく見えるのだ。実際に近くで見たらどれほどの大きさをしているのだろう……。しかもやっぱり、燃えるような赤色をしているし……。
「あ、あんなのと戦うことになったら、きっとたいへんだろうねえ^^;;;」
S君とHに向かって言った。しかしふたりはニヤニヤするだけで、何も応えようとしない。それが不気味でならなかったが、とりあえず俺は先に進んでみることにした−−。
次回に続く。
猛烈な勢いで書きまくっていた『ダークソウル』プレイ日記ですが、16日を最後に更新が止まってしまいました。この状況を見て、「大塚角満は柱の角に足の小指をぶつけて爪を割り、ショックで入院したらしい」とか「出張先でメガネと使用済みパンツを紛失し、ショックで山に籠ってしまったらしい」なんていうまことしやかなデマゴギーが発生しておりますが(してねー)、どっこい、元気に生きております。でも、爪が割れた話とメガネ&パンツの話は本当です。僕のパンツを見かけた方、捨てずに保管しておいてくださいね。
パンツの話はどうでもいいんだった(よくないが)。
なぜブログを更新できないのかと言うと、最近あまりにも書くものが多すぎて、とてもじゃないけど手が回らなくなってしまったから。
いったい俺は、何を書いているのか?
まもなく真相を明かせると思うので、そのときをどうぞお楽しみに。ああ……早く言いたい……。
さて、せっかく来たので軽いネタをひとつ。
我が家では俺、S君、Hという3人のプレイヤーがそれぞれメインキャラを持ち、代わる代わる『ダークソウル』をプレイしているということを何度か書いてきた。しかし実情は、とっくに心が折れてしまったHがコントローラを持つことを拒否し、S君が自分のキャラとHのキャラを交互にプレイして育てている。
「自分で操作しないんじゃ、感情移入ができないのでは?」
と思いたくなるところだが、HはS君が操る自分のキャラを見てモノの見事に“やった気”になり、アレコレとじつに細かいところまで指示を出してくるからスゴい。
こんなことがあった。
現在、3人のキャラはそれぞれ1周目を終え、2周目のプレイを進めている。そんだけやってりゃ篝火やアイテムの場所、敵がドロップする素材の種類などは頭に入っていそうなものだが、俺はもともと物覚えが悪いのと、そもそもあまり覚える気がないので、2周目のプレイもかなり危なっかしい。とくに、“どの場所でどんなアイテムが拾えるのか”ってことがまるで頭に入っていないので、あまり重要ではない“故も知らぬ不死のソウル”を無理に取りに行って転落死したり、重要な鍵を拾い忘れて右往左往したりしている。
こんなときに的確な助言をしてくるのは、2周も3周もプレイしているS君ではなく、なんと1周目の牛頭のデーモンでコントローラを投げ出したHのほうだったりする。自分で操作していないのだからアイテムの場所などまるで知らないかと思いきや、「あそこにあるの、●●の指輪だよね。取りに行ったほうがいいよ」とか、「ああ、アレはソウルだよ。いらないんじゃない?」なんて言うから驚いてしまう。しかもこれ、当てずっぽうの発言ではなく、百発百中ですべて正解。どの店で何が売っているのかというややこしい情報もすべて頭に入っているので、恐れ入ってしまう。自分のキャラを操るS君と脳波をシンクロさせ、完全に『ダークソウル』の世界に没入できるようだ。
こんな調子なので、Hが『ダークソウル』について語るときはすべて“主観視点”である。
「私もオーンスタインには手こずったんだよねえ……」
とか、
「クラーグの魔剣作ったよ。これ、軽くて使いやすいね」
とかとか……。
“見るゲー”(見ているだけで超楽しいゲームのこと。角満語)としても優秀な『ダークソウル』は、実際に操作していなくてもここまでやった気になれるのだ。
改めて、神ゲーだなあ……。
記念すべき50回目は、ふつうの(?)プレイ日記です。
センの古城を突破したことで、俺の前にたくさんの道ができた。このまま勢いに乗ってアノール・ロンドに向かう“既定路線”もぜんぜんアリだったが、ふと冷静になって考えると“行けるのに行ってない場所”がけっこうたくさんあることがわかる。パッと思い浮かんだものだけを挙げても、
・デーモン遺跡
・大樹のうつろ
・小ロンド遺跡
・地下墓地
・黒い森の庭
・狭間の森
こんなに出てくる。これはいわば、たくさんの美女が俺に向かって「うっふん。あたしを選んで(ハート)」と色目を使っているようなものだ(もしくは、たくさんの死神が「俺を選べ。ヒヒヒヒヒ」と笑っているようなもの)。さあて困った。より取り見取りなのはうれしいが、こいつはじつに悩ましいぞ。
そしてけっきょく、優柔不断な俺は自分で行先を決められず、S君に助言を求めた。「つぎ、どこに行きゃいいかねえ?」と。するとS君は「う〜ん……」とちょっと考える仕草をしてから「アノール・ロンドでぜんぜんいいと思うけど^^;」と前置きしたあと、つぎのような提案をしてくれた。
「そういえば、“飛竜の谷”って行ったっけ? いくつかアイテムが拾えるけど」
おおお?? 飛竜の谷とな!?
言われてみると飛竜の谷は、「いつでもこれそうだし、短そうなエリアだからあとでいいや」ってんで、完全に選択肢から除外していた場所である。
「とりあえず飛竜の谷をやりながら、つぎの行き先を考えれば?」
S君の意見は、じつに真っ当に思えた。俺はさっそく、飛竜の谷に向かって走り出した。
飛竜の谷に入るルートは、狭間の森経由、病み村経由、小ロンド遺跡経由の3つがある。俺はこのとき、狭間の森なんて存在自体知らなかった(と思う)し、わざわざ病み村をまわってから向かうのがめんどっちかったので、小ロンド遺跡を経由して行くことにした。小ロンド遺跡と飛竜の谷を隔てる扉の鍵は、病み村で拾ってあるので問題ない。
そしてすぐに、俺は飛竜の谷に到着した。ここは“谷”と言うだけあって切り立った崖で構成されたステージで、基本的に足場が悪い。ちょっと立ちくらみを起こして足がフラついただけで、ぴゅぅるるるぅぅぅ〜〜〜……と転落死できること請け合いである。二日酔いの日は来ないほうがいいかもしれない。
俺は慎重に慎重を期して、細い崖路を歩き始めた。足の下は、問答無用の断崖絶壁。気分的にはかなり「ファイト1発!」な感じである。
それにしても、こんな1本道の細長いステージの先で何が待っているのだろうか……?
そんな疑問が頭に浮かび始めたころ、霞の向こうで崖路が開けているのが見え、そこに“妙な物体”がいるのがわかった。遠目にもその物体は巨大で、花にとまるチョウチョのように崖に引っ付いているように見える。
「あ、ありゃいったいなんだ……??」
上ずった声が口を突く。もしかしたら、月光蝶みたいなヤバい敵かもしれない……。俺はさらに慎重になって、ゆっくりゆっくりと牛歩な歩みを進めた。
近づくにつれて、その物体の姿がはっきりと見えてきた。どうやら月光蝶のような優美さをまとった生き物ではなく、それとは真逆のルックスをしているようだ。
「うげぇ〜……。なにあいつ…………」
巨大なその生き物は身体がデロデロに腐れ落ち、画面から腐臭が漂ってきそうな壮絶な見た目をしていた。見た瞬間に「こいつの名前は“ドラゴンゾンビ”で決まりだな」と直感する(実際、ドラゴンゾンビって名前でした)。
ドラゴンゾンビは、寝ているのか死んでいるのか知らないが、崖にへばりついたまま動こうとしなかった。そしてその目の前に、アイテムが3つも落ちているのが見える。いわば、宝の山だ。
しかし、俺は経験上知っていた。これが“罠”だと言うことを……。おそらく、アイテムを見て驚喜した旅人がこれに近づき、触れた瞬間にドラゴンゾンビが目を覚まして一撃必殺の攻撃をくり出すのである。わかっているのだ。知っているのだ。
そうは思いながらも、俺はアイテムに接近した。接近しないと、拾えないからである。
「罠ってのは、わかってるんだけどねー」
S君とHに向かってそう言いながら、俺はアイテムを取ろうとした。この行動の裏には(罠と思わせておいて、じつはすんなり取れるのかもしれない)という打算がある。そして俺は、アイテムのひとつを拾った。すると……。
「グアォオオオオオオオオッ!!!」
ハイ、やっぱり罠でした…………。
俺は目覚めたドラゴンゾンビに思いっきりぶん殴られ、さらに追撃も食らってなす術なく昇天する。
「なんで“罠だ罠だ”って言いながら接近して、あっさりとやられちゃうのwww」
Hがケラケラと笑った。
気を取り直して2回目のチャレンジ。今度は最初から、ドラゴンゾンビが起きている。接近したら1回目と同じように殴られて、瞬時に昇天することは目に見えていた。しかし俺は脳筋近接キャラ。接近しないことには始まらない。
「よ、よし。ヤツの懐に飛び込むぞ」
意を決した俺は、ドラゴンゾンビにじりじりとにじり寄った。ヤツが腕を振り回すタイミングを見切って、へばりついてやろうと思ったのだ。ところが、俺の気配を察したのかドラゴンゾンビは首を上げて、とんでもないことをしてきたではないか!!
「エロエロエロエロエロォォォ〜〜〜〜〜…………」
なんと首を左右に振りながら、大量のゲロを吐き出したのである!! 攻撃判定はもちろん、毒の効果まであるとんでもない腐れゲロで、広範に撒き散らされるため近寄ることもできない。俺、駅のベンチでうずくまる酔っ払いを見ている気分になりながら、ドラゴンゾンビに毒づいた。
「飲むなら吐くな! 飲んだら吐くなっ!!」
けっきょく、何度か肉弾戦を挑んだものの毒ゲロと腕の振り回しに対処することができず、「やっぱこれしかないのか……」と言いながら弓を取り出し、無数の矢を当ててドラゴンゾンビを退けることに成功する。
そんな苦労の末に手に入れたアイテム、竜紋章の盾とアストラの直剣は、まったく使っていない……。
前回の記事で、毒の大沼に住むザコキャラ“大蚊”を紹介したが、この正式名称を見てちょっと考え込んでしまった。
「ナルホド、こいつは蚊だったのか……」
そうつぶやきながら、大蚊の行動パターンを反芻する。俺の記憶が確かならば、こやつは基本、リアル蚊と同じように人間に付きまとい、プイーンプイーンと飛び回って相手をイラつかせては、尻から「ブジュ!」っと赤い液体をひり出してくる。
問題はこの“液体を出す”ってところ。
蚊を名乗っている以上、これはきっとほかの生き物から吸い取った血液だと思われる。でも俺は、かなり長い期間病み村と大沼に滞在していたが、この蚊に血を吸われたことがない。となると、大蚊は人以外の生き物にひっついて血を吸っているわけで、このエリアで吸血の対象となりそうなのは、大ヒル、混沌の病み人、巨漢亡者くらいしかいない。ってことは、ジャバジャバと引っ掛けられていたあの液体は、大ヒルや糞団子デブの生き血がブレンドされたものってことに……!
この考えに到達して以来、俺は以前にも増して大蚊の襲来から逃げ惑うようになりました。
さて。
俺のまわりではじつに好評な“キャラの名称を調べてみた!”シリーズの第3弾です。今回は、おかしな生き物が跋扈する黒い森の庭の前半部分と、魔窟・センの古城に登場するキャラクター!
●黒い森の庭
・樹人
↑我が家では“キー坊”の愛称で呼ばれている木の化身。地面に頭だけ出して擬態しており、知らぬ間に大量の樹人に囲まれてしまっていることもしばしば……。枝のような腕で殴ってくるだけでなく、ときに密着してチューチューと吸われることもある。
・石の騎士
↑重そうな石の鎧に身を包んだ巨人。見た目通り、動きはじつに鈍重なのだが、こちらの動きを極端に遅くする謎の魔法を使ってくるから侮れない。
・カエルエイ
↑真っ赤な体に黒い水玉模様という、ウチの近所のM家のおばちゃんのような格好をした派手な生き物。「カエルとエイのハーフみたいだな」と思っていたが、その通りの名前でした。倒してひっくり返った姿が毒々しい。
・双頭トカゲ
↑木にへばりついて擬態している気味の悪いトカゲ。俺は密かにトカゲではなく“ナナフシ”だと思っていた。擬態に気付かずに接近して吸い付かれた人、全国に20万人はいるとみた。
・動く木
↑見た目そのまんまシリーズ3。ここまで徹底して奇をてらわない潔さはスゲエ!!
・クリスタルゴーレム
↑見た目が美しく、このまま家に飾っておきたいと思わせる敵ナンバーワン。倒したあとに地面に散らばった破片を、ぜひ集めておきたい。
・湖獣
↑「ヒドラ」とか「ヤマタノオロチ」なんて呼んでいる人が多いと思われる(少なくともウチはそう)。でも本名は湖獣。うーん、ビックリ。
●センの古城
・蛇人
↑センの古城のいたるところに現れるザコキャラ。通称・ヘビ男。長い首を活かしたヘッドバットが得意技。……しかし、胴体や脚が生えているヘビ男はわかりやすいからいいのだが、リアル蛇ってどこからが首でどこからが胴体なんだろう? 子どものころからの素朴な疑問。
・上級蛇人
↑コブラの頭に4本の腕を生やした、ヘビ男よりも階級が上の蛇人。上級だけに攻撃が多彩で、雷の魔法を投げつけてきたり、手に持つフランベルジェで攻撃してくる。でも体力が低めなので、ヘビ男よりも御しやすいかも?
・巨人奴隷
↑センの古城の屋上で、鎖につながれたまま鉄球設置係を担当している巨人。不眠不休で働いてもヘコたれない頑丈さがウリ。
・貪欲者
↑ゲーム史上に残る最恐ミミックの正式名称は“貪欲者”という。ある方法を使うと、こいつからレアなアイテムを手に入れることができる……ということを、先日S君に教わりました。
てなわけで、3回に分けて紹介してきたキャラクターの正式名称、いかがでしたか? このブログで書く内容がさらに進んで、新たな敵が現れたら、また紹介しよーっと。
前回の記事に引き続き、『ダークソウル』に出てくるキャラクターの正式名称をイラストとともに紹介する。
……とその前に、ちょっとした与太話を。
我が家では最近、続々と新規のキャラクターが作られて、イチからのプレイが始まっている。すでに俺のキャラ、S君のキャラ、Hのキャラともに1周目が終わり、2周目を絶賛プレイ中なのだがそれだけでは飽き足らず、「まったく違うパラメーターのキャラを作ってイチから始めよう」ということになって、2名のキャラが作られたのだ。
そのうちの1名は、女性キャラだ。これは「“信仰”に特化したアンバサ戦士を作ろう!」ということで、新たに作成されたもの。女の子なのでルックスにこだわりまくり、顔を作るだけで小一時間かかった労作(?)だ。結果、できた顔がコレ。
↑目が動いたり、瞬きをしたりするので、写真を撮るのが超ムズかった……。
どうどう? 超かわいくないですか?? 俺はこの顔にたどり着いたとき、「美人と評判のビアトリスや混沌の娘にも勝った!!」と快哉を叫んだものだ(実際に混沌の娘と比べてしまうと「お、おまえもなかなかやるではないか……」と思ってしまうがw)。とってもかわいらしいので、このキャラで遊ぶときは、ほとんどの場合が生者である。なので、侵入して殺しに来ないでくださいね。
さて。
キャラクターの正式名称紹介の2回目です。ぶっちゃけ、目からウロコのネタが目白押しですよ。
●最下層
・亡者コック
↑最下層に入ってすぐのところで、料理を作っている巨漢。「あ、店がある!」と思わせておいて、手にした肉切り包丁で襲い掛かってくる卑劣なやつ。
・うごめく腐肉
↑ゼリーだとかスライムだとか呼ばれている、グネグネした敵。正式にはうごめく腐肉という。腐肉というからには、かなりの悪臭を放っているのだろう。
・バジリスク
↑おなじみ、呪いの使い手バジリスク。じつは俺が初めて最下層に入ったとき、バジリスクが現れるあたりに“ダークレイスに注意”というメッセージが書かれていた。これを見て勘違いした我が家の住人は、しばらくのあいだバジリスクのことを「ダークレイス」と呼んでいた……(苦笑)。
・犬ネズミ(王)
↑犬ネズミはノーマルの大きさだけではなく、(大)と(王)ってのがいる。(王)は、最下層にいる超巨大タイプであろう。
●病み村
・巨漢亡者
↑病み村に入ってすぐ、プレイヤーを恐怖に陥れるデブ。棍棒を持っているタイプと、岩を持っているタイプがいる。
・蓑虫亡者
↑巨漢亡者以上に恐怖を振りまく、小さな暗殺者。吹き矢から放たれる猛毒の針は脅威だ。
・混沌の病み人
↑ずっと「こいつはなんて名前の虫なんだろう??」と思っていたのだが、正式には“混沌の病み人”っていうんだって! ってことは、もともとは人だったのか……? こいつの生成過程を追ってみたい……。
・たまご背負い
↑背中に不気味な卵を背負った人。ズリズリと動くだけで何もしてこないものと、積極的に襲い掛かってくるものの2タイプがあると思われる。ついついこいつを攻撃すると……!!(下に続く)
・寄生虫
↑こいつがビチビチと飛び出してくるっ!! この寄生虫、数が多いわ動きは速いわ攻撃力が高いわで手におえない。なるべくシカトしたい相手だ。
・混沌の野犬
↑俺に謎の死を与えた赤犬の正式名称は、混沌の野犬という。
書いててすんごく楽しいです。
このシリーズ、もうちょっと続きます。
【ダークソウル】第47回 キャラの名称を調べてみた!(その1)
センの古城をついに制覇し、つぎはいよいよ絶望の都、アノール・ロンド編に突入だッ!!
……といきたいところですが、そうはなりません。
「アノール・ロンドでは、書くようなエピソードに出会わなかったの?」
と思われる方も出るかもしれませんが、もちろんそんなことはありません。それどころか、「俺はアノール・ロンドで遭遇した出来事を書くためだけに、このプレイ日記を書いているんだ!!」と言ってしまいたくなるほど、それはそれはヒドいことがたくさんありました。
しかし、だからこそもったいぶります。もちろん必ず書くし(実際すでに書いている)、どこかで公開しますので(意味深)、「ふたりの銀騎士のことやオーンスタインのことを読みたい!!」と思ってくれる方は、“ある発表”がされるまで少々お待ちください……。
さて。
アノール・ロンドを省いても、書かなきゃならないことが山ほどあるのが『ダークソウル』のスゴいところ。いまざっと考えただけでも、
・デーモン遺跡
・大樹のうつろ
・灰の湖
・黒い森の庭(奥地のほう)
・狭間の森
なんかが手つかずで残っている。こいつはエラいことだ。
ではさっそくこの中からエピソードを……と思ったが、この間ずっと、センの古城の重い話を書いてきたので、ちょっと箸休めをしたくなりました。今回はそれにおつきあい願おうと思います。
『ダークソウル』を遊ばれている皆さん、こんなことを思ったことはありませんか?
「この敵キャラ、正式にはなんて名前なんだろう……?」
ってことを。思ったこと、あるよね? あるよね!?(ある、と言ってくれ)
じつは俺、このソフトの発売当初からプレイ日記を書いていて、もっとも困った……というか頭を悩ませたのが“敵キャラ名の表記”だった。ある程度のものは週刊ファミ通の攻略記事に出ていたので参考にできたのだが、ページ数も限られた記事であるためすべての敵名が出ているわけではない。そのくせ俺のプレイ日記は、攻略ではスルーしがちなザコにもスポットを当てることが多いので、困ることがたびたびあった。そこで、ふだん遊んでいるときに使っている独自の呼び名(放言みたいなものか)を、そのまま記事に使っていたりするんだけど(黒い森の庭に出てくるキー坊とか、最下層あたりにいる腐れ犬とかね)、やっぱり心のどこかで「正式名称を書きたいな」と思っていたのである。
そこで俺は一念発起し、開発元のフロム・ソフトウェアさんに打診。「ゲームに出てくるキャラの名前、全部教えてください><」と懇願するに至る。すると先方の担当者さんはニコニコ顔で「いいですよー」と言い、俺にリストを手渡してくれたのだ!!
というわけで能書きが長くなったが、登場キャラのイラストとともに正式名称を公開したいと思う。皆さん、ブログや攻略記事を書くときの参考にぜひ。とりあえず1回目なので、序盤に出てくるキャラから。
●火継ぎの祭祀場近辺
・大鴉
↑記事では勝手に“巨鳥”なんて書いたけど、正しくは大鴉(おおからす)と呼ぶそうだ。確かに、言いえて妙のカラスっぷり。
・スケルトン
↑墓場にいる骸骨たち。持っている武器によって、スケルトン(弓)、スケルトン(大剣)などに名称が分かれる。たまに現れる大きな骸骨は“巨大スケルトン”と言うらしい。じつにわかりやすい。
・犬ネズミ
↑記事では“腐れネズミ”と書いたが、正確には犬ネズミ。犬の血が入っているのだろうか?
●城下不死街近辺
・亡者
↑裸同然のみすぼらしい格好をしているのは“亡者”。持っている武器によって、亡者(たいまつ)、亡者(剣)と名称が分かれる。
・亡者戦士
↑ただの亡者よりも、身なりがよくなっている亡者戦士。こちらも、持っている武器によって、亡者戦士(火炎壺)、亡者戦士(剣)などに分類される。
・亡者兵士
↑亡者戦士よりも、さらに見た目が立派になった亡者兵士。クロスボウや槍など、武器も多彩に。
・石守
↑世間一般には“トカゲ”と言われ、俺もそう呼んでいるが、正式名称は“石守(いしもり)”だ。倒すと、光る楔石を出してくれるかわいいヤツ。
●城下不死教区近辺
・アーマードタスク
↑通称・鎧イノシシだが、アーマードタスクなんていうかっこいい本名を持っていた。でもやっぱり、咄嗟には、「またイノシシ出たっ!」とイノシシ呼ばわりしてしまう。
・バルデルの亡者騎士
↑序盤の強敵は一般的にも「バルデル」と、キチンとした名称で呼ばれているようだ。
・バーニスの亡者騎士
↑黒い鎧とメイスが特徴のパワーファイター。教会の祭壇前でウロウロしている。
●城下不死街・下層
・亡者盗賊
↑物陰に潜んでバックスタブを狙ってきたり、吹き矢を吹いて陰湿に攻撃してくる油断ならないヤツ。盗賊だから、それも仕方ないか。
・野犬
↑通称“腐れ犬”。正式名称は野犬と呼ぶらしい。じつにわかりやすい……というか、まったく奇をてらっていなくて好感が持てる。
・デーモンの飼犬
↑パッと見、野犬に見えるが、山羊頭のデーモンが引き連れている2匹については“デーモンの飼犬”という立派な名前が付けられている。でも思うに、山羊頭のデーモンはこの2匹を、もっと砕けた固有名詞で呼んでいるはずだ。ポチとかアルデバランとか……。ちなみに、最下層で亡者コックといっしょに出てくる犬は“コックの飼犬”と言うらしい。
……これ、永遠に書き続けられそうなので、今日はこのへんにしておくか……。じつはここから先が、目を引く名称のオンパレードで楽しいんだけど。
つぎの更新をお楽しみに!
俺は本当に長いこと、センの古城を彷徨っていた。何度も書いてきた通り、ここはまぎれもなく旅人を食う魔城だ。その道程が辛く、きびしいものになったことは、ある種必然だったと言える。
それでも、俺は辛さを感じるのと同じくらいの勢いで“楽しい!”と思っていた。こう書くと「さすが、マゾの角満」と言われてしまいそうだが、じつはそんな単純な言葉では覆いきることができないほど、センの古城は独特のユーモアに満ち溢れていたと思うのだ。
こんなことがあった。
センの古城は最上階まで行くと、ゴンドラ型のエレベーターを起動することができ、その後利用が可能になる。ホラ、最初の一本橋(巨大刃が振れているところね)の脇にゴンドラがぶら下がっているでしょう? あれがじつはエレベーターで、最上階までたどり着けた人はご褒美として、これをショートカット用に使うことができるのだ。
エレベーターに最上階から乗ると、まさにこの一本橋の上に到着する。これがなければ、さまざまなトラップが渦巻く果てしない迷路を逆走しなければいけないわけで、その労力を考えると「ショートカットって、ホントにスバラシイ!」と心から思う。遠くへ行くときはやっぱり、“こだま”や“ひかり”よりも“のぞみ”に乗りたいと思うのと同じだ(何言ってんだ)。そのときも俺は、「ゴンドラエレベーター最高!」とかなんとか言いながら、最上階から下に降りていったのである。
ところで、ゴンドラエレベーター・一本橋駅のホームには、じつは別の乗客(?)がいる。そう、ヘビ男である。こいつは親のしつけがなっちゃなかったのか、エレベーターが到着すると乗客が降りるのを待たずに「キタキタ! 乗るぞ乗るぞ!!」と言って、エレベーターの乗降口に接近してくるのだ。「電車は降りる人が先」という世界の常識を、1ミクロンたりとも守る気がないと見える。
そのときも、そうだった。俺がゴンドラから降りようとするとヘビ男が鼻息荒く接近してきて、あろうことか剣を振り回してきたのである。ヘビ男の頭の上から「どけどけ!! 乗るぞ乗るぞ!!」という吹き出しが飛び出しているのが見えた気がした。俺、あまりにも常識知らずなこの行動に激怒し、“目には目を”とばかりに黒騎士の斧槍を抜き払う。そして「ルールってものを知らねえのか!! このヘビ野郎!!」とわめきながら、ゴンドラから1歩踏み出したところで攻撃をくり出そうとしたのだ。
しかし俺の攻撃が当たるよりも早く、ヘビ男が得意のヘッドバットを仕掛けてきた。これを食らうと体勢が崩され、後ずさってしまう。このときもまさにそうなり、俺はゴンドラの中に押し戻されてしまった。すると……。
ぱたん。
うぃーーーーーん。
なんとゴンドラの扉が閉まり、降りたかった俺を再度乗せて、上に向かって出発してしまったではないか!! 俺とヘビ男、じょじょに離れながら見つめ合うしかない。
「………………………」(俺)
「………………………」(ヘビ男)
この、出来の悪い喜劇を見ていたHが、身体を折って笑い転げた。「ぷーーーーーーっ!!www あんた、ヘビ男とふたりで何やってんのwww」。
一瞬の気の緩みも許さないように見えながら、このゲームにはどこかユルいところがある。それは、プレイする人のスタンス……というか心のありかたにもよるんだろうけど、失敗してもどこか笑えてしまうところが、何度でもくり返し挑戦したくなる“隠し味”のような気がした。
センの古城の最上階に達した俺は、迷わず光の入り口をくぐった。そしてこの迷宮を守るボス、巨大なアイアンゴーレムと対峙する。
「よし!! こいつを倒して、新しい世界に行くぞ!!」
このとき、俺は1ミリたりともビビっていなかった。試練の魔城を駆け上がってきたという思いが、自信を植え付けてくれたのかもしれない。
動きの遅いアイアンゴーレムに対し、俺はフットワークで対抗した。振り下ろされる剣や盾の攻撃を余裕を持ってかわし、股下を潜り抜けて背後に回ってザクザクと足を斬り刻む。見る間に減っていくアイアンゴーレムの体力。まったく負ける気がしなかった。
「これで終わりだっ!!!!」
黒騎士の斧槍が、アイアンゴーレムのふくらはぎに突き刺さった。消滅する巨人の体力。そして−−。
「グモォォォオオオオ!!」
銀色の光を放ったアイアンゴーレムの巨体は、跡形もなく消えてなくなった。俺はこの戦いにおいてエスト瓶を1回も使わなかったどころか、一度たりとも攻撃を食らっていない。それまでの苦難と比べたら、呆気ないほどの完勝劇と言える。
ついに、魔城を制覇したぞ……。
俺は何とも言えない感慨に浸りながら、アイアンゴーレム亡きあとの戦場を歩いた。
たいへんだったけど、楽しかった−−。
そんなことを思いながら。
そしてふと見ると、戦場の中央付近に不思議な光の輪ができているのがわかった。
あれはいったいなんだ……?
頭の上からクエスチョンマークをまき散らしながら、その輪に接近する。
「いよいよだね」
S君が言った。どうやらこれに触ることで、新しい場所に行けるようだ。
そう、まだまだ旅は終わらないんだ。この先にはセンの古城を超える難所と、貪食ドラゴンやクラーグをも凌駕する魔人どもが待っているんだろう。休息している場合じゃない。この勢いのまま、先に進もう!!
「……よし、行こうか、新しい世界に!!」
覚悟を決めた俺は、光の輪にそっと触った。
新たに足を踏み入れる場所で、オノレのゲーム史でも最大、最強と断言できる苦難と挫折が待っていることを、このときの俺はまだ知らない−−。
アノール・ロンド−−。
絶望へ通じる扉が開く……。
宝箱に食われたショックを引きずりながらも、俺はセンの古城を歩き続けた。いったい今日で何日、この罠の迷宮を彷徨っているのだろう……。もしかすると俺はこのまま、魔城の虜として一生を終えるのかもしれない……。そんな、ありもしない想像をしたこともある。
「ここは“人食い城”だ……」
宝と未来をエサに旅人を誘い込み、抜け出せない罠にハメてゆっくりと咀嚼する……。センの古城がそんな意識を持っていたとしても、まったく不思議じゃないと思った。
それでも俺は前に進んだ。「ここはもう無理だろう……><」という場面に出くわしても、どうにか知恵を絞って1歩でも足を運ぼうと努力したのである。
数あるセンの古城の苦難の中でもよく覚えているのが、巨大刃の間隔が超短くなっている橋の脇で、コブラのヘビ男(上級蛇人)が雷の魔法を投げつけてくる場面だ。
ここ、遠距離の魔法が使えるキャラだったら何の問題もなく、ヘビ男を倒してからダッシュで橋を渡ればいい。しかし俺のキャラは超が付く肉弾系のため、飛び道具をほとんど持っていなかった。弓と矢は多少持っていたが、ここは壁がせり出している狭い通路のため、弓でヘビ男を狙おうとすると手前の壁に突き刺さってしまう。じゃあ物陰から出て狙えば……と思ったが、そうするとヘビ男が投げる強烈な雷の魔法も直撃することになり、命が危険にさらされる。俺はほとほと困り果てた。
そんなとき、S君がこんな提案をしてきた。「呪術の“火の玉”でも覚えちゃえば?」と。呪術は理力の多少に左右されない魔法なので、脳筋の俺(理力が8しかない。いまだに)でも使いこなせるとのこと。そして、火の玉は射程は短いながらも敵に投げつけられるので、このエリアの攻略には持って来いなのだと言う。問題は“近接オンリー”を掲げた俺のプライドだけ。俺は「うーん……」と低く唸ってから、S君とHに向かって言った。
「遠距離の魔法か……。どうしようかな……。……でも、なんだかんだで弓は使っているわけだし、ここで火の玉に手を出してもたいして変わらないか! よし! 覚えよう! 呪術だ呪術だ♪ 火の玉だ火の玉だ♪」
渡りに船とはこのことだ。
そして、プライドをかなぐり捨てた山賊は無事に、この難所を突破。ついに、センの古城の外に出ることに成功する。俺はひさしぶりに浴びた太陽の光にいたく感激し、“あの言葉”を叫んだ。
「おおおお!! センの古城の外に出たぞっ!! 陽の光だ!! 太陽だ!! 太陽万歳!!! よぉぉぉし! 先に進むぞおおぉぉぉ!!」
城の外周に飛び出した俺は、脱走した部屋飼いネコのように浮き足立って、めったやたらとあたりをうろつきだした。なんとなくの感覚で、近くに篝火があるのがわかる。とりあえずそれを探し出して、新しい拠点を作らなければ。センの古城の入り口からここまでやってきた旅人はたいがい、大金を手にしている(マジメに敵を倒していればね)。このときの俺がまさにそうで、確か20000ソウル以上は持っていたはずだ。それもあったので、新規の篝火の捜索は急務だったのである。
しかし、篝火が見つからない。HとS君は「近くにあるよ! 早くかがらないと!」と言うだけで、具体的な場所までは教えてくれないのだ。少しずつ、焦りが募る……。俺は「どこだどこだ! 篝火どこだ!?」と言いながら、見晴らしのいい高台まで歩いてきた。
見るとその高台の至るところに、アイテムが落ちていた。どうやらここは、苦難の古城を突破してここまで来たものに対する、一種のプレゼントエリアのようだ。まわりに敵の姿もない。それを見た俺は一瞬で有頂天になり、篝火のことなど忘れてアイテムに取り付こうとした。でもそのとき、Hが悲鳴を上げる。
「あっ!!! あぶな……!!!」
Hが言い終わらぬうちに、我が分身が猛烈な炎に包まれた。それはそれは大きな火で、瞬時に画面が火の海となる。
「え……!? なっ……!!」
驚きのあまり言葉が出なくなった俺の目の前で、我が分身の体力がグーーーーンっと減っていった。逃げようにもあまりにも炎が大きくて、その影響下から抜け出ることができない。そして、あっと言う間に昇天……。
「だから早くかがりな、って言ったのに……w」
笑いをこらえながらHが言った。しかし俺は大仏のようにピクリとも動かず、「なんなんだこのゲーム……………」と言うのが精いっぱいだった……。
次回ついに、“センの古城編”完結です!
センの古城のエピソードを書くうえで絶対に外せない“ヤツ”のことを書きます……。
トライ&エラーのくり返しによりようやくセンの古城の奥深くまで潜れるようになったある日、そいつは俺の前に現れた−−。
そのとき、俺のプレイ状況はいつになく順調だった。最初のヘビ男、揺らめく刃、鉄球ゴロゴロも問題なく突破し、「このままいけば、いよいよ新境地に達せるかも!?」とのぼせ上がれるほど、指が軽やかに動いている回だったのである。
マラソンを走っていて「もうダメ……。マジで死ぬ……」と思った矢先にフッと身体が軽くなり、「おお!? ぜんぜんへっちゃら!! どこまでも走っていけそう!!」と思う“セカンドウィンド”っていう現象があるでしょう? それと同じで、「もうダメ……。心が折れた……。続けられない……」と思ったつぎのプレイでアレヨアレヨと前に進める“ダークソウルハイ”という心霊現象が、いま学会で注目を集めている(なんの話だ)。そのときの俺がまさに、このダークソウルハイ(カクテルの名前みたいだな……)の状態で、「何が来ても跳ね返しちゃる!!」という境地にあったのだ。
俺はゴキゲンに「ふんふふふ〜〜〜ん♪」と鼻歌なんかを発しながら、危険渦巻くセンの古城を走っていた。何度も何度も挑んでいるうちに手持ちのソウルが10000を超え、人間性もふたつたまっていたことも、俺の上機嫌に拍車をかける。画面を見ていたHとS君にも俺の興奮が伝わったらしく、「なんかいける気がするね!!」、「苦労したけど、この回でセンの古城を攻略しちゃおう!!」などと口々に言うではないか。おかげで俺はますます調子に乗って、
「いやぁ〜〜〜^^ イケるときはこんなもんダロ^^^^ センの古城はわりと難しい部類に入るかもしれんけど、ま、俺を止めるほどのものではなかったナ^^^^^^」
と吹きまくる始末。完全に、精神が弛緩していた。でもこれは、センの古城がもたらす矢継ぎ早の洗礼が、それほどの緊張感を伴っていた証左であろう。
そして俺はルンルン気分のまま、“ある小部屋”にやってきた。
まったく見覚えのない部屋だ。どうやら初めてたどり着いた場所らしい。そこに置かれていた宝箱が開いていないことが、それを証明していた。
「まだこんな場所があったんだねー」
HとS君に向かって言った。
ところが、さっきまであんなにはしゃいでいたふたりはナゼか口を真一文字に結び、ひと言も返事を発しようとしない。まあ、おもしろい返答を期待しての発言ではなかったのでべつに構わなかったのだが、明らかに不自然なその様子はひどく俺の心に引っ掛かった。しかしだからと言って、何かができたわけでもなかったんだけど……。
俺は無言になってしまったふたりは気にしないことにして、その小部屋の探索を始めた。とは言っても、本当に狭い空間なのですぐに見るべきものはなくなってしまい、残るはお楽しみの宝箱だけになる。俺はウキウキしながら宝箱に接近し、明るい声で独り言を言った。
「うひひひひ。宝だ宝だ。宝箱だ♪ こんな場所に隠れるように置かれているんだから、きっとすげえものが入っているんだろうなー」
HとS君は、何の反応も示さない。俺は独り言を続ける。
「これで中身が“故も知らぬ不死のソウル”(200ソウル)だったら、かなーりガックシだよねww あははははは」
それでも、HとS君は無反応。いや、なぜか顔つきが険しくなっていたので、完全な無反応ってわけじゃなかったのかもしれない。しかし、言葉に応じてくれないのは相変わらずだったので、俺は振り上げた拳のやり場に困って、ゴニョゴニョと言葉を濁した。
「あ、あは。あはははは……」
そして、いつまでもひとりで笑っていてもしかたがないので、その宝箱を開けることにした。
「さあ、あーけよ。何が入っているのかなー♪」
そのとき、HとS君の目線にグッと力が入ったのがわかった。でも気にせず、俺は宝箱に手をかける。開くぞ、宝箱が。宝が飛び出すぞ! しかしつぎの瞬間、俺の目の前で信じられないことが起こった……!!!
バクンッ!!!
ムシャムシャムシャ。
「YOU DIED」
え……。
ええ……??
えええええええええええ!!!?
なんか、宝箱の歯に口が生えてカミツキガメが宝に俺を咬み付いて!!!! って、日本語がおかしくなっちまったけど、いきなり宝箱が我が分身に咬み付いて、バクバクと咀嚼しているんですけどっ!!!!! どうなってんのこれ!! パクパクとエサを欲するコイのように口を開け閉めしていると、HとS君が沈黙を破って大爆笑を始めた。
「く、食われたーーーーっ!!!www やっぱそれ、やられるよねえ!!www」(S君)
「あははははははっ!!!www 食べられちゃった!!www でもそこはしょうがない!www」(H)
どうやらふたりはミミック(“貪欲者”という名前らしい)の存在を知ってはいたが、きっとおもしろいことになると確信して、黙って見ていたらしい……。そして俺はまんまとこれに食われ、ふたつの人間性と10000ソウルを失ったのであった……。
断言する。
この貪欲者は俺が知る限り、ゲーム史上でも最強クラスに怖いミミックだわ……。
以来俺は、宝箱を見てもすぐに開けることがなくなりました。こういうのを“トラウマ”って言うんだろうなぁ……。
センの古城の難度を上げているいちばんの要因は、トラップと敵が折り重なるように、絶妙に配置されていることにある思う。
たとえば、前回書いた細い橋は巨大刃の恐怖もさることながら、渡りきる手前に剣を持ったヘビ男が待機していてこちらに襲い掛かってくる。落ちたら楔のデーモンが待っているという最悪の橋の上で、狂暴なヘビ男を相手にしなければならないというわけだ。しかもこれで終わりではなく(!)、ヘビ男を相手にしていると頭上から、雷の魔法が降ってくることがある……!
いったいこれ、何十苦って言えばいいの?
巨大刃、落下の恐怖、楔のデーモン、細い橋、ヘビ男、雷……。
「これでもか!」というトラップの畳み掛けに、多くの旅人が心を折るに違いない。
センの古城は間違いなく、『ダークソウル』の最初の門番だ。
ここにたどり着いた屈強な旅人を再度篩(ふるい)にかけるために配置された、冷酷無比な試練の場所……いや、“試験の場所”である。
「ここで折れる人間は、先に進む資格ナシ!」
センの古城は、我々にそんな言葉を突き付けているに違いない。“問答無用”という言葉がこれほど似合う場所、ほかにちょっと思いつかないわ。
いったい俺は何度、ここで命を落としただろう。死ねば当然、アンドレイの篝火から復活して入り口から入りなおさなければいけないので、最初の2匹のヘビ男なんて何十匹……いや、何百匹倒したか知れない。しかもそれだけやっても、このヘビ男に殺されることが少なくなかった。1歩進んだら2歩戻るという不毛なことを、俺はやっているのだろうか……?
「またこいつらか…………」
踊るように現れた2匹のヘビ男を見て、俺は心からのため息をついた。100個のマス目のうち50個が“ふりだしに戻る”になっている、身もだえするようなスゴロクで遊んでいるような気分だった。
俺は2匹のヘビ男をギリギリまで引き付けてから、いつものようにセンの古城の入り口に向かって走りだした。そしてわざと、罠のスイッチを踏む。すると。
カチッ。
ヒュンヒュンヒュンヒュン!
グサグサグサグサッ!!!!
ここでいつもだったら「YOU DIED」と書くところだが、飛び出した矢はすべて、のこのこと歩いてきたヘビ男の背中に突き刺さった。トラップを逆手にとっての、冷静な立ち回りである。
蓄積とはすごいものだ。
これだけくり返しやっていれば、俺のようなヘタクソでも攻略ルートが見えてきて、無駄なく立ち回ることができるようになるのである。同じように、巨大刃も細い道も、いつしか無人の野を行くが如くすんなりと突破できるようになった。
それでも、“1歩進んだら2歩戻る”という思いは消えない。つぎのようなことが、たびたび起こるから……。
そのとき、俺はいつも以上に順調に立ち回り、エスト瓶も大量に残したままセンの古城の奥深くにまで侵入していた(そのときは希望的観測からそう思っただけで、実際はたいして進んでいないw)。これはもしかすると、センの古城のボスまでたどり付いてしまうのではないか……? そこまで考えていたと思う。
そんな俺の目の前で、小さなエレベーターが上下に行ったり来たりしていた。じつはこのとき、「順調だ」という思いと同じくらい「道に迷ったかも……」という不安もこみ上げてきていて、新しい道に通じるものには何でもすがりたくなっていたところであった。なので当然、俺は思う。
「やった! エレベーターだ!! 先に進めるぞ!!」
エレベーターで注意しなければならないのは、焦って踏み台(?)が下にあるときに飛び乗ってしまい、マヌケな落下死をすることくらいだ。そこで俺は慎重に、下からせり上がってきた踏み台にチョコンと飛び乗った。するとエレベーターは俺を乗せて、階上に向かって上昇を始める。そしたら……!
グサグサグサグサグサッッッ!!!
「YOU DIED」
ちょ………………!
なんとエレベーターの天井に男塾もかくやという針が仕込まれていて、何も知らぬ俺を串刺しに……!! 半分寝転がってプレイしていた俺はガバッ! と起き上がり、近所迷惑も顧みずに大声を出した。
「もうやだああぁぁぁぁあああああ!!!!」
その様子を見て、HとS君が腹を抱えて転げまわっている。
「し、死んだ!!www ……俺、そのエレベーターは怪しいと思って、乗る前に天井を確認したよwww」(S君)
「あはははははっ!! ていうかアナタ、制作陣が仕込んだすべてのトラップに引っ掛かってるんじゃないの??www あーお腹痛い……www」(H)
俺、がっくりとうなだれながらふたりに言った。
「『ダークソウル』の次回作が作られるときは、テストプレイヤーとして雇ってもらうことにするわ……」
センの古城は、まだまだ底を見せない……。
【ダークソウル】第42回 センの古城を攻略せよ! 〜太陽万歳〜
思うにセンの古城は、多くの旅人たちを跳ね返すために作られた“難攻不落の要塞”のようなものなんだと思う。1歩進めば罠が起動し、2歩進んだら強敵が現れる。それを乗り越えたとしても、また新手の罠と敵が……。単発で発動するものもあれば、巧みに連動して畳み掛けてくる仕掛けもたくさんあった。そして俺は、ものの見事にそれらに翻弄され続けた。
最初の罠を踏んで死んだ翌日、俺は懲りずにセンの古城に向かった。その立ち位置からして、センの古城はスルーして通り過ぎてもかまわない“脇道”ではないだろう。先に進むためには絶対に避けて通れない“メインストリート”に違いない。どんな困難な道のりだとしても、進むしかないのだ。
2回目。昨日、俺を殺した罠の前で立ち止まり、「もう踏んであげないんだからねっ!!」と気持ちの悪い言葉を発しながら、起動スイッチの脇をすり抜ける。そして前に進もうとしたそのとき、目の前にユラリと、ナニモノかが現れたではないか! しかも、かなりデッカい……。
「ヘビ男(お)キター」
S君が若干遠慮しながらつぶやく。言われてみると確かに、現れた巨人は首がやたらと長く、顔も爬虫類的で、まさしくヘビそのものの姿をしている。その異様なたたずまいは、ここまでに見てきた敵とは明らかに住んでる世界が違うように感じた。
「ひぃぃぃぃ……。なんかこいつ、おっかねえよぉ……」
俺はコントローラを持つ手をワニワニと震わせた(爬虫類だけに)。正直、コントローラを投げ出したかった。
だってホラ、想像してみなさいよ。巨大なヘビが手足を生やし、鎧を着て、物騒な剣をぶら下げて「はぁはぁ!」と言いながら迫ってくるんですよ?(こいつらははぁはぁしてないけど) こんなのが現れたら、人類の99パーセントはすべてを投げ捨てて逃げ出すと思うのだ。狂喜するのは範馬勇次郎くらいのものだろう。
「うわあぁぁぁああ!!」
突如現れたヘビ男の姿にキモを潰し、その場で180度ターンをキメた俺は、センの古城の外に向かって猛ダッシュをした。ととと、とにかく1回外に出て、一度呼吸を整えよう。こんなに心拍数が上がった状態では、犬ネズミすら倒せやしないよ……。
「1秒でも早く篝火まで戻ってしまいたいっ!!」
俺はそう、わめき散らした。
でもそのとき。
カチッ。
ヒュンヒュンヒュンヒュン!
グサグサグサグサッ!!!!
「YOU DIED」
「ぷーーーーーーーーーーーーっ!!wwwww」
Hが思いっきり吹き出した。
「最速で篝火に戻れたね^^;;;;;」
S君が申し訳なさそうに言った。俺は本気で泣きそうになった。
センの古城での歩みは、一事が万事こんな感じだった。トラップにかかることで「あそこには罠がある」と覚えることはできるが、それを乗り越えた先で別の仕掛けにハマって死亡するのである。ひたすらこれをくり返すことで道に慣れ、初めて前に進めるようになる。これを“覚えゲー”と言ってしまえば確かにそうかもしれないが、『ダークソウル』の場合は“そこに仕掛けがある”とわかっていても、まんまと引っ掛かって昇天するのだから恐ろしい。本当に、このゲームは難しい。
よって、2匹のヘビ男を越えてもすぐに、べつのトラップが現れる。階段を駆け上った俺の前に展開したのは、暗黒の奈落の上にできた平均台のような細い橋と、その上で振り子のように左右に振れる巨大な刃……。どうやら刃の隙間を縫って、平均台を渡りきらなければいけないらしい。シンプルながら、とてもわかりやすい危険な罠である。
「ここ、気を付けないとヤバいよ」
神妙な声でS君が言った。
俺はこれ以上ないくらいゆっくりと、橋を渡り始めた。初めての挑戦のため、刃が振れるスピードと、我が分身との距離感がどうしてもつかめない。
「わぁ……。刃に当たりそう……」
Hが悲痛なつぶやきを発する。お、おっかねえ……。この緊張、耐えられないよ……!
そしてこらえ性のない40歳は、目の前を行ったり来たりする殺人刃のきらめきに正気を失い、「わあああああ!!」と叫んで橋の上でダッシュを敢行した。一気に走り抜けてやろうと思ったのだ。しかしそうそううまくいくはずもなく、我が分身は見事に、振れる刃に身をかっさらわれた。
「ぎゃあああ!! 死んだあああああ!!」
ところが画面に、おなじみの「YOU DIED」の文字が表示されない。不思議に思いながら画面を見ると、体力をほんのわずかだけ残した我が分身が、橋の下に広がるプールのような空間にたたずんでいるではないか! どうやら暗黒の奈落と思われた高所はギリギリで体力が残る高さだったらしく、俺を生かしてくれたらしい。俺は喜んだ。ひどく喜んだ。だって『ダークソウル』で初めて、制作陣の優しさに触れた気がしたんだもの!!!
「いいい、生きてた!! わーいわーい!! よかったよかった!! 太陽万歳!! 制作陣万歳!!!」
しかし、喜んでいられたのは3秒くらいだけでした。プールに着地した我が分身の姿を見て、S君とHが笑いをこらえながら警告を発したのだ。
「ヒ、ヒデ君、気を付けて!!ww ていうか、逃げて逃げて!!!ww」とS君。
「ああああ!!www 後ろうしろ!! 志村後ろ!!ww」とH。
え……? う、後ろ…………??
俺は恐る恐る振り向いた。そこに何もいないことを切に願いながら。しかし……。
「わああああああ!!! くくく、楔のデーモン出たあああああああ!!!!」
その後の記憶がおぼろげで、何があったのかよく覚えていない。どうやらそのまま失神して、記憶を失くしたようだ。
そして、前言を撤回する。
このゲーム、ちっとも優しくない……。
昨日、我が世界に赤ネズミ警報が発令されました。2周目の最下層に凶暴な赤ネズミと赤亡者が大発生して、怖くて近寄れません。すでに20万ソウルくらい失いました。だ、誰か助けて……。
泣き言はこれくらいにして、前回の続きを始めます。
苦労のすえに混沌の魔女クラーグを倒し、ふたつ目の目覚ましの鐘を鳴らした俺。その鐘の音はロードラン全域に響き渡り、巨大なゴーレムも揺り起こして、ずっと閉まったままだったある建物の扉を開けさせてしまう。
あそこは確か……そうだ! カタリナのジークマイヤー(通称・タマネギ)がその前に座り込み、「開かんなぁ、開かんなぁ……」と唸っていた場所ではないか。あそこだったら、最初の鍛冶屋・アンドレイの近くにある篝火から真っ直ぐ進むだけで行けるはずである。どうやらつぎの目的地はここらしい。
「さしあたってやることもないし、あの建物に向かうとするよ」
画面を見ていたHとS君に言った。このときの俺の声色はきっと、新しいところに挑める高揚感で1オクターブくらい高くなっていたと思う。しかし、受けたHとS君は逆に、いつもより1オクターブ低い声でこんなことを言ったのだ。
「ついに行くのね……。……正直、いまからあんたが打ちひしがれている姿が目に浮かぶわ……」とH。
「ぶっちゃけ、俺はここでメチャクチャ心が折れたよ……。ひと筋縄ではいかないことを覚悟しといたほうがいいかも……」とS君。俺は「ゴクリ……」とツバを飲み込んだ。俺がいまから向かうのは、そんなに恐ろしい場所なのか……?
しかし思い返してみれば、『ダークソウル』は恐ろしい土地が連続しているばかりで、心が休まったことなどほとんどない。篝火の近くにいようが買い物をしていようが敵は襲い掛かってくるし、ポーズボタンで時間を止める……なんていうほかのゲームではセオリーと言えることも、『ダークソウル』は排除している。この世界に身を置いている限り、“恐ろしいことが日常”なのだ。
というようなことを、俺はHとS君に話した。しかし、ふたりの返事はにべもない。
「確かにその通りだけど、ヒデ君がこれから向かう“センの古城”とそのつぎの“アノール・ロンド”は、いままでのエリアがヌルく感じるくらいきびしいと思う……」
俺と目を合わせずにS君が言う。そしてHはただただ低い声で「南無阿弥陀仏……」とお経を唱える始末。どうやら俺は、とんでもないところに行こうとしているらしい。
それでも、俺は行かねばならぬ。何がメインの目的なのか、まだはっきりと見えてはいなかったが、ここで旅を終わりにするわけにはいかないのだ。遠い目をしながら、俺は言った。
「聖騎士として……」
この発言に、ふたりが烈火の如く怒り狂う。
「なっっっにが聖騎士よ!!! あんた山賊じゃん!!!」(H)
「山賊生まれなのに、言うに事欠いて聖騎士とかwww 正反対すぎる!!www」(S君)
ちょっと言いたかっただけだ!! そんなに怒ることねえだろ!!(泣)
……てなことがありまして、聖騎士改め山賊(もしくは山賊改め聖騎士)の俺は、センの古城の攻略拠点となるであろうアンドレイの篝火に赴いた。こんなこともあろうと、この篝火は序盤の序盤に注ぎ火で強化したのだ。これぞ先見の明。さすが俺。
「“この篝火、強化しなきゃよかった……”とか言ってなかったっけ?w」
とH。こういう発言は、無視するに限る。
篝火で準備を整えた俺は、細い橋を渡って古めかしい巨大な建物へと向かった。そしてその入り口にたたずみ、恐る恐る中を覗きこむ。
ここが、センの古城……。
ジークマイヤーというNPCを配置し、思わせぶりなセリフでプレイヤーに印象付けを行っていたところを見ると、センの古城はこのゲーム全体を通して見ても“特別な場所”なのだろう。ふたつの鐘の音を鍵としてうやうやしく扉が開いた事実を見ても、それはわかる。
それでも、俺は前に進んだ。怯んでいないと言えばウソになるが、これまでの幾多の苦難が俺の心を強くしてくれたのだ。
黒騎士、鐘のガーゴイル、バジリスクの呪い、そしてクラーグ……。
彼らとの激闘が、このゲームを進めるうえでもっとも大事な“勇気”という武器を、俺に握らせてくれたのである。
「よし、進もう!」
ついに俺は、センの古城に足を踏み入れた。そのとき、身体の近くで「カチッ」と小さな音がしたのを聞いた気がしたが。
そして−−。
ヒュンヒュンヒュンヒュン!
グサグサグサグサッ!!!!
「YOU DIED」
「………………………………」(俺)
「^^;;;;;;;;;;」(S君)
「wwwwwwwwwwww」(H)
記念すべき最初の1歩でまんまと罠を踏み、真正面から飛び出てきた矢に身体を貫かれて、俺はセンの古城の入り口でモロに息絶えた。
「もういい……。寝る……」
苦難と絶望のセンの古城行脚は、まだ始まったばかり……。
昨夜ついに、1周目を終えました……。ソフトの発売から42日目。プレイ時間は72時間を超えておりました(このうちの半分くらいは、スモウ&オーンスタインで使った気がする……)。キャラクターレベルは85。ヘタクソなりに、よくがんばったと思うわー。
しかしこのプレイ日記はいまだ、道半ばもいいところのクラーグ戦のことを書いているんだった。こんなペースで果たして、書きたいことをすべて書けるのでしょうか?? しかしだからと言っていきなり、
「クラーグは熱くて強かった。でも倒した。俺すごい。終わり。ハイつぎ」
と、超タンパクな文章になるのもナンだしな……。なのでペースはあまり気にせず、これまで通りに書いていこうと思います。今後ともよろしくお願いします!
さて。
クラーグの灼熱の魔剣にバッサリ斬られ、あっけなく死を刻んだ俺。でも、これは想定内の出来事だ。はなから1回目の挑戦でクリアーできるとは思っていない。いまのはクラーグの動きがどんなもんなのかを見るための捨て石である。斬られた俺はたいそう痛かったろうが、確実なる勝利のためにはこういう犠牲は必要なのだ。つまりこれは、“必要悪”ならぬ“必要死”と言うものだ。
「でも1回でクリアーできれば、それに越したことはないんじゃないの?」
Hの心ない発言は、聞かなかったことにした。
篝火で復活した俺は、再び毒の大沼に飛び出した。作戦らしい作戦は思いつかなかったが、満タンのエスト瓶と黒騎士の斧槍があればなんとかなるに違いない。ちょっとデカいだけのクモに、人間様が負けてたまるか。
そして2回目。クラーグをロックオンした俺はそのままヒョイヒョイとバックステップして距離をとり、攻撃するタイミングを見つけようとした。しかしこいつ、めったやたらと火を吐くし、ちょっとでも距離が縮まると魔剣を振り回してくるので危ないったらない。「シャカシャカシャカッ!!」というクモ走りによる動きも速く、ときおり大ジャンプして一気に接近してくるので、セーフティーな距離を保つのも難しいくらいだ。
「むむむ……」
俺はうなるしかなかった。
しかもそうやって逃げ回っているうちに、こちらの集中力が切れてきた。長期戦になると、やはり生身の人間は不利である。結果、「ズバッ!!」と一閃、魔剣で斬られてしまう。この一撃で、俺のHPはほとんどなくなってしまった。
「や、やばい!!!」
なんとか体勢を立て直そうと、横に、横にと回り込んでいく俺。早くエスト瓶を使って体力を回復しないと……! そう思った矢先だった。
じゅ。
「YOU DIED」
「うわああああああああっ!!!!」
ク、クラーグが吐いた火が地面に残っていて、それ踏んで死んじまったじゃねえか!!! なにこの、3年殺し的なイヤらしい残り火は……。
「や、焼けたwwww」
Hが「ぷw」っと吹き出した。
3回目。俺はまたまた無策でクラーグに挑んだ。これは「何回かやってりゃそのうち、偶然倒せるときが来るだろう」という打算による行動である。でも、そんな能天気なオヤジがラッキーで倒せるボスなど、このゲームには存在しない。
例のごとく距離を取り、どうにか炎と魔剣をかいくぐった俺は、思い切ってヤツの懐に飛び込んだ。チャンスだ! 体力は心もとないくらい減ってはいたが、このチャンスに1回でも多く攻撃を叩き込んでやる!!
しかしここで、クラーグが妙なことをした。さっきまでシャカシャカシャカと気味悪く動きまくっていたくせに急に動きを止め、その場で踏ん張るようなポーズをとったのだ。な、何がやりたいんだコイツ……。でも、攻撃してくるようには見えなかったので、俺はそのままクラーグを斬り続けた。ところが……!
ボボボボボボンッッ!!!!!
いきなりクラーグの周辺の空気がピンク色になったかと思ったら、派手な大爆発が起こったではないか!! そんなことが起こるなんて夢にも思わず、「わーいわーい。斬り放題だ斬り放題だ」とムジャキに剣を振り回していた俺は、爆風に巻き込まれて即死しました。
この後、俺はクラーグに10連敗くらいした(いつも同じようなことを書いているがね)。クラーグはブレスを吐いているときに隙ができるのでそこを狙って尻に近付き、「わああああ!!」と騒いで斬り刻むのだが、いつも「あと1回斬らせて!!!」と欲張って墓穴を掘っている。そういうこと、しなきゃいいのにな。わかっちゃいるんだけど、40になったとたん融通が利かなくなったオッサンは、なかなかやめられないんだよ。
それでも、失敗を重ね続けたことで、ようやくクラーグの行動パターンが見えてきた。ヤツが仕掛けてくる攻撃は、中間距離での炎のブレスとジャンプアタック、接近戦になったら、魔剣の振り回しと力士の四股のような踏み付け、そして大爆発攻撃だ。
俺は再度、篝火を出た。いままでの無策による力技を大いに恥じ、前述の行動パターンを頭の中で反芻しながらの突撃である。
やはりこのゲームは、ひと筋縄ではいかない。プレイヤースキルはもちろんだが、まずは「考えること」をしないと、ボスはおろかザコにもやられてしまうのだ。ましてや、いま俺の前に立ちふさがっているのは“混沌の魔女クラーグ”である。相手のことを知り、そのうえで戦略を練りに練ってぶつけないと、消し炭にされるのは当たり前だ。
「積み上げたものを、すべてぶつけるぞ!!」
気合とともに、俺は光りの入り口をくぐった。
そして、10何回目かの挑戦。このときも、クラーグの攻撃は苛烈を極めた。魔剣の斬れ味はいつも以上にすさまじく、俺はガードをするだけでいっぱいいっぱいになってしまう。何回かは、まともに斬られた。それでも必死にゴロンで逃げまくり、エスト瓶をガブ飲みして攻撃のチャンスを待った。そして、そのときはすぐにやってきた。
ブボオオオオオオ!!
クラーグが口から炎を吐き出した。チャンスだ!! 俺は脇目も振らずにクラーグの後脚あたりに貼り付き、1回、2回と攻撃を行う。そして、すぐに離脱。「あと1回だけ斬らせて!」を封印し、チクチクとダメージを蓄積させる戦法にしたのだ。
そして−−。
10分ほども立ち回っていただろうか。手持ちのエスト瓶が空になるのと同時にクラーグは断末魔の悲鳴を上げ、俺の前から姿を消した。残ったのは、主のいなくなっただだっ広い巣穴だけである。でも、これで終わりではない。この巣穴の奥に、目的の“ブツ”があるはずなのだ。
俺は感激に浸る間も惜しんで、クラーグの住処の奥へと走った。するとそこに、思った通り“下の目覚ましの鐘”が……!!
「あった!!」
見ると足元に、鐘につながっていると思われるレバーがあった。これを引けば、いよいよ最初の区切りである。
「引くよ」
見守っていたHとS君に厳かに告げ、俺は思いっきりレバーを引いた。
さあ鳴り響け、目覚ましの鐘よ!
ロードランの地に生きるすべてのものに、その音を聞かせてやれ!
目覚ましの鐘の音は、風に乗ってロードランの隅々にまで響き渡った。この瞬間だけは、血なまぐさく、恐怖に満ちたこの旅の景色を忘れていたかもしれない。
しかし、旅は続くのだ。
ついに“センの古城”の扉が開く−−。
次回に続く。
突如涌いたウジ虫に身体を蝕まれ、あえなく絶命したところまで書いた。今回はその続きである。
篝火に戻された俺は懲りずに毒沼を渡り、クラーグの住処にやってきた。そして“卵背負い”(例のウジ虫の卵野郎ね)の横を、虫に襲われた忌まわしい思い出をフラッシュバックさせながら、ソロリソロリと通過する。そのとき、「こ、このウジ虫がっ! おまえなんかムシケラだっ!」と、SMの女王様のように口汚く罵ることも忘れなかった。
そして俺は、光の入り口をくぐった。いよいよ、混沌の魔女クラーグと激突だ!
光の入り口を入るとすぐに、画面はムービーに切り替わった。食い入るように見つめていると、だだっ広い空間の奥にカメラがズームアップし、そこから昆虫の脚のようなものが「ニョキ」っと覗く。1本、2本……と出てきたところで、今度は顎のようなものが画面に映し出された。
コキッコキッ……。
マリオネットがぎこちなく関節を動かすがごとく、その顎……というか顔が、小刻みに上下左右に揺れる。
こういう、非人間的な動きは例外なく、見る者を戦慄させる。ほら、ホラー映画なんかでもよくあるでしょう。髪の長い女幽霊が突如現れて、どこに関節があるのかすらよくわからないロボットのような挙動で「ゴキッゴキッ!」と身体を動かして近寄ってくる映像が……。現れたこの生き物の顎の動きはまさにソレで、俺は慄然とする。こ、こんなヤツと戦わないといけないの……?
脚と顎の持ち主は、少しずつその姿を現してきた。赤黒い複数の脚はいかにも堅そうで、顔にはトゲのようなヒゲ(もしくはヒゲのようなトゲ)と、無数の目が点在している−−。その姿は、まさにクモの化身。チロチロとのぞかせる舌が、なんともおぞましい。
しかし、ムービーはそれだけではなかった。カメラはゆっくりと大グモを下からあおり、舐めるように上へと移動していく。すると、クモの顔あたりにキレイな人間の手が映り、さらに引き締まった女性のウエスト付近をとらえたではないか。なんて美しい肌でしょう。しかしそこより下は、クモの頭と同化していて見ることができない。ナゼか「む……」という残念ボイスが俺の口から漏れた。
しかし残念だったのも束の間、カメラはさらに女性を映し続け、長い髪で巧妙に隠された胸付近を映し出した……!
「お、おっぱ……!!!」
それがクモの化身だということも忘れ、ついつい歓喜の叫びをあげそうになってしまったよ。
そんな、おっぱ……じゃなかった大グモこそが、混沌の魔女クラーグだった。ケンタウロスを思わせるその姿を見て、ついつい「惜しい」とつぶやいてしまう。だって、上半身はあんなに美人なのに、下半身(?)はクモなんですよ? しかも極め付けに大きい……。長年恋焦がれていた女子に思い切って愛を告白したとき、いきなり「あたし、こんなだけどいいの〜〜〜……?」と下半身にめり込んだクモを見せられたら、間違いなく100年の恋も覚めると思うのだ。クラーグは、そういうルックスをしているのである(意味不明)。
クラーグは脚をシャカシャカいわせながら、真っ直ぐこちらに向かってきた。その動きは、完全にクモそのものである。俺、とたんに錯乱する。
「ひいいいい!! こ、こいつクモのくせに、真っ直ぐ歩いてくるよ……! ふつう、横歩きしかできねえだろ!!」
Hが冷静に突っ込んだ。「それはカニでしょ」。
どうしていいかわからなかったがとりあえずクラーグをロックオンし、俺は巨体のまわりを回り始めた。ヤツがどう動くのか、観察しようと思ったのだ。するとクラーグは脚を止めて何やら思慮深い顔をしたあと、クモの口から「ブボォォォォ……!」と炎の塊を吐き出す!! 驚いたがなんとかこれをかわした俺はクラーグの背後に回り込み、そのケツ目掛けて黒騎士の斧槍を振り下ろした。この攻撃は見事に当たったが、俺はほかのことが気になってしかたがない。
「こ、こいつ、ケツ毛がすごいな…………」
クモの尻あたりにはボワッと剛毛が密生し、おぞましいルックスに拍車をかけていた。リアル大グモのタランチュラなんかもそうだが、ふさふさに毛が生えた虫というのは、あまりかわいくない。
クラーグの攻撃は多彩だった。距離を取れば執拗に炎のブレスを吐き、中間距離になると何かを爆発させてこちらの体力を削ってくる。しかもしょっちゅう大ジャンプをくり出してきて、そのたびにロックオンカーソルを外されてしまった。なんとも戦いにくい。
少しずつ体力を削られて焦った俺は、思い切ってクラーグの懐に飛び込んだ。しかしその瞬間に目の前で赤い光が閃き、俺は絶命させられてしまう。何が起こったのか、さっぱりわからなかった。
「“魔剣”に斬られたね……。やっかいなんだよな、アレ……」
S君が言った。それでも俺は意味がわからず、つぎのような言葉を口走る。
「魔剣……って、あのクモの前脚のこと? いま、それに斬られて死んだんだよね??」
S君、本気でズッコケて声を荒げた。
「違うよ!!w クモの上に乗ってるクラーグが、右手に持ってたじゃん!! ムービーに映ってたでしょwww」
え、マジで。ぜんぜん気付かなかった……。べつのものに気を取られてて、魔剣なんてまったく見えなかったよ……。俺は「はぁ」とため息をついた。
「やられた……。あのおっぱ……は、俺の目を魔剣から遠ざけるための、クラーグの策略だったらしい」
我が家の居間に、HとS君の「ハイハイ……」という呆れ声が響いた。
次回に続く。
【ダークソウル】第38回 灼熱の魔剣 (その1)
排水溝の篝火を出たり入ったりしながら、俺は広大な大沼の探索を続けた。相変わらず大ヒルが吸い付いてくるし、飛行虫は襲来するし、身体はつねに毒状態だしでストレスが溜まることはなはだしかったが、どうにかひと通り見て回れた感じだ。ただ1ヵ所を除いては……。俺は画面右奥のほうを凝視しながら、恐る恐る言った。
「大沼の奥のほうに、なんだか物騒な臭いがするゾーンがあるんだけど……」
俺の視線の先では、デブ(巨漢亡者)と思しき生き物が、大岩を持ち上げて佇んでいた。それも複数……というか、群れを成して。こんな奴らの相手もしなきゃならんのか……。イヤな予感がこみあげてくる。しかしこいつらを蹴散らした先にもアイテムがありそうだったので、イヤだろうがナンだろうがやるしかないようだ。
とりあえず、いちばん手前にいた巨漢亡者に近づいてロックオンする。しかしすぐに相手も気付き、手にした大岩を投げつけてきた。それをどうにかいなして接近し、まずは一撃。でも相手はひるんでくれず、再び大岩で攻撃してくる。俺、慌ててゴロンをしてこれを避けるも、いきなり背後から「ごわんっ!」と何かをぶつけられて昏倒してしまったではないか! 見るとそこには、もう1匹の巨漢亡者……。どうやら夢中で立ち回っているうちに別の巨漢亡者のテリトリーに踏み込んでしまったらしく、「なんやおまえは! オウ!!」と因縁を付けられたようだ。
ここからはもう、しっちゃかめっちゃかである。
投げつけられる大岩をガードしたり、避けたりしている姿は丸っきりゲームで(ゲームだけど)、いま自分がどんな体勢になっているのかもよくわからなくなる。なんとか敵の猛攻をかいくぐって主導権を握りたかったが、大岩を持ったふたりの横綱を相手にどうすることもできず、俺は篝火に強制送還された。その姿を哀れに思ったのか、S君がこんな提案をしてきた。
「大沼の右奥のほうからまわると、あいつらをやり過ごすことができるよ〜」
って、無理して戦う必要なかったんかいっ!!!!
でも俺は、デブの足元に落としてきた大金(……3000ソウルくらいだったがw)が惜しかったので、再度命の危険を顧みずに巨漢亡者ゾーンに突入。見事これを討ち果たして、スッキリ気分で先に進むことになった。……ところがこの後、巨漢亡者が復活しているとは夢にも思わずに、「あそこのデブどもは倒したから、さえぎるものは何もないだろう」ってんで再び同じところに行き、まんまと大岩を持って現れた巨漢亡者どもに追い回されて2度目の死を味わわされることになるんだけどな……(苦笑)。
そんなマヌケなことはありつつも、大沼の探索はおおかた終了した。残るは、巨漢亡者どもの背後にある、丘のようなゾーンだけだ。
篝火を飛び出した俺は、大沼の右端を回るようにして丘を目指した。正面切って堂々と行こうとするとデブどもに袋叩きになるのが目に見えていたので、「なるべくヤツは刺激しないように……」と、コソコソと回り込みをすることにしたのである。その甲斐あってか、無傷で丘に到着。見ると丘の中腹あたりに、光の入り口があるのがわかった。この先に、病み村のデーモンが潜んでいるのだろう。
しかしそれ以前に、俺には気になることがあった。かすかな不安が、口をついて出る。
「なんだかやたらと、クモの巣が多いんですけど……」
俺はさほど、クモが嫌いな人間ではない。昨日ここで書いたヒルに比べたら、かわいくて愛らしくて頬ずりしてあげたいくらいである(「じゃあやってみろ」と言われたら全力で逃げるが)。しかしそれにも限度があって、まわりにあるデカいクモの巣の生成過程を想像すると、「こんな破廉恥な大きさの巣を作るクモとは、お友だちになりたくない」と心から思う。“蛇蝎のごとく嫌う”という言葉があるが、俺の場合は“大蜘蛛蛭のごとく嫌う”だな。
しかし、イヤだろうがナンだろうが先に進まないといけないので(本日2回目)、俺は緊張しながら光の入り口をくぐった。すると画面に“クラーグの住処”という文字が表示され、新たな危険が我が身に降りかかったことを確信する。洞窟の壁が白っぽいのは……これ、全部クモの糸か……?
恐る恐る白い道を進んでいくと、目の前に奇妙な生き物が現れた。卵状の物体がモコモコと積み重なったブドウのようなたたずまいで、よく見るとその下で人間がうつ伏せになっている。ひと目で、この卵に寄生された人だとわかった。な、なんておぞましい……。そして、なんて哀れな……>< こちらに襲い掛かってくる様子がなかったので、まだこの人は理性を持ち合わせているのだろう。よし……。いまその状態から解放してあげるからな>< 待ってろよ(泣)。俺は黒騎士の斧槍を振り上げた。しかしその瞬間、S君とHが同時に悲鳴を上げる。
「ああっ!!! そいつ斬っちゃダ……!!!」
ふたりが言い終わらぬうちに、俺が振り下ろした武器の先端が寄生卵のど真ん中に突き刺さった。
ズバンッ!!
これで、この人もうかばれる……。いいことしたな俺……。
「南無……」
手を合わせようとしたところで、おかしなことが起こっていることに気が付いた。いきなり画面に、ミルワームによく似た気色の悪い芋虫が大量に現れたかと思ったら、そいつらが「ビチビチビチッ!!!」と跳ねて我が分身に襲い掛かってきたのだ!! 俺の全身を、鳥肌が覆う。
「ひぃぃぃぃぃっ!! き、キモい!! 虫が涌いた!!! ううう、蛆だウジだ!!!」
俺、慌てて斧槍を構えるも、ウジもしくはミルワームの動きは必要以上に俊敏で、攻撃力もすさまじい。しかも数がやたらと多く、俺はその場で「YOU DIED」……。
「遅かった……www」
とH。ホントにこのゲームは、何が起こるかわからないわ……。
“灼熱の魔剣”なんてタイトルにしたくせにクラーグが登場してませんが……(苦笑)。次回に続く。
黒騎士の斧槍を手に入れた俺は、ホクホク顔で病み村まで戻ってきた。途中、立ち塞がるデブ(巨漢亡者)を相手に、さっそく新武器の試し斬りを行う。すると、それまであんなに苦労していた巨漢亡者を難なく退けることに成功してしまった。
これはひとえに、黒騎士の斧槍の初太刀が猛烈に速いうえに攻撃力が高く、ほとんどの戦いで先手が取れるからだろう。“先手必勝”とはよく言ったもので、出会ってすぐに200以上のダメージをぶち込めることで心に余裕が生まれ、その後の立ち回りがグンと楽になる。精神的なものも大きいのだろうが、この武器のモーションやスピードも俺にはすごく馴染んで、戦いが桁違いにやりやすくなった。ただひとつ、武器の重量が14.0もあるのが玉に瑕(きず)なのだが(黒騎士の剣は8.0)、これは装備重量が1.5倍になる“ハベルの指輪”でしのいだ。
「もう寝るときも、オマエを離さないぞ><」
感涙にむせびながら俺は言った。本当に実行したら、朝起きたら血まみれになっているだろうがね。
黒騎士の斧槍をゴキゲンで振り回しながら、俺は大沼の排水溝にある篝火までやってきた。ここで一服しながら、今後の方針を考えることにしよう。当面、やらなければいけないことは、以下の2点と思われた。
・冒険の起点となる拠点を作る
・毒の大沼をくまなく探索する
これを行うことで、つぎの冒険への道しるべが見えてくるに違いない。俺はHとS君に向かって宣言した。
「とりあえず、大沼探索の拠点を作ろうと思う。それにはここ、排水溝の篝火がピッタリだと思うんだけど、異論はあるかね?」
HとS君はブンブンと首を振り、口を合わせて「うん、ここがベストだと思うよ」と言った。その反応を見て俺は心から安堵し、この篝火に注ぎ火を行う決意をする。このとき、俺は亡者だったので(ていうか、基本的にずっと亡者だが)、まずは人間性をひとつ使って生者に復帰(?)。続けてもうひとつ人間性を使って注ぎ火を実行した。これにより篝火が強化されて、エスト瓶の使用回数が10回に増加する。この排水溝が、立派なベースキャンプになった瞬間だった。
そして俺はひさしぶりに生者のまま、篝火を飛び出した。と言っても、生者と亡者の違いはあまりないので、心模様もたいして変わらない。唯一、亡者はルックスが墓から這い出てきたばかりの死人然としているのに対し、生者はキレイな生前の姿をしているので、見た目重視の人は圧倒的に生者でプレイしたいところだろう(あと、ネットプレイに重点を置いている人)。でも俺は、どうせ頭にはずた袋をかぶっていて表情が見えないので、生者だろうが亡者だろうがどうでもよかった。たまたまこのとき、生者になっていた……というだけだ。
毒の大沼は、ことのほか不気味だった。暗いし、足元は毒水だし、生息している生き物も嫌悪感を覚えるようなものばかりである。
とくに、ところどころで群れている“大ヒル”のグロテスクさは凄まじい。見た目は完全に“吸血ヒル”として有名な“ヤマビル”そのもの。しかしヤマビルが大きくても数ミリ〜数センチくらいしかないのに対し、この大ヒルは余裕で1.5メートルくらいある。胴回りはおそらく、2メートルくらいあるのではなかろうか。“大”の冠に恥じない大きさだが、いくらなんでも大きすぎるだろう。しかもこいつ、ズリズリグネグネミョンミョンブニョブニョと元気に這いずり回り、ときにジャンプして人間に吸い付いてくる。これがキモい。極め付けにキモい。5匹、6匹と群れているところに誤って足を踏み入れてしまい、このヒルどもに一斉にたかられた日には地獄もいいところだ。
思うに俺は、もともとヒルが嫌いだったらしい。まあ「ヒルが大好き! 眠るときも離したくないわ><」なんて人はあまりいないだろうが、俺は基本的にたいがいの生き物は平気なので、これほど「う……」と思うことが珍しいのである。生れ落ちて40年経ったところで、“ヒルが苦手”ということに気付かせてくれた『ダークソウル』よありがとう。
そんな感じで大ヒル相手に悪戦苦闘していたところで、いきなり画面に、予想だにしていなかったメッセージがでかでかと表示された。
「闇霊ミルドレットが侵入しました」
その文字は、いかにも我が身の火急を告げるにふさわしい大きさに加え、赤と黒の不吉な色使いがなんとも心をザワつかせた。もちろん、俺はこのメッセージの意味するところを知っている。
来たのだ。
ついに来たのだッ!!!
何者かが俺を殺すために、この世界に侵入してきやがったのである!!! 『デモンズソウル』の時代よりあった、他人の世界に入り込んでそこのヌシを屠り去る……というこの仕様、はっきり言ってとんでもなく怖い。ヘタな心霊体験とかUMAを見た瞬間よりも、この“闇霊○○○が侵入しました”というメッセージを見るほうが俺はよっぽど恐ろしいと思う(UMAなんて見たことないけど)。このときももちろん、俺は取り乱した。
「ややや、闇霊キターーーッ!!! 俺を殺しにやってきたよ!!! どどど、どこのどいつだ!!! 俺はどうすりゃいいんだ!!!」
しかしここで、S君が苦笑いをしながら俺をたしなめた。
「どいつも何も、そいつはNPCだよww そんなに強くないと思うので、落ち着いてwww」
な、なんだNPCか……。思わせぶりな、恐ろしげなメッセージを出しやがって……。
多少は落ち着いたがそれでも、闇霊の特徴である赤黒い身体を見たときは本気でキモが冷えた。彼らの秘めたる殺意が身体の表面に赤くにじんできたかのようで、見た瞬間に逃げ出したくなった。
実際、俺は逃げた。というのも、沼には大ヒルや飛行虫などウザいザコがたくさんいるし、なにより足元の毒水にあたって体力が削り取られるのがキツすぎるので「安全なところで戦おう」と思ったのである。この大沼で安全なところと言えば……そう、篝火がある排水溝だ。俺は脇目も振らず、ここに飛び込んだ。
この判断は、まぎれもなく正解だった。毒水もなく、ザコもおらず、そして障害物もない排水溝の中は格好の闘技場で、じつに立ち回りがしやすい。俺はミルドレットが振るう肉包丁と思しき凶器攻撃をヒラリヒラリと避け、黒騎士の斧槍の素早いモーションから1発、2発と攻撃を当てた。
やっぱり、この武器はいい。相手に先手を取られても、強引に主導権を引き戻す力があるぞ!
そして俺は、ミルドレットを返り討ちにした。その様子を見て、Hがつぎのように言う。
「いよいよ、病み村のボスと激突かねー!」
次回、灼熱の魔剣“混沌の魔女クラーグ”登場!
大塚角満

週刊ファミ通副編集長にして、ファミ通グループのニュース担当責任者。群馬県出身。現在、週刊ファミ通誌上で“大塚角満のモンハン研究所”というコラムを連載中。そこら中に書き散らした『モンハン』がらみのエッセイをまとめた単行本『本日も逆鱗日和』シリーズ(4巻)が発売中。また、そこからのスピンオフとして別の視点から『モンハン』の魅力に迫る書き下ろし作品『別冊『逆鱗日和』 角満式モンハン学』シリーズも。このブログではさまざまなゲーム関連の話題を扱うつもり。一応、そのつもり。
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