大塚角満の ゲームを“読む!”

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【パワプロ2011】第7回 命名の悩み

 サクセスモード(サクサクセス含む)で選手を作成するときに、必ず思い悩まされるのが選手の“名前”である。コレ、全国に何十万人といるパワプロファン共通の悩みだと俺は思うね。だって付けられた名前を、選手たちは一生背負って生きていかなければならないんだよ? そういう意味では、自分のリアル子どもに名前を付けるのと同じ責任をプレイヤーは負うということになるわけだ。ちょっとオーバーかもしれないけど、理屈だけで解釈したらそういうことになるでしょう。

 でもこれ、RPGとかで、プレイヤーキャラ(主人公)ひとりにだけ名前を付けるのだったら安い仕事なのだ。自分の脳ミソに渦巻くあらゆる固有名詞の中からひとつだけをピックアップして、命名してあげればいいんだからサ。取っておきの“バレンティーノ”だとか“ロッシ”だとかを付けてあげて、ハァハァと興奮しながら愛でてあげればいいのである(注:バレンティーノ・ロッシは、イタリアの天才バイクレーサーの名前です)。

 ところが『パワプロ』のサクセスモードにハマった場合、名前を付けなければいけない人々はひとりやふたりじゃ済まなくなる。ぶっちゃけ、10人や20人でもカンベンしてもらえない。ヘタをすると、固有名詞を100名分用意しても足りなくなる。こいつは何気に、恐ろしいプレッシャーだ。

 このプレッシャーを跳ね除けるために、ヘビィなパワプロプレイヤーたちは独自の対策をしているようだ。たとえばあるプレイヤーは、サクセスで作った選手たちに“食べ物系”の名前を授けているという。つまり“ビフテキ”とか“マロングラッセ”とか、“ざるソバ”とか“カツ丼”とか……。これならば名称が被ることなく、100や200は選手名を付けられることだろう。

 またあるプレイヤーは“昆虫系”に絞って選手名を付けていると聞いた。この人の選手リストにはおそらく、“オンブバッタ”、“カナブン”、“アトラスオオカブト”、“チャドクガ”、“ワモンゴキブリ”なんていう選手がズラリと並んでいるに違いない。すると自然と、アトラスオオカブト選手はパワーSのスラッガーで、ワモンゴキブリ選手はやたらと足の速い俊足巧打の選手なんだろうな……なんて、名前を見ただけで想像ができてしまう。おもしろいおもしろい。

 さて、そう言う俺はどんな名前を選手に付けているのか? 当然、前述の野菜系の人や昆虫系の人のようにある程度の統一は図りたいので、ちょっと考えてみた。その結果、「好きな小説やマンガに出てくるキャラクターの名前を付けていこう」という方針が固まった。

 まず使わせてもらったのが、この宇宙にある長編小説の中でいちばん好きな『銀河英雄伝説』の登場人物の名前だ。ドイツ圏の超かっちょいい名前をつぎつぎと、サクセスの選手に付けていった。キルヒアイス、ビッテンフェルト、シェーンコップ、ガイエスブルグなどなど……(ガイエスブルグは要塞の名前だけど)。あっと言う間に、俺の『銀英伝』軍団は充実していった。

 しかし、これら取っておきの名前を、序盤に作った選手に片っ端から付けてしまったのは大失敗だった。どういうことかというと、たとえば“カイザー”なんていう、パラメーターオールA間違いなし的な強い名前の選手が、弾道3、ミートE、パワーC、走力D、肩力D、守備力C、エラー回避Cなんていう目も当てられない内野手になったり、その球団に君臨するかのような“元帥”という選手が、球速141キロ、コントロールD、スタミナC、変化球フォーク3のみと、オマエはどこの二等兵だと言いたくなるピッチャーになったりした。俺は自分の計画性のなさにホトホト呆れ果て、そのうちに『銀英伝』の固有名詞も尽きてしまい、新たな素材を模索することになる。そこで出てきたのが……!

 続きは次回〜。


 

投稿者 大塚角満 : 14:37

【パワプロ2011】第6回 夏の甲子園を観ながら

 前回の日記の最後に「サクサクセスで作った選手をさらしてみる」と書きましたが、諸般の事情により写真を撮ってくるのを忘れたので別のネタを書こうと思います。

 ……っていま何気に、“忘れた”という事実を“諸般の事情”という言葉でカモフラージュしようとしましたが騙されてはいけんよ。

 さて、今日は短いネタで。

「今年の夏は『パワプロ2011』一色!!」と言っても過言じゃないほどこのゲームをやり込んでいる角満一族。ヒマさえあればプレイステーション3とPSPを起動して、サクセスモードに興じていた。そして、「天才が出ない!!」、「コントロールはせめてBは欲しい!」、「球速150キロ止まりで残念すぎる><」なんてことを日夜叫び合っている。一般家庭ではなかなか見られない奇特な風景かもしれないが、この“パワプロ漬け”が意外なところで露呈してちょっと笑ってしまったことがある。

 この夏の我が家のもうひとつの傾向として、“夏の全国高校野球選手権大会(甲子園)の中継をやたらと積極的に観ている”というものがある。リアルタイムの実況はさることながら、夜に放送されるダイジェスト番組もしっかりとチェックしているのだ。俺は昔から甲子園の中継は好きで欠かさずチェックしていたが、この春までまったく興味を示さなかったHやS君も真剣に甲子園での熱闘を観ているのが、それはそれは意外だった。でも彼らが話している内容を聞いて、ちょっと吹き出しながら「なるほど!!w」と合点してしまったのである。HとS君は、こんなことを話していたのだ。

H:このピッチャー、変化球のキレがいいね。スライダーかな? 変化数は“5”くらいあるかも。
S君:このバッター、またタイムリーだ。“チャンス4”はついてるよ!
H:すごい返球!! このライトのコ、“レーザービーム”持ってるかも!
S君:1試合2ホーマーだ!! もしかして“パワーS”なのでは……。

 これを聞きながら、「うんうん、わかるわかるw」と笑ってしまった次第だ。

 それまで野球のことをまったく知らないどころか、興味すらなかったふたりが『パワプロ2011』をきっかけに甲子園の熱闘に興味津々になっている。このゲームに出会わなかったらふたりとも、横浜高校と健大高崎の激闘も、白樺学園と智弁和歌山の逆転につぐ逆転劇にも見向きもしなかったに違いない。

 ゲームとは、なんて手軽ないろいろなことへの入り口なんだろう。

 そんなことを思いましたとさ。

投稿者 大塚角満 : 14:43

【パワプロ2011】第5回 天才を引け!

 相も変わらず『パワプロ2011』のサクサクセスモードで選手を作り続けている。しかしやればやるほど、このモードの奥深さというか運至上主義というか、ぶっちゃけ奇跡頼みの神の引き(シツコイ)がないことにはいい選手は作れないということがわかってきて、寝不足で血走った目から血の涙が流れそうになる。それでも、「つぎこそはいいのを引く気がする」、「もしかしたらつぎの第一ステージは真っ青(青パネルばかりってことね)かもしれない」なんてことを思ってしまい、プレイする手を止めることができない。しかし角満家の3人でいくら回しても、なかなか「これぞ!」と言った選手はできなかった。

 ある日の深夜、さすがにちょっとげんなりした俺はHとS君に向かって暗い声を出した。

「もうかれこれ100人以上の選手を産み落としたと思うけど、いっこうにいい選手ができないねえ」

 これに対し、Hがこんなことを言った。

「そうかな? けっこういいコができてるんじゃないの? ていうかそもそも、どれくらいの能力だったら“いい選手”なのかがわからないんだけど」

 確かに、それはもっともな意見だ。ぽつぽつと生まれてきていた“A”の能力を持つ選手を見れば、それはそれで“いい選手”な気もする。俺は言った。

「Aがついていれば、それなりの選手ではあるみたいだね。……でも、ウチの編集部の天上人(攻略チームのこと)たちは、パラメーターがオールAの選手とか、ばんばん作ってるみたいだよ……」

 シーンとなる我が家の居間。でもそもそも、ファミ通のパワプロ攻略チームは長年“デキるヤツら”と世間にも一目置かれている連中なので、彼らと比べることがそもそもおかしくはある。でもやはり、隣の芝は……じゃないけど、そういう情報が入ってきてしまうとどうしても比べたくなるのだ。

 そんなとき、ひとり黙って携帯電話をいじくっていたS君が「あ……」と言い、続けて「ちょっと聞いて聞いて!」と素っ頓狂な声を上げた。ナンダナンダとS君を見守る俺とH。そんな俺たちに向かって、S君は厳かに言った。

「サクセスで選手を作るとき、まれに初期数値が飛び抜けて高い“天才”が生まれることがあるらしいよ!!」

 角満家の居間に、ドシャーンと一発、大きな雷が落ちた。

「うそー! そんなのいるの!?」とH。

「マ、マジで!! ていうか、そういや聞いた覚えがある!!」と俺。

 色めき立つふたりに、S君はこう続けた。

「でもやっぱり滅多に出ないみたいなので、ひたすら数をこなすしかないね。そのうち出るだろうからさ!」

 よし! とにかくがんばって選手を作り続けよう! いつか天才を引き、さらにはダイジョーブ博士を引いて改造手術にも成功した、野球サイボーグ的な超人が生まれるに違いないんだから!!

 この瞬間から、我が家ではPSP版とプレイステーション3版を同時にプレイするという恐怖の大量生産体制が敷かれることとなった。単純な人海戦術と言えばそれまでなんだけど、そもそもプレイステーション3版を3人でやっていると自分の順番が回ってくるのが待ち遠しくてしかたなくなるので(笑)、ある意味“必然的に”導入されたシステムと言える。

 しかし“天才”というものが存在するのがわかったのはいいが、今度は「じゃあどいつが天才なんだ」という新たな疑問が生まれてしまった。『パワプロ』ではおなじみらしい天才だが、我々はこのゲームの偏差値が極端に低いので誰がどんなコなのか皆目わからないのである。なので、こんな会話が生まれる。

H:球速125キロ、スタミナが25もある。このコは天才かな? ……コントロールが10しかないけど。
:どう考えても凡才だろが。コントロールなんて小学生レベルじゃんか。
S:あ! 球速124キロ、コントロール24、スタミナ24だって! 下2桁が24で揃っているけど、これは天才の証かね??
:いやたぶん、まったく関係ないかと……。……って、こいつ、なんか顔つき違わない!? 天才っぽいと思うんだけど!!!
H・S:……いや、顔みんなおんなじだから……。

 半ばオカルトの世界である。いつになったら我がパワファームに、優秀な人材がやってくるのだ……。

 それでも、飽くことなくプレイを続けていればいいこともあるもので、ついに何人かの「これぞ!」な選手が誕生した。次回はそれらの選手をさらしてみたいと思う。

投稿者 大塚角満 : 15:51

【パワプロ2011】第4回 悲劇の連鎖

 何度も言うようにサクサクセスは、じつに簡単、お手軽な選手育成モードだ。テンポよく進めることができれば、1選手を作るのに10分もかからないだろう。しかし、お手軽なことと反比例して優秀な選手を作ることはじつに難しく(前回の記事参照)、結果優秀な選手を求めて何度も何度も何度も何度も(あと200回くらい続く)、くり返しパネルの上を移動することになる。

 いったいどれだけの選手が、我が家のプレイステーション3から作られたのだろう。プレイ開始から3日ほどで完成選手の数は60人くらいだったが、道半ばにして斃れていった選手は軽くこの倍はいるので、最低でも100回以上は、サクサクセスにチャレンジしたはずだ。※プレイ開始から数週間が経過したいまはコレの比ではない。

 しかし、心からナットクできる優秀な選手はいつまで経っても生まれない。第4ステージまでに「あ! これはいいかも!」と思えるまでに選手が育ち、勢い込んで第5ステージに臨んでも、とんだハプニングに遭ってゲームオーバーになってしまうことがしばしばなのだ。

 たとえば、こんなことがあった。

 第4ステージを終えた時点で、その選手(打者)のパラメーターは、弾道3、ミートC、パワーB、走力D、肩力D、守備力C、エラー回避C、という感じ。最後の第5ステージでの“引き”しだいでは、かなりの選手に“化ける”ポテンシャルがあるとも言えるしないとも言える、要するにちょっとワクワク感が滲み出る男になっていたのです。残りの体力は、ちょうど半分と言ったところだったろうか。これも、それなりの期待を抱かせるには十分な残量と言えた。

 そしてやってきた第5ステージ。ドキドキしながらマップを俯瞰してみると、なんと遥か彼方にダイジョーブ博士がいるではないかっ! 知らない人のために軽く説明すると、ダイジョーブ博士はパワプロ初期からの名物キャラのひとりで、ハレー彗星くらいの稀さでフラリと選手の前に現れ、謎の改造手術を強行して選手のパラメーターを“激烈”ってくらい向上させてしまう御仁である。しかしこの改造手術の成功率はめっぽう低く、失敗すると「あんたちょっとアタシに何したの…………!!」と本気で泣きたくなるくらいのパラメーター減効果を炸裂させるのだ。ダイジョーブ博士に関するエピソードはたびたびこのコラムに登場すると思うので、いまのうちにそのキャラ付けを覚えておいてください。

 そんな“博打の権化”のようなダイジョーブ博士だが、改造手術が成功したときの美酒があまりにもおいしいものだから、これを見たプレイヤーは顔先ににんじんをぶら下げられたウマのようになる。このときの、我が家の居間がそうだった。

うわああああ!!! ここでダイジョーブきたぁぁああ!!」と俺。

「ちょっと!! どうすんのよ!! (改造手術を)やるの!? やらないの!!?」とH。

「そりゃやるでしょ!! ハイリスクハイリターン最高!!」とS君。ダイジョーブ博士には、凍っていた水をいきなり沸騰させるくらいの破壊力がある。

 一家の同意を得た俺は、わき目も振らずにダイジョーブ博士を追い始めた。サクサクセスのダイジョーブ博士は10歩歩いた瞬間にマップから消えてしまうので(週刊ファミ通に書いてあった)、急がなければならない。しかし、ただでさえ遠くにいたうえにダイジョーブ博士は俺を避けるようにウロチョロしやがるので、思うように近寄れないことはなはだしい。俺は「ムキーーーッ!」と苛立ちながらやむを得ず赤パネル(能力ダウン)も踏み、ダイジョーブ博士を追い回した。当然、パラメーターを下がりまくりである。

 しかし、身を切る思いで追跡したダイジョーブ博士は、「ここにいい選手はおらん」とつれないことを言って俺の前から消えてしまった。「赤パネルで能力が下がっても改造手術に成功すればお釣りがくるわ!!」と思っていたのに、これではとんだ大赤字である。

 さらに悲劇は続く。

 ダイジョーブ博士に夢中になっていたために気に止めなかったんだけど、いつのまにか俺はカレン(パワプロ初期からの名物キャラその2。ちょっとぽっちゃりした女の子)にロックオンされ、“逆追跡”されていたのである。この状態になったカレンに追突されると、キャラクターは大きく跳ね飛ばされて体力が激減してしまう。カレンのアタックにより息の根を止められたことがそれまでに何度もあったので、俺は震え上がった。

「い、いまカレンにタックルされたら、間違いなく即昇天だ!! 逃げろ逃げろ!!」

 俺はゴールを目指して移動を始めた。しかし数歩目に踏んだ“?パネル”(何が起こるかわからない)の効果が、俺の目を点にさせる。

「なんと、青パネル(能力アップ)が赤パネルになってしまった!!」

 オイちょっと待てや……。ダイジョーブ博士の追跡で赤パネルを踏みまくり、そのうえで博士を取り逃がし、さらにカレンにロックオンされた俺にそんな仕打ちをするってか!! どんだけ不幸やねん!! 俺はただ静かにゴールしたいだけなんだ!! カンベンしてくれぇぇぇえ!!

 やむを得ず俺は、一発逆転を狙うために近くにあった?パネルを踏んだ。赤パネルを青パネルに変える効果が稀に発動することを知っていたのだ。ここでそれを引ければ、逆転サヨナラホームランってくらいの効果がある。さあ引け! 無数の赤パネルを青パネルに変えるのだああああ!!

 そして画面に、運命の?パネルの効果が表示された。

「体力が大幅に減少した!!」  

 プシュン。

 ゲームオーバー。

投稿者 大塚角満 : 17:33

【パワプロ2011】第3回 俺の広島

 前回の記事でも書いたが、『パワプロ2011』より新規に導入された“サクサクセス”モードは非常にお手軽で敷居が低い。ぶっちゃけ、『パワプロ』どころか野球すらまったく興味がない人をも惹き付けて、ついつい遊ばせてしまう引力がある。実際、我が家のHなんて「野球って、ボールを打った人はどっちに向かって走るん?」と素で聞いてくるほどの野球原始人だったが、サクサクセスのポップなノリのトリコとなって、いまでは「外野手なんだから、走力と肩力は伸ばしたいね。レーザービームも取れるといいんだけど」などとしたり顔で言っているのだから驚いてしまう。それくらい、このモードにはカジュアルな魅力がある。

 というわけで始めたサクサクセスモードだが、こいつは非常にライトな顔をしているくせに、じつはとてつもなく難しくもある。いや、やることと言ったら迷路状に敷き詰められたパネルの上を移動するだけなので、ただ選手を生産するだけだったら難しい要素はひとつもない。短時間にいくらでも、選手を生産できる。しかしちょっと欲を出して「いい選手を作りたいな」と思った瞬間に、サクサクセスは暗黒の奈落に通じるアギトをガバッと開けるのだ。

 どういうことか?

 じつはサクサクセスでいい選手を作ることは、非常に難しいのである。

 サクサクセスによる選手育成の成否を左右する最大の要因は、1も2もなく“運”である。選手の初期能力はもちろん、敷き詰められた青パネル(パラメーターアップのパネル)の種類と量、宝箱(何がしかのパラメーターが大幅アップ)の引き、?パネル(何が起こるかわからない)を踏んだときの効果と、すべてが運という名の天秤の上で、○か×かで揺れている感じなのだ。

 でもだからこそ、サクサクセスはやめられない。『パワプロ』や野球を知らない人でもすごろく感覚で遊べてしまうので、ついつい夢中になってしまうのだ。


▲これがサクサクセスのステージだ。全5ステージで構成されていて、体力(画面中央上のバー)が続く限りマップ内をウロついて能力アップを図る。基本、それだけなんです。簡単でしょ。


▲1歩歩くごとに体力が1メモリ減る。すべてなくなるとゲームオーバーだ。キチンとマネジメントしないと道半ばにして斃れてしまうことが続出するわけだが、ちょっとでもいい選手を作ろうと思ったら、ゲームオーバーぎりぎりのところでもパネルを踏むしかないわけで……。そのへんのせめぎ合いが非常に悩ましく、ついついくり返しプレイしたくなるのだ。

 そんな感じなので我が家では、家族3人でプレイステーション3のコントローラーを回しながら順番にサクサクセスで選手育成をしている。ひとりが選手を作ったらコントローラーをつぎの人に、その人が選手を作ったらコントローラーをつぎの人に……というローテーションが確立されているのである。

 さてその際、懸案事項となるのが育成した選手の所属球団だ。プレイヤーの任意で選べるのでどこでもいいっちゃいいんだけど、我が家では“どこでもいい”というわけにはいかない。ある男が、非常にうるさいのだ。

 じつは俺、小学校3年生のときからの広島東洋カープファンだったりする。この年の日本シリーズで広島と近鉄バファローズが激突した際、最後の第7戦で演じられたのが有名な“江夏の21球”で、少年角満はこれにメロメロになったのだ。

 『パワプロ』とぜんぜん関係ないことを書くけど、俺はこの伝説のシーンを、家族でドライブ中のカーラジオで聴いた。親父と実兄は生粋の巨人ファンだったのでこれを下して日本シリーズに進んだ広島がどうしても許せず、コメカミに青筋を浮かべて近鉄を応援していた。そんな中、カーラジオから「9回の裏、近鉄の攻撃!」、「点差はわずか1点!」、「ノーアウト満塁!」、「江夏、大ピンチ!」という実況が流れてくる。それを聞いた瞬間、俺は心の中で絶叫していた。(江夏、がんばれ!)と。我が家族の誰にも愛されず、さらに絶体絶命のピンチに陥ってしまった広島という球団を、心やさしかった少年角満が見捨てるわけもない。そしてこの叫びが届いたのか、江夏はスクイズをかわし、最後の打者を三振に仕留め、広島を初の日本一に導くのである。これほど劇的なドラマをリアルタイムで聴き、恋に落ちないわけがない。この瞬間より、俺は生粋の広島ファンになったのだ。

 このようなバックボーンがあるため、俺はサクサクセスで作り上げた優秀な選手をすべて、広島に送り込んでいる。その立ち位置は言わば、広島のためだけに作られた“エリート育成所”もしくは“超人ファクトリー”といったようなもので、ここ何年もBクラスに甘んじている広島を常勝軍団にしたいという気概に満ち溢れている。

 なので、身内のH、S君が選手を作るときも、つぎのような強要をする。

H:つぎ、選手どこに入れる?
広島でお願いしまーす!

S君:つぎの選手はどうする?
広島がいいかなー。

H:ではつぎ。選手はどこ……。
広島でぜひ!

S君:つぎの選手……。
広島でっ!!

H:おつぎ……。
広島ッ!!!

S君:つぎ……。
ヒーローシーマーッッ!!

H:つ……。
広島だっつってんだろッッッッ!!!!

 なんか以前も、似たようなやり取りがあったがね。

 こんな感じで作られた選手はつぎつぎと、広島東洋カープに送り込まれていった。当時はそれが正しいことだと、信じて疑わなかった。

 ところが前述の通り、サクサクセスで優秀な選手を作ることは非常に難しい。噂によると選手のパラメーターには最高で"S"というランクがあるらしいのだが、大塚家が作った選手にはSどころか、Aというアルファベットもほとんど見当たらないのである。とくにプレイし始めのころなんて"B"に到達しただけで「奇跡!!」と叫び、まかり間違ってAなんてものが出た日には「神が降りた!!」と大騒ぎをしていた。

 結果、我が愛する広島には、つぎのような選手ばかりが送り込まれていった。

●選手A(投手)
・球速:145キロ
・コントロール:E(43)
・スタミナ:F(34)
・変化球:Hスライダー(1)、カーブ(1)
・特殊能力:ケガしにくさ(4)のみ

●選手B(外野手)
・弾道:2
・ミート:D(53)
・パワー:D(55)
・走力:E(47)
・肩力:E(40)
・守備力:C(62)
・エラー回避:C(60)
・特殊能力:ヘッドスライディングのみ

 監督は思ったろうな。

「フロントはなんで、こんな選手ばかり連れてくるんだろう……」

 って……。

(C) 2011 Konami Digital Entertainment (社)日本野球機構承認 NPB BIS プロ野球公式記録使用 プロ野球フランチャイズ球場公認 ゲーム内に再現された球場内看板は、原則として2010年プロ野球ペナントシーズン中のデータを基に制作しています。 ※画面はプレイステーション3版の開発中のものです。

投稿者 大塚角満 : 12:08

【パワプロ2011】第2回 ふるさとに帰りたくなる話

 最初に宣言しておきますが、『実況パワフルプロ野球2011』の本格的なプレイの様子は、今回の日記では書かれません。そこに至る、長い与太話です。それを覚悟のうえでお読みくださいw

 前回の日記で書いた通り、こちとら『パワプロ』で遊ぶのはじつに14年ぶりのことである。完全な“浦島太郎”状態だ。

 しかし、さすがにこれほどご無沙汰になってしまうと、どんなに「触れたい」、「遊びたい」と思っていたものであっても、どうしても1歩引いて見てしまう。だって、そりゃあそうでしょう。自分の知らないところで10年以上の長きにわたりファンに愛され続け、日夜進歩を忘れずに発展し続けてきた長寿コンテンツなのである。それに対してビビったからといって、誰に責められようか。いや誰も責められない。

(俺なんて門外漢もいいところだ……)

(何も知らないことで笑われたりしないだろうか……)

(ヘンなことをして怒られたらどうしよう!)

 そんなことまで思ってしまう。俺ってデリケートだからナ。

 そういえば最近、これと似たようなことをプライベートで味わった。

 俺はふるさとの群馬を18歳で飛び出して以来、一度も故郷にリターンしていない(もちろん、帰省くらいはしている。腰を落ち着けて故郷で暮らしていない、ってことね)。そうなると当然ながら地元のことには疎くなり、幼馴染たちの近況や人間関係はもちろんのこと、彼らが俺のことを覚えてくれているのかどうかすらよくわからなくなってしまう。いや、よくわからないどころか心の中では(俺のことを覚えているヤツなんて、片手(5人)もいないに違いない)とか(俺なんてオワコンなんだ。いいんだいいんだ)なんてことまで思ってしまう。我ながら若干屈折しているとは思うが、俺と同世代で、地元を飛び出したお父さん、お母さんがたは、この気持ちに同調してくれるのではなかろうか。

 まあそんな心模様のまま群馬に帰り、かつて何をするにもいっしょにいた親友Yと会うことになった。さすがに親友なので俺のことは覚えていて、昔話に花が咲く。するとYは「せっかくだからアイツも呼ぼう」と言って、もうひとりの親友Aに電話を掛け始めた。すると電話の向こうのAはひどく喜び、「すぐに飛んでいく!!」と言って、本当に5分後くらいに俺たちの前に現れたのである。男3人集まれば姦しい……という字にはならないけど昔話はさらにヒートアップし、今度はAが「せっかくだからヤツにも電話しよう」と言って、今度は同級生だけど俺たちのグループには所属していなかったKという男に電話を掛け始めた。そしてAは電話の向こうのKに向かって「いま、珍しいヤツが帰ってきてるぜ」と言い、携帯を俺に渡す。でも正直俺はこのとき、電話に出ることを躊躇した。

 (Kはきっと、俺のことなんて忘れている)

 そう思ったからだ。

 しかし電話の向こうのKはひどくはしゃいだ様子で、「うおおお!! オーちゃん(俺のこと)でしょ!? 声ですぐにわかったよ!!」と言って、矢継ぎ早にいろんなことを話し始めた。あんなことしたよね、こんなところに行ったよね……と、興奮気味にまくし立てるK。その声を聞いているうちに、俺はなんだか泣きたい気分になってしまった。

(なんだ……。けっこうみんな、覚えくれているじゃん……)

 地元に帰ってきたくせにどこか身構えていた俺は、その瞬間に消えてなくなった。そして月並みな発言ながら、

「やっぱ、ふるさとっていいな……」

 と思ったのだった。

 ……って、あまりにも長い例えで書いている俺が眠くなってしまったが(オイ)、14年ぶりに『パワプロ』をプレイするにあたり、俺はこれくらいのことを思っていたのだ。我ながらメンドくさいですね。

 さて、まずは何をしようか……。

 『パワプロ』の魅力と言えば、野球選手をイチから育てる“サクセスモード”が有名で、かつて俺が激ハマりしていたのもこのモードである。しかし長き時を積み重ねて結晶化した現在のサクセスモードにいきなり触れるのは、なんとなく畏れ多い気がした。このへんが“久々の地元感”に根付いている部分だ。

 そんなことを考えながらファミ通の『パワプロ2011』の記事をパラパラと捲っていると、なんと本作品よりサクセスモードを簡略化して敷居を下げた“サクサクセス”なるモードがあることに気づく。迷路状に配置されたパネルの上を自由に移動してゴールを目指す……というすごろくのような仕様で、パネルには選手のパラメーターがアップするもの、ダウンするもの、踏んだら何が起こるかわからないもの……などという種類があるらしい。これらをフミフミしながら選手を育てると、わずか10分程度で立派なプロ野球選手が誕生するというではないか! これは浦島太郎な俺にピッタリの、ブルペンで投球練習をするのと同じようなサクセスモードではないか。

 そして実際、サクサクセスモードのポップでカジュアルなノリのよさにより身構えていた俺の心はガラガラと崩れ、この14年のブランクが夢だったかのように『パワプロ』世界にどっぷりと浸っていくことになるのである。通常のサクセスモードとはまったく違う見た目ながら、そのテイストとおもしろさを集約したかのような作りには、ただただ脱帽するしかない。そんなサクサクセスモードで一喜一憂しながら、俺は小さくつぶやいた。

「やっぱ、『パワプロ』っていいなぁ……」

 次回より、抱腹絶倒のサクセスモードドタバタ日記となります。悶絶すること請け合いですヨw

投稿者 大塚角満 : 12:44

大塚角満

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週刊ファミ通副編集長にして、ファミ通グループのニュース担当責任者。群馬県出身。現在、週刊ファミ通誌上で“大塚角満のモンハン研究所”というコラムを連載中。そこら中に書き散らした『モンハン』がらみのエッセイをまとめた単行本『本日も逆鱗日和』シリーズ(4巻)が発売中。また、そこからのスピンオフとして別の視点から『モンハン』の魅力に迫る書き下ろし作品『別冊『逆鱗日和』 角満式モンハン学』シリーズも。このブログではさまざまなゲーム関連の話題を扱うつもり。一応、そのつもり。


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