大塚角満の ゲームを“読む!”
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月光蝶を打ち倒した俺が向かった先は、城下不死街だった。新たに手に入れた“見張り塔下層の鍵”を使ってその中に入りたい……という思いもあったが、それ以上にいよいよ、「やり残していたことを片づけちまおう」と思ったのだ。このエリアでやり残しと言えばそう、“塔の上の黒騎士”である。
かつて俺はこの黒騎士に、「もうこのゲームやだ……」と泣き言を漏らしてしまうほど完膚なきまでに叩きのめされている。結果、『ダークソウル』では初となる“敵前逃亡”を経験し、心に大きなシコリを残してしまったのだ。しかしその後、俺は幾多の強敵に真っ向からの肉弾勝負を挑んでつぎつぎと撃破し、その見返りとして強い武具と、金では買えない“プレイヤースキル”という財産を手に入れた。……ま、1回勝つために数十のオノレの命と、数万単位のソウルを授業料として支払っているけどさ……。
さっそく俺は黒騎士の剣+1を手に、ガーディアンが待つ塔に向かった。そして、ここの黒騎士戦の難度を上げている要因のひとつである見通しが悪い螺旋階段を駆け上り、頂上に着いたと見るや黒騎士の存在も確認せずに「うりゃあああああ!!!」と言って攻撃ボタンを強く押した。するとこれが見事に黒騎士に当たり、機先を制することに成功。
「すげえw 超奇襲攻撃!w」
S君が感嘆の声を漏らした。ここまでは、作戦通りだ。
でも、はしゃぐのはここまで。いまのは単純に猫だましが成功して、まわしに指がかかったに過ぎない。俺は冷静にR3ボタンを押して黒騎士をロックオンし、螺旋階段を下りながら距離を保った。そして、痺れを切らした黒騎士が特大剣と思われる大きな刃物を振り回した後の隙を狙って「ザクリッ」と1発攻撃を入れる。主導権は、いまや俺のものだった。かつてあれだけ苦労させられた塔の黒騎士を、俺は完全に手玉に取っている−−! オノレの成長の証が、黒騎士から飛び散る体液の中に見えた気がした。
そして俺はついに、この黒騎士を討ち取ることに成功する。いったい何回目の挑戦になるのか見当もつかなかったが、ようやく完勝することができたのだ。
俺は、黒騎士が落としていったものを嬉々として回収した。するとそこに、さっきまでライバルが手にしていた“黒騎士の大剣”なるものが……! これを見たS君とHが騒ぎ出す。
「ええ?? また黒騎士のドロップで武器を手に入れたの!? 俺のときはそんなの出なかったけど!!」とS君。
「べつのゲームではまったく欲しいものを引かずに何度もウチらにクエスト手伝わすくせに、なんで『ダークソウル』ではそんなにドロップがいいのよ!!!」とH。そんなこと言われても、ねえ^^^^
黒騎士の大剣は、大いなるロマンを秘めた潜在能力の高い武器だった。初期の物理攻撃力は205で黒騎士の剣と変わらないが、筋力補正が“B”と優秀で、筋力にばかりパラメーターの数値を振っている俺にピッタリに見える。残念ながらキチンと扱うには筋力も技量も足らなかったが、いずれこの数値には達するだろう(筋力は32、技量は18必要)。俺は、いつか黒騎士の大剣を振り回すことを夢見つつ、つぎの目的地に向けて走り出した。
「つぎはどこへ?」
Hの質問に、俺はこう答えた。
「見張り塔下層に行ってみる。何があるのか知らんけど」
これを聞いたHとS君が、無言で目線を交わしたのが気配でわかった。どうやら見張り塔下層には、“何か”が待っているらしい。
問題の場所にたどり着いた俺は、月光蝶戦後に手に入れた鍵を使って“開かずの扉”をギギギと開けた。そして、かなり警戒しながらゆっくりと、その中に足を踏み入れてみる。しかし、塔の中は静かなもので、若干拍子抜けしてしまった。
「なんだ。何もいないじゃん」
安堵の吐息とともにあたりを見回すと、下へと伸びる階段があるのがわかった。どうやらここを進むしかないらしい。
「よし……。行ってみるか……」
何もいないかも……とも思ったが、一応万全を期して盾を構えて、じりじりと階下に下りてゆく。かなり深い塔だったがやがて底が見え、いちばん下まで下りてきたのがわかった。
でもそのとき、俺が下っている螺旋階段を、重そうな装備に身を包んだ戦士が上ってこようとしているのが見えた。
「……? あ、あれは誰だ??」
ズシンズシンと地響きがしそうなほど重い足取りで、戦士は我が分身に向かって接近してくる。その肩には、鈍器にも刃物にも見える、見るからに物騒な武器が乗っかっていた。
「……こいつ、なんかヤバそうだ!!」
明らかな殺気を、無表情な兜の向こうに感じる……。俺は初めて見るその戦士から、黒騎士に匹敵する危険な匂いを感じ取っていた。
圧倒的パワーを誇る“ハベルの戦士”との激闘は、こうして幕を開けた−−。
(C)2011 NBGI (C)2011 FromSoftware, Inc.
大塚角満

週刊ファミ通副編集長にして、ファミ通グループのニュース担当責任者。群馬県出身。現在、週刊ファミ通誌上で“大塚角満のモンハン研究所”というコラムを連載中。そこら中に書き散らした『モンハン』がらみのエッセイをまとめた単行本『本日も逆鱗日和』シリーズ(4巻)が発売中。また、そこからのスピンオフとして別の視点から『モンハン』の魅力に迫る書き下ろし作品『別冊『逆鱗日和』 角満式モンハン学』シリーズも。このブログではさまざまなゲーム関連の話題を扱うつもり。一応、そのつもり。
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